前世の嫁が家に来ました
数日後。
家で母は夕飯を作り、父はテレビを見ていた。
『でさ…父ちゃんがまた今度BBQしようと…』
「おー!それは最高や!霜降りあるん?」
『当たり前たい!しかも佐賀牛のやつ…俺の好きなハラミもあるたい!』
俺は迅と電話していた。
迅とは幼稚園の頃からお互い家を行き来して、電話もゲームもよくする。
よく学校でもクラスは同じなことが多かった。
いつもの飯。
いつもの家族。
だが、それらはある人物によって変えられた。
ピンポーン。
「はーい」
玄関からインターホンの音が鳴り、母が開ける。
「はー………え?」
「初めまして…近くに引っ越ししてきた杭幕甘海と申します…。あの…夏牙君のお宅は、こちらでしょうか?」
母親が、まさかの人物に出会ってしまった。
「ど、なんね!こんな可愛か子!な、夏牙の…な、なんね!」
「ええと…お友達です。方向音痴で…迅君に案内してもらったんです」
「迅まで………あんたー!」
母の騒ぎっぷりに、リビングでテレビを見ていた父も驚いて玄関へ向かう。
「……さっきから騒ぎ過ぎたい。どげんしたと?」
「あんた……な、夏牙の…!」
「初めまして…」
「可愛かねっ!な、夏牙…なんでこん子ば早う紹介せんかったと!」
父親も彼女を見て驚いた。
「何の用ね?」
「あの…前夏牙君にパーカーお借りしてたので返しに来たついでに…ご飯作り過ぎたのでお裾分けを…あ、私…杭幕甘海と申します」
「そうだったとね…俺は夏牙の父ちゃんたい。熊本出身だけん。熊本弁が出るばってん気にせんでね」
「よろしくお願いします。夏牙君も熊本弁出てますよね」
「そりゃうちらのバカ息子やけんね」
その彼女はリビングに座った。
「夏牙、ちょっと来んしゃいっ!」
俺は、母親に呼ばれ、下の階に降りた。
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「なんね…今いいところだったのに…」
「いいところじゃなか!甘海ちゃん来とるよ」
下の階に降りると、甘海がリビングにいた。
甘海の服は今日も綺麗になのに。
俺はTシャツとスウェット。
「あ、甘海……」
「夏牙君…パーカーありがとう。返しに来たの」
甘海がこちらに微笑む。
顔が熱くなるのが分かる。
「甘海ちゃんは良か子ばい」
母が熊本弁になる。
「ありがとうございます」
「うんうん…うちのバカ息子とは大違いたい」
「母ちゃん!気が早か!」
甘海がくすくす笑う。
「ふふっ」
「俺の扱い雑!」
父親も笑う。
「もう甘海ちゃん、うちの娘みたいなもんたい」
「父ちゃんも気が早か!」
「お前は黙っとき」
そしてその時。
玄関の奥から音がした。
「ただいまー!」
「おかえり!お客さん来とるよー!」
このタイミングで、俺の姉も帰ってきた。
「へぇ…いらっしゃ………っ!」
リビングに座った甘海を見る。
「……………」
姉も言葉を失う。
甘海が振り返る。
「初めまして。杭幕甘海と申します」
「この子誰ね?」
「隣に引っ越してきた─」
「可愛か子たい!」
「何歳?彼氏いる?好きな食べ物は?」
姉が甘海のところに駆け寄る。
「今年十九歳で彼氏はいないです……桃と紅茶、ほうとうが好きです」
「うわぁ……めっちゃ可愛か…髪艶々…」
「ありがとうございます」
「よか匂い…お肌ばり綺麗…」
「姉ちゃん、舐め回すよう見るんじゃなか!」
姉が甘海に興味津々で、甘海を全体的に見る。
「あはは…ありがとうございます」
「甘海ちゃんって呼んでよか?お姉ちゃんと呼んでよかけん!」
「はい」
「じゃあ…キスしてよか?」
この姉がおかしいのか、甘海が超絶美少女だからか。
分からなくなっていた。
「姉ちゃん!キスはあかん!俺のもんたい!」
「まぁ…あんたら何ば言いよっと!甘海ちゃんは嫁ばなるったい!」
「母ちゃんまで何言っとーと!」
「いやぁ困っとったんよ…こんバカ息子ほんと食うけん…嫁選びに困っとったい」
「父ちゃんまで!」
母も父も。
俺よりも、甘海を気に入ってる。
「中々こげな子現れんよ…夏牙、頑張りんしゃい」
父に背中を叩かれる。
「うん…」
改めて決めた。
絶対、今世の甘海を幸せにしたいと─。
……To be continued
第五話を読んでいただき、ありがとうございます。
次回から、甘海の中に眠る人格を描きます。
天然美人女子大生に振り回される、九州男児高校生五人の転生ラブコメディが始まります。
それではまた次回─。




