8-4.その後
前回あらすじ:
え、竜騎士もう退場?
あんな雑魚で引っ張る必要ないでしょう。
「私の憧れは、幻想だったのでしょうか」
何も出来ずにいた、隊長がポツリとつぶやいた。
誰かに聞いたつもりもないだろう。
「竜騎士が強かった事は本当ですが、絶対的ではありませんでしたよ。
大陸を旅して来ましたが、竜騎士より強い人は数十人もいました」
とリーシェさんがあえて答えた。
「それならば何故、世界最強などと。
あの剣聖にも勝っているんですよ」
「それこそ、ドラゴンを駆っていたからです。
魔王の敵である竜騎士を、人が倒すわけにはいきません」
それは、魔王にくみした事になる。
だからこそ、無条件にドラゴンとの縁を結べるあの方法は、有ってはならないものだ。
ドラゴンから供給される、大量のマナのおかげで、通常ではありえないほどの強化ができた。
だが、それだけだった。
「竜騎士がドラゴンから得た力に満足せず、自らを鍛錬していたら違ったでしょう。
それこそ世界最強の名に相応しい騎士になっていたと思います」
かつての竜騎士はドラゴンに選ばれた後も、自分を磨いていただろう。
本来の竜騎士がどれほど強く、魔王軍の敵であったか。
魔王が竜騎士を、無力化しようとするはずだ。
今の竜騎士の惨状は、魔王軍の策が成功した結果だ。
証拠は無いが、俺の中でこれは事実になっている。
「国璽がどこにあるか、知りませんか。
あたなもカリギュナーの国民、国璽を本来持つべきお方をご存のはず。
あるべき場所に戻すのです」
とリーシェさんが話を本筋に戻す。
「『腰抜けどもが持っていても使い方を間違える』と言われ、強い者が国を導くべきだと、なにも考えずに同意していました。
偽りの強さだったとは...」
どっちに対してもひどい言いようだな、それに強さを勘違いしていると思う。
「竜騎士長が、勝手に持ち出したため、国政が混乱しているの知らないのですか。
それで国璽はどこに」
リーシェさんの声が、少し責めるものになってきている。
イライラし始めている。
「わかりません。
ペレリオス様が持っていたとは思いますが」
天井を見上げた。
屋敷中を、探さないと駄目なのか。
そのうんざりする考えが出てきた時に
”ココ” ”ココ” "コッチ”
頭に声が響く。
声の主が上にいる。
声に導かれ階段を上がると、3階が屋根だけが有る外に開けれた空間になっていた。
その一角にドラゴンが横たわっていた。
"ココ”
俺の姿を見て、再度ドラゴンが声を掛けてきた。
近づくと、ドラゴンは自分の巣の一角を示す。
その場所に、国璽が隠してあった。
絶好の場所だ、ドラゴンの寝床に近づく者などいない。
「回収完了」
そう言いながら、国璽を拾い上げる。
「お前も、どっか行け。
自由だぞ」
俺の声に応えるよう、飛び出そうとしたドラゴンに
「お待ち下さい。
ドラゴン殿は、今ペレリオス様との縁が、切れているのですか」
隊長が、意を決したように、ドラゴンに問う。
「わ、私を、その、乗せていただくことはできないでしょうか」
!
隊長がとんでもない事を言いだした。
さっきまで、竜騎士を尊敬しているとか言ってたよな。
お前の忠誠は、ただ竜騎士になりたいがための物なのか。
リーシェさんが俺を見て肩をすくめる、俺も同じように返した、2人とも呆れているのだ。
「私は、子供の頃...」
"イヤ","キライ","アイツノナカマ"
隊長が言い終える前に、ドラゴンは強烈に拒絶し飛び立っていった。
あの拒絶では、隊長は精神的に殴られたようなものだ、それほど明確な拒絶だ。
隊長は床に腰を落としてしまった。
彼が、竜騎士になるなど、絶対に無理だ。
自由なドラゴンはいなかった、すべて竜騎士が管理していた。
新しい竜騎士は、今の竜騎士達に有益な者しかなれなかった、隊長では不足だ。
そして今は、自由なドラゴンがいるが
「竜騎士達に従っていたのは間違いだったな。
ドラゴンは、一度の縁が結ばれてしまうと勝手には切れないが、選ぶ場合はその背に相応しい者を選ぶ。
今の竜騎士達をドラゴンがどう思っていたか、考えた事はないのか。
竜騎士達の行動をおかしいと、思った事は?」
隊長は竜騎士に憧れていた、だからその存在の全てを肯定していたのか。
この国の兵が、おかしな理由が、わかった気がした。
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王との謁見の機会が、すぐに与えられた。
広い謁見の間に、王が玉座に座り、横に宰相ウギン・ヘンネベル公爵が立っている。
その前に、客であるソカ聖女とオード枢機会議議長が椅子に座って対峙している。
玉座までではないが、椅子は少し高い台に置かれていた、最上級の扱いだ。
俺達は、聖女様たちよりかなり後ろの床に膝をついて頭を下げている。
本来、冒険者風情がいれる場ではないが、特別な配慮だ。
教会からの嘆願の出どころが、俺達なのだからだ。
謁見は、王と宰相は口を開かず、担当の大臣が王の言葉を読み上げるだけで終わった。
あっというまだ。
形式だけの謁見などは、こんなものだろう。
頭を上げていないので、王を直視もしていない。
謁見後、賓客用の館に、聖女達と一緒に招待されている。
今夜、感謝の席をもうけたいと、公爵から申し出あり、断る理由がない。
聖女様と議長には、屋敷に来た時、挨拶を済ませていた。
あの後に有った事と、近況の確認する。
一度ビチュレイリワから聞いている内容だが、初めてのふりで聞いた。
やはり、俺の関係した国が面倒な事になっている。
この後、許可をもらえない国を、一緒に回る事になった。
オード殿は、相変わらず頑張っているようだが、聖女様は窮屈だとぼやいた。
「多分、聖女様がそういうと思って、本国を出てきているのですが。
これで窮屈と、言わないでください。
本国ならもっと窮屈でしたからね」
オード殿は聖女様に小言。
ますます、爺やとお嬢様だな
「ヨガ、さっさと魔王倒してよ。
魔王がいなくなれば、聖女なんて不要なはずなんだから。
私は元通り自由になれる」
そんな事を言うなら、さっさとどこかに消えればいいのに、元名無しは真面目だからな。
自分の責任は果たそうとする。
そうなると残念ながら聖女を辞めるなんて出来ませんよ。
そんな聖女様を、ちょっと可愛そうと、思ってしまった。
歓待の席は公爵にしては、ごくごく簡素なものだった。
席の後ろに絶えず2人の給仕がいるなど、俺は初めてだが。
それと、俺達が最も上席に座らされている。
聖女様や議長殿よりも上なのだ居心地が悪い。
本来は2人(?)だけでいいのだが、同じパーティメンバーのため、俺達も一緒にいる。
タビさんとケイトさんが本来、何者なのか、知っての事なので辞退も出来ない。
料理が一番最初にパーティ・リーダーの俺に運ばれて来るのは耐えれないので、タビさんにしてくれ、と必死に頼み込んだ。
「例のものを取り戻してくれてありがとう。
諸君に、心より感謝を」
会席が始まると同時に公爵がグラスを上げ、俺達に礼を言うが
「だが、王の寝室にこっそり返すのは、辞めていただきたかった。
王がすっかり怯えられてしまった」
と苦笑まじりで小言が続いた。
「すいません、早いほうが良いと思いまして」
頭を掻いて誤魔化す。
その後、ホスト役の公爵が話題を振って談笑が進んでいった。
「魔王がいなくなった後は、教会はどうなるのです。
魔王を倒すため、神にお力をお借りしていたはず」
メインの料理が下げられた時に公爵が話題を変えた。
「むろん神は役目を終え、お帰りになられます。
ですが、教会は解体しません」
オード議長が答えている。
「それはどうしてです」
「人々が生きてゆくには、我らの力は必要なのです。
魔王がいなくなっても、生きる上での困難が全て無くなるわけではありません。
今までと同じように、傷を癒やす奇跡や、村に獣が入りこまないよう求めれるでしょう。
我らは力を振るわなければなりません」
聖女様は必要とされ続けるのだ。
「すると今までと変わらないと言われるので」
「いいえ、変わります。
変わらざるを得ないでしょう、倒すための力は、魔王そして神と共になくなるのです。
今までのようには出来ない事も、多くなるでしょう」
公爵はワインを1口飲むと。
「形は変わるが、教会の影響力は残ると考えたほうがよさそうですね。
そうなれば各国に対し、公平にまた干渉はしないという考えも変わらないのですね」
今度はオード議長がワインで一拍おいて
「無論で、ございます」
公爵とオード議長はきな臭い話をしている。
魔王がいなくなった後の世界か、最近まで考えた事が無かった。
この国にとっては重要な事だ。
竜騎士がその力を無秩序にふるい、そしていなくなったのだ。
抑えられていたものの枷が外れ、この国に向かう。
カリギュナーの王は、気の弱い男だと、ビチュレイリワから聞いている。
昼間見た印象でもそう感じた。
今まで竜騎士は王を無視し、王本来の権利を奪っていた。
だが、それは同時に、王を責務からも遠ざけてもいたのだ。
生まれる前からそうだったため、王は失っているものを知らず自由に振る舞っていたと言っていい。
これからむかえる、国難にこの王では荷が重い。
王が宰相に仕事を押し付けるのが目に見える。
だからこそ、宰相は先の話をしていたのだ。
竜騎士に抑えられていたものとは何か。
それは魔境からの魔物、そして隣国だ。
魔王がいなくなった後、この国は隣国が敵に可能性がある。
いままで竜騎士達がしてきた事の、ツケが回って来るのだ。
争いは公爵が宰相の間は起きないだろう。
しかし、宰相と言う役は、替りがきく、王とは違うのだ。
また、気の弱い王が他国からの”圧”に耐え切れず、悲劇的な決断をしてしまう可能性もある。
その時、教会がどう動くかと言うのが先程の公爵と議長の会話だ。
歴史を見れば人の国同士の戦争は有る。
そして開戦の理由には、対魔王が必ず含まれる『魔王に対抗する事力がない』だの、『一国に併合したほうが対抗する力が上がる』だのの屁理屈だ。
しかし、たまにその理由がため、教会が関与する事が有った。
それは教会がつかなかった国には、悲劇だ。
魔王に関係ない事に関して関与しないと、教会は名言している。
それは魔王いなくなれば、どの国にくみしないという意味だ。
竜騎士のしてきた事を考えれば、非難される可能性が有る。
そこに教会が参加するのは避けなかったのだ。
ちなみに国璽を王の寝室に置いてきたのは『安全な場所はどこにも有りませんよ』と言う、俺からの親切な助言だ。
あれで王が明確な敵を作りたくと、考えてくれればいいい。
公爵も、それが判っていたので、賊の俺を苦笑いですませたのだ。
しかし、魔王がいなくなってこの”星”は本当に
(どうなるんだ)
物事を一番俯瞰で見ているはずのビチュレイリワに聞いてみた。
[この件に関しては、私の意見は控えます]
(なぜ?)
[影響が大きすぎます]
影響?
「魔王がいなくなった後と言えば、ヨガ君はどうするのです」
公爵の話が、いきなり俺に話が来た。
「俺ですか。
暗黒大陸が無くなっても魔境は残ります、しばらく魔物は出るでしょうから、冒険者を続けようと思っています」
「なるほど、それは良いですな」
フフフ...
タビさんが声を殺して笑い出した。
「ここでヨガのその話を聞き流すとは、ヘンネベル公も人が悪いな」
何の事だ、笑われる事は言ってないぞ。
「不思議そうにヨガを覗き込むな。
大丈夫だオード。
判ってないのはヨガだけだから」
「「そうそう」」
リーシェさん、キューさんも同意している。
ケイトさん、俺を『可愛そうな人』って目で見ないでください。
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