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「さて、まず何する?」



森というだけあって今のところ一面の木しか見えない。



「うわぁー、本当に森なんですね~。気持ちよく歌えそうです~。」



「森か……森……うん!次はオオカミちゃんを作ろう!森といえばオオカミだよね!」



「うわぁー!オオカミちゃん!楽しみです~。」



芸術肌の2人にとってここは創作意欲が掻き立てられる場所のようだ。

誠実は額に手を当ててため息をついた。



「とりあえずは森の中を調べてみる必要がある。おそらくそれなりに危険度の高い生物がいるはずだ。比較的に安全な場所を探して拠点とすべきだ。……聞いているのか?」



鈴香は先ほどの猫とは違い毛糸で狼を作っているようである。



「ん?聞いているよ。」



誠実が話している間も黙々とかぎ針を持った手を動かしていた。



「ん~、危険な生物は確かにうじゃうじゃいるねー。でも、そいつらの縄張りに属していないところもちゃんとあるみたい。」



翼は目を閉じたまま森の中の様子を述べた。



「もう調べたのか。さすがだな。」



「うわぁ、委員長に誉められちゃったよ。」



意外そうに翼は目を開けて誠実を見た。



「元々おまえの能力は評価していた。ただおまえ自身のことは素行が悪く、頭が空っぽそうだと思っていたがな。」



「ひっどーい。」



不満そうに言ったその顔には普段通りの笑みが浮かべられていた。



「だが、今回接してみて少し考えが変わった。」



「へぇー?どんな風に?」



「あの2人に比べたらよっぽどまともだ。」



「あははっ! 2人とも可愛くていいんじゃない?」



鈴香の狼は少しずつできてきているようだ。

頭、胴体、耳はできているので、後は手足、尻尾、顔を作れば完成する。



彼らは翼のサーチを頼りに森の中を歩いた。

サーチのおかげで道中は大した危険には遭遇しなかった。



「おまえのサーチを使えば、森の探索は不要か……」



「でもー、このまま何もしないでいたら翼くん以外は試験に落ちちゃいますよ~。」



「ちゃんとわかっているんだな。心配しなくとも一級能力者試験は森を探索するだけの生温い試験ではない。」



彼らは木が密集しているその場所を拠点とすることに決めたようだ。

森の中は木ばかりで普通なら現在地さえわからなくなるはずだが、翼の能力があるためその心配はない。



「んー?こんな感じかな?狼は初めて作ったからなー。でも、結構よくできてる!」



約1名は我関せずというように自分が作った狼のできを吟味していた。



「おまえな……」



「今回の狼ちゃんは動かないんですか~?」



「うん。まぁ、またそういう機会もあると思うしね。」



なんでこいつは一級能力者試験なんて受けているのだと誠実は本気で思った。


そもそもよほどの能力を持つ者でなくてはこの試験を受けることはできない。

今この場にいるということは彼らの担任に選ばれた優秀な人材ということだ。




「おまえ本気でこの試験に合格する気があるのか?」



鈴香は自信たっぷりに笑って言った。



「もちろん。」



その言葉を聞いた翼は驚いたような表情を作った。



「へぇー、意外だね。鈴香ちゃんはそういうの興味なさそうなのに。」



「ふっふっふっ、だって、一級能力者は任務のための経費と報酬がたんまりともらえるんだよ!そしたら、私はそのお金で材料を買っていっぱい作れる!」



一級能力者の称号を持つ者は様々な特権が与えられるのはもちろんのことであるが、それ以外にも特殊任務が与えられる。

一般人ではどうにもならないような難易度の高い任務を一級能力はこなさなくてはならない。

学生であろうとも例外にはならない。



「……そんな理由か。まぁ、やる気があるのに越したことはないがな。」



「そんなとは失礼な!材料って結構高いんだよ!だいたい任務のために作らないといけないときだってあるんだし。」



鈴香は物作りの話になると熱がこもるようである。



「そうなのか?おまえの能力は…………おまえら下がってろ。」



「うっわー、うじゃうじゃいるねー。みんな委員長目当てか。」



彼ら以外の受験生が有力候補である誠実を潰しに来たようだ。



「さすが委員長は有名人ですねぇー。」



桃は能天気に感想を述べた。

誠実は既に銃を両手に持って臨戦態勢を整えており、翼は鈴香と桃を連れて後方に下がった。




誠実が両手の銃(麻酔銃)を駆使して戦っているのを3人は見ているだけだった。

誠実のコントロールほど戦闘向きの能力はないという翼の言葉は事実だった。

能力だけでなく身体能力も高いため、危なげなく敵を撃墜していった。



「さっすがだね。委員長は。」



「そうですね~。2人は参戦しないのですか~?」



「俺は裏方だからね~。そういう桃ちゃんは?」



「私は~」





「おい!何人かそっちに行った!……くそっ!」



誠実は3人の元に向かおうとしたが、取り囲まれているため身動きが取れない。

敵は誠実本人より同じチームを組んでいる他の3人を狙うことにしたようである。



「来てるね。どうする?」



鈴香が2人に話しかけた。



「今回は~私がやります~。少し耳を塞いでもらえませんか~。」



「わかった。」



2人が言われた通りに耳を塞いだのを見て、桃は一気に空気を吸い込んだ。



とてもきれいな歌声が桃の口からつむがれた。

心が落ち着く穏やかな歌であった。


しかし、なぜかその歌を聞いた敵がバタバタ倒れていった。



「どういうことだ!それがおまえの能力か!」



ようやく駆けつけた誠実が戦闘を続けながら桃に叫んだ。



「シングは人の感情を動かす能力だって言ったじゃないですか~。私が子守り歌を歌えば誰であろうと寝ちゃうんです~。」



「なるほどな。歌で感情を動かすとはそういうことだったのだな。」



誠実の方はあらかた片付け終わったようである。

3人に近づいた敵たちは桃のシングでぐっすり眠っている。

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