8-3.竜騎士 無残
前回あらすじ:女性陣やりすぎです
カリギュナー王国の王都には、竜騎士達用の城があり、1人1人に館が用意されていた。
中央には王城より高い塔があり、頂上がドラゴン達の出入り口で、飛び立つドラゴンは王都中から見えた。
それが住人には誇りであり、多少の恐れを含む畏敬の目で見ていた。
最近は誰もいなくなっていたが、銀鱗翼竜にリオロセーク山から追い出された、竜騎士達が集まってきていた。
「イテェ!」
俺は塔の屋上に放り投げられた。
放り出した本人は、優雅に立ち落ちている。
タビさんは人型本来の姿、尾が数本輪郭を持たず燃え上がっている。
マナも多く淡く光っていて、誰も4つ耳族に見間違えられる事は無いだろう。
今のタビさんなら、この程度の高さには問題なく届く。
残念ながら飛べない俺は襟首を持たれて、荷物のようにここに運ばれた。
「静かにしろヨガ、気づかれるぞ」
「もうバレてますって。
タビさんから放たれるマナを、竜騎士が感じられないとでも思ってます」
何が有ったかと、顔を出したドラゴンに俺が何も気にするなと手を振る。
これで、気づかれないと思っているのか。
「もうすぐ開放してやるから、待ってな。
その前ちょっと苦しいけど、我慢してくれ」
覗き込んだドラゴンを避けて、塔の中にはいる。
「泡を吹いて気絶する程なのに、ちょっとなのか」
タビさんが俺の後に続く。
竜騎士達は銀鱗翼竜に脅されてここに逃げてきた。
恐怖で逃げ出したいだろうが、ドラゴンはこの上にいる、竜騎士は各屋敷に住んでいて彼らには足がない。
徒歩で逃げ出すなど、選択肢にはないだろう。
下から足音が聞こえてくる。
「止まれ。
何者だ」
「止まれとは、わらわに言ったのか」
俺を追い抜いて、タビさんが上がってきた衛兵に問う。
その声に、いっそう圧が加わっている。
震えながらでも、剣をタビさんに向けている衛兵に感心した。
カリギュナー兵の質は高い。
が、タビさんが通り過ぎるのを止める事は出来なかった。
何も出来ず、通り過ぎた瞬間に崩れ落ちる。
一緒にきた兵も同じだ。
俺は、"よく頑張った"と声を掛けながら、横を通る。
塔を下った一階は、広い部屋になっていた。
閲兵式にでも使われるのだろう。
「賊!
ここをどこだと思っている、生きて出れると思うな」
竜騎士達が、完全装備で出てきた。
兜をしているのに、顔が出ているのが、竜騎士らしい。
彼らは震えてはいなかった。
多少腰が引いているが、ドラゴンから供給されているマナで十分に強化されている。
それに数も優勢だ、タビさんに対して、恐れているが怯えてはいない。
竜騎士が一斉に襲いかかる。
連携がとれていて、次々と刃がタビさんを襲う。
北の帝国で、俺が歌う美人に襲われた時のようだ。
ただ、一撃は竜騎士が重く早い。
その連続の攻撃を、綺麗にかわしている。
まるで踊っているようだ、俺だけではなく、攻撃に参加できない向こうの衛兵も見いっている。
竜騎士は完全に俺を無視していた。
視界には入っているはずだが、見えていない。
「仕事をしろ!」
見とれていると、タビさんが1人竜騎士を俺の方につき飛ばした。
転げ回ってきた竜騎士を受け止める。
「すまん」
と受け止められた竜騎士が礼を言う。
「おい!」
肩を掴み、無理やり俺に向かせた。
「誰だ、貴様」
やっと気づいてくれた。
「貴様らに名乗る名は無い」
と、顔を鷲掴みにした。
マナを変えるのは、直接肌に触れる必要がある。
彼が上げた断末魔で、他の竜騎士も異様な格好の男の存在に気づいた。
「仲間へのおかしな攻撃は、貴様がやっていたのか」
返事をする替りに、ニヤリと笑ってやった。
竜騎士達に、動揺が広がる。
俺が1歩踏み出すと、竜騎士達が1歩さがる。
これ気持ちがいい、クセになりそう。
「楽しむのは、そこまでにして。
仕事をしろ」
また、タビさんに怒られてしまった。
そうします。
一気に加速して、竜騎士の1人の腹に拳を入れた。
崩れ落ちる竜騎士を肩で受け止め、顔を掴む。
その後は俺が主役になる。
一方的な蹂躙戦だ、彼らは戦おうともしていない。
最後の竜騎士にいたっては逃げ出して、つまずきころんだ。
命乞いをするが、俺は殺すわけではない、不本意だ。
ーーーーー
最後は、竜騎士長だ。
騎士身分であれば、領地はない。
竜騎士達が、領地運営など面倒な事を嫌ったので、問題にならなかった。
彼らは遊ぶ金があればそれで良かったのだろう。
ただ、竜騎士長には爵位が有った。
領地運営は家宰にまかせていたが、今竜騎士長はその領地に引きこもっている。
「冒険者ヨガが竜騎士長ペレリオス様にお会いしたいと、お伝え願えませんか」
館の門番は、俺の言葉に驚く
「先ぶれもなしに、直接来たのか」
貴族の訪問は、最初に知らせが有る、了承を得て初めて会う事が可能になるのだ。
いきなり訪ねても会ってはくれない。
無粋者と嘲るか、侮辱されたと思い憤慨するかた。
だが、今回は会えると思っている。
引きこもっていても銀鱗翼竜の噂は聞いているだろう。
教会で俺と共に戦ったという噂だ。
それに昨日、銀鱗翼竜によって竜騎士がリオロセーク山より、追い払われたという話も。
俺の動向を気にしているはずだ。
自分を訪ねてきたとなれば、会おうと思うのではないか。
「竜騎士長は、約束の無い者とは会わぬ。
貴族とそう簡単に会えると思っているとは、さすが冒険者。
無知だな」
門番が言い放つ。
あれ、思惑が外れた。
ここで追い返されれば、竜騎士長には俺の存在が告げられない。
会おうと思うこともないのだ。
「通してやれ」
強行突破しようかと、考えていると、声がかかった。
「ペレリオス様には、俺が伝える」
そう声の主が続け、そして俺達に
「一応、待合室までは案内する。
実際に会ってくださるかは、ペレリオス様のお気持ちしだいだ」
「隊長、そんな勝手をして大丈夫なのですか」
「問題ない。
責任は俺がとる」
ここの兵の隊長らしい。
ついてこいと合図すると、俺達を先導し中に入る。
「何故、俺達を」
との俺の問に対し
「竜騎士の皆さんは勇気ある人達だ」
と、関係の無いことを話始めた。
「猛々しいドラゴンにまたがり空をかける、戦となれば常に先陣で敵を葬っていた。
彼らの翼の下にいる事は、我々は勇気が出、誇りであった」
竜騎士達が、カリギュナーの兵には人気があるのは知っていた。
戦いの先頭で戦い、活路を生み出す竜騎士は、共に戦う兵達にとっては、憧れの存在だ。
「だが、今回の事で、思い直す者もでてきた。
竜騎士達は圧倒的な力を持っていた、今までの戦いでは、彼らを脅かす存在はいなかったと。
だから先陣に立っていられたと」
確かに、魔境から漏れ出てくる魔物など、竜騎士の相手にはならなかっただろう。
「他国との戦争を厳重に戒める教えも、撃墜された事があるためだと言う者さえ出てきている」
ジュア王国侵攻の時の話か、兵には正しく伝わっていなかったのか。
事実を知る何者かが、それを意図的に漏らしたのか。
思い浮かぶ顔が有るが、黙っていよう。
「俺は、隊長などと呼ばれているので、多くの部下の命を預かっている。
そのせいで、臆病なのだ。
竜騎士に憧れ、いつかドラゴンに見初められる日を夢見て、自分の剣をペレリオス様にささげてきた。
それが正しかったと証明したいのさ。
この部屋で待っていろ」
豪華な部屋に俺達を通し、去ってゆく。
竜騎士長に伝えにいったのだろう。
彼の願いが叶う場合は、本物の騎士である竜騎士が、怪しい冒険者を打ち捨てる事になる。
隊長さんも、単純に良い人という事ではないな。
竜騎士長は会ってくれる事になり、長いテーブルを挟んで、向こうとこっちに分かれて座っている。
「久しいな、冒険者。
何の用だ。
そこの女が、俺の物になる気にでもなったか」
視線を変えずに、横のリーシェさんを除き見るが、表情は変わらない。
危険を感知出来ないのか、こいつ。
「そのような事は、未来永劫ありません」とリーシェさんが答える。
「では何だ。
あの剣を返せとでも」
あの剣は何かの弾みで折れるようビチュレイリワに頼んでいたが、その機会が未だ無い。
なにせあの後、剣を抜く事がなかったのだから。
「魔王討伐のご助力のお願いためまいりました」
「魔王討伐だと、威勢のいい事を言うな。
2千年、誰もなしえなかった事だ、貴様がやれるとでも言うのか」
「いいえ、申しません。
私は、その可能性を知り、各国にお願いしているのです」
「姿なき守護竜か」
「お噂はお聞きで」
「聞いている。
聞きたくない事も含めてな。
何故お前なのだ、その役にふさわしいのは俺ではないか。
そうか、俺にその役目を渡しにきたか。
そうだろう、そうだろう、お前ではその大役は荷が重いだろうからな」
勝手に話を進めるな。
「そうではございません。
姿なき守護竜は強力な力を持っています。
もしかすれば、大陸に影響が出てしまうほどの。
事前に大陸に住む人々から、力を使っても良いと、許しがない限り使わないと、言われています。
なので今は各国に、許可をいただいている最中です」
竜騎士長は俺の話を面白くなさそうに聞いていた。
「それが、俺に何の関係がある」
「承認を得るのは、教会が行っております。
ですがカリギュナー王国が、国外と契約を結ぶためには、今竜騎士長がお持ちの物が必要なのです。
お返し願えませんか」
「つまらん話だ」
と切り捨てた、そして本当につまらなそうに天井を見上げている。
椅子に倒れ、ぶらぶらと数回揺れると。
「そうだお前、俺と変われ、そうしたら国璽を押してやる。
そうすれば魔王も倒せる、それがいい」
駄目だなこれは、彼は200歳以上だとは聞いている。
大人の会話が出来ると、少しは期待していたが、完全にガキだ。
「竜騎士長は、最初の生まれながらの竜騎士とお聞きしました」
「誰に聞いた」
竜騎士長の顔が変わった。
"最初の生まれながらの竜騎士"とは、ドラゴンの卵を保有し近くに妊婦が住み、強制的にドラゴンとの縁を結ぶ。
この秘密を竜騎士達は、長い間厳重に守ってきていた。
その秘密を俺が暴いている。
「そう言えば、事件の有った時、お前は国内にいたな。
事件に、お前が関わっているのか」
奇抜な格好の男の目撃は有る、そのせいで正体を俺だとは気づいてはいない。
「その秘密の方法を誰から聞いたか、竜騎士長は聞いておりますか」
「誰だと」
俺の質問が意外なようだ。
「そんな事より、何故お前が知っているのかの方に興味がある」
「そんな事ですか。
俺は大陸を旅して、今でも魔王軍が活動している事を知っています。
そしてそれに人が協力している事も」
「人が魔王軍に協力だと」
驚きに偽りは見えない、知らないのは本当のようだ。
「ありえない」
「事実です。
いくつかの策謀を見てきました。
竜騎士の弱体化、これに彼らが関係していないとは思えないのです」
「我らが弱いだと」
「竜騎士とは人、人の戦力を上げるための策。
ですが人がゆえ、単体で力を発揮するものではなく、人々の中でその力を使うも」
「我らが単体で弱いとでも言うのか」
「個体の力だけで事が足りていたならば、守護竜を増やせばいい。
それでは足りないと思い、人との関係を造ったのでしょう」
そこに弱点ができた。
「造っただと、何を言っている」
創造主の事を知らなければ、俺の発言は狂っている者の言いようだ。
「どこまで俺を馬鹿にするか」
理解出来ない事を言われ、限界を越えたようだ、目の前に竜騎士長が現れ、俺に降りかかった。
剣が俺の頭にふれると、剣が折れた、何かの機会が今だったのだ。
俺達の後ろには、隊長が控えていた。
今の攻防は早すぎて、彼は反応出来ていない、手を前に出して固まっている。
その前に竜騎士長が現れ、彼の剣を抜く。
二撃目を俺に与えるため飛び出した瞬間、炎に包まれた。
ここの担当はリーシェさん。
リーシェさんは相当怒っていた、彼女の気が済むまでは、俺は手を出せない。
室内なのに、物凄い風が起こり、渦中央の炎の色を白く変える。
倒れた花瓶の水が、水刃となってその炎を切り刻む。
ここが野外なら、石の槍が地面から、彼を突き刺していたかもしれない。
炎の色が変わり、中から裸の竜騎士長が投げ出された、傷一つない。
見るたびに思うが、このフェニックスの使い方は、間違っている。
完全に気を失っていて、俺が手を触れても、声をあげなかった。




