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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
8章
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8-8.ヨガの敗北

前回あらすじ:ヨガ君、自己評価低すぎます。

「キューさん、お父様の所へ遊びに行こうと思うのだけど」


「ルカ聖女、いつ呼び出されるか判らないのです。

 王都を離れるわけにはいきません」


 最近1日1回はこのやり取りがある、聖女はすっかり飽きている。


「と言うものの、王と謁見の機会を得るのはいつになるのか」


 オード議長も、先が読めないので落ち着かないでる。

 アルテミラル国に来たが、王に会える見込みがまるでない。

 ただ待たされるだけだ。


 幸いなのは2人共国賓なので、お誘いがあり屋敷に閉じこもっているわけではない。

 ただしこの時期、自分の陣営に取り込もうとする者もいるので、気をつけないといけない。

 それでも屋敷にずーっといるよりはマシだ、気晴らしになる。


「ルカ、今日家に向かうなんて無理。


 3日後に、公爵様に呼ばれているだから。

 男爵の家に遊びに行くので、公爵とのお約束を反故にすると言ったら、私の家が無くなってしまうわ」


 キューさんが言ったように、3日後公爵家で夕方からのパーティに出席する。

 聖女が、ここに居たくない理由でもある。


 これには俺達にも声がかかった。

 俺達に縁のある『剣』の公爵からのお誘いだ、行かないわけにはいかない。

 しかも、庭での立食スタイルで、堅苦しくならないよう気を使っていただいている。


 目元を仮面で隠すが、俺達冒険者は絶対にバレるので意味がない。

 公爵も、身なりで一目でわかるんだろうな。


「気が重〜い〜」


 キューさんの言うとおりだ。

 上級貴族のパーティなど、悪い事が起きそうで怖い。

 この国の今の情勢を考えると、何か良くない事が待っていそうだ。


 普段、何か有る場合にはビチュレイリワが警告してくれるが、今は何故かだんまりを決めている。


 危険がある場合は、教えてくれるはずだと思っていたが。

 俺達の命が危なくなる状況って、どんな状況だ。


 いろいろな事を想像し、悶々とした数日を過ごした。

 そして何も出来ずに、約束の日がきた。


 広い公爵家の敷地に有る、庭の1つが会場となっていた。

 俺の感覚では、庭ではなく森だ。


 日が傾いてから始まったので、すぐに薄暗くなった。

 灯りは十分にあるが、少し外れれば見えづらくなる。

 密談にはいい環境だ。


 俺達が冒険者だと解るのだろう、気にしているようだが誰も近寄ってこない。

 暇なので、教会の2人の護衛みたいな事をしていた。


 そこへ、給仕の一人が近づいてきて


「主からの、伝言でございます。

 良いワインがありますので、一緒に飲みませんか。

 向こうの東屋においでくださいませ」


 公爵自身は、この場にいない。

 先程から数人の貴族が、この給仕に呼ばれ向こうの建物に入ってゆく。

 誰と会うかは、公爵が選択するという事だ。


「いってらっしゃい。

 頑張ってね」


 自分が呼ばれず安心している、聖女の本音が漏れた。


「多分、次は教会関係者ですよ。

 俺達は事前調査でしょ」


 と返すと、嫌な顔する。

 本当に嫌なんだな。


「他の人を、気にしてる余裕なんて無いわよ」


 キューさんはすでにガチガチ。

 魔境探索からの凱旋時に会っているが、それは式場にいたにすぎない。

 男爵家の娘が公爵に会うなど、普通はありえない。


 何を考えているのか、リーシェさんの顔も厳しい。

 絶対に守るから、そんな顔しないで。


「何を緊張している。

 いい酒があると言うのだ、ご馳走になろう」


 逆にタビさんは、気楽だ。

 そもそも、タビさんが緊張するなど想像出来ない。


「私も、公爵が何かするとは思えませんが。

 尤も、ここには母上の匂いが多く残って、良い印象を持っているからですが」


 ケイトさんの母親は、アルテミラルの建国に関わってる。

 王家や上級貴族の中には、彼女の血も混じっている。

 それを匂いと言っているのか。


 東屋は立派な家だ。

 中は部屋が1つ、壁に覆われて中は見えない。


「私は仮面を付けている、礼は不要だ。

 お互いに礼は不要といたそう」


 中に入り、膝を下ろそうとしたら公爵に言われた。


 直答を許すという事なのだろう、周りに人が少ない。

 公爵とご婦人の他は、家宰と思われる年配の男性のみ。

 後は、必要に応じて給仕が出入りしているだけだ。

 ここにいるのは全員が、公爵が信用している者だ。


 全員のグラスにワインが注がれるのを待って、公爵が


銀鱗翼竜(ケフロイヤ)様のご帰還、嬉しく思います。

 国の民に替り、御礼申し上げます」


 ケイトさんが、来たことに礼を言い始めた。

 そっか、ケイトさんは公爵にとっては建国時に関わったドラゴンだ。


「今、お戻りになられたと言うことは、この国難を哀れに思われての事。

 アルテミラル王国の混乱をおさめるため、女王になられる決意をされたと思ってもよいでしょうか。

 その仮のお姿であれば、何の問題も...」


「待ってください、公爵」


 彼女に言葉を返すすきを与えず、話続ける公爵に、ケイトさんが割って入った。


「いくつか、誤解があるようです」


「誤解ですか」


「まず1つは、この姿は仮の物ではありません。

 公爵がお知りになる姿も本物ならば、この姿も本物なのです」


「ケイト様と、お名乗りになられていますが」


「母から譲り受けました」


「母?」


守護竜(ガーディアンドラゴン)も生き物、世代交代すると言うことです」


「な、な!」


 公爵の驚きは続く。


「英雄王の王妃ケイト様が、銀鱗翼竜(ケフロイヤ)の化身だったと言う噂はありました。

 女王として戻るという物も、これは事実なのでしょうか」


「王妃が、銀鱗翼竜(ケフロイヤ)だったのは本当です。

 ですが化身ではなく、私と同じように人としての本当の姿でした。


 ですのでアルテミラル王家には、銀鱗翼竜(ケフロイヤ)の血も入っています。

 公爵ご自身からも、それは感じられます」


 銀鱗翼竜(ケフロイヤ)の言葉で、公爵は自分の胸に手を当てた。


「私にも、守護竜(ガーディアンドラゴン)の血が」


「そして私の父は、英雄王ミハイロファン」


 その一言で、俺達以外の全員が止まった。


「私達守護竜(ガーディアンドラゴン)は、長く生きますので」


 その言い訳は、彼らには何の意味もない。


「そして私は、王女になるために来たのではありません。

 守護竜(ガーディアンドラゴン)としての使命、『魔王を倒す』ために来ました。

 ヨガの力になるためです」


 続く言葉はない。


「硬い話は終わったか。

 妾は待ちくたびれた。

 乾杯だ」


 グラスを持ったまま待たされ、タビさんは限界だったようだ。

 すぐに空にして、後ろでボトルを持っていた給仕に見せる。

 慌てた給仕のおかげで、場が和んだ。


 まだ公爵の顔色は優れていないが。


(この下にいる人達は、何をしてるんだ)


 この東屋の地下には空間が有って、そこに数人いる。

 彼らは給仕ではない。

 上との往来はなく、何かをしている、怪しすぎる。


 普段ならビチュレイリワが教えてくれるのだが、今は何故か教えてくれない。

 試しに聞いてみたのだ。


[ここまでくれば、彼らの事を教えてもいいでしょう。

 毒ガスの準備です]


(毒ガス)


[ヨガには影響は出ません。

 リーシェさん、キューさんも私が解毒します。

 そしてケイトさん、タビさんに効くものではありませんので、問題はありません]


(問題あるだろう。

 他にも人はいるんだ)


[全員覚悟の上です]


(公爵も知ってるということか?)


[...]


 ここで、だんまりか。


(公爵になにかあると、俺の計画は潰れてしまう。

 教えろ)


[知っているも何も、公爵の企みです。

 公爵は死を、覚悟しておいでです]


(何故!)


[謝罪のためです。

 ヨガ達を死なせますから]


 何をしたいのか判らない。


[まあ、公爵は迷い出しました。

 ケイトさんの話を聞いたからでしょうね]


 コッチはしばらく大丈夫なのか。

 なら気になっていた、もう一つのほうだ。


(あれ。

 俺を待ってる?)


[多分]


 俺の認識能力が、人々が集まっている反対側に、1人の男性を確認している。

 剣聖だ。


[これは伝えても、問題ないと思いますので言いますが。

 公爵は彼の存在を知りません。

 剣聖個人の判断で動いています]


 色々な思いが、渦巻いてるということだけは判った。


「すいません、少し席を外します。

 すぐ戻って来ますんで」


 とすぐに東屋を出た。

 何か有ったのは判っただろうが、何か聞かれる時間を与えなかった。

 それにピノがいる、俺に何かあればすぐに判ると思っているはずだ。




「お持たせしましたか」


「いや。

 約束していた訳ではないからな」


 剣聖は、俺のロハイラの耳を知っている。

 ここにいれば、俺が気づくと待っていたのだろう。


 ポンと俺の剣を投げてきた。

 公爵家の敷地に入る時、預けた物だ。


「剣を持たぬ者を、切るのは嫌でな」


 剣聖なりの、こだわりか。


「何故と、聞いて教えてくれますか?」


「....」


 剣聖も教えてくれる気はないようだ。


「参る」


 剣聖の声は、ラーディで試合をしていた時のような気軽さだ。


 相変わらず速いし重い。

 ただし、速く重いなら剣聖以外にも思いつく名はある。


 剣聖の剣スジは、彼らと圧倒的に違う。

 全てが嫌らしい。

 一撃が一撃で終わらない。

 次への伏線になっている、避けたつもりが誘導されていて、次の一撃がくる。


 防戦一方。

 反撃のスキも有るように見えるが、誘っている。

 ここは我慢して、守りに徹するのが一番だ。


 お互い、マナをまとわずに打ち合っていた。

 100手ほど過ぎて、一度離れる。

 本当にラーディで剣の教えを、受けていた頃のようだ。


「強くなったな」


 剣聖が、俺を褒める。

 こんな時でなければ、嬉しい一言だ。


 俺を褒めるのは、剣聖にまだまだ余裕が有るから言える事だ。


 剣聖が淡く光りだす、マナをまとい始めた。

 俺も続く。

 これからが本当の勝負だ。


 今までとは、比較にならないほどの攻撃が始まった。

 一撃の速さや重さで言えば、聖騎士の方が上だったかもしれない。

 だが、剣聖の剣は、一撃では止まらない。

 連続的に速い攻撃が続く。


 それは、攻撃を躱した俺が、次にどう動いているか知っているからだ。

 交わす方法が限られているため、彼の意図が判っていても、逃れようがない。

 今俺は、剣聖の手の中にいる。

 守る事を優先、俺の方が速度で少し勝っていたので、何とか躱せているにすぎない。


 ガン!

 首が切られそうな所で防げた。


 俺が防いだ訳ではない。

 ビチュレイリワが、とっさにとってくれた行動だ。

 俺には死んでほしくないと思っていてくれるらしい、安心した。


 2人は一度離れた。


「あれを防ぐか」


 剣聖の切り札だったのか。

 剣が届かない距離があった。


[あれは、マナで刃を伸ばしていましたね]


(俺の目と耳で、判るように出来る)


[可能です]


 ますます躱すのが難しい、防ぎきれなくなってきた。


 有効な攻撃は出来ないと思うが、剣聖が自由に動くのを防ぐ。

 空きのない所でも強引に攻撃を入れ、剣聖の動きを牽制する。


 剣聖は容易に躱せるが、その分次の動きに制約がかかる。

 防戦一方なのは変わらないが、剣先が伸びた剣聖の攻撃に耐えれるようになってきた。


 そう思った時、右で受け止めた剣が、反対側から飛んでくる。

 何とか左腕が間に合った。

 マナで硬化してあったので、左腕は無事だ。


「二翼も防ぐか」


 いい加減にしろ、一体いくつ切り札を持っているんだ!


 それに、マナで速度を上げるのはもう無理だ。


[身体制御は、私のほうで行います。

 ヨガは、硬化に意識を向けてください]


 ビチュレイリワに任せる。


「ふぅ〜」


 剣聖が、あからさまに構えを正した。

 次に大きなのがくる。


 ガッ!


「今のは、もしかして四翼ですか」


「そうだ。

 初めて使ったんだがな」


 余裕だ。


[今のが限界です]


(六翼が有るとして考えよう。

 もしかしたら八翼も有るかもしれない)


[六翼でも、防ぎきれません]


(次で決めるしかないか)


 剣聖はゆっくりと攻撃を始めた。

 徐々に速度と重さを上げてゆく。


 四翼がきたが、何とか防げた。

 六翼で無くて助かったと思ったら、左腿に剣が突き刺さる。


 痛みに反応が遅れた、そこへ四翼。

 三翼までは防げたが、四撃目が俺の首筋に当たる。


 そのまま刃が食い込み、首を切り落とす。

 頭がポトリと落ちる。



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