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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
7章
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7-2.旅好きのご隠居

前回あらずじ:つい、ブンヘズ王悪い噂を探したくなります。

 俺は血を見た瞬間に、彼の近くに移動して治癒を行っていた。


「ヨガ、それ彼女の役目だよ」


 追いついたリーシェさんの指摘で、一緒にいた女性が男に手を伸ばそうとしていたのに気づいた。


「あっ、ごめんなさい」


 つい、謝ってしまった。


「構いません、主の怪我が治るのが一番ですから」


「ヨンが、遅いのが悪い。

 主を守るのがお前の役目だろう、これでは一緒に連れてゆくのを考え直さねばならん」


 彼女を護衛の男が責める、護衛のリーダーなのだろう。


「言うなショザル。

 彼より早く動ける者など、大陸に数人しかいないぞ。

 5つ星冒険者、そして魔境深淵からの帰還者、ヨガ殿ですよね」


 怪我をした男は、俺を知っていた。


「小僧、貴様なんて事を!」


「やめろ」


 護衛の1人が、少年を取り押さえようとしていたのを、主が止めた。


「どうして邪魔をしたんだ」


 少年の問に


「君を死なせたく無かったからだ」


 怪我をした男が言い返す。


「僕なんか、死んでも良かったんだ。

 あいつを殺せれば」


「残念だけど、君の剣は誰にも届かない。

 切り捨てられて終わりだったさ、それで良かったのかな」


 少年は何も言い返さない、自分でも判っていたのだろう。


「話してくれないか。

 私は怪我をしたんだ、それくらいの権利はあるだろう」


 少年は口を硬く結び、何も言わない。

 替わりに、彼のお腹が返事をした。


「そうか、何か食べながらの方がよいか。

 ショザルこの辺で、ゆっくりできそうな所を探してくれ」


 食事には、『ご縁ですので』と俺達も誘われた。

 怪我を治癒していただいたお礼と、返事を待たずに事を決めてしまう。


 護衛が見つけてきた食事所は、一目で最上級と判る場所だった。

 ここでゆっくりできる人は限られる。

 連れて来られた少年など、どうしていいか判らず、固まっている。


「そう言えば、名乗っていませんでした。

 私は都で、紙の商売を行っているトアルと申します。

 もっとも今は、店は子供に任せ、隠居の身ですが」


(彼、王だよね)


[ブンヘズ王です。

 お忍びで旅をしているのは何度か確認していますが、紙商売の隠居設定だったんですね。

 そこまでは調べきれてませんでした]


「その若さで隠居ですか」


 キューさんは、この話しに乗る事にしたようだ。

『貴方の正体は...』とも言えるはずも無いので、それしか出来ないけど。


「私どもの紙は、国外からも求められ、商いもうまくいっております。

 引退しても心配が無くなったので、早々に店を譲りました。

 今は、若い頃は出来なかった、旅行三昧の日々です」


「そうなんですか、羨ましいですね」


 リーシェさんも話しをあわせる


 王は30代に見えるが、本当は46歳なんだそうだ。

 長身で細身だが痩せすぎには見えない、そして女に人気が出そうな甘い顔立ち。

 さぞモテるだろ。


 ついでに聖騎士は52歳、あの容姿はどう見ても20代だ。


 王は、少年に向けて


「君は何故、領主様を狙ったの」


 あの馬車に乗っていたのは、領主様だったのか。

 無謀すぎる。


「あいつは、母さんの仇だ!」


「領主様が、仇とは穏やかじゃないな」


 少年はまた口を一文字に結び、奥歯を噛み締めている。

 涙が出た、それに気づき慌てて、涙を拭く。


「僕は、男だから泣いちゃだめなんだ」


「そうお母さんが言ったのかい」


「3日前の夜、宿が襲われたんだ。

 母さんは、昼間、あいつに手紙を出したって言ってた。

 その夜、僕は別の所にいた」


 彼女はそうなる事を予見し、少年を遠ざけたのか。

 母親の死を思い出し、限界だった、少年の涙が止まらなくなった。


「手紙の内容を知っているかい」


 王は優しい声を出した。


「父さんの事を聞いたって」


「君のお父さん?」


「僕の父さんは、メイペックって言う」


「ちょっとまって、それは領主の名前だよ。

 君、彼の息子なの」


 ヨンさんが声を出した。

 王の話に割り込むとは凄いな、護衛の男が渋い顔をする。

 でも王は気にしていない、逆に嬉しそうだ。


「あいつは父さんじゃない。

 父さんの影武者だった男だ」


 ポンと音が鳴る、王が手を打った。


「詳しく話してくれないか、力になれるかもしれない」


 しまった!

 何か有る。


「ヨガ。

 私達は、この辺で失礼させてもらったほうが、良さそうよ」


 リーシェさんも何か感じたようだ。


「慌てるなリーシェ。

 彼は、わらわ達が誰か知っていて、話しを聞かせようとしている。

 荒事に力を貸して欲しいのだろう。

 彼は都で顔が利くそうだ、貸しを作っておいても良いと思うぞ」


 タビさんは最初からそのつもりだったのか。

 俺たちは、いずれ王に頼み事をする、先に恩を売っておけと言うのだろう。


 力が欲しいなら王には兵がいる、公に出来ない何かをさせる気だ。

 王は少し口角を上げ、タビさんの考えに答えた。


 判りました。


「リーシェさんあきらめよう。

 今さら、抜けれ無いよ」


 俺はあきらめた。

 リーシェさんのため息と、キューさんケイトさんの

「「ヨガに任せる」」が重なった。


「ヨガ殿は、現領主様のメイペックを知っていますか」


 それを了承と考えたのだろう、王が説明を始めた。


「いいえ」


 ビチュレイリワなら知ってるかも知れないが、俺は街の領主までは把握していない。


「彼は街からの許可を独占し、緑晶石の採掘と販売を行っていた、領主の甥でした。

 前領主は血縁に権限や特権を与え、自分の地位を守っていたのです。


 そんなメイペックだが、国統一時の混乱時はブンヘズ王に味方するよう、前領主に進言した。

 自分の利権が小さくなるその進言に怒った前領主は、彼を地下牢に幽閉してしまった。

 街が降伏した後に救い出された。

 しかもその間に家を守っていた部下が裏切り、蓄えていた緑晶石をほとんど持って逃げ出したとも聞いている」


「緑晶石を持って逃げたのは、父さんだ。

 裏切ったんじゃない、戦争に巻き込まれないよう、隠れたんだ。


 小さい僕を連れて一緒には行けないので、母さんは故郷のシャザゼルに逃げた。

 父さんは落ち着いたら、母さんを呼ぶはずだったんだ」


「なるほど、当時の緑晶石は、金より価値があり、金より軽い。

 持ち出すには便利だ。

 お父さんは、何処に逃げたんだい」


「海の向こうだって聞いた」


「海賊の元に逃げたのか」


 王が言ったのは、乱暴な相手だ。


「ご存知のように、この海の対岸には、西から続く山脈が半島として伸びて湾になっています。

 ほとんどの海岸が崖で、利用できる平地もない。

 だれも近づかない場所ですが、人が近寄らないため集まる者もおります」


 それが、海賊か。


「海賊は馬鹿ではない。

 緑晶石も、そのままでは価値がなく、売れて初めて金になる。


 販売ルートを持ってるメイペックを、襲って奪う事はしない。

 考えた逃げ先でしたね」


 ただ、女性や子供を連れていける場所じゃない。


「僕と母さんはシャザゼルで、父さんが呼んでくれるのを待ってたんだけど、すぐに国境が封鎖されてしまった。

 最近までシャザゼルから出ることが出来なくなってしまってたんだ」


 シャザゼルは、『七つの子』で一番南の国、カソーエナと国境を接している。

 関係悪化で国を出れなくなるとは、運がない。


「すこし前に国境が開いたって噂を聞いて、すぐにこの街に来たんだ。

 そうしたら、お父さんが領主になったって聞いて驚いたんだ。


 どうして迎えに来てくれなかったんだろうって、母さん泣いたんだけど、こっそり見に行ったあいつの顔を見て判ったって。

 今領主の男は父さんじゃない。


 母さんは覚えてたんだ、あいつは父さんの影武者だった。

 そして父さんに、逃げるように進めたのもあいつだって」


「だとすればお父さん、騙されたんだ」


 王が断じた。

 多分そうなんだろうな。

 影武者なら、似ていたはずだ。

 そして彼を見分けられるほどの側近は、メイペックが動乱後の再起を考えていたなら連れて行く。


 本物のメイペックと彼らはどうなったのか。

 考えるまでもない、彼らの命の担保だったはずの、緑晶石は一夜にして価値が無くなっている。

 影武者は本物になり、牢から助け出され領主になった。


 ただ、そうなるためには条件がある。


「おじさん本当に、助けてくれるの」


 少年の目が、王を真直に捕らえる。


 その視線を受け


「街の偉い人が嘘ついているのは、いけない事だからな懲らしめないと。

 このお兄さんは勇者だから、悪人はほおっておけないさ」


 何勝手な事言い出すんだ。

 少年の視線が俺に移る、期待に溢れた目だ。


「任せな」


 つい言ってしまった。

 王の思惑通りだ。


 俺の言葉でやっと安心したのか、お腹が空いているのを思い出したらしい。

 少年は、目の前に並ぶ食べ物を腹に入れ始めた。

 誰に取られる訳でもないのに、必死に食べている。


 限界まで食べ、そして寝てしまった。

 まだ、口の中に飲み込んでいない物が残っている。


 見ていた全員が笑う。

 いかつい大男の護衛でさえ、笑っている。


「良いものを見せて貰ったな。

 これだよこれ、こんな平和な世を見たいのさ。

 ショザル、ここは泊まる事もできたんだよな、全員の宿泊を頼んできてくれ。

 ヨガ殿もご一緒に」


 いまさら断る理由もない。

 酒の席も移された。


 女性たちが1つの部屋にまとめられ、そこに少年が運ばれた。

 母親と一緒だったので、女性と一緒の方がいいと、良くわからない理由でだ。

 王は護衛達と、俺は何故か1人だ。

 1人で寝るには広い部屋を頼んでおいたと言われたが、そんな面倒くさい事を3人の前で言うのは辞めて欲しい。


「国を納めるには、綺麗事ではすまん。

 清濁併せ呑む必要があるが、今の領主は汚れすぎてたか?」


 酒を飲みながら、タビさんが聞く。


「にがい程度では済まなくなってきた。

 メイペックは、利にさとい小物だと聞いていたのだが。

 さっきの話で納得出来たよ、別人だったとはね」


 もう王は、自分が誰か隠そうともしていない、俺たちにバレている事も。

 今回の事は俺たちが解決しなければならないと言う事だ、それが王に正式に会うための条件になる。


「彼が、メイペック当人でないということが、バレれば事は簡単か」


 つい簡単な方法を探してしまう。


「そうだね」


 ケイトさんが、俺の杯に酒を注ぎながら、考えてる風に言う。

 でも絶対に考えてないだろうな。


 リーシェさんは王の横で酒を注いでいる、なれない事だが南方には女性が酒をお酌する風習がある。

 王は最初不要を言ったが、結局隣に置いている。

 その手伸ばしたら、王でも殴るからね。


 キューさんはタビさんと一緒に飲んでる。

 ただし飲める量が絶対的に違う、もうろれつがあやしい。


「領主は、彼のお母さんを襲う現場には来ていないのでしょう。

 そいつら見つけても、何も知らない下っ端なんだろうな」


 良い案がないか、その夜全員で考えたが、


「善人ばかりのようだ、悪知恵は出んか」


 と言う王の一言で解散になった。


 ビチュレイリワには、いくつか方法はあるそうだ。

 聞いても、思いつかないならやめた方が良いと、教えてはくれなかった。

 よっぽど、ひねくれたものだったんだろうな。


 翌日は手分けして領主を探った。

 調べて判った事は、彼が用心深い事と、行っている悪事だ。


 している悪事はよく聞く話だが、ブンヘズ王の目指す理想とは相容れない物だ。

 報告を聞いていた王の顔に表情が無くなっていゆく。


 そして自分がメイペック本人では無いと証拠になりそうな物は、全て徹底的に潰している。

 行方不明の者が多くいる。


 ついに王は


「事故に有って貰うしかないのか」


 とぼやいた。

 それ俺達にさせる気か、冒険者は殺人は請負わないぞ。



 疲れを宿の風呂に浸かって、落としていた。

 王はいないが、2人の護衛と一緒だ。


 彼らも常に王の近くにいるわけではない、今日は俺と一緒だった。

 俺の監視も兼ねてだろうが、一緒に風呂で酒を飲む程度には、仲良くはしてくれている。


 そこへ少年が走り込んできて、そのまま一気に湯船に飛び込む。


「先に体を洗え!」

 は判るが

「こぼれる、もったいないじゃないか!」

 酒器の入った盆をかばい護衛が少年をとがめる。

 あの王にしてこの護衛だ、いい性格をしている。

 

「僕は男だ。

 女と一緒に風呂なんか入れるか」


 湯から顔を出した少年の第一声だ。

 キューさん達、彼を一緒に風呂に入れようとしたみたいだな。

 彼は微妙な年頃だと言うのに、悪ふざけがすぎる。


「一度、湯から出ろ。

 湯には汚れを落としてから入るものだ。

 俺が洗ってやる、こっちにこい」


 一番小柄な護衛が、少年を湯から引き上げた。

 見た目と違い力がある、護衛全員に言えるが、無駄な動きがなく全員超一流ばかりだ。


 !

 少年はペンダントをしていた、しかも冒険者の物だ。

 彼の年齢では、冒険者にはなれない。


「そのペンダントは?」


 少年は、一瞬何を言われたが判らなかったが、もう一度聞くと。


「母さんの形見。

 元々は母さんが父さんに貰ったものだって聞いてる」


 護衛も覗き込むが、彼が興味を示したのは、一緒に付いていた緑色の棒だった、


「君の父さんが、お母さんを愛していたのは本当だったんだな。

 この純度の天然緑晶石は見たことがない、価値が下がる前なら一財産だ」


 その言葉に、少年の目が潤む。

 色々な事が判り始める年齢だ、母が捨てられていた疑念を持っていたのだろう。

 良かったな。



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