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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
7章
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7-6.港街デート

前回あらすじ:タビ、ケイト、ピノ以外は見えてるフリしてました

 気絶するように眠り込んだ翌日は、リーシェさんのボディアタックで目が覚めた。

 リーシェさんの小柄な体だから許す。

 ケイトさんだったら、もっと深く眠るとこだ。


 俺に跨った状態で、


「ヨガ、今日ひまでしょ。

 街で買い物するから、付き合って」


 王から呼び出されるまで、何もすることもない。

 しかも都からも出れない。


「いいけど。

 何買うの」


「ヨガ、いい事教えて上げる。

 女性の買い物に口を出さないのが、いい男だから」


 判るような騙されるような言い分だ。

 ただし、言い返さない方が良い事だとは、姉に教わり知っている。


 朝飯も取らずに宿を出る事にした。

 元々リーシェさんは、宿の食事は食べれない、自分で買った果物で代用している。


 最初、痩せてしまうと心配したが、その反対になっている。

 ここの果物は栄養が有るのだろう。


「リーシェさん痩せすぎだったから、良かった」

 と感想を言ったら、ビチュレイリワに止められるほど、教え込まれたので二度とその事は口にしない。


 出掛けにキューさんが

「次は負けないから」

 とリーシェさんに、言っていた。


 何の事か判らずリーシェさんに聞くが教えてくれない。


「ここの酒も良いが、クセの無いのも飲んでみたくなった。

 北の酒が、有ったら買ってきてくれ」


 と出てきたタビさんに、聞いてみる。


「女を掛けた真剣勝負」


 と言われる。


 この2人が、本気の勝負をして街が無事で済むはずがない。

 見た所、都の朝は平和だ。

 からかわれてしまった。



 街では朝から、屋台や飯屋が開いている。

 食事は外でするものが、南の文化だと教えられた。


 道沿いの串焼きがいい匂いをさせているが、これは買えない。

 極端に辛いか、甘辛いと決まっている。

 汁ものだとこれに酸っぱいが入る。


 俺は慣れて美味しいと思えるようになったが、リーシェさんは1口で髪を逆立てて固まる。

 まるで威嚇している時の猫だ。


「2本くれ」

 とリーシェさんが、自分の分も注文した。


「大丈夫なの」


「せっかく南の街にいるのに、その味を堪能できないのは悔しい。


 ここのは、香辛料をそれほど使ってなさそうだしね。

 腐ってるのは絶対むりだけど」


 "酸っぱい"を、"腐ってる"って言っている時点で、南の味は堪能出来ないと思う。


「はいよ、2本。

 タレが流れるから、お嬢ちゃん気を付けてね」


 リーシェさん屋台のおやじの、お嬢ちゃんに反応した。

 でも、これはおやじは悪くない。


 俺はいつもと変わらない恰好だが、今日のリーシェさんは深い緑色のワンピースを着ている。

 似合っているが、リーシェさんに似合うと言うことは、リーシェさんを幼く見せてしまうと言う事だ。


「若いお父さんでいいね」


 おやじが追い打ちをかける。


 俺の外見は、20代前半のつもりだ。

 おやじは、リーシェさんを何歳だと思ったのか。


 怒ってる、怒ってる。

 串を持つ手がふるえてるが、おやじに言い直す事でもない。


 頬を膨らまし、顔を真っ赤にして仁王立ち。

 こういう時、俺が笑ってしまうのを思い出したのか、こっちを睨む。


 リーシェさん可愛い。

 笑顔になってしまうのは、しかたがないよ。


「やっと笑った」


 え!

 いつもなら、脛に蹴りか、顔面に拳が来るのに、今日は違った。


「気づいてなかったでしょう。

 ヨガ、この国に入ってからズーット凄い顔してた。

 眉間にシワ寄せっぱなし」


 そんな顔してたのか、顔に手を当てる。


「今日は、この恰好笑っても許してあげる」


 その恰好が可笑しいから、笑ってたんじゃないんだけど、まあいいか。

 リーシェさんを見て笑ってしまう。


 リーシェさん何を思ったのか、慌てて1本を口に入れる。

 で、固まる。


 俺は慌ててリーシェさんの口を開け、かじった串を救い出す。

 置く場所も無いので、そのまま俺の口に入れた。

 手に持っていたもう一本も受け取り、これも口へ、これで両手はつかる。

 それを見ていてリーシェさんが完全に動きが止まった、一歩も動けない。


 仕方がないので、リーシェさんを抱っこし、斜向いの店に向かう。

 店で果汁の多そうな果物を何個か購入し、近場で座れる場所を探した。


「リーシェさん大丈夫?」


 首だけが、縦に何も触れるが、声が出ていない。

 そして視線が、俺が咥えている肉に向かっている。


「そんなに食べたかった?」


 今度は、壊れたように横に首が振れる。


「これ食べて、落ち着いてリーシェさん」


 と買った果物を渡す。


 何度か俺の顔と果物を見比べたあと、一気にむしゃぶりついた。

 そんなにお腹すいてたんだろうか。



 リーシェさんが貪っているのを見るのは悪いと思って、港の方を見て口に詰め込んだ肉を味わう。


 ここの港は漁港ではなく、交易港だ。

 繋がれている船は、大きく荷を運ぶものだ。


 眺めていると、1人の女性に気づいた。

 すでに向こうはこちらを認識しているようで、向かって来ている。


「誰?

 知ってる人」


 リーシェさんも気づいた。


「会うの初めてだけど、知っているヒトだと思う」


 その女性は、青く長い髪をしていて。

 長身でものすごく綺麗な人だ。


「こんにちは。

 あなたが、ヨガ君ね」


「はい、そうです。

 青長蛇竜(ワーズヘシル)様ですか」


「やっぱり、一発でわかちゃうか。

 銀鱗翼竜(ケフロイヤ)が一緒にいるものね」


 青長蛇竜(ワーズヘシル)、彼女はこの海に住むと言われている守護竜(ガーディアンドラゴン)だ。


「俺に、何か御用ですか」


「そう緊張しなくていいよ。

 用事は特にない、一度会ってみたかったのさ」


 そう言って、俺の横に座った。


「先代の銀鱗翼竜(ケフロイヤ)には世話になっていてね。

 新生銀鱗翼竜(ケフロイヤ)の殿方を見極めてみようと思ったのさ」


『悪い男なら、叩きのめす』と続いていたように聞こえる。

 小姑か。


「あれは、ケイトさん勝手に言っていることです。

 それに生まれたばかり、彼女の寿命を考えれば今後...」


守護竜(ガーディアンドラゴン)の愛を侮辱するな」


 一言、静かな口調だが、ものすごい威圧ともに放たれた。

 俺は言葉が続けられない。


「正直に言おう、偽りの者よ、私は貴様をいま1つ信じられない」


 偽りの者か、先代銀鱗翼竜(ケフロイヤ)にも似たような事を言われたな。

 守護竜(ガーディアンドラゴン)は一目で判るのだな。

 ただし、彼女は俺を信じて、自分の子を託してくれた。


「俺の体は作り物かもしれませんが、魂は俺のものです。

 偽りの者とは言わせません」


「そこはどうでもいい。

 私も、もう一つの姿が本物かと問われれば、自信がない。


 姿なき守護竜(ビチュレイリワ)の事だ。

 今まで聞いたこともない、本当の事を聞きたい」


 あ!

 守護竜(ガーディアンドラゴン)側からすれば、そうなるか。


「ビチュレイリワ、たしかにおります。

 ただし、守護竜(ガーディアンドラゴン)ではございません」


「ほお、あっさり認めるな」


「人々にビチュレイリワの力を、信じてもらうための方便ですので。

 守護竜(ガーディアンドラゴン)の方々に通じる嘘ではありません」


「会わせろ」


 口調が命令になっている。

 会わせられれば俺もそうしたい。


「無理でございます」


「何故だ」


 俺は空を見上げ。


「この雲の遥か上、大気の海のそのまた上にいます。

 この大地に足をつけている者が、行ける場所ではございません」


「そんな所に住む者に、どうしてお前は会うことができたのだ」


「俺も会ったことはありません。

 話が出来るだけです」


「どうやって話す」


 仕方がないが、しつこい。


「わかりません。

 声が聞こえ、言った事が伝わっているだけです」


「そんな者を信じられるのか」


「俺は信じています」


 青長蛇竜(ワーズヘシル)は一度空を見上げ、視線を俺に戻した。


「貴様の魔王討伐の奥の手は、極めて危ういのだな」


「だからこその方便です。

 正直に言って、信じてくれる人は少ない。

 まして、協力してくれる人となれば、もっと少なくなってしまう」


 俺に言葉に、青長蛇竜(ワーズヘシル)は軽く笑い。


「お前は、ここの王に似ているな。

 目的のために手段を選ばない」


「ブンヘズ王をご存知で」


「会った事がある。

 良い男であったな、子をなそうと焦っていた時なら、選んでいたかもしれん」


 自分の伴侶にしようと考えたという事か。

 もしそうなっていたなら、勇者ミハイロファンと同じになっていたかもしれない。


「私の正体を知ったブンヘズは、熱烈に口説いてきたぞ。

 平和な世界のため、力を貸してほしいとな」


 その場面は想像出来るが、口説いているとは違うと思う。


「どうして、王の話に乗らなかったのです」


 王のそばに青長蛇竜(ワーズヘシル)がいないとは、彼女が王を受け入れなかったのだろう。


「道が違った」


「道ですか」


「私は守護竜(ガーディアンドラゴン)、魔王を滅ぼす者だ。

 それに対し王は、脅威を取り除き平和をもたらしたいと考えていた」


 同じように聞こえるが。


「確かに王の話では、教会や各国に巣食っている魔王軍の配下を追い出す事はできただろう。

 だが、魔境や暗黒大陸は、彼の手には余る」


 俺にビチュレイリワがいて、ブンヘズ王にはなかった、その差だ。


「そこで王が語った内容は、私には受け入れられるものではなかった。


 奴は魔王と交渉しようとしていた。

 魔王を予測できる災害にすれば、多くの間の人は安心に暮らせるそうだ」


「そんな!」


 青長蛇竜(ワーズヘシル)様の反対側で話を聞いていた、リーシェさんが思わず割り込んできた。


「王はそれが最善の策だと言ったぞ。

 それが私と王を分けた理由だ」


 交渉では、人側からも何かを差し出す事になる。

 人界全体では、社会は安定するかもしれないが、受け入れられる話ではない。

 王は何故?


「その様子では、ブンヘズの考えが理解できないようだな」


 そうだ、理解できない。


「ヨガ、貴様は信じて良いようだな。

 お前の信じた、その姿なき守護竜(ビチュレイリワ)、信じてみよう」


 そう言って、立ち去ってゆく。

 その後ろ姿に、俺とリーシェさんは深く頭を下げた。



「ヨガ、また顔が険しくなってる」


 とリーシェさんに注意されてしまった。

 自分では気づけない。


「ヨガのことだから魔王討伐を、ブンヘズ王に譲りたくなってたんじゃない」


 リーシェさんの言葉が、腹に落ちた。

 あぁそうか、自分とブンヘズ王を比べ、王が相応しいと感じていたんだ。


 結果的にその役割を与えられてしまった、俺にはふさわしくないと。

 王は自分で考え、進んでいる、そんな人が行うべきだと。

 だから、自分が行う事になっているのに、違和感を覚えてしまうんだ。


「でもね、魔王討伐は誰がやってもよいの。

 そもそも誰が行うなんてそんなに意味がない。

 魔王がいなくなればいいのだから。


 だから、誰がやっていいんだから、出来るヨガがやるべきなのよ」


 この話をリーシェさんが終わらせた。



 その後は2人で、港町を存分に楽しんだ。

 はた目には、親子の散歩にしか見えなかったかもしれないが、俺の気持ちとしてはデートだ。


[来客が来ました。

 王の使いの者だそうで]


 日が傾き掛けた頃、連絡があった。

 王から呼び出されたのだ。


 急いで、王宮の島に渡る。

 王宮の有る島への往来は、日がある間のみ許されている。


 王宮についてもすぐに王に会えるわけではない。

 島に渡るだけでも、今日中に行っておきたい。


 通された部屋で、呼び出されるの待つ。


青長蛇竜(ワーズヘシル)に会ったんですね」


「何故ケイトさんが」


「何が有ったのか知る権利は私達にはあるの」


 とキューさん、意味のわからない事を言いだす。


「王宮での夕食は、同じ物が各自に膳として出る。

 ヨガの食べ残しに手を出したり、自分の分を分け与えるなど、恥ずかしい事はするなよ」


 とタビさん。


 そんな事するわけないじゃないか、変なの。

 雑談をしながら過ごしていると、王との謁見となった。




 俺達は前回と同じ広い部屋の真ん中に座っている。


「教会からの親書をどうするか。

 また、お前達からの願いをどうするか決まったぞ」


 いきなり王が始めた。


「が、その前に1つ聞きたい」


 すんなりとは行かない。


「私は、魔王を倒すのは自分だと信じ、これまでの困難を耐えてきた。

 だが、魔王を倒す力を持つ姿なき守護竜(ビチュレイリワ)が選んだのは、私ではなく、貴様だ。


 何故だ。

 私を納得させる答えを言え」


 むちゃくちゃだ、駄々っ子じゃないか。

 仕方がない、俺が感じた事を言うしかない。


「王は世界の運命を、自分の運命に重ねてしまっております。

 自分が世界を救うとお考えになり、そして十分にそのお力をお持ちでした」


 王を見ても反論しない。


「逆に俺は足りない男です。

 多少腕は立ちますが、それだけです。


 冒険者になった頃は魔王討伐どころか、魔境に行くことも考えていませんでした。

 その日を生き延び、お金をため多少良い暮らしができれば良いと、その程度の事しか考えていませんでした。


 足りない分を、関わりを持った人が埋めてくれたのです。

 俺は詩が上手くありませんし、自分が歌われるなど考えた事もありません。

 姿なき守護竜(ビチュレイリワ)は俺が弱かったから、力を貸してくれたのです」


「それでは、私が強かったから、だめだったの言うのか。

 弱かったほうが良かったと」


 王は立ち上がり、怒鳴った。


「そうは申しません。

 姿なき守護竜(ビチュレイリワ)が私に力を貸したのはたまたま。

 もし見つけるのが遅れ死んでしまったら、姿なき守護竜(ビチュレイリワ)は別の者に力を貸していたでしょう。

 弱い事が条件ではありません」


 王の興奮はおさまってはいない、横の家臣に止められている。


「王はご自身が何でも出来るがため、全てご自身で解決なさろうとしております。

 平定のため、国内を自分で見て回っているのもそのためです」


「私が部下を信じていないとでも言うつもりか」


「違います。

 それでは王の左右に、これほどの忠臣が揃わないでしょう。


 王は全てを自分の運命とお考えおられます。

 が、魔王討伐は、1人の運命が抱え切れるものではございません。

 それは傲慢です」


 王の怒りが弱くなった。


「王に無礼だぞ!」

 今度は家臣達が騒ぎだした。


 "魔王との交渉"

 それは、魔王を滅ぼす手段を持たぬ王が、自分の寿命が尽きる前に、なんとかしようとして考え出したものだ。

 自分で終わらせる事に、囚われすぎている。

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