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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
6章
77/104

6-5.教会騎士団来訪

前回あらすじ:シガさん分厚い本をピノにもらったはずです


「ヨガずるい」


 治療を終え、部屋でぐったりしているキューさんが俺を見てつぶやいた。


「何が、ずるいんですか」


「全然、弱っていなさそう」


 確かに、全然平気だ。


「それ、俺だけじゃないと思うんだけど」


 逆に2人以外は、普通にしてる。


「リーシェさん。

 ヨガって元々私達と同じコッチ側だったんだよね」


「最初に見た時は、今にも死にそうだったんだけど。

 随分、変わってしまったな」


 リーシェさんの笑いには、含みがある。

 俺の前後を知っている、何を思っているのだろう。


「コッチ側って、酷いいわれよう。

 私はキュー達と、同じだと思うけど」


「ケイト、それは無理があるな。

 わらわとピノは人外だから仕方がないが、お前とヨガも人の領域では無いと思うぞ」


 ケイトさんは正体を知ってるから、特別な人と考えてしまう。

 これまでの彼女は、マナ量が多い女の子でしかない。

 それに比べると、俺の方が人から離れてしまっているかも。


「キューさん何でそんな事言い出すの」


「私とリーシェさんが疲れてんのに、平気そうなヨガを見て、そう思っただけ。

 ヨガに出来るなら、私達にも出来ていいかなと」


 キューさんピノに聞く。


「無理です。

 ナノマシンが使われていると言っても、ヨガとは質、量共に違いすぎます。

 2人のは機能の強化までで、ヨガのは人が持っていない機能まで追加しています」


 キューさんの頬が膨れる。


(2人共、大丈夫なの?)


[疲れを、完全に回復出来なくなってきていますね。

 目の下の隈は消してますが、ほぼ見たままの状態が、彼女達に今の状況です]


(隈も消さないで欲しい、気づけなくなってしまう)


[2人は、若い女性なんです。

 そこは気遣いします]


 俺からスープを受け取りながら、キューさんが

「もう少し無理したいの。

 今、頑張んないと」


「出来ることだし、求められてる、それに応えられないのがもどかしい。

 それにこのままだと、私達はヨガの邪魔になってしまう」


「置いていかれそうで、不安か」


 そんな事はしないよ、タビさん。


「そうかも」


 リーシェさん!

 そんな事考えてたの。


「タビさん、ケイトさん、ピノさんは仕方ないけど。

 でもヨガは違ったはずなのに」


 また、悔しがってる。


「'ヨガ'は最初から、こうでしたよ」


 ピノの'ヨガ'はアクセントが有った。

 確かに'ヨガ'になった時に、かなりの強化がされていたからな。


 でも2人共に辛そうだな。


「どうにか出来ない」


 つい口に出てしまう


「ヨガが望むなら、改善の余地は有りますが。

 無論リーシェさん達の了承が必要ですが」


「「可能なの!」」


「ヨガの持っている高品位のナノマシン。

 あれを少量インストールして容量を増やせば、コアが作れるのでもう少し身体強化が行えます。


「了承する、了承する。

 頂戴」


 キューさんが手を伸ばす。

 多分違っていると思う。


「どうすればいいんだ」


「粘液を触れ合わせて下さい」


「「「粘液」」」


 耳が熱い。


「3人共何を考えているんですか、口づけで十分です」


「そうだとは思ったけど・・・」


 すいません、嘘言いました。


「判った。

 さっさと済まそう」


 リーシェさんが近づいてきた。

 いきなりですか。


 相変わらず耳が熱い、顔まで火照ってきた。


(ビチュレイリワ何とかしてくれ)


[現状は、生命に支障ありません]


 有るっつんだよ!


「これは私の強化のための行為。


 ヨガ恥ずかしがらないで、私も恥ずかしくなるでしょ」


 見れば、リーシェさんも真っ赤で目は潤んでる。


「リーシェさん、可愛い」


 見事な蹴りが入った。


[今後の教訓のため、この痛みは緩和しません]




「はい、結構です」

 と言うピノの合図で、2人はいおい良く離れた。


 全員が見てる前で、キスる羽目になるとは思わなかった。


 ぼーっとしていると頭を捕まれた、キューさんがいきなり口づけをしてきたのだ。


 舌 !


 キューさんなりの力で抑え込んでいる。


 - 我が乙女よ、それ以上行えば、二度と我が背には乗れなくなるぞ ー


 と言う頭に響いた声で、キューさんが離れた。



「馬に負けるとは」


 そう言いながら、タビさん杯を空ける。

 そんなはずは無いのだが、白馬の自慢げな鼻息が聞こえたような気がする。


 ーーーーー


「彼らが来ました」


 朝早く、ピノが警告してきた。


 キギの街に向かう一団がいる、教会騎士団と思われた。

 ピカピカの鎧を着た騎士が9人、神官が3人軍馬に乗りこちらに向かっている。


「昼過ぎには、教会騎士団がキギに来る」


「いよいよか」


 彼らから何とか上層部の人に会えるよう話を持っていきたい。


 魔王討伐の可能性がある事を伝え。

 そのためには各国の承認が必要な事も伝え、その協力を教会に頼むつもりでいる。


 話す相手は、聖女派がいいとは聞いている。


「聖女派か教皇派か、分かる?」


「こちらに来る所を見つけたので、どちらから来たのかはビチュレイリワも把握出来ていないそうです」


 いくつか想定し準備をしているが、その想定内で話が進んでくれればいいと思っている。


 予想通り昼過ぎに、教会騎士たちはキギの街に来た。

 俺達は知らないふりをして、いつもどおり治療を行っていた。


 そこへ

「ヨガさん達を呼んでます」

 と街の女性が呼びにきた。


 外に出た俺達を、いきなり騎士達が取り囲む。

 あまり友好的な態度じゃない。


 正面の神官がこの一団のリーダーかな。

 着ている服はキューさんのとそう変わらないが、派手な装飾品が沢山付いている。

 あんなに首飾りはいらないだろう、第一重そうだ。


「お前たちか、この騒ぎを起こしている冒険者と言うのは」


 "騒ぎ"ときたか。


 この神官の目配せで、騎士達が加速した。

 聖騎士までは早くはない、腕のいい冒険者ならかわせる程度だ。

 ただし今のは不意打ち、逆に切られても文句はないよな。


 騎士はみんなの後ろに周り、剣を首筋に当てた。

 一瞬、剣に手が伸びそうだったが、何とかこらえた。


「貴様らの勝手な行動は、神都にも聞こえている。

 神の審判を待つまでもない、このビミシルが罰する」


 この流れは、考えていなかったな。

 いきなり排除してくるか。

 話くらいは聞いてもらえると思っていた。


「ふざけた事抜かしてんじゃねえ。

 リーシェ様達に何かしてみろ、俺が相手だ」


 スペンストンが怒鳴りながら、ビミシルとの間に割って入ってきた。

 彼はリーシェさんに左腕を治してもらうと、リーシェ様と呼ぶようになっていた。

 完全服従でリーシェさんを手伝っていた。


 彼だけではない、周りには住人が集まってきていた。

 みんな俺達に剣を向けている騎士達に、敵意を向けている。


「な、なんだ貴様ら、その目は何だと言っている。

 私はこの国の男爵だぞ、そのような目を向けて良い相手では無いぞ」


「ここキギは捨てられた街、そこに住むわれらも捨てられた民だ、国は関係ない。

 我らの恩人に剣を向ければ、こうなるのは当たり前であろう、ビミシル殿」


「オード殿!」


 2人は顔見知りのようだ。


「大方、穀物が取れたと聞いて、誰の領地でもないこの街を領土にしようと思ってやって来たのでしょう」


「何を言うか、貴様

 ...

 ま、まさか、フェルト様」


 フェルトさんは、男爵が「様」をつけて呼ぶ人だった。


「はい、『ヒリシアスの動かぬ頭脳』と揶揄された、フェルトです」


「お前たち剣を引け」


 ビミシルの後ろに控えていた、騎士が合図した。

 体の大きな人で、年齢は少し行っていると思う。

 その声で、騎士達は剣を収めた。


「クリバルヨイア、何を勝手な事をする。

 奴らを動けぬよう、抑えておく必要があろうが」


 剣を突きつけなければ、話も出来ないそうだ。

 彼は話相手にはなりえないな。


「剣を突きつけられた、あの状態でも、彼らは窮地では有りませんでした。

 逆に我らの立場が危険な状況だったと思います」


「何だと、そんなバカな事があるか」


「彼らは全員、騎士達の動きに反応していました。

 それなのに、反撃をしなかった。

 彼らにとって、我らに首に剣を突きつけられた状態など、何でもなかったのです。

 いつでも反撃出来る状況と判断したから、動かなかったのです」


「なっ!」


 今朝までにリーシェさん達の、強化が完了していて良かった

 そうじゃなかったら、騎士の剣を持つ腕が地面に転がっていた所だ。


「リーシェ様達は、お前らではどうにも出来ないさ」


 何故かスペンストンさんが威張る。


「オード殿、お久しぶりでございます」


 老騎士は、オードさんに騎士の礼をとった。


「久しいなクリバルヨイア。

 しかし、貴方がこんな周辺にいようとは」


「旧友の挨拶は済みましたか」


 クリバルヨイアさんは、フェルトにも頭を下げた。


「さて、この騒ぎの原因は何なのかお教えいだだけますね。

 ビミシル男爵様」


 原因もなにも、さっきフェルトさんが言ったように、この地を領地にしようと乗り込んで来たんだろう。

 最初から、俺達を排除しようとしていた。


「それはですね、最近この街の噂を聞くようになりまして」


「そうでしょうね、外と交易する事が可能になったので、人の出入りも多くありました。

 その人達から、流れた話でしょう。

 それが何か問題でも」


「ここは、誰も住まない街ですので...」


「誰も住んでいなかったので、私達が住むことが可能でした」


「街ならば、それを治め、税を国に...」


「いずれ街として整備し、国へ陳情するつもりでおりました」


「街の外の畑は、わしらが切り開いたものだ。

 無論これらはわしらの物になる、そこから得られる利益から税を納めるつもりだったが。

 それはわしらがやる。

 わし自信も畑の開墾を行っているのでな」


「オード殿自らですか」


「そうです、農具をこの手に汗を流しました。


 ビミシル男爵様はこの街を気にする必要はございません。

 どうぞお帰り下さい」


「しかし...」


「この私を言い負かす自信がお有りと」


 ビミシルは黙ってしまった。

 ただし頭から湯気が出そうなほど、怒っている。



「冒険者よ、この街での事はホーヤに頼まれたのだろう」


 黙っているビミシルの代りに、クリバルヨイアさんが質問してきた


「そうです」


「なに、あのホーヤか。

 貴様ら、奴の仲間だったのか」


 ビミシルが、息を吹き替えした。


「違います。

 彼にこの街での治療を頼まれたのです」


「治療か」


 そう言いながら、クリバルヨイアさんはあたりを見回した


「ホーヤと繋がりが有るのなら、取り調べなければならん。

 直ちにこいつらを捕まえろ」

「やめよ」

 ビミシルの命を、クリバルヨイアさんの声がかき消した。

 動き出そうとした騎士が止まった。

 騎士はクリバルヨイアさんに従うようだ。


「ホーヤに頼まれた事が有るだけで捕まえたら、ゾソードの冒険者も全員捕まえなければならなくなる。

 そんな事ができますか、ビミシル殿」


 またビミシルが黙る。


「この街に来たのが、ホーヤからの依頼なのは判った。

 行ったのは、治療だけではないが、目的に必要な行動だとは思う。

 しかし、これでは街作りだ、冒険者が行う事を越えている」


 必要な事だったからね。


「なら君たちがこの国に何をしに来た。

『七つの子』は観光でくる国では無いからな。

 目的を聞きたい」


 白馬がゆっくりとキューさんに近寄ってきた。


 - 私が頼んだ -


 キューさんの横に並ぶ。


「誰だ」


 ビミシルが驚いて声の主を探しだした、ただ今回は周りの人もあたりを探している。

 オードさん、フェルトさんに至っては探す気がない、俺に答えを期待している。


 そんな中、神官の1人が、白馬に気づいた。

 そして横にいたビミシルに耳打ちした。


「ユニコーンだど」


 ビミシルは大声で叫び、駆け出した。

 耳打ちした神官が、唖然としている、小声で伝えた意味がない。


「これを献上すれば、中央への登用も夢ではないぞ」


 白馬に触れそうになった時


 - 私に触れるな、汚れた者よ -


 怒号の声が頭の中を駆け巡る、思わず声を上げる者もいた。

 ビミシルは後ろに吹き飛ばされ、尻もちをついた両足の間に雷が落ちた。

 直撃ではないから命に問題は無いだろうが、感電して白目になっている。


 最後の雷は、キューさんだな。


「何故こんなパーティに...」


 クリバルヨイアさん、俺を見て今日一番の驚きの声。

 しかも、キューさんが白馬をなでているのを見て


「触れさせている、信じられない」


 もう一度、俺を見る。

 何故か周りの人の視線も俺に集中している。


「当たり前だ、ヨガと後家のわらわ以外その馬に乗れるぞ」


 何故か人々の間に動揺が広がる。

 スペンストンさんが、近づいてきて


「ヨガ。

 お前、その病気治すためにここ国に来たのか」

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