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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
7章
85/104

7-3.悪党退治

前回あらすじ:ご隠居「カクさん、スケさんやっておしまいなさい」

ショザル「はっ」

ヨガ「誰がスケさんだ」

「何て物持ち込んでくれるんですか、勇者殿」


 最後の『勇者殿』は、嫌味だな。

 彼女はこの街のギルド長で、若かった時はさぞ綺麗だったと思わせる人だ。


 俺達はギルドの奥に通され、柔らかい椅子に座っている。

 人目を避ける依頼者と商談する部屋かな。


「持ち主のいない冒険者プレートを拾ったら、ギルドに届けるのは決まりですから」


 俺は何も気づいていないふりをした。


「プレートに名前が刻んであったと思いますが、何故そっちに行かなかったのです」


「名前は領主と同じなんですが、これ持ってた人が領主様は違うって言うので」


「持っていた人とは、誰です?」


 ギルド長が乗り出して聞いてきた。


「教えませんよ、危ないじゃないですか」


「その人が危ないのは、理解してるのですね」


 ギルド長は軽くため息をつき、背もたれに戻る。


「それほどの事なのですか。

 規則に従って、プレートを本人に返すだけですよね。

 決められた事をするだけですから、ギルドの責任では無いと思うのですが」


 キューさんも何もしらない体で、ギルド長に聞く


「気楽に言いますね。

 刻まれている名前はメイペック・レァ・ウケニール

 この街で、彼の一族の家名を騙るなどできません、本人です。

 そして街の現領主様」


「家名を書いたのですか、それは随分と『自分は特別』感を出してますね」


 俺とは違う。


「全くです、魔物に名家の名など関係ないので、こんな特権意識は危険です。

 最初の仕事で、鼻を折っておきました」


「折っておきました?」とリーシェさん。


 ギルド長が自分で折ったような口ぶりだ。


「私は当時まだ窓口に出ていましたので。

 このギルドでは、面倒を起こしそうな坊やは、最初にガツンとやるんですよ。

 無論フォローも頼んでるので、死んじゃうような事はありません」


 平然と怖い事を言う。

 技量を越える依頼をしたと言う事か。


「大抵はそれで冒険者やめるんですが、彼は続けましたね。

 臆病が慎重に、生意気なガキは、挨拶の苦手な少年になりました。

 大活躍する事はありませんでしたが、自分の出来る範囲を理解して頑張ってましたね」


「そうでしたか。

 でも街で領主様が冒険者だったという噂を、聞いた事がありませんね」


 ビチュレイリワの調べでも、知っている者を見つけられなかった。

 現領主も知らないので仕方がないが。


「最初の依頼から逃げ帰って来た後は、家名を出す事は無くなったので、彼が領主一族だと知る者は少ないです。

 それに3つ星ですからね、恥ずかしかったのでしょう。


 そんな時、海賊討伐で兄が死亡、彼は家に戻されました。

 家に戻る時にプレートの返却を頼んだのですが、冒険者をやめるつもりはないと、返してくれませんでした。

 星を上げるつもりだったのでしょう、本当に戻っても最初のころは何度かギルドに来て、仕事をしていましたし。


 それが、こんな形で戻ってくるとは、本当に面倒な坊やだったですね」


 彼女の話を聞く限り、メイペックは悪人ではない。

 そして彼女は俺の言った『これの持ち主は、領主ではない』を否定していない。


「冒険者だった彼の事はわかりました、では領主様はどんな人なのです」


 妙な聞き方だ、一瞬ギルド長が俺を見る。


「領主になる前に、彼の功績は聞いたことが有りません。

 唯一、王に味方するよう進言しただけです。

 後は牢に捕らえられていただけの男としか印象がありません」


 冒険者だった彼より言い方が厳しいな。


「領主になれた理由は、旧反対勢力の暴走を抑えるため、これしか思いつきません。

 彼が領主である事で、抑えられている不満があるのです。

 未だに前領主の勢力は馬鹿に出来ないので」


 だから一族の彼が、領主におさまる必要があったのか。


 だが領主になった男は、王が許せる範囲をこえた。

 だとしたら、ギルド長が心配する必要はないだろう、一族への対策は済んでいるはずだ。

 準備が出来たからこそ、王が動いている。


 後は国と関係ないところで、領主が失脚すればいい。


 ある程度の裏事情は聞けた。


「冒険者プレートを本人に返す話に戻りませんか」


 とリーシェさんが話を戻してくれた。


「本人確認に、ギルドに来てくださいと言っても、領主様です。

 来てはもらえないでしょうね」


 領主様が冒険者ギルドに来る用事などない。

 実は領主様が昔冒険者などと言えば、ますます来ないだろう。

 ギルドで、冒険者本人かを判定できるのは有名な話だ。


「ところが、この冒険者には金貨2000枚と報奨金がでています。

 受け取る権利が有るのは、まずは本人。

 本人がいない場合は、このプレートを持って来たものです。

 確かめる必要があるのです」


「金貨と報奨金、ですか」


「私も今回調べてわかりました、王政移行前後の事です。

 金貨は移行前に、誰かが預けたようです、ギルドでは利子が付きませんが、確実です。

 もちろん誰が何を預けたなど絶対に口にしません、担当に当たった者以外知らなかったのはその為です」


 慎重な彼がもしもの時に用意した金か、自分に何かあった時にプレートの持ち主が生活に困らぬように。

 金貨2000枚なら、贅沢な生活は出来ないが、親子2人なら一生暮らせる額だ。


「報奨金は、王が海賊討伐を行った時、有益な情報を対価を持って求めました。

 実はその有益な情報は、数年前このギルドが入手していたのです。

 海賊が基地としている港や数など、海賊を壊滅させるには十分すぎるものでした」


「その褒美として当ギルドに褒美と表彰金がでました。

 金は当ギルドが半分、残りを情報提供者に分ける事になりました」


「その情報提供者がメイペックさんなのですね。

 その時、どうしてメイペック、いいえ、領主様に持って行かなかったのです」


「彼からの情報提供を示す物はあったのですが。

 当時地下牢に入れられたはずの、領主はどうやって海賊の情報を知り、どうやって当ギルドに手紙をだせたのでしょう。

 それに、報奨金が出ているのを知っていても、領主は要求をしてきませんでした。

 違うかも知れないと、色々と調べていたのです」


 ギルド長の目の奥に、暗い光を見た。

 なるほど。


 冒険者が理不尽な理由でやられた場合、ギルドがやり返す、古くそしてギルドの軸をなす考えかただ。

 バカな者以外は、不用意に冒険者には手は出さない。

 このおかげでリーシェさんも守られた。


「『閃光3』に頼むのは贅沢なのですが。

 ヨガさん、この冒険者プレートと預かっていたお金を、領主様に返してきていただけませんか。

 これは、当ギルドからの指名依頼とさせていただきます」


 指名依頼なら、断れないか。


 ーーーーー


「本日は、時間をいただき、ありがとうございます。

 本来ギルド長ミルヒュアナが来なければならないのですが、どうしても外せない用事ができてしまい、私がまいりました」


「そうかしこまる必要はない。

 こちらも、噂の勇者殿にお会い出来ると楽しみにしていた」


「そう言っていただけるのは、光栄でございます」


「なんでも預けてあった金を、返しに来られたとか」


 彼が冒険者だった事は言っていない。

 ギルドが預かっていた金を、返すと話を通していた。


「領主様が、以前ギルドにお預けになっていた金貨2000枚。

 それと、海賊殲滅のさい、王より賜った褒美の短剣と報奨金、金貨5000枚。

 持ってまいりました」


「ほう、それは凄いな」


 お前は知っているはずなのだがな、もっとうまくやってくれ。

 相手にしている俺たちが、バカみたいだろう。


「ご領主様より、ご連絡がないのでギルドの中で死に金になっておりました。

 すぐにでもお届けしましたのに、なぜギルドにお預けになったままになさったのでしょう」


 それ打ち合わせになかったよね、キューさん。

 なぜここで、不要に責めるかな。


「ふん。

 それはギルドで使ってほしいと、考えていたのだよ」


 今、思いついたよねそれ。


「ギルドは、勝手にそのような事は出来ません。

 もし、ギルドに寄付いただけるのでしたならば、一度領主様の物とした後にお願いいたします」


「考えておく」


 一度、自分の物にしたら渡さないか、強欲だな。


「ご苦労であった、下がってよい」


 これで俺たちの前に並ぶ、金貨の山が自分の物になると思ったのだろうか。

 考えが甘いよ。


「お待ち下さい。

 このままでは、お渡し出来ません。

 手続き上、あの魔法道具に手をかざし、メイペック様で有ることを証明していただかねばなりません」


 街の入り口にあり、手をかざしている者を調べる魔法道具。

 嘘を言っているか判断するものだ、普通は怪しい者が選ばれて調べられる。


「私を愚弄するのか」


 俺を睨み怒鳴る、計画通りだ。


「ギルドの決まりです。

 どうしても行っていただかねばなりません」


 ギルドに預けた物が、そう簡単に騙し取れると思っていたのか。

 だからメイペックも大金をギルドに預けたのだ。


「この無礼、忘れぬぞ。

 帰ってギルド長に言え、私を侮辱する気がないなら、すぐに金を返せと。

 この街はギルドが無くても、なんの問題もない」


 冒険者ギルドなど、不要ならとうの昔に無くなっている。

 そんな脅しは効かない。


「これは冒険者ギルドの規則でございます。

 1つの街のギルド長が、勝手に変えて良いものではありません」


「このような恥辱にまみれてまで、そのような金など欲しくは無い。

 持って帰れ。

 ギルドの関係者は二度と、この屋敷に入るな」


 こまるのは、貴方だ。

 騎士や兵が嫌がる仕事は、冒険者が行っている。

 街の運営を冒険者抜きで出来はしない、神の名の元で人を無償でつかえないでもしない限り。


 俺は立ち上がりながら


「その魔法道具は王宮に入る時、誰もが行っているとお聞きしました。

 それほどの恥辱では無いと思います」


 王宮の警備は厳しい、どこでも行われている。


「褒美も受け取らない、それで良いのですね」


「なに」


 思わぬ反撃だったのだろう、俺の言った意味を理解出来ないでいる。


「今回お渡しする物の中には、王からの褒美の品もあるのですよ。

 いままで受け取らなかった事でも不遜というのに、これを投げ捨てるとは。

 王、あるいは王の周りにいる者達は、どうお考えになるでしょうか」


 海賊討伐の手柄を、彼に与えたギルド長の思惑は、これにあった。


 領主は次の言葉を出せずに、怒っている。

 怒りは、おもに立ち上がっている、俺に向かっていた。

 その怒りが一気も燃え上がったと見えたら、ふっとやわらぐ。


「こんな事で時間を取られるのは無駄だ。

 判った、やってやるわ」


 領主は上座から降りてきて、魔法道具の前に立つ。


 同時に俺の首すじには、剣がある。

 警備の騎士が2人、近づいて俺が動けぬように固めている。

 武器は入り口で預けている、全員丸腰だ。


「黙っていろ」


 ご丁寧に小声で忠告さえしてくれた。

 俺に変な質問を、させないためだ。


「私はメイペック・レァ・ウケニール」


 領主は王宮の礼儀を思い出して、自分の名前を名乗る。

 その前に『今は』と、声になっていない一言を、言っているのを俺は見逃さなかった。

 それを王宮で行っていたのか。


 魔法道具の手をかざした円が、赤く光る。


「おかしな事ですね。

 魔法道具は、領主様がメイペック・レァ・ウケニールでは無いと判断していますね」


「この装置は、壊れている。

 こんな馬鹿な事があるか」


「そうでしょうか。

 申し訳ありません、確かめて見てくれませんか」


 あえて俺に剣を向けた男に言った。


 言われた男は、魔法装置に近づき


「俺は、ミツァティーイ」


 青く光る。

 彼は、良い防具をしていた、隊長クラスだろう。

 多くの者が彼を知っている、偽名は名乗らない。


 その後も数人試してみたが、全員が青。

 もう一度、領主が名乗るが赤だ。


 それを見て全員の動きが止まっている。


「その男の元の名はリーヒッツ」


 俺の声に青く光る、領主の手は魔法道具の上にかざしたままだった。


 誰も気づいていないが、魔法道具には冒険者のプレートが意匠のようにセットされている。


 冒険者は最初に入る街で、必ずプレートが持っていた者の物か確かめられる。

 プレートをあの場所に置いて、衛兵が名前を呼ぶ。

 冒険者は誰もが知っているが、それ以外の人で知っているのは、街の門番をした兵ぐらいだろう。

 ついでに言えば、プレートは刻まれた名前以外には反応せず、魔法道具は真偽のみを判断する。


「こんな事は、でたらめだ。

 こいつらを捕らえろ、いや殺せ」


 領主が叫ぶ。


「ピノ、領主の味方じゃ無い人は」

「23人、今逃げだしてる人たち」


 ピノは室内の領主の味方を切り分けていた。

 大事な目撃者だからね、助けないと。


「リーシェさん、キューさん彼らの救出をお願い」


「「わかった」」


 これで俺達が来た意味がある。



この話パロディぽく軽く済ますつもりだったのに、何故長くなる(それは作者の能力が...)

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