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何万回目の初恋  作者: 檻 依舞 (おりーぶ)


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5/6

思春期やけん


新学期が始まり数日後。


俺達は昼休みに弁当を広げてた。


「やっと昼休みたい…」


「腹減った…」


「お前ら二人は変わらんな…」


今日もいつもと変わらない昼休み─ではなかった。


「夏牙…今日も凄いねえ」


「足りんばい…叶芽、パンとカフェオレで足りると?」


「うん…朝はバナナとプロテインだから…」


「女子か!叶芽と蓮司はもう少し食った方が良か…」


叶芽はパンとカフェオレ。


朝はバナナとプロテインを食べてるらしいが、細くて心配になる。


「いやお前らが食い過ぎるっちゃん!」


「蓮司はほぼ草やん」


「鶏胸肉も入っとるけん!ナッツも…」


蓮司はサラダ。


一応雑穀米や鶏胸肉、ナッツも入ってはいる。


「迅、今日はなんの肉なん?」


「今日はな…サガリとテール、ホルモンや!」


「迅はバランス良いじゃん!俺の次に」


「蓮司は叶芽の次にもっと食べないかんたい!」


迅は比較的バランスが良い。


肉屋の息子ならではの特権。


嫌でも毎日肉を見られるほど、肉が詰められている。


「海都は?今日は鮭?」


「いや…鯖だな。甘海ちゃんの料理…また食いたい」


「分かるばい…」


海都はこうだ。


俺と同じ、米五号に鯖三尾は乗せられている。


ちなみに野菜がほぼ入ってないのも共通してる。


「タッパーにぎっしり…よく入るね」


「育ち盛りやけん…食べんとな」


そして、俺。


一リットルのタッパーに白米がぎっしり。


別のタッパーには肉、卵、そして明太子がぎっしり。


さらには、爆弾のおにぎり二つ。


「夏牙だけ異常やろ……放課後まで持つと?」


「持たん」


「燃費悪すぎ……てか、海都もだけど野菜入ってなか!野菜食べんしゃい!」


「迅、お母さんみたい」


「こげん子産んだ覚えなかっ!」


「俺もこんな母ちゃん嫌たい!」


とまあ、いつもはこんなくだらない話で笑い、昼休みを過ごすのだが──。


****


ある人物で話が盛り上がった。


「なぁ……甘海ちゃんって彼氏いると思う?」


蓮司が話を切り出す。


一番大事なことを思い出した。


今世の甘海には恋人はいるのかを─。


「いや、おらん」


俺は即答する。


「へぇ?狙っちゃおうかなぁ…」


「なんね…甘海は俺のもんたい!」


「なんでお前が強く言い切れると?」


危ない危ない。


「まあまあ落ち着け」


海都が間に入る。


すると恐る恐る迅が話を切り出す。


「……前から思っとったんやけど…皆、甘海さんの事、好きやろ?」


その言葉に、俺達は言葉を失った。


「…………」


沈黙が続き、白飯だけが減っていく。


「ぼ、僕も甘海ちゃんのことが好き…でも」


「でも?」


「……夏牙には幸せになって欲しい」


「は?」


叶芽がボソッと切り出す。


あとのメンバーも、話を切り出す。


「実はな…甘海さんを幸せに出来るんは夏牙だけやと思っとって…でも好きな気持ちは変わらん」


「蓮司…」


「お、俺だって甘海ちゃんが好きだ!でもよ…お前には叶わんよ…」


「海都…」


蓮司も海都も、甘海が好きらしい。恋愛的に。


「もちろん俺も好き……でも、お前のあの甘海ちゃんに対する想いを知っちまったら、勝てっこないっちゃけん」


「迅…」


「それにな…幼稚園の初恋、あれ嘘やろ?」


迅も。


今世の俺の初恋は幼稚園だと思われてたのに、分かってたらしい。


「………バレたか」


「何年幼馴染やっとると思うと。夏牙…甘海ちゃんを幸せにな。全員好きな気持ちは変わらん。俺達は夏牙を応援するったい!」


迅が俺の肩を叩く。


全員の甘海への想いは変わらない。


でも、四人は今世の俺の恋を応援すると言った。


「一足遅かったら、去年みたいに大喧嘩するとこやったな」


「だね…僕達、夏牙の恋を応援するから」


「お前ら……」


また一つ。


言いにくいことを打ち明け、仲は更に深まった気がした。


****


「よし、放課後ファミレスや!」


「夏牙行こばい」


「博多駅前のとこで良かとね?」


「うん…海都も僕も博多駅だからね…」


放課後。


俺達は博多駅前のファミレスに来た。


席に座り、ドリンクバーで飲み物を調達する。


「おお!めっちゃ空いとる!」


「いやぁ…放課後はコーラに限るばい」


「なぁ…俺はメロンソーダ。叶芽は?」


「僕はジンジャーエール。夏牙は?」


「俺はコーヒーたい」


いつもはフォンタを飲む俺だが、何故かコーヒーを選んでしまった。


よく来るファミレスは常に混んでるため、今日は博多駅前のところにしたのだ。


「それで…甘海ちゃん可愛くね?」


ひと息ついて、海都が切り出す。


「うんうん!生まれつきがあの美少女……まつ毛長いし綺麗な二重幅…小さい鼻に白い肌、何よりミルク色の髪!」


「お前…マジマジと顔見てたと?たしかに…福岡で一番可愛か子たい」


甘海の話だった。


甘海はどの時代でも綺麗で、常に男の人が周りにいた。


だから甘海とは常に二人で行動してた。


俺のだと分かるように。


「あの髪色とあの穏やかで優し過ぎる性格…あれはもうママなんよ!」


「分かる…聖母だよね…癒される…」


今世の甘海は、俺より歳上。


しかもあのミルク色の髪色に、穏やかで優しい性格。


聖母と言われると、非常に納得する。


「しかもさ……デカいよな。何がとは言わんけど」


「あぁ…シャツのボタンもはち切れて…柔らかそうだよね…」


「あぁ。実は俺…少し当たったんやけど、柔らかかった…」


甘海が超絶美少女なのは、もはや常識だ。


しかし、四人が着目してたのはそこではなかった。


「ずるっ!甘海ちゃん…小さくて細いのに、推定何カップなんやろ…」


「ううん…しかもさ…小さく見せるやつでしょ?」


「お前ら…なんでそげん話で盛り上がっとると?」


フレンチで見た、甘海の胸元だった。


いくら何千万回もの人生を甘海と共にしたとはいえ、

今世では余計気になってしまう。


「そりゃ…俺達思春期やけん」


「便利な言葉やな…」


「夏牙も興味あるくせに…」


男子高校生だから─思春期だからだろうか。


下ネタで盛り上がるのも仕方ないと思うのだが、甘海でそんなことを考えたらキリがなくなってしまう。


「甘海…」


その名前は、何千万回もの人生で、愛を育んだ女のそれだった。


甘海は、思春期男子にとって危険な存在だった。


思春期ならでは語りたい内容も、俺達の心も、甘海でいっぱいだった。


「ふぅ…沢山語ったねぇ…」


「だな。明日は店の手伝いあるから…週末遊ぼうぜ」


「おう!」


「じゃ、皆また明日な!」


その日を境に、胸の奥は安心感が溢れていた。



……To be continued

第四話を読んでいただきありがとうございます。


次回、甘海が夏牙の家に…。


それではまた。

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