↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
7章
87/104

7-5.王、判断せず

前回あらすじ:

A.「風呂場の監視は俺にまかせろ」

B.「いや、俺があやる」

C.「この宿に、風呂はありません」

A,B、「なぜだ」

 とにかく広い板の間の、ど真ん中に俺達は座っている。

 向こうには王、その近くには大臣達。

 彼らも座っている、この部屋で立っているのは護衛の兵だけだ。


 許可なく立ち上がれば、問答無用に矢がとんで来るのだろう。

 護衛の列に人狼達の姿もある、これが本来の役目なのだろう、彼らは十分に強い。


 役所に願い出ると、あっけなく王への謁見が認められた。


 ただし

「お前たちの持ってきた親書を受け取るか、私は決めかねている。

 家臣達の意見も割れていてな、一度話を聞こうとなったのだ」

 だそうだ。


 王は直接、俺へ声をかけている。

 カソーエナ王国では直答が当たり前のようだ、王が言った言わないの言い逃れはしないという気概の現れだ。

 その分、こちらも覚悟がいる。


「教会から預かった親書に関しては、我々は何の責任も持ってはおりません。

 公式に王へ、意見を申し上げれる立場ではないのです」


 非公式には、教会の考えは伝えてある。


「それは理解している。

 だが、突然このような物を送ってくる事になった経緯は、知っているのではないか。

 親書を持ってきた者としてではなく、その場にいた冒険者として話してくれぬか」


「一介の冒険者としての、発言を許していただけるのであれば」


「それで良い」


 教会の中枢が、魔王軍に乗っ取られていた事から、説明を始めた。

 こともあろうに、教会トップの教皇とその派閥の30ほどの者が、魔王の手先をなっていたのだ。


 俺達が、言われない罪で裁かれようとしたため、教皇とその一派を倒した事。

 陰謀により遠ざけられていた新しい聖女が見つけ出され、歪められていた教えを元に戻そうと動き出している事を説明した。


 俺の話を聞いて、王が横の男を向く。


 その視線を受け

「私が集めた情報と合っています。

『7つの子』の動向が変わり過ぎていたので、罠を警戒していたのですが、そのような事が有ったのならば信じても良いかと」


「それは、時期尚早だ。

 今まで奴らにどれほどの事をされてきたか、忘れたのか」


 その後も、賛成と反対の意見が出る。

 王の前でも配慮がない、言いたい者が言いたい事を言っている。


「お聞きのとおり親書に関して、我々は意見が別れている。

 私も、どうするか決めかねていてな」


 王が一言発した途端、誰もが黙る、それがここの忠誠のあらわしかたのようだ。


「しかし、あの毒虫共が、一掃されたのか」


 王がつぶやく。


「知っているだろうが、私は元『聖騎士』、教会の中枢にいた者だ。

 当時は好奇心旺盛でな、あちこちに首を突っ込んだ。


 それで、どう考えても教会がおかしい。

 その存在と行動の歪みに気づいてしまった」


 個人でそれに気づいた事に驚く、だがこの人ならあり得るか。


「どうしてだと、問が生まれた瞬間に、答えも判ってしまった。

 魔王だ。

 教会の歪みは、彼らにとって都合がいい」


「よく魔王の仕業と思えたな。

 ほとんどの者には、魔王など災害と一緒だ。

 その思惑など、測りようがない」


 とはタビさん。


 確かに、アレの思惑など、俺は想像したこともない。


「幸い私は、教会の図書館に入れたからね。

 7つの世界を滅ぼし、8つ目の世界としてここに召喚された魔王。

 やつには思惑などない。

 召喚された理由をただ遂行しているだけだ、存外真面目だぞ」


 召喚した者は誰か、王は言わなかった。

 言わぬ事で、タビさんを黙らせた。


「7つの世界を滅ぼしたと、図書館に」


 かわりにピノが王に質問した。


「そうだ。

 ホントか、ウソか、魔王の言葉として記録が残っていたぞ。

 もっとも書いた者が直接聞いたわけでがなさそうだが」


「この世界を滅ぼすため召喚されたから、それを実行していると」


「それは、私の推測だ。

 魔王の行動には、一切の感情がない。

 ただ実行可能で効率の良い方法を選んでいる。

 そういう目で見れば、教会を乗っ取った相手が、誰だったかなどすぐにわかるさ」


 王が言うほど、簡単ではないと思うが。


「ところが、聖騎士の俺にはどうすることも出来ない。

 聖騎士の力は、教会に所属しているからふるえた力だ」


「だから教会を出たのですね」とはリーシェさん。


「俺は人々のため、教会を正すべきだと思ったのだ。

 聖騎士を辞め、この混乱の続いていた南方に来た。

 彼らに平穏な生活を与えるかわりに、私にみんなの希望を託してもらえるようにな」


「!」タビさんが驚きの声を漏らす。


 王は聖騎士の力の根源を知っていた。

 そして失った信仰の力の替りに、人々の希望を集め『勇者の力』の根源を生み出そうとした。

 国民から力を集める事は、北の女帝も行っていた事だ。

 だが、ブンヘズ王は国創りから始めている。


「その顔は私のした事を理解しているな。

 そうだ、その力を使い、教会を正そうと考えていたのさ。

 もう少しだったんだがな」


「ここで教会の謝罪を受ける必要は、ありません。

 いずれ奴らは、我々に滅ぼされる運命になるのですから」


 反対派の女性の声が大きくなった。

 私怨が見える、何か有ったのだろうな。


「私が倒すべき者たちは、排除された。

 それもあっさりと。


 教会にはいまだ多くの力は残っている、世界には未だ多くの信者がいるのだからな。

 正しくその力を使うのであれば、俺が考えていたものより、数段良い結果だ」


「それでは、お約束が違います。

 我々ユウの民が王に力を貸したのは、南の平定と、教会そして7つの子を滅ぼすとお聞きしたからです」


 さっきの女性が王に詰め寄るが。


「私では、教会を倒し弱体化したところを、国に吸収する事しか方法が思いつかなかった。


 患部だけを綺麗に取り除くなど、思いもしない。

 思いついても、私にも出来た事かどうか」


 建国時、教会に恨みを持つ者に打倒教会を約束し、カを借りていたようだ。

 それでは、教会が謝ってきても、国としては簡単には受け入れられないか。


 ただし、王ののぞみ『正す』は終わっている、今武器を取り教会を襲うには大義がない。

 兵は私怨に飲まれ、ただ殺戮をする集団になりさがってしまう。


「カソーエナが、教会と7つの子に兵をすすめたら、ヨガ殿はどうする」


「教会は、私の進言を聞き入れてくださり、その願いのため行動くださっています。

 これを邪魔するのであれば、王と言えどお止めします」


 俺の言葉に、空気が緊張する。


「ビチュレイリワ。

 魔王を倒す姿なき守護竜(ガーディアンドラゴン)か。

 何故、お前なのだろうな」


 何故俺なのか?

 王の突然の質問、とっさの事でその意味が理解出来なかった


「魔王討伐を志したのは、私が先だ。

 全てを捨て、動き始めたのも。

 意思の強さは、ヨガ殿に負けるとは思っていないのだが」


 全て、自分が勝っていると言いたかったようだ。

 ビチュレイリワが自分のもとに来るべきだったと言いたいのかもしれない。


 俺のは運だけだ、そもそもそれがなければ最初に死んでいた。

 王は死にかけた事が、無いのかもしれないな。


「ヨガ。

 私と試合をしろ、真剣勝負だ。

 お前が勝ったら、教会からの謝罪を受け入れ、貴様の願いも許可する」


「王!」

「何を言われますか」

「おやめ下さい」

 家臣が驚き、止めるよう声を上げる。


「お前達は、私に頼りすぎた、国として健全でない。


 新しい仕組みを考えるよい機会だ。

 私が死んでもヨガには罪はない、これこそ神のさばきなのだからな」


 殺す気でゆくから、俺にも殺す気で来いというのか。


 俺が死ねば、教会の謝罪は受けず、いずれ戦いになる。

 そして魔王討伐の機会が失われる。


 ーーーーー


 何故こうなるのか。


 カソーエナ王国では、クスポルと言う球技が人気がある。

 人々は広い空き地に集まり、この球技に熱中しているそうだ。


 職業としての選手もいる。

 彼らが戦う場所として、闘技場をこの球技場に作り変えられていた。

 人の死を見世物にする闘技場は、この国にも不要となっていたので都合がいい。


「手加減不要。

 私も全力でいかせてもらう」


 王は言い終わらぬ前に、俺の前で剣を振り下ろした。

 逃げたところに、次の一撃がくる。


 加速し、剣を抜いて受けた、その重い一撃をなんとか凌ぐ。


 王も全身にマナをまとい、常人では追いつかぬ速度で動いている。

 本気だ、手など抜けるはずがない。


 この試合を見ている者に、俺達の動きを目で追えていたものはいまい。

 残像を見ていたに過ぎない。


 剣が重なりあう時は、双方が止まる。

 一瞬のその状態をパチパチと見ているのに過ぎない。

 後で、連続で聞こえる剣戟の音と、目に見える情景が合わず、頭が混乱していた者もいたと聞く。


 息を吸う時や、動く向きを変える為に踏ん張る時にも、一瞬動きが遅くなり見えていたかもしれない。

 しかし、どう動いているかなど、普通の人では追えない。

 俺のパーティには、普通で無いのが3人もいるので、状況は見えていたそうだ。


 徐々に押されてきた。

 女帝と戦った時と同じだ、王は国民の期待をマナとして受け取っている。

 絶対量として差がある。


[タビさんから伝言]


[自分の名前を思い出して]


[何を為すために、ここにいるかも]


[自分の志を]


 これだけ高速に動いていると、俺の頭の動きも普通ではない。

 ビチュレイリワからの言葉も、とぎれとぎれにしか理解できない。


 タビさんにそそのかされ、恥ずかしいが詩の主人公となった。

 魔王を倒すためだ。


 "俺の名はヨガ、魔王を倒す者。

 魔王を憎む者よ、俺に姿なき守護竜(ビチュレイリワ)の!一撃(シュホウ)を打つ力を貸してくれ"


 俺の思いが、何かに届き、色々な声が響きだした。

 その言葉にならない、小さな声が頭の中で響き合う。

 声には怒り、悲しみ、絶望、多様な感情がある、酔ってしまいそうだ。


 俺の動きが止まったのだろう、王の一撃を抑えきれず、客席に吹き飛ばされた。


[王の攻撃での身体へのダメージなし。

 ただし、マナ流入に伴う精神汚染に対しては、私には対処方法がありません]


 この混乱はマナの話しだ、マナの使えないビチュレイリワでは、どうすることもできまい。

 この星の問題なのだから。


(問題ない)


 それからは、上限のない戦いだ。

 一歩が遅れた者が、次の瞬間マナを集め加速し、一撃目押されれば、返した二撃で力を増す。

 お互いにひらすら相手を上回る事だけを目指した。


 時間の感覚はない、長い間戦っているように思えるが、周りを見る余裕もない。

 そうした中で、相手の動きを読み違えてしまった。


 お互いすでに、目で追うのは諦め、予測して動いている。

 それで剣で急所を狙い合っていたから、それほど外れた行動ではなかった。


 その読みが外れた、王は相当無理な動きをしたに違いない。

 王がいると予想していた場所にいない。

 俺は宙に浮き空を向いていた、王は地面の上にいる。

 方向を変えれぬ、空中で背中を取られた。


 やられる。


 そう思った瞬間に、俺の足裏めがけて、魔法を放った。

 その力場を踏み台にして、もう一歩蹴り出した。

 空中で回転し、王の剣を逃れる。


 けん制として、当たるはずもない一振りを王に向ける。

 これが王の動きを制約した。

 無理な動きの反動を吸収出来ずに、彼は体制を崩し受け身の取れない状態で吹き飛んでいった。


 そんなスキを見逃すはずもなく、壁に打ち付けられた王の首に、剣を突き立てる。

 お互いの動きが止まり、時間も元に戻る。

 いままで、2人が動き回っていたため、吹き飛ばしていたものが、ほうぼうに飛び散らかってゆく。


 そして訪れる静寂。

 やっと余裕が出て見渡せば、球技場はメチャクチャだ。


「王!」


 最初に声を出し、駆け寄って来たのはヨンさん。


 王は手を上げて答える。

 俺の剣は、首の横に突き刺さっている。

 かろうじて、剣先をそらす余裕だけは生まれたのだ。


 王も俺もその場に、寝転ぶ、精根尽き果てた。


 この後、リーシェさんが泣きながら抱きついて来たらしいが、寝ていたので覚えていない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。