6-7.教会騎士強襲
前回あらすじ:キーマンに会えそうです
「人心を惑わした罪で、連行する。
お前たち、抵抗するな」
聖都アコールに入った途端、周囲を囲まれた。
騎士が100人近くいる。
「これは、何事です」
クリバルヨイアさんは知らない。
「シャレーガル、貴様!」
ケペレも知らなかったのだ、横にいた同僚に怒気をあげた。
同じ『暗闇の耳』でも2人では雇い主が違っていた。
2人一緒にいるのも、お互いを監視し合っていたというのか、本当のところだった。
ケペレが聖女派、シャレーガルが教皇派だというのは、ビチュレイリワの追跡調査で判明していた。
ケペレの報告は聖女様にまで届き、実際にお会いいただける事になっていた。
まだ聞かされていなかったが、その準備は進められていた。
問題はシャレーガルの報告だった、直接教皇派の枢機会議の1人の議員に渡った。
彼は俺達の「罪」を作り、聖都に着いた時捕縛する計画を立てた。
計画の作成中、彼は誰にも会っていない。
だが、単独で計画したものでは無かった、彼は『ある御方』の指示に従っていただけだ。
この件で、ビチュレイリワに謝罪された。
[あまりにも『古い技術』なので、傍受の対象にしていなかった]
と、そのせいで彼の計画を知るのが遅れてしまったらしい。
もっともビチュレイリワの言う、『古い技術』とは彼女の世界での話で、この星ではまだ行える者はいない。
そうなればだ『ある御方』または、『ある御方』の後ろにいるのが誰なのか想像出来た。
そして、聖都に着くまでの時間で、「敵」と「無知」の区別、「敵」の正確な数と居場所を洗ってもらっていた。
『ある御方』の姿は確認できなかったが、おおよその居場所は掴んでいる。
無論、彼らの計画もだ。
だから、俺達に驚きはない。
「ほう、覚悟は出来ているようだな。
抵抗されるかと思って、兵を集めていたが、不要だったか」
「カナート卿、これはなにかの間違えです。
この方々は、聖女様がお会いなりたいとの事でしたので、私が聖都までお連れしたのです」
教会騎士の鎧を着て、卿と呼ばれているなら、この地では身分が高いのだろうが。
俺達には、「無知」に分類されたその他大勢の1人にすぎない。
「敵」の数は少なかった、10人もいなかった。
その10人に満たない人数に、大陸中の教会のあり方を歪められていた。
「ケペレ、聖女様もこの件はご承知だ」
「な!」
[今朝、なんですが]
と、ビチュレイリワが合いの手をいれた。
どうにも出来ない状況で、聞かされている、聖女様には何もできない。
しかしそんな事を知らないケペレは、自分も騙されたと思ったかも。
不信感を植え付けるのがうまいな。
「裁きを行おう。
そのまま審判の場まで同行してもらう」
騎士達が槍の刃を向ける。
カナートは、俺達を確認する事も無く先に行く。
「続け」
槍を向けた騎士が、促す。
俺達は指示に黙って従い移動した。
一緒に聖都に来た、オードさん、名無しさんとは離された。
目的は俺達だけだ。
槍を向けられた6人を中心に人が移動してゆく。
多くの騎士が、道に配置されていた。
街門にいた騎士も、離れて俺達を囲んでいる。
厳重に警戒している。
当たり前だ、俺達の武器は取り上げられていない、反撃されるのを露骨に待っている。
その思惑に乗ってやるいわれはない。
連れて行かれたのは街の中央、大きな円形の広場だ。
円の縁には大きな柱が6本立ち、その上には大きな像がある。
軍神や女神のたぐいだろう。
そして、円中心には小さな噴水と池が有った。
俺達は、池の前に並べられた、前には偉そうに座る8人。
真ん中の1つの席は空席だった。
「夜明けの司祭が告発する!」
偉そうな奴らの前に、1人の神官が出てきて、声を張る。
彼は最初俺達を見た時、少し動揺していた。
俺達がここに来る前に暴れ出して、自分の出番は無いと思っていたのだろう。
「ヨガとその女5人は、嘘を広め我ら教徒達を愚弄した。
教会に弓引いた事は明白。
よって、6人には死をもって償わせるべきである」
何を言っているのかわからない。
もともと俺達を無実の罪で糾弾し、暴れさせたうえで殺す計画なのは知っていたが。
そう言えばどんな罪をなすりつけられるのか、気にして無かった。
「夜明けの司祭の告発、我夕暮れの司祭が受け取った。
裁決を言い渡す」
なんて芝居がかった事を、少し付き合って見るか。
「まってください、私が何をしました」
俺の問に、夕暮れの司祭は
「貴様らは、深淵からの帰還者を名乗り、魔境奥地に入り還ってきたと噂を流している。
このような嘘は、魔境に手を出すべきではないと言う、教会の意見をないがしろにする行為だ」
教会が、魔境に手を出すなと言っているだと。
キューさんとピノを見たが、否定した。
この場にいる教会騎士も、初耳のようだが。
そうなると、『これからは』と言うことか、ますます引けなくなってしまった。
「嘘とは酷い言いようですね。
魔境奥地への遠征は、アルテミラル王国の軍事だ、そこに嘘など有るものか。
アルテミラル王国に確認すれば、すむ話だろう」
「王国の名を出し政治の話をすれば、我らが怯むと思ったのか。
我らが手を下すまでもない、神が見ておられるのだ、王国の嘘はいずれ明白の元にさらされる運命だ。
だがお前たちが、アコール神聖国の恭順国内で噂を広めるのは見逃せぬ」
むちゃくちゃだな。
アルテミラル王国と絡むのは面倒だから、見なかったことにすると言っている。
仮にも正義を語るものが、それでいいのか。
「そもそもが、魔境深淵にいたり無傷で還ってきた事が、嘘である証拠。
そのような事が出来るはずがない、お前達はやりすぎたのだ」
裁判をまともに行う気がない。
俺達にさっさと剣を抜いてほしいんだとは思うが、そうはしないよ。
「私、リーシェ、キューは、深淵への遠征で勲章『千の槍』を授与されております。
式典には各国の代表もおられました、その方々を前にアルテミラル国王が嘘を言ったと。
式典には、教会の方もおられましたと思いますが、いかがお考えですか」
我夕暮れの司祭は、次の言葉を出せない。
どこにでも間者はいる。
これ以上の発言は、アルテミラル王国との関係を悪くするのだ。
ガァン!
突然、右前の柱の上に立っていた像の頭が吹き飛んだ。
「閃光を放とうとしていたので、迎撃した」
光矢を放ったピノが、弓を構えていた。
強引にこちらの剣を抜かせたのか。
全部の像から、光の矢が出ると思っていた方がいいな。
「正体を表したな。
言い逃れ出来ぬと思い、神聖な像を破壊したか」
それは、どんな理屈だ。
言っていておかしいと思わないのか。
「教会騎士の方々もご覧なられただろう、こやつらの罪は明確、死を持って神の裁きを」
はい、対話の時間は終わり。
「リーシェさん、キューさん中央へ。
柱の内側に壁を作って。
他の人は、殴るの少し待ってくれ」
対応は事前に打ち合わせていた。
結局は殴るんだが、ただ騎士を倒してもこの問題は解決しない、話を聞いてもらえる状況を無理にでも作り出す必要がある。
「判った」
土が盛り上がり円形の高い壁が立ち上がる。
「次は私」
その壁を、キューさんの見えない壁が包む。
風が舞い上り壁に沿って、渦を巻く。
その風に炎と水が混ざり、劫火を熱水の渦が壁を覆う。
もう誰もこの壁を越えて、出入りは出来ない。
「次ー」
リーシェさんは、俺達には聞こえない声で精霊を呼ぶ。
頭上に現れたのは、炎で出来た大きな鳥『フェニックス』だ、それは破壊と再生の象徴。
その背にピノが飛び乗り、壁を飛び越えようとする者を狙う。
タビさんは、尾の多い本来の人型になった。
ケイトさんも光り出した、手加減する気はまったくない。
- これだけ、友好なマナが多ければな -
タビさんから溢れ出すマナで、ユニコーンが本来の姿を現す。
壁の中に閉じ込められた、80人ほどの教会騎士は、目の前で起きた出来事をただ見ていた。
「騎士達よ、俺は戦いに来たのではない」
俺は、壁の中の全員に聞こえるよう、声を上げる。
「先程の茶番を見ておいでだっただろう、あれは裁判と呼べるものではない。
不実は教会にあり、それを隠すが為あのような事をした。
もう一度言う、俺達は戦いに来たのではない、戦う意思の無いものは剣を置いて欲しい」
見渡すが、剣を収めようとする者はいない。
「だが、殺されに来た訳でもない。
武器を持ち立ち向かう者は、容赦しない」
「我らは教会騎士団。
この盾は教会を守るもの、この剣は教会の敵を葬るもの。
ヨガ殿まいる」
クリバルヨイアさんがいた。
彼は考える事をやめていた、理解できる事がらを越えたのだ、教会騎士である事のみを行動の理由にしている。
良く言えば、揺るぎない信念。
ではその『信念』たたき折らせてもらう。
「タビさん、ケイトさんもういいよ」
俺も含め3人が、飛び出した。
俺は最初にクリバルヨイアさんに向かう。
彼は信仰のマナで加速しているが、俺には追いついていない。
一撃で胴体が2つになる。
返す剣で、別の騎士の頭を飛ばす。
タビさんは長い柄と刃を持つ得物で、騎士を盾や鎧ごと切り裂いている。
彼女のマナで、強化された刃で切れぬ物はない。
そもそも騎士は、彼女の姿を捉えてはいない、いつの間にか切り刻まれているのだ。
逆にケイトさんは、自分の姿を騎士か認識させる時間を与えている。
突然の前に現れ、一瞬の間の後に、拳の一撃で腰から上が吹き飛ぶ。
戦いと呼べるものではない。
一方的な殺戮だ。
すぐに抵抗が無くなった。
騎士たちの亡骸が無残に転がっている。
その時、フェニックスが鳴きはばたいた。
翼にあおられた風は熱を持ち、地上に転がる骸達にも届いた。
風が通り抜けた肉片は、脈を打ち始めた。
脈打つ肉は徐々に集まり、元の人の姿なる。
ユニコーンに乗るキューさんの祈でも、死体が集まり人となる。
全員が生き返った。
騎士達は自分に起きた事が理解できないでいる、ただ立っている。
着ていた服や鎧は切り裂かれたままだ、半裸に近いものもいる。
ただし、俺達は剣と盾は傷つけてはいない。
反撃の意思があるなら、反撃すればいい。
騎士として手に武器が有り、目の前に敵がいれば、戦おうとする。
すぐに2順目の蹂躙が始まり、そして収まった。
次に生き返った者は、俺の言葉を思い出し、理解した。
地面に腰を下ろし、立ち上がらない者が出てきた。
武器を手にする者もいたが、何度かの死で立ち上がるのを止めた。
最後まで1人残ったのは、クリバルヨイアさんだ。
「まだ、まだだ」
声も出ている。
「終わっているよ。
何度死んだのですか。
生きているのは、俺達に殺す意思が無いため」
「黙れ」
「俺の敵は、教会と同じ魔王だ」
クリバルヨイアさんの、自分を鼓舞する声が止まった。
ここに来て初めて俺を正面から見ている
「その魔王の手先が、教会の中央に入りこんでいる」
「な!」
「信じられないかい、教会の歪みは知っているだろう。
何故その歪みが生まれたのか、考えた事はないかい」
「だまれ〜」
飛び込んでくる、クリバルヨイアさんを一刀で倒した。
今のはクリバルヨイアさんも、俺を切る気は無かったな。
フェニックスが彼を生きかえらす。
「私達を騙しているのではないのか」
クリバルヨイアさんも立ち上がるのを止めた。
「そう思うなら、俺を止めればいい」
今のは傲慢な、言いようだな。
「壁を一度開放して。
2回戦目、準備!」
リーシェさんとキューさんに合図した。
壁が消えると同時に、中にいた騎士達が飛び出してゆく。
代りに外で壁を破ろうとしていた騎士が飛び込んできた、今度は200人以上いる。
1度目の殺戮が終わり、シャレーガルの前で彼が生き返るのを待っていた。
「とんでもない事をするな」
生き返り、目の前に俺がいるのを知ると、声をかけてきた。
敵意はない。
「しかも手際がいい、準備していたか。
もしかすると、俺が何をしていたのか知ってたか。
攻めるな、仕事だ、依頼者は選べないんだよ」
シャレーガルは、落ちた剣を拾おうとはしない。
座り込んだままだ。
「お前たちの話は、個人的は興味がある」
周りの騎士を見渡して
「聖都にいた下級騎士は、ほとんどが先程と今回で飛び込んでいる。
彼らは、二度とお前達に立ち向いはしないだろう。
次は上級騎士が来る」
シャレーガルは、ここで何が有ったかもう理解したようだ、それと俺達の狙いも。
言い訳程度に、抵抗するそぶりも見せない。
「上級騎士と言っても、剣の腕でクリバルヨイア副隊長に勝てる人はいない。
全員貴族ってだけだ、ただ教会から武具を下賜されている。
聖なる剣や盾、鎧などだ。
お前達の剣は、彼奴等を切り倒す事が出来るかな」




