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男は早朝に城を出た。
「暇だなぁー。」
少女は与えられた部屋で言われた通り大人しくしていた。
少女は城から出ないとき、いつものセーラー服を着る。
そこに1人の女性が入ってきた。
「お茶と甘味をお持ち致しました。」
「ありがとう~。」
いつにも増してやる気がない少女に向かって女性は安心させるように笑顔で口を開く。
「心配なさらずともあの方はすぐ帰って来ますわ。」
「そんな心配はしてないよ。」
少女は退屈そうに言った。
「ああ、そうでしたわね。奏様は未来を知っているのでしたね。」
少女が未来から来たのだと知っているのは織田信長とこの女中だけである。
「まぁね。でも、いつ帰ってくるかまではわかんないや。」
「ふふふっ、退屈が紛れるよう後で町で何か買って来ますわ。」
男がいない間少女は部屋の中で過ごした。
仕事の合間を縫って来てくれる女中のおかげで退屈で死にはしなかった。
数日後男は慌ただしく帰って来た。
帰還後最初の軍議が終わった頃に少女は男の部屋に行った。
「おかえり。どうだった?」
少女はいつも通りボケーとした顔で言った。
「どうなるかなんて知っていただろう?全くこの俺が逃げ帰ることになろうとはな。」
「悔しい?」
少女はただ無感情に首をかしげて聞いた。
「はっ、そんなわけなかろう。俺は生きているんだ。なら俺はまだ負けていない。」
「………そっか。」
それがこの男の強さなのだろうと少女は口元を緩めた。
「とにかくおかえり。元気そうで何よりだよ。」
俺は少女の頭の上に手を乗せて猫を撫でるように撫でた。
少女は確かに男の未来を知っている。しかし、それでも男のことが心配であったのだろう。
少女が戦がなく命の危険が身近にないような場所で生まれ育ったことに男は気がついていた。
「ちゃんと大人しくしていたか?」
「してたよ。ずっと部屋にいた。そろそろ腐りそう。」
少女は和やかに笑う。
「そうか。」
男は自分の張り詰めた神経が緩むのを感じた。




