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「んじゃ、そろそろご飯と寝る準備しようか。」



珍しく鈴香から言い出した。



「え~?もうですか~?」



「夜の森は危険だ。早めに準備すべきだろう。」



誠実もそろそろ準備すべきだと思っていたが、先に鈴香が言い出すとは思わなかったようだ。


誠実はいまいち鈴香という人間がつかめないでいた。

始めは女子2人ともただの能天気なやつらという印象だったが、今は違う。

桃の方はマイペースで考えが足りないところもあるが、何も考えていないわけではないということがわかってきた。

鈴香はまだよくわからない。



「それじゃ、俺たちがテントを建てるから2人はご飯の準備をお願いね。」



それぞれがせっせと準備し始めた。



「やっぱり鈴香ちゃんは器用ですね~。」



鈴香は意外にもテキパキと手を動かしていた。

逆に桃はあまりに包丁の使い方が危なかったため、鈴香に別の簡単な仕事を任された。



「そうでもないよ。作るのは基本的になんでも好きだからね。」



「料理も動くんですか~?」



「料理は効果範囲外だよ。料理を実現させても料理は料理でしょ。」



「あ~、確かに~。」



鈴香と桃は楽しそうに笑って準備しているようである。




「あ。」



黙々と作業していたはずの翼が何かに気がついたように声を上げた。



「どうした?」



少し困ったような顔の翼に誠実は尋ねた。



「毛布が入ってなかった。」



テントや毛布といったキャンプ道具は開始前に1チームにつき一つのリュックが渡されていて、全部その中に入っているはずだった。



「はぁ?……係の者が入れ忘れたか。」



「え~、じゃあ、テントの中で敷き布団も毛布もない状態で寝るんですか~?」



桃が心底不満そうな表情でぼやいた。



「敷き布団なら元々入っていない。」



「え~、そんなの硬くて寝れないじゃないですか~!」



「俺たちは遊びに来たんじゃないんだ!それくらい我慢しろ!」



「え~!そんなぁ~!」



「はいはい、2人とも落ち着いてー。」



翼が2人をなだめた。



「それにしても、委員長、敷き布団はともかく毛布がないのはまずいよ。夜の森は冷えるからみんな風邪引いちゃうよ。」



鈴香は料理をしている手を止めた。



「ちょっと待ってて。」



鈴香がリュックを下ろしながら言った。



「何かいい方法でもあるのか?」



誠実は怪訝そうに鈴香のリュックを見つめた。


鈴香のリュックは支給されたものと違って可愛らしいデザインのものである。

鈴香はリュックから白い布とわたを取り出した後、腰に付けてあるこれまた可愛らしいポーチから針と糸を取り出してチクチクと縫い出した。



「また何か作るんですか~?」



桃は不思議そうに鈴香の手元を見つめていた。



「……できた。縫い目がかなり大雑把だけど問題ないでしょ。」



誠実はさらに怪訝な顔になった。




「手のひらサイズの白いクッション……?」



「だから、私のメイクは作ったものを実現させる力なんだって。えい!」



鈴香は作ったばかりの小さな長方形のクッションをテントの中に放り込んだ。


すると、クッションはテントの中で大きくなり敷き布団となった。



「わぁ!ふっかふかです~!」



桃はすぐさまテントに飛び込んだ。



「すごいねー。こんな使い方もできるんだね。」



翼も関心したように桃と敷き布団を見つめた。



「……便利な能力だな。」



誠実はメイクの《作ったものを実現させる》という能力について少し考えてみたが、どこまで、どういった法則で、どれほどの間《実現させる》ことができるのかわからない以上考えるのは無駄に思えた。





鈴香のおかげで毛布どころか敷き布団や掛け布団、枕と一式寝具が揃った。

そして、食事もできたようだ。



「ふふふっ、鈴香ちゃんは女子力高いですね~!」



寝具も揃い、鈴香の指示のもとで作ったシチューもおいしく、桃はご機嫌なようである。



「んー?私は"作る"のが好きなだけだよ。女子力は桃ちゃんの方がよっぽど高いでしょ。」



鈴香の言う通り、桃はかなりおしゃれに気を使っている様子である。



「えー、いろいろ作れる方が女子力高いと思うけどなぁ。」



「それは誤解だよ。少なくとも私の場合は。」



女の子のそういう話に慣れている翼は微笑ましく2人のやりとりを聞いていたが、堅物委員長はそうはいかなかった。



「そんなことより明日の話だ。」



「そうだねー。明日には試験官も動きだすだろうね。」



「試験官は今日のやつらみたいに甘くない。複数で襲ってきた場合、俺だけじゃ流石に対応し切れないぞ。」



「俺ができるのは奇襲の防止と戦場を俯瞰することぐらいだよ。」



「その能力を使えば戦闘に有利になるだろうが、決め手に欠けるな。お前のシングは眠らせる以外に何かできるか?」



誠実が桃の方を向いて聞いた。



「戦闘に関しては~、眠らせる、味方の強化、治癒ー……くらいかなぁー。」



「強化?そんなこともできるのか。治癒は実戦に役立つな。」



だが、やはり補助的な能力で直接攻撃ができるわけではないかと誠実は考えた。



「おまえは今日の戦闘では何もしなかったが……どうなんだ?」



誠実は鈴香に聞いてみた。



「まぁ、試験に合格するためにはこのまま何もしないわけにもいかないからね。」



「具体的に……」




「委員長、そろそろ寝ないと明日に響くよぉ。見た感じ夜襲はなさそうだし、早く寝て早く起きた方がいいよ。」



翼はサーチを使って森の状況を調べたようである。

察しの良い翼は鈴香がまだ能力について話す気がないのに気がついていた。



「……そうだな。」





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