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何万回目の初恋  作者: 檻 依舞 (おりーぶ)


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4/6

スーツの破壊力


甘海から飯に誘われて、数分後。


「甘海さんとデート…」


「デートじゃなかっ!飯たい」


「どっちでもよかろうもん」


約束まで時間があり、四人はソワソワする。


蓮司はヘアアイロンとワックスを出してる。


叶芽は普段使わないハンドクリームを塗ってる。


海都は歯磨きをしてる。


迅は携帯で、女の子との話し方を調べている。


「皆どしたと?らしくなか…」


「叶芽ってハンドクリーム持ってたんや…」


「れ、蓮司だって髪整えてるじゃん!」


「てか夏牙…俺に内緒で甘海さんと連絡先交換しとったとは…」


「おい蓮司…追い香水はやめ…臭っ!」


傍から見たら、カオス状態だろう。


何千万回も結婚してるため、甘海のことはよくよく知っている。


あと、蓮司がいつもより香水臭い。


「甘海ちゃん……ワンピース姿なんだろうなぁ」


「だと嬉しいよねぇ…甘海さん可愛いもん」


「あぁ。甘海は清楚が似合うけん」


そう思っていたのだが、現実は厳しかった。


この日の甘海の服装は、男子高校生にとって危険だった。


****


約束の時間になり、俺達は身なりを整え、彼女を待っていた。


「甘海さん…遅いね…」


「まさか……」


時間になっても甘海は来ず、まさかと思った時─。


甘海は来た。


「はぁ…はぁ……ごめんなさい…迷ってしまったわ」


「甘海…焦らんでよか!」


「急遽なのに…ありがとう。ふふっ」


「「「「「っ」」」」」


この日の甘海は、スーツ姿だった。


しかも、パンツスタイルのスーツ。


パンツスタイルでも凄く似合っていた。


「時間も近付いてるし、そろそろ行きましょう」


この時、俺達は甘海の姿に理性が揺らぐことを知らなかった。


店に入り、席に座ろうとする。


だが、ここで問題発生。


「俺が甘海さんの隣が良か!」


「いや俺たい!」


「僕!」


「俺たい!」


「俺や!」


「………夏牙君、隣いいかしら?」


「「「「っ」」」」


五人で、甘海の隣を独占する争いが始まった。


でも甘海は俺を隣に座るよう促し、次第に四人も座った。


「よろしければ、ジャケットお預かりいたします」


「ありがとうございます」


ここは、博多駅付近のフレンチレストラン。


サービスの方が甘海のジャケットを預かろうとするも、これがいけなかった。


甘海がジャケットを脱ぐと、豊満な二つの膨らみが強調されてしまった。


その小柄な身には釣り合わないぐらい大きく、俺達の目線はそこに向かっていた。


「(え……デカい…)」


「(柔らかそう…)」


「(釣り合わんデカい乳房たい……ごくっ)」


「皆さん……?」


そして何より、甘海が無自覚なことで余計に目のやり場に困った。


「こちら、前菜でございます」


「…あ、ここ僕の父さんの知り合いのお店だ…」


「そういえば、俺の父ちゃんもここに肉卸しとる」


「俺も貝や海老、魚もここに卸しとるたい」


前菜は相変わらず美味い。


「美味しいわね…皆と食べるからかしら」


「「「「「(その発言…ずるいっ!)」」」」」


甘海が、無自覚な発言もする。


俺達の心は、甘海を見る度に高鳴ってしまう。


「お手洗行くわね」


「お、俺も……」


「僕も…」


甘海が席を立つ。


だが、甘海が背を向けるとあるところに目線が行く。


「………良か尻…」


蓮司が思わず言葉を零す。


気まずくなったのか、叶芽も俺も手洗いに向かう。


****


「はぁ……甘海、無防備たい…」


「甘海さんって……スタイルも抜群なんだね」


「叶芽、お前そういう趣味あったと?」


「そりゃ思春期だし…。夏牙だってじっと見てたじゃん」


手洗いで、叶芽と二人で話す。


普段僕っ子で大人しい叶芽に、思春期な一面もあったとは思いもしなかった。


「まぁ…そりゃあ、俺…甘海と何千万回と人生共にしとったけん」


「何千万回……じゃあ…甘海さんと夏牙は転生したってこと?」


「そうなるたい……。名前も姿も違ったけど色んな甘海がおった…」


そう。


俺はまだ四人に、何千万回もの人生を打ち明けていなかった。


それらの人生には、色んな甘海がいた。


砂漠の踊り子、氷河期のシングルマザー。


女騎士やシスター。


妖怪や戦火の看護師も。


とにかく、色んな甘海と人生を送ってきた。


「この話…僕以外にした?」


「まぁ…迅には内緒にしとるたい。叶芽以外話はしてなか」


叶芽に、この事を話す。


でも、いつか迅、蓮司、海都に話さないといけない。


「そっか…迅は知ってそうだけど…」


「まぁ…とにかく、話すと長くなるけん。今度五人で話すばい」


「どうして…?」


「俺が今世で生きるための…ケジメやけん」


俺が今世で生きるための、ケジメとして。


「そっか。あ、海都からLINE…魚料理来たって」


俺達は手洗いから戻った。


****


「美味しいわね…このお魚好きだわ…マスタードの効いたソース…新しいわね…」


「これは真鯛たい。身がふっくらして美味か…」


「甘海ちゃん、この髪…生まれつき?」


席に戻ると、蓮司と迅、海都が甘海と話していた。


しかも、楽しそうにしている。


「あらお二人さん。魚料理来たわよ」


「美味しい…僕これ好きだ」


「美味か……」


甘海が隣にいる。


隣とはいえ、近過ぎる。


前世で何度も彼女と結婚してたのに。


今世では難しいと分かる。


「夏牙君、口にソースついてるわ」


そう言われ、ソースを拭われる。


顔が近く、ドキッとする。


「夏牙…耳真っ赤やん」


「甘海さんにデレデレやん」


「うるさか…」


「うふふっ…可愛い」


極度な方向音痴な甘海だが、まさか恋愛でも方向音痴だったとは。


目のやり場に困り、目線を下げる。


だが、一つのことに気付いた。


「…………」


「夏牙君?」


甘海のシャツがパツパツなことに。


胸元がはち切れそうだった。


「なんか、胸がキツいわねぇ…太ったのかしら?」


「あ、甘海ちゃん…」


「甘海さん……」


そして、見ていけないものを見てしまった。


「きゃっ」


胸元のボタンが弾け飛び、胸元と下着を見てしまった。


「「「「「「…………」」」」」」


「……まさかの黒…」


「谷が……」


それは予想以上に豊満だった。


その光景には、思春期男子には危険だった。


次にメインの肉料理があるというのに。


「甘海、これ着とき」


「ありがとう…」


俺はパーカーを脱ぎ、甘海に着せる。


俺のサイズが大きいから、甘海が切ると、膝上まで隠れるようになった。


「夏牙君の服…大きいわね」


「百九十三センチあるけんね…」


「夏牙…やってること彼氏なんよ」


ダボダボで、萌え袖にもなっている。


「あまりにも似合っててる…可愛い」


「皆、そろそろメイン来るで。鴨と牛のローストやって」


甘海のその姿にドキドキしてる空気を区切るように、迅がメインのことを話す。


「まぁ!男の子だからお肉好きでしょ?」


「もちろんたい!鴨、めっちゃ美味かけん…」


「お前、普段は魚派やろ」


しばらくしてメインが来て、最後のデザートが来た。


「ミルフィーユ…綺麗ね」


「ミルフィーユは僕のお店でも人気だよ。今だと苺のミルフィーユが人気なの」


「叶芽君のお店…行ってみたいわ」


苺のミルフィーユが運ばれた。


カスタードクリームに苺、サクサクのパイ生地。


周りにはピスタチオと粉糖があしらわれ、アイスも盛られていた。


「美味しいわ…」


「このパティシ…カスタードクリームはコアントローが効いてる…」


「甘海ちゃん…苺、似合う…」


ミルフィーユももちろん美味しかった。


美味しいものを食べて、頬が緩む甘海。


何千万回もの人生では、現代みたいに十分に食べれなかった時代の方が多かった。


だから今世では、お腹いっぱい食べさせたいと思った。




……To be continued

第四話を読んでいただきありがとうございます。


今回は甘海の入学式後のご飯のシーンを書きました。

次回は、夏牙達の学校生活を描きます。


それではまた。

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