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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
8章
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8-6.ジュア・ニフス最高機関・上院

前回のあらすじ:少年の仇討ち、無事完了。


 元聖騎士は、スタリスラスと言う名だった。

 聖騎士は1人しかいない、彼は名前を必要としていなかったのだ。

 名を問われても聖騎士とだけ名乗っていた。


 それは王に対してでもあり、無礼ではあったが、それを咎められる者はいなかった。

 以前ブンヘズ王が、『たかが国王』になるため聖騎士を辞めるなど、信じられないと言っていた。

 彼の中では、王より聖騎士が上なのだろう。


 今は聖騎士ではない。

 ハイリーセンに負けた後、ジュア・ニフスの兵により、首都ジェイルズに連れて来られた。

 過去に彼が行った悪行で、捕まったのだ。

 ジュア・ニフスは、聖騎士が力を失った途端に手のひら返しした。


 ジェイルズに残っていたデ・リヒも捕まっていた。

 抵抗もせず、静かにしていた。


 魔王軍との繋がりを疑っていたが、彼女は改造を受けていなかった。

 ビチュレイリワが確認している。

 彼女のあの若さは聖騎士が望んだものなのだろう。


「デ・リヒ助けてくれ。

 神が、神が私を...」


 連行されてきた元聖騎士が、彼女を見てすがりつく。

 子供が母親に甘えているようだ。


 それを抱えこんだ時の、彼女の顔を忘れられない。

 その微笑みには、確実に『悪意』が見える。


「何を言っているのですか、神が私達を捨てるはずがないでしょう」


 そう言って微笑む。


「元々、神様などいないのですから」


「え」


 彼女の言葉に、元聖騎士が驚く、俺達もだ。


「いつも思いのまま振る舞えって、言ったじゃないか。

 出来るか、出来ないかは、神が決めると」


「あはははぁぁぁ。

 本当にバカなスタリスラス」


 元聖騎士が固まって動かない。

 何だこれは。


「ノストルリヒ様、聞こえますか。

 貴方のお望みどおり、ご子息は立派な聖騎士になられましたよ。

 ハハハハハァ」


 狂っている。


「ノストルリヒを知ってますか」


 教会の関係者だろう。


「前代の聖騎士様に、その名前が有ったと記憶しています。

 私が教会に入る前の話かと。


 スタリスラス元聖騎士は、ノストルリヒ様の子だったのか」


 その事実をオード議長も知らないのなら、教会内では知られていないだろう。

 元聖騎士が自分の名前を名乗っていなかったのも、それを秘するためか。


 ノストルリヒ聖騎士は、自分の子も聖騎士になって欲しいと望んだ。

 その望みをデ・リヒが受け、スタリスラスを育て、歪めた。


 聖騎士の名は汚れ、名声は地に落ちている。

 それはノストルリヒ聖騎士が、望んだことではないだろう。


 聖騎士ノストルリヒを、デ・リヒは憎んでいた。

 それも異常なほどに。


「何がそんなに楽しいの」


 聖女が怒りを含んだ声で、デ・リヒを問い詰める。

 聞いても仕方が無いことだと思うが、彼女は聞かずにはいれなかったのだ。


 ムッとデ・リヒが聖女を睨む。


「若く美しいおかた。

 貴方のような人には、判らないですよ」


 その返答に今度は、聖女の表情が無くなる。

 怒っているのだ。


 ルカ聖女は少し前まで、全身やけどで美しいと言われる人ではなかった。

 名無しと名乗っていた少女時代は、デ・リヒが言った人生ではない。


「私はね貧しい家に生まれ、捨てられるように教会に入れられた。

 生きるために必死に頑張り、功績が認められ騎士の従者に選ばれた時は嬉しかった。

 仕えたノストルリヒ様は、心から尊敬できる人でしたから。

 私は自分の全てをノストルリヒ様に捧げた」


 やはり、そうか。


「ところが、ノストルリヒ様はあっさりと私を裏切った。

 問い詰める私に、逆に『何故』と。

 自分に与えられたものは、全て当たり前のものと考えていたのよ。


 私の心は私のもの、神の意思など関係はない」


 最後は大声になり、聖女に挑みかかっていた。


「魔王軍とは、いつ接触したのですか」


 とピノが、横から入る。

 これは聞いておかなければならない。


「彼奴等が、何者かなんて私には関係ないわ。

 ただ私のすることを邪魔しなかった。

 便利な道具も貸してくれたしね。

 都合のいい相手だった」


 そうか、彼女の行動に、魔王は関与していない。

 男女の世によく有る愛憎が原因だ。

 もう真実を知る者のいない過去の話、そして同じ事は魔王のいなくなった未来でも起こり得る。



 その重い気分のまま、議会に呼ばれた。

 上院に教会から2人と、俺達のパーティが呼ばれたのだ。


 タビさんケイトさんが、教会の2人よりも上席に座っている。

 パーティリーダーや教会のトップというものは関係ない、商人の国は実質を取るのだ。


「聖騎士の行っていた事を、教会はどうお考えだったのです」


 開議そうそう代表から教会へ、先制の口撃が始まった。

 自分たちの権利を主張し、話を有利に進めるための交渉術だ。

 事前にビチュレイリワから教えられていた。

 何とかという名前もあるそうだが、覚える気がないので忘れた。

 そういう交渉術が有ると、知っているだけでいい。


「申し訳ございません。

 教会の上層部に、魔王軍の配下が紛れていたのです。

 その者たちに、教会のあり方を歪められていました。

 聖騎士の非常識な行動もその1つです」


「それは教会の都合です。

 迷惑を被った我々には関係の無い話です」


「ごもっとも。

 教会として出来る限りの事を、したいと考えております」


 むろん賠償の話も、進めさせていただきます」


 事前に決めていた。

 ここは商人の国、お金が一番の方法だと。


「教会の考えは判りました。

 謝罪の意思が有ることも。

 それで今は十分です

 金の話は、私達としてもしたいとは考えてはおりません」


「あ、ありがとうございます」


 教会は、高い"借り"を作ってしまったな。


「ただし、国民の中にはそれでは済まない者もいます。

 彼らに対しては、丁寧に対応していただきたい」


 あの少年のような者は多いだろうな。


「話を本題に戻しましょう。

 魔王討伐のため、姿なき守護竜(ビチュレイリワ)の力を使用する許可が欲しいと言う話でしたね」


 ジェロイ代表が、今日の本題に話を移してくれた。


「はい」


 問題だった聖騎士はいなくなったのだ、聖女はすぐに許可がもらえると思っている。


「その前に、そこの冒険者に話しをお聞きしたい」


 と俺を指さした。


「ジュア・ニフスは商人の国。

 私達も商人です。

 そして商売の基本は信用」


 代表はそこで一度、間を作り俺達を見渡す。


「私個人としては、ヨガ殿は信用出来ると思っております。


 ましてパーティの中には、我々がどうこう言うべきでないお方が2人、言えぬお方が1人。

 キュー殿も男爵のご息女。

 本来であれば、信用するに何の不足が有りましょう」


 この言い方では彼らは問題と考えているのだ。

 ピノ。

 彼女は突然この世に現れている。

 ジュア・ニフスの調査能力なら、その事に気づいているかもしれない。


「ピノ殿とヨガ殿は、ある日突然この世界に現れています。

 それより昔のお二人を、いくら探してもどこにも見つけられないのです」


 俺もか。


「ある日大人として生まれたと、思うほどです」


 代表、その考えは合っています。


「私達は姿なき守護竜(ビチュレイリワ)を、同じく過去を持たないものと思っています。

 魔王討伐の中核に、過去を持たない者達がいるのです。


 あなた方が何もので、何を考えているのか知らなければなりません」


 そういう事か。

 信用するには十分な人はいる、あと俺達が普通の人であれば問題はなかったのだ。


 しかしどんなに調べても、ある日突然にあらわれたのが2人と1体。

 俺達が何かを企んでいる可能性があると考えているのか。


姿なき守護竜(ビチュレイリワ)というのは、本当に存在するのですか」


「います」


 ここははっきりと答える必要がある。


「我々は、お会いできないのですか」


「出来ません」


「タビ様もですか」


「会った事はないな」


 タビさんが答える。


「それでも存在を疑わないので」


「「ない」」


 タビさんとケイトさんが答えた。

 その声にゆるぎはない。

 この2人に断言されては、それ以上追求できない。


「話す事は出来ますか」


 タビさんが考えて

「妾は、出来ないな」


 ケイトさんも

「私とタビさんは、ビチュレイリワとは直接会話した事はない。

 ヨガとピノを通じて、その言葉を聞いているにすぎない」


 議会の場がざわつく。


 教会の2人も顔を見合わせている。

 霊獣と銀鱗翼竜(ケフロイヤ)が共に言葉を交わした事はないといったのだ。

 その存在に不信が生まれた。


姿なき守護竜(ビチュレイリワ)は本当に守護竜(ガーディアンドラゴン)なのですか」


 代表が核心をつく。


 これに平気で嘘をつけるほど、俺は腐ってはいない。

 本当のことも言えないので、黙るしかない。


「ピノ殿、ヨガ殿、姿なき守護竜(ビチュレイリワ)が、同じ"何か"ではないかと考えているのです。

 違いますか。


 もしそうでもかまいません、本当の事をお話いただきたい」


 ジュア・ニフスとしての最大の譲歩だ。

 これに応えなければ、信用は得られないが、俺の中に答えはない。


「ビチュレイリワが守護竜(ガーディアンドラゴン)だと言うのは、魔王討伐話を進めるための嘘です」


 いきなりピノが語り始めた。


「ビチュレイリワの事を皆さん説明しても、ご理解いただけないでしょう。

 ただ敵ではないといえます。


 私はビチュレイリワの・・・

 そうですね、精霊みたいなものと言ったほうが、皆さんには判りやすいでしょう

 ビチュレイリワとの会話をお望みのならば、私を介して可能です」


 そんな事を言ってもいいのか?


「ですが、私達はあたながたとは常識も善悪の基準もちがいます。

 それをよくご理解してください」


『理解してください』と、何故あえて言われているかを、議員たちが考え始めた。


「ヨガは普通の人です。

 私達は、彼と契約し、彼の想いに応え動いているに過ぎません」


「もっと具体的に教えて欲しい」


 若い議員が思わず割り込んだ。

 他の者が苦い顔をした、代表の会話に割り込むのは規則に反しているのだ。


「ビチュレイリワの力は強大です、それこそ魔王を討ち滅ぼすほどに。


 でも我々は、自分たちの自由に行動しているわけではありません。

 皆さんの思い通りには動かないでしょう。

 私達がヨガに協力はしていますが、ヨガが私達に何かをさせる事はできません。


 業火に近づき過ぎないよう、お願いいたします。

 今言えるのはここまでです」


 ざわざわと小声での会話が広がる。


「嘘は言っていないが、全てを語る気はない、と言うところか。


 何か得体のしれない物が、今はヨガの願いを聞いて、魔王討伐に力を貸している。

 そして、危険だから安易には近づくなという忠告ですか」


「そうです」


「欲を出してもビチュレイリワの力は得られず。

 許可しなければ、魔王討伐されない罪が、責任は我々に生まれる。


 しかし許可するには信用が必要だ。

 ヨガ殿を、信じるかどうかと言う話になるのか」


「私は全てを知って、ヨガに力を貸しているぞ。

 我が一族の宿願のために」


 ケイトさんが、守護竜(ガーディアンドラゴン)として俺を後押しした。


「1つ今まで言っていないこと教えましょう。

『許可』はこの大地に住む人の半数があればよい。

 この国が『許可』くださらなくとも、ビチュレイリワは力を奮えるかもしれません」


「魔王がいなくなった世界で、我が国は討伐に協力しなかったと言われる。

 隨分脅してくれますな。

 この席に座るは皆気骨ある商人、脅しは逆効果ですよ」


 ピノに返す。


「ヨガ殿、最後に1つ。

 貴方は人なのですね」


「俺は母から生まれました。

 父からの愛情は薄く、憎い兄弟もいますが。

 慈しんでくれた姉や、俺を愛してくれた人もいます。


 この世界が好きです、救いたい」


 偽りない俺の気持ちだ。


「魔王には消えてほしい。

 その考えは、ここにいる全ての者が思っている事」


 代表が議長を向き


「私は最初に言ったとおり、ヨガ殿を信じている。

 その彼を信じるかどうかが話を決める事になるのなら、私の腹は決まった。


 ただそれは私の気持ちだ、国民に押し付けたくはない、これは決議すべきものだ。

 議長よろしく頼む」

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