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男は史実通りその戦に勝利した。
それだけじゃない。
男は何度も戦をし、何度も勝利した。
少女と男の関係はいつまでも変わらなかった。
男が外で何をしようと少女はいつも通りの無気力さで迎える。
男が怪我をして帰ると少し心配そうにするが、それでも無表情・無気力を崩しはしなかった。
男がどんなことをしようと少女は何も言わなかった。
男の評判を全く知らないはずもないのにもかかわらず。
魔王と呼ばれる男と少女の日々は何も変わらなかった。
とある日の夕暮れのこと。
少女はいつも通り男の仕事部屋で寛いでいた。
いつも通りと言っても、そこはもう岐阜城ではなく、あの有名な安土城であるが。
ただいつもと違うことが一つ起きた。
「殿。」
障子の外から声がした。
「ああ、もうそんな時間か。」
そう言うと男は立って障子を開けに行った。
男が開けた障子の間から声の主が見えた。
声の主はチラッと少女を見た。
「噂には聞いておりましたが、随分毛色が違う猫ですね。」
「おまえは見たことがなかったのか。なかなかおもしろい猫だぞ。」
「それはそれは……」
その男はにっこりと優しげに少女に微笑みかけたが、少女はなぜだか好きになれなかった。
「行くぞ、光秀。」
男に促されて2人は出て行った。
少女はただ呆然と2人が出て行った方を見つめた。
「みつひで……明智……光秀……」
その名を少女が知らないはずがなかった。
少女はさっき会った初対面の男を思い出し、何か考え事をしていたようだが、すぐに止めて寝っ転がった。
「めんどくさいや。」
少女の呟きは天井に吸い込まれていった。




