↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
6章
80/104

6-8.聖女

前回あらすじ:久しぶりに大暴れ

 壁が消えると、座り込んでいた騎士達が飛び出していくのは、先回と同じだ。

 ただ、今回入って来たのは22人。


 着ている鎧が明らかに、シャレーガル達と違う。

 銀色に輝き、金で装飾されている。

 高価そうだという事と、蓄積されているマナの量が、今までの物と違うとひと目でわかる。


 上級騎士達は、ゆっくりと入ってきた、その後に続く者はいない。

 彼らの部下は、すでに俺達に倒されている。

 もう壁を作る必要はない。


 上級騎士の中に知った顔がいた、カナート卿と呼ばれていた男だ。

 近づくと、彼は慌てて盾を構えた。


「このような事をして、ただで済むとは思っていないだろうな。

 神より与えられし、我が剣で成敗してくれよう」


 その勇ましい言葉とは反対に、完全に逃げ腰だ。

 俺が剣を振り上げただけで、小さい声を上げ、盾に隠れてしまう。

 やる気が有るのか?


 掲げた剣を、一気に振り下ろす。

 カナート卿が構えていた盾と、盾を持っていた腕を切断する。

 大量の血とともに、彼の悲鳴が上がった。


「神からいただいた盾にしては、薄いな。

 お前、神様に嫌われているじゃないか」


 わざと騎士達に聞こえるよう挑発すると、他の騎士達の動きが止まる。

 自分達と同じ防具が破られ驚いている、切られるなどとは思っていなかったようだ。


 地面に転がるカナート卿は慌て胸のペンダントを手で握る。

 必死に握りしめ祈ると、腕の出血が止まった。

 ペンダントに、ユニコーンの角の欠片が付いていた。


「痛い、ちきしょー。

 早く、治せ!」


 俺に叫ぶ。

 彼は何か勘違いしているようだ。


「何故?」


「何故だと。

 今までの連中は、完全に治癒し生き返らせていたではないか」


「それが、お前を治癒しなければならない、理由になるとでも」


 先の教会騎士達には、深い信仰心が有った、それこそ死んでも立ち向かうほどの。

 死を体験させたのは、その心を折るためだ。

 お前達、家の身分で騎士になった者には、それほどの信仰心や忠誠心は見えない。

 有ればもっと前に飛び込んできていたはずだ。


 俺達は、動きの止まった騎士達に襲いかかる。

 致命傷にならない程度に、手足を切り飛ばした。


 何人かは確実に潰す必要のある者がいた。

 そのついでに、今後邪魔になりそうなたちの悪い貴族様には退場してもらう。

 上級騎士全員がユニコーンのペンダントを持ってた、自分で治癒しそして逃げだした。

 壁は無い、逃げるのは可能だ、ただし全て見られているが。



「双方、剣を引きなさい」


 1人の女性の声が響く。

 声の主は高齢な婦人、凛とした立ち姿には品がある。

 聖女様のご登場だ。


「あなた方の事は、ケペレから報告を受けています。

 ですが何故このような事を」


 聖女様は広場の噴水の正面に進み出てきた。

 俺達はその前に並ぶように出る。


 全ての精霊は消え、キューさんもユニコーンから降りている。

 リーシェさん、キューさんの表情が薄い。


[2人は強制的に眠ってもらいました。

 極度な集中力を要求されて、かなり無理をしてましたので。

 肉体は今、私が制御しています、そのおつもりで]


 気づけば夕方だ、聖都には朝入ったのだから、結構長く戦いをしていた。


 2人は全力で、死なないように頑張っていたのだ、限界なのも納得だ。

 はた目には生き返ったようにみえただろうが、彼女達のしていた事は治癒だ。

 死んでからの、蘇生など出来るはずがない。

 吹き飛ぶ、切り刻まれる前に、高位の治癒魔法をかけていたのだ。


 もう二度とこんな事は、させないようにしよう。


[貴方が死にそうになったら、2人共躊躇なくやると思いますよ]


 なら、そうならないよう、気をつけます。


 さて、聖女様の問だが。

「殺されそうになったので、その手を逃れただけ。

 誰も死んでいないはずだ」


 俺達に敵意はない。


「この化け物が。

 その力こそ、お前たちが人で無い証拠だ」


 あの茶番審判の時、偉そうに座っていた男の1人がまだ俺達を告発する。

 席ごと吹き飛んでしまったらしく、今は聖女の後ろに立っている。

 いい大人が、聖女様に隠れるなよ。


「この程度は、聖騎士様も出来るのでは。

 強力な力が人でない証拠になるのなら、聖騎士様も人では無いのですか」


『聖騎士』の名を出すと男の顔が変わる、本来いるべき彼がいないからだ。

 彼は今日聖都に来ると、約束していたのに現れなかった。


 なぜかと言えば、ビチュレイリワが

[聖騎士へ連絡できないよう妨害。

 教皇派には、聖騎士のふりをして、聖都に来ると返答した]

 からだ。


 彼らが連絡に使っていた、『古い技術』を逆に利用させてもらった。

 聖騎士は何も知らず、今も魔境辺境にいる。


「彼は教会の聖騎士だ」


 それが何だと言うのだ。


「ならば教会は、彼のした事は全て認めていると」


 今の言葉は聖女様に向かって返したが、彼女の表情は変わらない。

 ただし、後ろにいたケペレが苦い顔をした、聖女派には彼を快く思っていない者もいると言う事だ。


 聖女様は俺を睨んでいる、怒ってはいないようだが。


「お話をお聞きする前に、この始末をつけねばなりませんね。

 ですが、私では荷が重い」


 そう言って、聖女様は祈りだした。

 敵意は感じられないが、友好的なものでもない膨大なマナが集まりだした。


 おい待て、何勝手に始めてるんだ。

 一応身構えて待つ、敵意は無いのだ彼女のする事は止めないほうがよい。

 下手に怪我をさせてしまうと、こちらの立場が悪くなる。


 空間がヒリヒリする。

 聖女様の前、すこし上にマナが集まり、淡く光り出した。

 その光が人の姿になる、光る若い女性が宙に浮いている。


「ビルヒニア」


 タビさんだ、その光の人にゆっくりと近寄る。

 その名前、初代の教祖!


「お前はまだ、こんな所にいたのか。

 そうか、そうだったな、お前は真面目だった。

 自分のした事の結末を、見届けるつもりだったのか」


 光の女性は、タビさん近くに降りてきて、頬に触れた。

 微笑んでいる。

 そして上空にゆっくり上る、その姿は徐々に人のものではなくなり、輝きも薄くなっていった。


「亜人!

 どうしてビルヒニア様を知っている」


 今度は、聖女様も驚いていた。


「お名前が記された書物は、外界には無いはずだ。

 その記録がある白き図書館に入れるのは、許可された数名のみ、貴様が知っているはずがない」


[白き図書館は、後ろの噴水に入り口が隠してあります。

 残念ながら結界が有って私は入れませんでしたが]


 ビチュレイリワの覗き好きは、相変わらずだ。


「ましてやビルヒニア様のお姿の記録など、どこにも存在しない。

 お姿を知るのは、聖女の呼びかけに応え、こちらに来られた時のみ。

 私もそこで初めてお目にかかった。

 これまで、ビルヒニア様をお呼びした場に、貴様はいなかった」


「すでに世に忘れられ語る者もいないが、その白き図書館にならビルヒニアの兄が誰だったか残っているのでは」


「それが何だと言うのです」


「そしてその"相棒"が誰なのかも」


 "妻"でなくていいんだ。

 その途端タビさんが光だし、グニャリと変形した。

 その姿になる気だから、"妻”は止めたのか、話が面倒になるものな。


 本来の火狐(ヒコ)様の姿に戻った。

 感じるマナ量が一気に増える。

 今更ながら、とんでもないのと一緒に旅をしてきたなと思う


「わらわが、"相棒"の妹を知っていても、不思議ではあるまい」


 聖女様は、目の前に現れた"もの"がなんであるか理解すると、土下座をした。


火狐(ヒコ)様とは知らず申し訳ございません」


「貴様、約束を破るか!」


 聖女様と対照的に声を荒げたのは、席に座っていた男。

 腕を火狐(ヒコ)様に向ける、他にも5人が同じ行動にでた。


 ぐゎぁ!

 その6人の男たちの腕が吹き飛ぶ。


 ピノの光矢だ。

 射ったのが、わからぬほどの速さだ。


「おのれ〜。

 聖なる使徒よ、我が願いにご助力を」


 1人が放った言葉に、柱の上にいた巨像が動きだした。


「聖なる使徒は、神に与えられし力。

 閃光が使えなくなったが、お前たちを叩きのめす力は十分に持ってい...」


 男が言い終わる前に、ピノが動き出した巨像に、数十発の光矢を撃ち込む。

 "い"の形で、男の口は止まっている。


「これが、お前たちの切り札か」

 とピノが煽る。


「わらわは、お前達と約束をした事など無い」

 火狐(ヒコ)様が男に向け言い放つ。


「何を今更。

 今後は、人に関わらないと、我が主に言ったではないか。

 その御蔭で、今まで見過ごされてきたくせに」


「人に関わらない、とはその時のわらわの心情を言ったまで。

 しかしそれは、わらわを襲い返り討ちにした、魔王軍に言った言葉だが。

 何故その言葉をお前が知っている」


 しまったという顔をしてるが、お前たちが魔王軍の手先だというのは、俺達は最初から知っていたから。

 だが聖女様は判ってないようだ、男と火狐(ヒコ)様を交互に見ている。


「俺達は西の地で、力を得るために魔王軍に味方する”人”がいる事を知った」


 俺が補足してあげよう。


「彼らが魔王軍の協力者だと仰るのですか」


「その吹き飛ばされた腕を、調べればすぐにわかります。

 私達では理解出来ない、仕掛けが隠されている」


 ビチュレイリワの事前調査で判明済みだ。


「お前たち、それは本当か。

 魔王軍が、我が教会の枢機会議のメンバーと言うのか。

 有ってはならん事、動ける者はこやつらを捕まえよ」


 聖女様の声で、騎士たちが動く。

 それよりも早く、男たちは跳ね上がった、足は無傷だ。


 高く後ろに飛んだ男達へ、2度目のピノの光矢が突き刺さる。

 飛び上がった直後に撃ち落とされた。


「何故、彼奴等が。

 魔法は使えなかったはず、マナの発動も無かったぞ」


 クリバルヨイアの声が聞こえた、探すと他の下級騎士に混じっていた。


「魔王軍から与えられる力は、マナを必要としない身体強化。

 マナを使えない者には、魅力的な提案なのでしょう」


 魔王軍の協力者は、騎士達に取り抑えられた。

 ついでに上級騎士の2人も。

 魔王に与えられた力を使うために必要な部分は破壊したので、もう抵抗する力は残っていない。


 騒ぎが収まると、聖女様はまた、火狐(ヒコ)様に頭を下げる。


火狐(ヒコ)様、我らを罰しに来られたのですか」


「魔王軍の協力者を、排除しようとは考えていたが、お前たちを罰するつもりなどない。

 彼らに連なっていた物も、その正体は知らなかったのだ。

 その処遇は教会で決めよ」


「今回の話ではございません。

 火狐(ヒコ)様は、教会に思うところがあるはず」


「それは」


「ビルヒニア様は、神の使いたる火狐(ヒコ)様から禁忌の知恵を盗み、その力を使い教会を作ったからです。

 これは白き図書館に収められている書物に記されています。


 一般の信徒には何の罪も有りません、罰は我ら白き図書館に入れる者達で許していただきたく。

 お願いいたします」


「そうか、そうなっておったか、ビルヒニアらしいな。

 確かにビルヒニアは、禁忌の知恵を使い教会を作った。

 だが、その知恵は盗まれたものではない、わらわがビルヒニアに教えたものだ。

 ビルヒニアは、禁忌の知恵を使った罪を、自分だけのものとしたのだ」


「では、教会の罪は」


「そんな物は無い。

 魔王を倒すため、力を求めたビルヒニアに、わらわが教えた。

 罪は、わらわにある」


 今まで、聖女様と対峙していた火狐(ヒコ)様は、後ろを向き、


「ヨガ、これまで魔王を倒すという、お前の願いに助力してきたが。

 これからは、魔王討伐はわらわの願いでもある。

 ビルヒニアをこのままにしておけようものか」


 願ってもない事だ。


「ヨガ殿、貴殿には魔王討伐の策が有るとお聞きしております。

 お教え願えないか」


 聖女様は俺にまで、頭を下げてきた。


「俺は、姿なき守護竜(ガーディアンドラゴン)ビチュレイリワの言葉を聞きました」


 聖都に入る前、みんなと話し合った。

 数多くの国家元首に、ビチュレイリワの正体を話し、信じてもらうのは無理はある。

『姿なき守護竜(ガーディアンドラゴン)』は嘘としても遠くない、信じてもらうための方便だ。


「ビチュレイリワには暗黒大陸を吹き飛ばす力があると」


 どよめきが起こる。


「ただ、その力ゆえこの大陸に影響を与えてしまう。

 ビチュレイリワが力を使うためには、この大陸に住む人々の了承が必要だと。


 各国元首に、ビチュレイリワが力を使う承諾をもらわねばならない。

 一介の冒険者では、国の代表に会う事も困難。


 大陸中に影響力を持つ、教会に各国から承諾を得る協力をお願いしたい」


 ザワザワと声が上がり、引いていった。

 しばし静寂の時は流れた。


「ヨガ殿。

 火狐(ヒコ)様が信を置く貴方は信じます。

 ですが、そのお話が真実である事を、貴方は示せるでしょうか」


 俺が騙されていないか、という事か。


 俺の後ろでマナが爆発した。

 その爆発した膨大なマナが姿を見せる。

 俺の横を通り聖女様の前まで、その長い首が伸びる。


「我は守護竜(ガーディアンドラゴン)銀鱗翼竜(ケフロイヤ)

 ヨガの話を信じるに、我では足りぬか」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。