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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
6章
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6-9.思わぬ一撃

前回あはすじ:聖女様びっくり

 騒ぎから4日目、俺達は何もする事がない。

 聖都の賓客となった俺達には、豪華な部屋と食事が与えられたが、『少し待ってください』と言われ放置された。

 その後、何もない。


 最初はオードさんも一緒にいたのだが、呼ばれて出ていき、そのままだ。

 護衛の名無しさんもいない。

 本来護衛は教会騎士の役目だが、オードさんが教会騎士を信じられぬと、押し切った。


 護衛に付く前に、名無しの火傷跡や声を治そうとしたが、断られた。

 キギの街にいた時には、最後でいいと言っていたが、今はその配慮も不要なはず。


 人にはそれぞれ知られたく無い事の1つや2つは持っている、パーティの誰も無理に聞きだそうともしない。

『名無し』が良い人だという事実で十分だ。


 街を観光しようと出かけてみたが、祈りと修行の場しかない、すぐに飽きてしまった。

 3日目には、ピノ以外には外に出ようとも言い出さなくなった。

 ピノだけは「興味深い」と今日も出歩いている。


「食べて、寝るだけ。

 太ってしまう」

 とキューさん、自分の腕を見てぼやく。


 それを聞いていたリーシェさんも

「私も」

 とお腹をなでた。


 リーシェさんは、もう少し肉が付いてもいいと思う。

 エルフまじりなのと、幼さが残った体型のため、細すぎる思う。


「ヨガ、なにいやらしい目で見てるの。

 判るんだからね」


 と言いながら、腕を腰に当て胸を張り、まんざらでもない顔をした。

 ホント、リーシェさん可愛い。


「情けないな、わらわはいくら食べても太らんぞ」


 それを、タビさんが言うのは反則だと思う。


「暇そうだな」

 ケペレさんが訪ねて来た。


「気になって来てみれば、放置中というわけか。

 ヨガ殿達を忘れているのでないと思うが、今聖都は混乱していてどうしようもない。

 教皇派が魔王軍とつながっていた、この問題を解決するだけでも大変なのだ」


 大体の動きはビチュレイリワから聞いている。


「そのうえ聖女様がたおられてしまった。

 心配はいらない、お命に関わる事ではない、お疲れが出たのだ。


 元々教祖様の意思を呼び出すというのは、そう簡単に出来るようなものではない。

 それに加えて、今回の騒動だ、聖女様への負担が大きい」


「枢機会議は役に立たんか」とはタビさん


「そうだ、そもそも枢機会議のメンバーのほとんどが、教皇派だ。

 しかも面倒な事に、魔王軍の事をしらない教皇派もいるらしい。

 いっそのこと、教皇派は全員、魔王軍に下っていてほしかったよ」


 そうすれば見分けが簡単だ、完全に排除出来た。


「改造を受けていなくとも、魔王軍と通じていた可能性もあるだろう」


 暗黒大陸にはそうそう行けない、魔王軍には協力しても、まだ改造を受けていなかった者もいるかもしれない。


「そうだ、だが『知らない』と言われてしまえば、それ以上の追求は出来ない。

 しかも聖女様がおられた事で、話が複雑化した。

 聖女様はご高齢だ」


 ここを持ちこたえれば遠からず聖女様がいなくなり、聖女派の力は弱くなる。


「肝心の教皇は、どうなったのよ。

 あの場にいなかったから、捕まっていないのでしょ」


 キューさんの指摘は最もで、教皇は捕まっていない。

 大本の原因が未だそのままだ。


「まだだ。

 だが居場所の検討は付いている。

 霊山ヴェモジルの神殿にいると思う。

 教会騎士達で、総攻撃をしている最中だ」


「居場所が判っていて、捕まっていないのですか」


 ビチュレイリワから表面的な事は聞いてはいるが、リーシェさんは状況を当事者達から聞く気だ。


「霊山ヴェモジルの神殿は、洞窟を利用して造られていて、聖都建設当時のものだ。

 今は使われていない。

 教皇はそこに入り、防御を張り巡らした。

 あれだけ侵入を拒めば、逆にそこにいる事になるよ」


 ビチュレイリワも教皇が、ヴェモジル山にいる可能性が一番高いとしている。


「突入部隊にもかなりの被害が出ている、ヨガ殿達と違い本当に殺しに来ているからな。

 やっと入り口を越えたところだ、教皇にたどり着くまでどれほどの時間がかかるか検討もつかん」


 ケペレさんは、わざと明るい声で言った。


「だが、良い事もある。

 聖女派の教会騎士が強くなっている。

 心の底で、教会の教えに疑問をもっていた奴らだ。

 それが歪められた教えと知り、枷が外れた。

 今のクリバルヨイア殿であれば、ヨガ殿ともいい勝負をすると思うな」


 まあ、聖騎士の話もある、ない事でもないか。

 ただし俺も、全ての手の内は見せてないぞ。


「なにやる気になっているのですか、ヨガ。

 それにせっかく聖女派の騎士が強くなっても、犠牲者が出ているのでは、敵の利になってしまいます」


 ピノが戻って来るなり、話に加わってきた。


「聖女様に、謁見は可能ですか、策があります。

 いたずらに被害を増やす必要は有りません、話が済むまで攻撃を一時控えていただけませんか」


 その策って、俺達かな。


「方法が有ると言われるのですね。

 わかりました、すぐ進言してきます」


 ケペレさんは駆け出した。



 聖女様との謁見は、その日に行われた。


「このような場所にお迎えする無礼をお許しいください。

 教皇を捕らえる策が、お有りとお聞きしました」


 謁見は、聖女様の寝室の隣、非公式な場所で行われた。

 聖女様の負担にならないよう、ゆったりとしたソファに座っている。

 俺達の席は一段高くなっている、客への礼は忘れていない。


「捕らえると言うのはなく、叩く策です」


 応えたのはピノではなく、ケイトさんだ。

 聖女様には守護竜(ガーディアンドラゴン)からの言葉となる、軽くはない。


「教皇を倒すと言われるのですか」


 聖女様の視線が俺に向く。

 最初、俺もそう思った。


「ビチュレイリワの力を借ります。

 ビチュレイリワの力は強力で、使えば周りに影響が出ます。

 暗黒大陸を沈める場合その影響は測り知れず、そのため大陸中の国の許可が必要なのです。

 ですが、ヴェモジル山にいる教皇を倒すので有れば、その被害は『七つの子』内で済みます」


「『七つの子』と聖都の許可だけで、ビチュレイリワ様は力を奮えると言われるのですね」


「はい」


 ーーーーー


 最初は強烈な光だ。

 目をつぶっていいても、まぶたを越えて明かりを感じるほどの。

 誰も目を開けている者はいない。


 次は体を揺すぶるほどの轟音。

 振動と言っていい。


 そして爆風。

 ヴェモジル山から半日ほどの距離にある聖都でも、すごい風だ。

 近くに有った建物は吹き飛んだだろう。

 そこに済む人は、事前に避難している。


 一連の暴力を耐えた人が目にしたのは、山が無くなった風景だ。

 見慣れた山が途中から無くなっている。

 切り取られた傷口は、地面が赤く燃え上がっていた。


 静寂しか存在しない。

 事前に耳栓をするよう指示がでていたせいではない。

 誰も声を上げない、また動く者もいない、それは動物も含めてだ。


「これが、ビチュレイリワの力か」


 タビさんだけは、大丈夫だったようだ。


「わらわがブヨードで受けたものに近いな」


 その声で、俺も我に帰った。

 こんなとんでもないものを受けた事があり、生き延びている。

 霊獣の凄さを再認識した。


 ケペレさんが出て行った後、ピノが俺達に説明した。


「一度、ビチュレイリワの力を見てもらったほうがいい」

 と、

「その方が魔王討伐の話しに現実味を感じてもらえる」


 確かに、山を吹き飛ばせるのなら、魔王の住む暗黒大陸を吹き飛ばせるかも知れない。

 その影響が多大なため、各国の許可が必要という話も、これを見れば信じられる。



 一気に聖女派が活気づき、逆に教皇派は恐れた。

 俺達は危険すぎる、教皇派だった者は、今持つ物を持って逃げただした。

 聖女派は追わなかった、今までに蓄えた富の持ちを許されると知った教皇派は、多くが逃げ去ってしまった。


 無論、残った者もいる。

 ただ彼らは、聖女様の死後を見据えての行動だ、聖女派は良い気はしない。


 その夜、久しぶりに、オードさんが俺達の所に来た。

 愚痴を言いにだ。


「教皇派を完全排除は出来なかった。

 あの力を見て不安がる人々につけ込んでいる、『悪』の力ではないかと。

 自分たちが除かれないよう、利用しているだけだ」


 やりすぎたか、大きすぎる力は不安になる。

 だがあれくらいでないと、魔王討伐も現実味がない、手加減が難しいか。


「時は奴らに味方する。

 なんとも厚顔無恥なやつだ」


「その、無恥厚顔の者は何人くらいいるんです」


 そんな人の気持ちは理解できない、本当にいるのか。


「2人だ。

 その2人が、枢機会議に入りそうなので困っている」


「そう言えば、オードさんは枢機会議のメンバーにお戻りなったとお聞きしました」


「救いを求めて入った教会で、いつの間にか政治をしていた、当時はそれがいやで辞めたのだか。

 いま考えれば、そう考えるよう仕向けられていたな」


「9人中2人なら、問題ないのでは」


 キューさんだ、早くこの街を出たいと言う思いが、少し漏れているかも。

 さっさと終わらないかと考えている。


「残念だが、ヨガ殿に協力するためには、全員の賛成が必要だ。

 問題が大きすぎる」


「2人が反対していると?」


「そうではない。

 ただここで借りを作ると、後で大変な事になるのは判っている」


 借りは作りたくないか。


「だが、そうも言ってられん。

 聖女様が、ご健在なうちに魔王討伐の話は、けりをつけて置きたい」


 ここでも時が彼らの味方だ。


「教会が、各国に影響力を持つと言っても、それぞれの国ごとに違う。

 すぐに良しとしてくれぬ国もあろう。


 筆頭は南方のカソーエナだな。

 聖騎士の名の返上以後、あそことは交渉がない。

 冒険者は往来自由だが、教会の神官は入国を何かと理由をつけて断っている」


 元聖騎士が国王の国か。


「『人界の盾十国』とも縁が薄い。

 教会の派遣は受け入れてもらえているが、王に会えるのは年に数回。

 特に冒険者を生み出したアルテミラルとは絶望的だ」


 この国に、俺達はツテがある。

 国王に謁見する手立てはありそうだ、使者になってもいいかも知れない、後で申し出てみよう。


「後は亜人の国か。

 あの国には、中央政府がない。

 誰に交渉すればよいのか」


「大陸の西の国なら、心配はいらぬ。

 あの国の正式な名は『女王の国』。

 わらわがその女王だ」


 いきなりのネタばらしだ。

 オードさん瞬きを忘れてしまっている、目を見開いたままだ。


「タビ様、貴方様の正体は聖女様よりお聞きしております。

 それに加え、あの地の『女王』なのですか」


「そうだ、そして魔王討伐のさいの承認はすでにヨガに伝えてある。

 心配は不要だ」


 そもそもが、タビさんが言い出した事だ。

 俺は乗ったに過ぎない。


「教祖様と火狐(ヒコ)様の、ご関係は私を含め、数人しか知りません。

 この話が世にでる事は無いでしょうが。


 ヨガ殿のパーティに霊獣と守護竜(ガーディアンドラゴン)がいるのは、白昼多くの者が目撃しました。

 箝口令は出ているが、このような事は隠してはおけない、いずれは広まる。

 ヨガ殿、貴殿は唯一無二の運命を背負われている」


「彼一人に背負わせる気は、無いけど」

 ありがとう、リーシェさん。

 1人では背負いきれませんって。




 元教皇派の求めて来たのは、免罪符。

 これで過去の事柄で、彼らを裁けなくなった。

 その後は物事が作業として、1つ1つ進められて行く。


「なんかスッキリしないな」


 タビさんのいうとおりだ。


 枢機会議も再開される運びとなった。

 俺達も呼ばれている。

 今回は議長に選ばれたそうだ。


 後から来た、会議の参加者に挨拶をしている。

 無論俺達にも。


「全員が揃ったら聖女様を迎えにゆく手はずになっております。

 後は、例の2人ですか。

 枢機会議のメンバーの来る時間はすでに過ぎていると言うのに」


 俺達は、会議メンバーの後だったんだ。


「自分たちは特別だと言うのでしょうか。

 揃った後に聖女様をお呼びする事にしていて正解でした。

 下手をすれば彼らは、聖女様の後に来ますからね。

 噂をすれば来ました、ヨガ殿が来たのを確かめていたのでしょ」


 オードさんは、何を思ってるかわからない笑みを作り、彼らに近づいた。


 握手をかわそうと手を伸ばしたその瞬間、2人の首筋から血が吹き出した。

 名無しが、2人を切りつけたのだ。

 2人はドサリと地面に崩れ落ちた。


「これはどおいう事だ」

「オード、やりすぎた」

「その者を殺すな、後ろにいる者を吐かせるのだ」


 一斉に騒ぎ出す


 これはオードさんが、やった事ではない、彼も驚いている。

 なぜ名無しさんが。


 護衛の教会騎士達に剣を突きつけられ、オードさんと名無しさんは手を上げた。

 抵抗する気はない。


「治癒を、2人を殺すな」


 - 来た -


 ユニコーンだ。

 月が出ているのか、ユニコーンの姿をしている。


「おお、ユニコーン殿。

 彼らをお救いください」


 駄目だ、ユニコーンでは彼らを治癒できない。

 間にキューさんが入れば可能だが、今は事情もわからず動きたくはない。


 - 吾にはその骸を生き返らす術は無いぞ。

 吾が救いに来たのは、その娘 -


 ユニコーンはゆっくりと騎士達に近づく。


 - 長き苦痛より、救われるべきは、この娘 -


 ユニコーンの角が、名無しにふれる。

 娘?


 名無しが仮面を取った。

 その下に有った顔に火傷のあとはない、美しく涼やかな顔だ。


「私は、ロビネル村のソカ。

 ロビネル村を襲い火を放ち、両親と双子の姉を殺した者を、私は覚えている。

 この2人は村を襲撃した者達の中にいた。

 私は復讐を果たしたのだ」



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