思春期やけん
新学期が始まり数日後。
俺達は昼休みに弁当を広げてた。
「やっと昼休みたい…」
「腹減った…」
「お前ら二人は変わらんな…」
今日もいつもと変わらない昼休み─ではなかった。
「夏牙…今日も凄いねえ」
「足りんばい…叶芽、パンとカフェオレで足りると?」
「うん…朝はバナナとプロテインだから…」
「女子か!叶芽と蓮司はもう少し食った方が良か…」
叶芽はパンとカフェオレ。
朝はバナナとプロテインを食べてるらしいが、細くて心配になる。
「いやお前らが食い過ぎるっちゃん!」
「蓮司はほぼ草やん」
「鶏胸肉も入っとるけん!ナッツも…」
蓮司はサラダ。
一応雑穀米や鶏胸肉、ナッツも入ってはいる。
「迅、今日はなんの肉なん?」
「今日はな…サガリとテール、ホルモンや!」
「迅はバランス良いじゃん!俺の次に」
「蓮司は叶芽の次にもっと食べないかんたい!」
迅は比較的バランスが良い。
肉屋の息子ならではの特権。
嫌でも毎日肉を見られるほど、肉が詰められている。
「海都は?今日は鮭?」
「いや…鯖だな。甘海ちゃんの料理…また食いたい」
「分かるばい…」
海都はこうだ。
俺と同じ、米五号に鯖三尾は乗せられている。
ちなみに野菜がほぼ入ってないのも共通してる。
「タッパーにぎっしり…よく入るね」
「育ち盛りやけん…食べんとな」
そして、俺。
一リットルのタッパーに白米がぎっしり。
別のタッパーには肉、卵、そして明太子がぎっしり。
さらには、爆弾のおにぎり二つ。
「夏牙だけ異常やろ……放課後まで持つと?」
「持たん」
「燃費悪すぎ……てか、海都もだけど野菜入ってなか!野菜食べんしゃい!」
「迅、お母さんみたい」
「こげん子産んだ覚えなかっ!」
「俺もこんな母ちゃん嫌たい!」
とまあ、いつもはこんなくだらない話で笑い、昼休みを過ごすのだが──。
****
ある人物で話が盛り上がった。
「なぁ……甘海ちゃんって彼氏いると思う?」
蓮司が話を切り出す。
一番大事なことを思い出した。
今世の甘海には恋人はいるのかを─。
「いや、おらん」
俺は即答する。
「へぇ?狙っちゃおうかなぁ…」
「なんね…甘海は俺のもんたい!」
「なんでお前が強く言い切れると?」
危ない危ない。
「まあまあ落ち着け」
海都が間に入る。
すると恐る恐る迅が話を切り出す。
「……前から思っとったんやけど…皆、甘海さんの事、好きやろ?」
その言葉に、俺達は言葉を失った。
「…………」
沈黙が続き、白飯だけが減っていく。
「ぼ、僕も甘海ちゃんのことが好き…でも」
「でも?」
「……夏牙には幸せになって欲しい」
「は?」
叶芽がボソッと切り出す。
あとのメンバーも、話を切り出す。
「実はな…甘海さんを幸せに出来るんは夏牙だけやと思っとって…でも好きな気持ちは変わらん」
「蓮司…」
「お、俺だって甘海ちゃんが好きだ!でもよ…お前には叶わんよ…」
「海都…」
蓮司も海都も、甘海が好きらしい。恋愛的に。
「もちろん俺も好き……でも、お前のあの甘海ちゃんに対する想いを知っちまったら、勝てっこないっちゃけん」
「迅…」
「それにな…幼稚園の初恋、あれ嘘やろ?」
迅も。
今世の俺の初恋は幼稚園だと思われてたのに、分かってたらしい。
「………バレたか」
「何年幼馴染やっとると思うと。夏牙…甘海ちゃんを幸せにな。全員好きな気持ちは変わらん。俺達は夏牙を応援するったい!」
迅が俺の肩を叩く。
全員の甘海への想いは変わらない。
でも、四人は今世の俺の恋を応援すると言った。
「一足遅かったら、去年みたいに大喧嘩するとこやったな」
「だね…僕達、夏牙の恋を応援するから」
「お前ら……」
また一つ。
言いにくいことを打ち明け、仲は更に深まった気がした。
****
「よし、放課後ファミレスや!」
「夏牙行こばい」
「博多駅前のとこで良かとね?」
「うん…海都も僕も博多駅だからね…」
放課後。
俺達は博多駅前のファミレスに来た。
席に座り、ドリンクバーで飲み物を調達する。
「おお!めっちゃ空いとる!」
「いやぁ…放課後はコーラに限るばい」
「なぁ…俺はメロンソーダ。叶芽は?」
「僕はジンジャーエール。夏牙は?」
「俺はコーヒーたい」
いつもはフォンタを飲む俺だが、何故かコーヒーを選んでしまった。
よく来るファミレスは常に混んでるため、今日は博多駅前のところにしたのだ。
「それで…甘海ちゃん可愛くね?」
ひと息ついて、海都が切り出す。
「うんうん!生まれつきがあの美少女……まつ毛長いし綺麗な二重幅…小さい鼻に白い肌、何よりミルク色の髪!」
「お前…マジマジと顔見てたと?たしかに…福岡で一番可愛か子たい」
甘海の話だった。
甘海はどの時代でも綺麗で、常に男の人が周りにいた。
だから甘海とは常に二人で行動してた。
俺のだと分かるように。
「あの髪色とあの穏やかで優し過ぎる性格…あれはもうママなんよ!」
「分かる…聖母だよね…癒される…」
今世の甘海は、俺より歳上。
しかもあのミルク色の髪色に、穏やかで優しい性格。
聖母と言われると、非常に納得する。
「しかもさ……デカいよな。何がとは言わんけど」
「あぁ…シャツのボタンもはち切れて…柔らかそうだよね…」
「あぁ。実は俺…少し当たったんやけど、柔らかかった…」
甘海が超絶美少女なのは、もはや常識だ。
しかし、四人が着目してたのはそこではなかった。
「ずるっ!甘海ちゃん…小さくて細いのに、推定何カップなんやろ…」
「ううん…しかもさ…小さく見せるやつでしょ?」
「お前ら…なんでそげん話で盛り上がっとると?」
フレンチで見た、甘海の胸元だった。
いくら何千万回もの人生を甘海と共にしたとはいえ、
今世では余計気になってしまう。
「そりゃ…俺達思春期やけん」
「便利な言葉やな…」
「夏牙も興味あるくせに…」
男子高校生だから─思春期だからだろうか。
下ネタで盛り上がるのも仕方ないと思うのだが、甘海でそんなことを考えたらキリがなくなってしまう。
「甘海…」
その名前は、何千万回もの人生で、愛を育んだ女のそれだった。
甘海は、思春期男子にとって危険な存在だった。
思春期ならでは語りたい内容も、俺達の心も、甘海でいっぱいだった。
「ふぅ…沢山語ったねぇ…」
「だな。明日は店の手伝いあるから…週末遊ぼうぜ」
「おう!」
「じゃ、皆また明日な!」
その日を境に、胸の奥は安心感が溢れていた。
……To be continued
第四話を読んでいただきありがとうございます。
次回、甘海が夏牙の家に…。
それではまた。




