6-6.暗闇に耳をそばたてるもの
前回あらすじ:リーシェさんとキューさんまで、そっちいちゃうの
2020/0/27 後ろに数行追加
「先ほどは失礼した」
教会騎士のクリバルヨイアさんの謝罪。
気絶したビミシルは保養所の床に転がされ、他の騎士団員はユニコーンを警備している。
実際には警備と言う休憩だ、急いで駆けつけたので全員疲れていた。
俺達はいつもの代表者の集会場所に移動した、代表者も来ている。
騎士団はクリバルヨイアさんの他は、騎士と神官が1人ずつ。
「全くだ、あのままフザケた事続けたら、ここの住人に襲われてたぞ。
この人達は恩人だ、あんたら教会とは違ってな」
「クリバルヨイアを攻めるな、スペンストン。
教会騎士団の小隊長は神官だ、上官に命令されれば従うしかないのだよ。
そして、この国の神官は大体が、家督を継げない次男以下の貴族の子だ。
貴族の子なのだ、ビミシルのような男は例外じゃない」
「教会の本拠地の神官が、腐っているとは笑えないな」
「隣国のシガも知らなかったか」
人界の盾十国なら仕方がないが、シガは隣の出身だ。
「知っていたら、ここに来るわけがない」
「教皇派の、教えに忠実たろうとする信念が事実を歪め、教えに嘘を塗り込んでしまった。
今ではその嘘を自分たちでも信じている、自分たちがどれほど歪んでいるかも気づけぬほどにな。
私も中央にいた時には気づかなかった」
「それは、わしも同罪だ。
教会と『七つの子』の人々は、外を知らなすぎる」
しまった、オードさんとフェルトさんは、教会中央に近い所にいたのか。
2人に聖女に会えないか、聞いてみればよかった。
「私も『聖女探索』のため外に出て、初めて他国と比較する事が出来ました。
神官の違いも」
「なんだとクリバルヨイア、おぬし聖女を『七つの子』以外で探したのか。
『聖女探索』の命を受けたのは知っていたが、何と無茶を。
もし、発見出来たとしても、教会はその功績を認められない。
聖女の出身は隠されてしまう」
「私は、4年前『聖女探索』の命を受け『七つの子』内の、少女を訪ねまわりました。
どんなに探しても見つからず、『七つの子』内にいないと結論したのです。
そして国外で探させて欲しいと、教会本部に頼み、1年という条件をいただきました」
「聖女が見つかったとは聞いていない。
それが今、おぬしが外輪にいる理由か、左遷されたな。
教会と縁が切れたわしでは、どうすることも出来ん。
そもそも、おぬしが国外に聖女を探しに行ったのも今知ったほどだしな」
『聖女探索』?
「すいませんオードさん。
『聖女探索』と聞こえたのですが、今聖女様はいないのですか」
ビチュレイリワが見落としていたのか?
(そんな事ないよな)
[聖女は、聖都に確実にいます]
「ヨガ殿そうではない。
聖女様は、聖都におられる」
良かった。
「聖女様は、世襲制ではありません。
次世代の聖女様が生まれると、現聖女様に天啓がおりる。
そして教会に入会が許される12歳になると、教会は聖女様の探索を始める。
それが『聖女探索』と呼ばれるものだ。
発見された少女は教会に入り、3年の修行後に聖女を受け継ぐ事になる」
「クリバルヨイアさんが、左遷されたのなら国外にはいなかったのですね」
聖女の存在は教徒の願いなのか?
ならどこで生まれようと関係ないのでは。
(聖女の出身に条件が有る?)
この辺の記録に関しては、ビチュレイリワが得意とするところだ。
[先の魔王大戦以前は、大陸のあちこちで生まれていますね。
今のアコール神聖国に移ってからは、『七つの子』に限定されていますね。
聖女の存在意義をどう考えているかの差ではないですかね]
「『七つの子』にもいなかった。
聖女様は発見されておらん」
「え?」
「今の聖女様はこれまでに、3回天啓を受けた。
だが、いずれも聖女様を見つけられてはいないのだ」
「よくわからんが、そいつは大変な事なんじゃないのか」
とはスペンストン。
それは俺も思った。
「次世代に名を渡せずに、亡くなられた聖女様は、過去にもいらっしゃる。
その場合でも、後に聖女様は現れてくださる。
現聖女様も前聖女様死後に、現れたのだ。
本来であれば、それほど大変な事ではない」
「"本来であれば"ですか」
シガさんが、クリバルヨイアさんの言葉尻を捉えた。
クリバルヨイアさんが黙ってしまった。
「今の聖女が嘘言ってるとかは無いのか。
小娘に聖女の座を渡したくないと思っているとか」
「聖女様を愚弄するか!」
クリバルヨイアさんが怒鳴る。
「聖女さんがそう思っていなくとも、今スペンストンが言ったと同じ考えをするやつはいる。
そもそも、聖女さんが偽物って事はないよな」
「それは、ありえない。
聖女様は神の声を聞き、その声を民衆に伝える。
そこに嘘や偽りが入る余地はない」
憤慨しているクリバルヨイアさんに代り、オードさん。
「それに、スペンストンが言ったような悪事を行って、聖女でいれるはずがない」
自分の良心が、神聖魔法の枷となる、あれか。
「なるほど、教会内での聖女様の立場はゆるぎ様が無いのか。
だが、その聖女さんが死んでしまったらどうなるんだ。
次の聖女さんが現れるまでは、空白が出来てしまう」
聖女様が亡くなってしまえば、聖女派など存在できなくなる。
利にさとい者は、聖女派から離れていくだろう。
それが、教会内で教皇派が力を持っている理由か。
シガさんの推測は当たっているのだろう、その辺の事情に詳しいはずのオードさんやフェルトさんまでうつむいてしまった。
「難しい話は終わりましたか」
クリバルヨイアさんの副官が、この場に似合わない事を言いだした。
「教会批判なんて、俺っちは聞いてませんからね。
変な事に巻き込まないでくださいよ。
男爵四男の言うこと黙って聞き流していれば、ここはいい職場なんですから」
横にいた神官が吹き出しだ。
「さて商談ですが」
「ケペレ。
商談じゃない、相談だ」
神官が諌める。
副官の名はケペレと言うらしい。
「お互いが納得できる利益で、手を打とうと持ちかけているんだ。
商談だね」
ケペレは気にしていない。
「お互いの利益とは、なんですか」
リーシェさんが、商談交渉に加わった。
「お前達ユニコーンを、仲間の所につれていくんだろう。
残念だがお前たちだけでは無理だ。
内側の2つの国を避けて南側には行けない。
そしてユニコーンを『七つの子』から連れ出すのは硬く禁じられている、元々何処にいたかは関係ない」
荘園とそれに接している2ヶ国には、信徒以外は入国が許されていない。
一度、外に出るのも無理なのか。
「お前さん達は、ユニコーンを仲間の所に連れて行く、契約をしているのだろう。
ユニコーンの"誓い"は神聖なものだ、教会では侵す事は禁じられている。
そこで、俺達がユニコーンの護衛をしていれば、一緒に2ヶ国を通れる」
「ユニコーンは護衛、私達は監視するのが目的か、まあいいだろう。
そしてそれが、お前の隊長の手柄になる」
「そうだ、報奨か地位か何か賜るだろう、ユニコーンは大切にされているからな。
あの四男様は機嫌がいいと、俺達にもいい思いをさせてくれるんだよ」
「あの男は、教会本部への登用が希望だったようだが。
そうなれば、お前達は置いて行かれるのは、いい思いはできないだろう」
「まあ、そうなればそれで、馬鹿げた子守をしなくて済むんだ、俺っちの利益にはなる。
これで、交渉成立かな。
で、副隊長お願いします」
「相変わらず貴様は勝手な事を」
こんなのが部下にいたら、堅物のクリバルヨイアさんの気苦労多そうだ。
「しかしなぜ、教会がユニコーンを保護しているのです。
魔王討伐とユニコーンは関係無いように思うのですが」
そう言われればそうだな、何でだろう。
「聖都移転の理由にしたんです。
この地をユニコーンの住む純潔の地として」
ピノが知っていた。
「魔境周辺を追い出された教会は、神聖な地を必要としていた。
だから、汚れなき者を選ぶユニコーンの住むアコールへ聖都を移した」
クリバルヨイアさんは、この話を本当に信じている。
ホーヤさんの話では、教会と2つの国の"利益"が合って、この地に移動してきた。
まさに商談成立したのだ、理由は後付だ。
それに気づいていない、あるいは、わざと目をそらしている。
ケペレさんたち2人は、クリバルヨイアさんに見えないよう、一瞬肩を上げた。
しかも、わざと俺達には見えるようにだ、『そんな事ないでしょう』と言う意味だろう。
教会側にも、色々といるようだ。
「そして今は、弱まった神官の治癒の力を、ユニコーンの角で補っている」
あ、ピノ待て!
「何だと!」
声が出たのは、クリバルヨイアさんだ。
知らなかったようだ。
後ろの2人も驚いているが、これはピノが知っていたのを驚いている。
「何故それを」
「何故も何も、ビミシルの持っていた杖に仕込まれていたよね。
小さい物だけど、あんなのを見れば、何をしているかはすぐに分かるでしょう」
キューさんも気づいていた。
「俺っちは何も聞いてないからな」
それは無理だろう。
「ケペレどう言う事だ」
ほら、堅物のクリバルヨイアさんが無かった事にはしてくれない。
「はぁ〜。
副隊長のお耳には入って無いと思いますが、噂は有ったんです。
死んだユニコーンから、角を取ってるって」
「それは本当か。
ユニコーンの角で、治癒を行っている神官がいると言うのか」
オードさんも、この話を聞き流せなかった。
自分が治癒能力を持たない神官なのを悩んでした。
「噂です。
オード様が枢機会議のメンバーだった頃にもありました」
今度は、俺達が聞き流せない単語がある。
オードさん、枢機会議のメンバーだったんですか。
「しかし、すごいなあんたら。
悪いが、『七つの子』にいる間は監視させてもらうわ」
ケペレさん、堂々と俺達を監視すると言う。
問題を起こすなと言うのだろう。
「さて、ここからは追加料金だ。
アコール神聖国に来た本当の目的があんだろう?」
「魔王を倒せるかもしれない方法を見つけた。
この方法を使うのには、各国の王の委任が必要だ。
その委任を集めるのを、教会に頼みに来た」
この場にいた全員の息が止まった。
全く気配を消していた、名無しでさえ驚いている。
「出来れば、枢機会議のメンバーに会って、話したい」
「と、とんでも無いこと言い出すな。
魔王を倒せる方法だと」
ケペレは、俺を見ている。
「その方法とは」
「それは...」
声が出ない。
[行動を一時制限しました]
「このようなやり方は、感心せんな」
タビさんが俺の前に立って、ケペレとの間に入った。
「本当に」とはケイトさん。
「『心』に干渉していましたね。
強制的に情報を引き出そうとしていたのですか」
ピノが彼らが何をしていたか、説明してくれた。
「シャレーガルの魔法を破っただと」
ケペレは神官を向いた。
神官シャレーガルというのか。
「違う、その3人には最初から効いていない。
私では掴み来れなかった」
良かった。
俺、人外3人と違った。
「商談には、信頼が必要ですよ」
『心』を操られると言うのは、いい気がしない。
「ケペレお前は、何者なのだ」
「クリバルヨイア、それをお前が言うのは駄目だろう」
オードさんが呆れている。
「お前達は『暗闇の耳』か」
「その名を出されますか、オード様」
ケペレが戸惑っている。
「『暗闇の耳』とは何ですか、私も初めて聞きました」
「フェルトも知らんか。
『暗闇の耳』とは、枢機会議直下の組織で、諜報を主に行っていたはずだ。
下部組織と言っても、メンバー個人が命令を出す。
わしは使った事がないので、詳しい事は知らん」
「ケペレさんも、枢機会議の誰かから命令されていると言う事ですか」
「名はあかせませんよ。
ただ信用を得る努力はしましょう。
今、聞いた話は上に伝えます」
枢機会議のメンバーなら興味を持つ話だ、会ってくれるかもしれないか。
悪い取引ではないな。
「交渉成立でいいな。
ヨガ達は俺と一緒に、ユニコーンを南側のバヨタナスまでつれていく。
途中、聖都によってもらう事があります」
「すぐに出発するのか、それは待って欲しい」
「どうした」
「治療をしなければならない人がまだいる」
「ヨガ殿、それはもう大丈夫です。
今すぐ治療をしなければならない人はいなくなっています」
「でも。。」
フェルト、最後まで言わせてくれない。
「この街も、治癒の出来る冒険者を正規に雇える程度の蓄えは出来たのです。
これも全部ヨガ殿達のおかげです」
「俺もいる。
他の街より、良くなる」
たしかにシガさんの作る、「くすり」でけれも体調を良い状態へ持って行けている。
「ではフェルトは覚悟が出来たという事か?」
フェルトさんの覚悟?
「この街を正式に国に認めさせる。
そうしないと、ビミシルのようなバカが増えそうだから。
幸い私は、この国の爵位を持っている。
多少強引だが認めさせる事は出来る」
「多少強引?
わしにはかなり強引に思えるが、まあ『ヒリシアスの頭脳』が言うのならどうにかなかな。
なら、それを手伝おうか。
聖都にいって、顔見知りに会おう。
宗主国が認めれば、この国のやつらはごちゃごちゃ言えなくなるかならな」
「オードさんが行くなら、俺が護衛に着こう」
スペンストンさんが1歩前にでると。
「お前は駄目だ、聖都で問題を起こしそうだ」
シャレーガルの指摘に、思わず納得してしまった。
シガさんは吹いた。
「行きはみんなで行けるからいいが、帰りはこの爺さん1人だぞ」
スペンストンさんが食い下がる。
控えていた、名無しが手を上げて話の輪に出てきた。
指摘される前に、仮面も外す。
「お前がオード様に同行すると?」
クリバルヨイアの問いに、はっきり意思をしめす。
「許可しよう」
聖都までのオードさんと名無しさんの同行が決まった




