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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
8章
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8-7.タビさんの悪巧み

前回あらすじ:議員さんも色々考えてます

「ヨガ殿、ご無事で何よりです」


「無事じゃないよ」


 ボロボロだ。

 人々に、揉みくちゃにされてしまったのだ。



 上院が、魔王討伐のためビチュレイリワが力を振るう事を認めた。

 正式文書の作成やら式典などで、俺達が議会の外に出れたのは3日後。


 その間に、国が魔王討伐に協力するという、話は広まっていた。

 ピノの語った内容が知れ渡っていない事を考えると、意図的に漏らされたのだと思う。

 多少特定の議員に都合よく語られているが、問題はそこでは無い。


 街の住人には、魔王討伐の協力要請は、冒険者が教会に願い出ていたものだと知れ渡っていた。

 ある詩によってだ。

 その冒険者が街にいると知り、ジェイルズの街は爆発的な騒ぎになっていた。

 群衆に囲まれた。


「リーシェさんは大丈夫だったのですか。

 変なとこさわられてない?」


 その詩を歌い、人々を焚き付けていた人達とも再会もしている。

 マラガちゃんは、ボロボロの俺ではなく、恩人のリーシェさんに聞いている。


「ヨガが囮になってくれたからね、私達は大丈夫よ」


 涼しい笑顔で答えているが。


「あれは俺が囮になったんじゃなくて、みんなが俺を騙して置いていったでしょ」


 議会前に集まった人の数に驚き、どう抜けようか思案を始めた時、タビさんが。


「ヨガは、強引に押しのけて進む事はすまい。


 しかし、これでは街から出るのは無理だ。

 一旦、宿屋に部屋をとって騒ぎが落ち着くのを待とう」


 と言い出した。


「最上級の宿屋なら、人も勝手には入ってこれないだろう。

 ヨガなら屋根を渡って移動できる、頼む」


 と俺を宿屋に向かわせ、自分達はそのスキに逃げたのだ。

 今考えれば、俺がどこに向かうか、大勢の前で聞こえるようにわざと言った。

 人々を、宿屋周辺に向かわせるために。


 最上級の宿屋には、勝手に入る人はいないが、上客はいる。

 初めて使う俺より融通が効く。

 人が押し寄せた。

 パーティーに入りたい、支援を行いたい、恋人愛人の押し売り、その他色んな事を言いに人が来る。


 宿屋の周りは群衆があつまり、身動きできなくなってしまった。

 もう屋根を通る事もできなくなっていた。

 頼まなくとも、当たり前のように、大量の酒や料理が並ぶ。

 熱狂的な祭りの中に取り残されていた。


 出来る男ヒコシルさんに、救ってもらえなければ、まだあの中だっただろう。


 みんなには、多少の恨みがある。

 それが顔に出ていた


「なにヨガ、不満なの。

 この美しい肢体が、どさくさに何人もの見知らぬ男たちに、良いように触られたほうが良かったとでも言うの」


 キューさんがその胸を強調する。


 !?

 押し付けるな。


「そんな事は思ってないです」


 俺でさえ、遠慮の無くなった女性達に触られまくったのだ。

 キューさんが、言うのはわかる。


「自分の女を守るのは、男の本能だ。

 その本能に、妾も入っているのか?」


 また、からかって来る。


「自分の女うんぬんは置いておいて、

 タビさんが、色んな人に揉みくちゃにされるのは、いやだよ」


「少女から、後家までか。

 ヨガは何でも良いのか。

 もしかして、私達もそのハーレムに入れようと思ってんのか」


 マラガちゃん言い方!

 だれだ、マラガちゃんにこんな事を教えたのは。

 後ろに4人の大人がいる。


 元騎士のグメムゼガさんは違う。

 歌姫は、その辺の下世話な話は苦手な気がする。

 すると美人2のどちらか。


 そうしていると、小さく手を上げたラビダさんが


「入れるのなら、私も入りたいです」


 彼女が犯人か。


「このパーティが、ハーレムパーティで無いのはご存知ですよね。

 それに冒険者は危険なんです。


 俺は自分が強い方だとは思いますが、それでも絶対に守れるわけでは無いです。

 誰かと一緒になるのは、冒険者を辞めた後と考えているんですから」


「「何ですって」」


 数人が声を上げた。

 初めて言ったかも。


 何故ピノまで驚いているんだ、お前とは絶対ないだろう。


「そんな事考えてたんですか、ヨガの考えは全部知っているつもりでした」


 そっちか。


(頭ん中はいつも覗いてただろう)


[私達が覗いているのは、言語として整理されたものだけです。

 想いまでは追跡してません]


「みんな聞いたな、結婚は冒険者を辞めたらだそうだ」


 とタビさんが、ニヤニヤしながら俺をからかう。

 まだまだ先の事だ。



 話を戻して、今後の事を考えると


「すぐに街を出るのは難しいですね。

 まして隣のアルテミラルへ行くなど、難しいでしょうね。

 誰にも見つからずに行くのは無理です」


 ヒコシルさんが言うのならそうなのだろう。


「みなさんが冷静になるのを、待ったほうが得策でしょう」


 教会の2人組は、先行する事になった。

 基本この騒ぎに彼らは関係ない、無事に隣国に向かえた。


 俺を置いて行く案も出たが、パーティメンバーはマークされていた。

 彼女達は、見つかると騒ぎになった。


 同じ場所にも長くいれないので、何度か隠れ家を変えた。

 ジェイルズ街を抜け、ゆっくりと国境に移動してゆく。


 なんでこんな事になっているんだ。

 魔王がいなくなるのが嬉しいのは解る。

 でもそれが理由じゃない、それが理由なら教会の2人も同じく先行出来るはずがない。


「勇者や英雄とはそんなものだ、人々が希望して作り上げている。


 人々が満ち足りていれば、彼らのような者は生まれない。

 希望が必要だからこそ、人々が求めるのだからな」


 いつものように酒を飲んでいる時に、タビさんにぼやくと、当たり前だという感じで教えてくれた。


「その位置に、ヨガが見事にハマった」

 また、そうなるように歌ってもらっているのだからな」


 タビさんの、策略の結果だったか。

 俺はここまでになるとは考えていなかった、マナが使えるようになればいいという程度。

 長く生きているだけの事はある、悪知恵が豊富だ。


 そのタビさん、次の暗躍を始めている。

 何人かで密かに話し合っている。

 こんな時いつもいるピノが、珍しく参加していない。


「今回のタビさんの話には、乗れません。

 過干渉になりますからね」


 理解出来ない理由だ。


「何が?」


「ヨガに説明するのも、干渉になります。

 諦めてください、タビさんの思うようにしかなりません」


 そう言われては、納得出来ないが、どうしようもない。

 それと、リーシェさんに気づかれないようにしているのはいつもだが、今回キューさんが参加している。

 ピノが教えてくれないので、キューさんに聞いた。


「アルテミラルに行くための、計画してるに決まってるでしょう」


 その顔は、絶対違う。

 今、思いついた嘘だ。


「何かいい方法あった」


 思いつきに、ワザとのってみる。


「飛んでったらいいんじゃない」


「飛ぶ」


銀鱗翼竜(ケフロイヤ)の背に乗ればいいのよ」


 は!

 銀鱗翼竜(ケフロイヤ)に乗る。


 確かに本来の姿になれるようにはなっているし、その背に5人がのるのも可能だ。

 だが、守護竜(ガーディアンドラゴン)だぞ、いいのか。


「いいよ。

 今まで、誰も載せたことが無いわけでもないし。

 守護竜(ガーディアンドラゴン)には、多くの人が乗っているぞ」


 本人は気楽に言ってくれる。


 空を飛べば、一気にアルテミラルの王都ペデリンへ行ける。

 魅力的な提案だが、何か見落としている気がする。


「アルテミラルは銀鱗翼竜(ケフロイヤ)の相棒が造った国よ。

 その王都に銀鱗翼竜(ケフロイヤ)で乗り込んだら、どうなると思う」


 とリーシェさん。

 危ない、アルテミラルでも大騒ぎになってしまうところだった。


「勇者を自称するヨガに、相応しいと思うが」


 タビさんは引かない。

 と言うか、それ狙ってたのか。


「王都に直接乗り込むのはやめよう。

 ジュア・ニフスを出れないのが問題なのだから、国境付近までにする」


 それに、今アルテミラルは敏感になっている。

 騒ぎを起こすなど絶対に駄目だ。


 アルテミラルが教会に良い返事をくれないのは、何か問題が有っての事ではない。

 魔王軍が関与している兆候は、まったくない。


 単純に、それどころではないのだ。

 だから余計に厄介だ。


 王位継承の第一順位の王太子が、最近死んだ。

 しかも暗殺を疑える状況でだ。


 ビチュレイリワは、暗殺の確率は低いと言っている。

 ただし、王子を一日中見張っていたわけで、絶対ではない。


 現アルテミラル国王には子が少ない。

 繰り上がって、第一順位になれる王子がいないのだ。

 姉が2人いたが婚姻し王家を離れている、戻るのは無理がある。


 そもそも、アルテミラルは女王はいたことがない。

 女王は、銀鱗翼竜(ケフロイヤ)が認めた者しかなれない。

 建国時の決まりだ。


 先代銀鱗翼竜(ケフロイヤ)がその地位に相応しいと思っていた、建国の英雄王の思いのためだ。

 銀鱗翼竜(ケフロイヤ)は長寿だ、戻ってくると考えていたのかも知れない。


 王が4人も妻を持てるのも、子を多く作り王家を維持させるため。

 だが現アルテミラル王の王妃は、実質2人しかいない。

 本当は3人いるのだが、1人は離宮に入り王とは会っていない。

 王に子が少ない理由にもなっている。


 王子がいなければ、王室外から子を養子とする道しか残されていない。

 まずは2人の王女の嫁ぎ先だが、子爵家と男爵家だ。

 その子が王になるのは無理がある。


 これには訳がある、王から公爵家の1つが不興を買い、嫁ぎ先候補から外れていた。

 それを知っているもう1つの公爵家が、公平を保つため自ら引いた。

 両公爵家が引いた話を、他の貴族が進められるわけがない。


 結果、2人の王女は自分の望む相手の元にいけたのだ。

 千の槍を選んだ事で、2人の人気は高い。


 順当であれば公爵家から選ばれるはずだが、今両家には丁度良い男子がいない。


 かつて王家の血が入っている貴族たちが、騒がしい。


 そんなところに、銀鱗翼竜(ケフロイヤ)で乗り込んだりしたら、どうなっていたか。

 国民が騒ぎ出すのはまだいい、下手をするとアルテミラルの内政に巻き込まれてしまう。


 コッチにはリーシェさんもいる、気をつけないとな。

 そう言えば、リーシェさんの秘密をしるのは、俺とビチュレイリワだけか。

 無論ピノもだが、何も言っていないがケイトさんも気づいているはずだ。


「目立たないように夜に出発して、国境前で降りる。

 できるだけ、アルテミラルを刺激しない。

 この方針で、良いね」


「ちぇ!」


 何故キューさんが悔しがる。


「大丈夫だ、キュー。

 妾の計画に問題はない」


 やっぱり何か企んでるよな。


(タビさん何やっているの?)


[今回、ヨガに加担しないと説明しましたが]


 これもそうなるのか。

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