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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
6章
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6-2.廃墟の街

前回あらすじ:治癒魔法が有るんだらか、薬師はいないかも。(最近気づいた...)

 非公認の村と聞いていたが、キギは街と言っていい。

 元々は近くの川が枯れ、捨てられた街だそうだ。

 廃棄された街に、行き場を失った人が集まって暮らしていた。


 水は、錬金術で海水から取り出しているが、圧倒的に足りていない。

 最低限人が住める程度に修繕された、街は廃墟とそう代わりはない。

 街全体が、薄汚れ沈んでいる。


 代表が5人で代表者会議を作り、協議して物事を進めていた。

 会議と、言っても出来ることは少ない。

 水と食料を争いが起きないように、分けているだけだ。


「ホーヤの紹介というのは、あんたか」


 ホーヤさんからの紹介状を読むと、赤毛の男が言った。

 昔は荒事を仕事にしていたのだろう、もしかすると冒険者だったかもしれない。

 ボロボロの胸当てがそれを物語っていた。


 男には左腕の肘から先がない。


「何人治せる」


 感情の込められていない言葉で、キューに聞いてきた。


「私達は、治癒するとは言っていない。

 ホーヤさんに頼まれて、来ただけ」


 リーシェさんが割って入った。


「なんだとガキ!」


 男の声が、大きくなる。

 そんなこけ脅しが、俺達に効くわけがない。


「これは、冒険者ギルドからの依頼ではないわ、受ける必要は無い。

 人助けになると思って来たけど、礼儀知らずを相手にする気は無いわ」


 先程の男の態度が、気に入らないのだ。

 無論、俺達全員が感じていた事だ。


「スペンストンは言葉を知らない。

 許してほしい」


 すこし太った婦人が、男の無礼を代わりに詫びた。

 50歳は越えているように見える。


「今まできた冒険者の中には、わしらを見下した態度に出る者もいた。

 舐められないようにと、思ったのだ。

 スペンストンは、気の小さい男だからな」


 と剥げた老人。

 汚れているが、彼が着ているのは聖職者のものだ。


「黙れエセ神官!」


 と赤毛の男が怒鳴る


「わしはオード。

 そいつの言うように、まともな治癒の奇跡が起こせない元神官だ」


「私は、フェルト。

 ご覧のとおり、面倒事をおしつけられているわ」


 婦人が微笑む、動作に洗練されたものが見える。

 本来、薄汚れた服で、ここにいる人ではなさそうだ。


「俺はジガ。

 そしてこいつは名無しだ。

 名乗らない事に悪気はない、本当に名が無いんだ」


 ジガと名乗った男は学者だろう、ローブを着ていた。


 名無しと呼ばれた青年は背が低い。

 仮面をかぶっているので、判らないが少年かもしれない。


 その異常な姿に視線が集まると、あっさりと仮面を取った。

 彼はひどい火傷の跡を、仮面で隠していた。


「ありがとう。

 すまなかった」


 俺は彼に詫びた。

 彼は、俺たちに警戒心を産ませないために、仮面を取ったのだ。

 見せたくないから、仮面をしていたのに、申し訳なかった。


 気にするなと、手を振った。


「名無しは声が出ない。

 聞くのは問題がないし、言いたいことがあれば、書いてくる」


 とジガが教えてくれた。


「自分から、意見する事はめったに無いがな」


 とはスペンストンだ、彼は斜めに構えるのが基本なのだろう。

 他にも人はいたが、彼らが代表の5名だ。


「ここには、満足な食事も、十分に休める場所もない。

 これまで来た冒険者も、10日くらいが限界で戻ってしまう。

 わしらの仕事は、その中で治してもらう者を決めることだ」


「命の選別をしろと、言われている。

 助けてくれと言う同じ口でね。

 やりたくない作業よ。

 スペンストンのは、八つ当たり」


「それと、期待してたのにハーレムパーティーが来たんでな」


 ひどい言われようだな。


「許しはしないけど、そちら事情は理解はしたわ。

 いいよねヨガ」


 リーシェさんが言うんだ

「俺に、異論はありません」


「安心しろ。

 妾たちは人々を治しに来た。

 治療を求める者がいるのに、ここを離れる気はない」


 5人が驚きの表情をした。

 タビさんの言葉は、考えてもいなかったのだろう。


「この街と言うか村には、どのくらい治療を必要としている人が居るの」


 ビチュレイリワには把握出来なかった。

 思ってもいない所に人がいるのと


「人は毎日、流入してきて、死んでいる。

 まともな数はわからん、400から500くらいだろう」


[私は、550人以上の存在を確認しています。

 いくら昨日亡くなったとしても、500人以上いるでしょう。

 本当に管理出来ていないんですね]


「全員を治癒するとは本当の事か」


「嘘は言っておらん」


 タビさんは胸を張るが、5人はキューさんを向いている。

 興奮したオードさんが、キューさんの肩を掴み


「お前、そんなすごい治癒の奇跡が起こせるのか。

 教会本部でもそんな奴はいなかったぞ」


「痛い、落ち着いて下さい。

 私が、そんな奇跡を起こせるはず無いでしょ」


「え!」って顔で、肩を掴んだ力が緩む。


「治癒が出来るのは、彼女だけではない。

 それに私達は、治癒をして終わりとは、考えていない」


 ピノが説明を引き継いだ。


「それは、どういう事だ」


「ここは、不衛生すぎる。

 いくら治癒をして、怪我や病気を治しても、すぐに別の病気になってしまう。

 そもそも、十分な食事と休養を取れば、ここまで酷い状況にはならないはず」


 ここに来る前に、決めていた。

 この街を人が住める環境にしなければ、意味がないと。


「それはそうだが、水は今ので精一杯だ。

 俺たち11人の錬金術師が交代で精製してるが、全員分の飲水にさえ足りていない」


 シガさんは錬金術士か。


「判っています。

 まずは水の確保、そのためには皆さんの協力が必要になります」


「水が手に入るのなら、何でもする。

 ただ言っておくが、この近くで井戸を掘っても出てくるのは海水だぞ。

 どこから水を持ってくるんだ」


「目の前の川は、完全に死んでいるわけではないでしょ。

 年に数回、少ないけど流れてはいる」


 ビチュレイリワの調査では、昔の地震で地下の水瓶に穴が空いたせいだとの事だ。

 水を貯める力が弱くなり、いままで地上にあふれていた分まで、地下に流れている。


 言われただけでは理解出来なかったが、頭の中に図が思い浮かび理解した。

 川に水を運ぶ力は残っている。


「そうだが、あんな不確かなものを当てにするわけにはいかない」


「俺とリーシェさんで何とかする。


 それに、今日死んでいく者を見捨てるわけにはいかない。

 緊急性の高い人の治療は、キューさんとケイトさんが行う。


 ピノは水道設備の点検と補修を、タビさんは食料の確保をお願いします。


 無論、俺たちだけでは無理だ、そちらの手を借りたい。

 貸してもらえるか」


「無論だ」


 ーーーーー


 廃墟には、まともに屋根のある建物は少なかった。

 残っていた大きな建物に、雨をしのげるだけの簡単な屋根を作り、そこを治療する場所にした。

 キューさんとケイトさんが治癒を行う。


 重い病気の人を優先しているため、かなり難しい

 治癒の奇跡や魔法は、本来人の持っている回復の力を活性化させていると、ビチュレイリワから聞いた。


 弱り切っている人では、無理に回復させようとすると、体力が持たない。

 死なないよう、調整する必要がある。

 無論それでは完治するはずがない、治療が終わっても床に直接寝かされている。


 それでも、海水から作ったお湯で体を拭き清潔され水と食料は優先された。

 ここは、フェルトさんが仕切っている。


「この子も治して下さい」


 腕の中の子供は、ぐったりとしている。


「もう少し待って」


「でも、また冒険者がいなくなってしまう。

 その前に、この子を、お願いします」


「大丈夫よ。

 今回来てくれたヨガさんたちは、全員を治癒するまでは、ここを出ていないと言ってくれてる」


「そんな事、信じられません。

 教会から見捨てられ、今まで来た冒険者たちにも何度裏切られたか」


「私を信じて。

 ヨガさんたちを信じると決めた、私を信じて」


「フェルト様。

 私たちに出来る事は、信じる事だけなのでしょうか。

 何度裏切られても」


「私たちにも、出来る事はあります。

 頑張って、生きることです。


 ただ今日を生きるのではなく、明日への希望を持ちましょう。

 いままでの絶望した状況に、私も忘れていました」




 キギは元々数万人が住んでいた街だ、周りにはその人々を養うために、畑が広がっていた。

 今は木々が生え、その面影も無いが、元に戻す事は可能だ。

 現に少しは畑として使われている。


 最も、使える水が無いので、普通の穀物は育たない。

 ネロと呼ばれる、どこにでも育つ植物が植えられている、よそでは雑草と思われているものだ。

 根が細い芋のようで、食べられる。


 普通は食べないものなので、畑で育てる事はない。

 美味しく無いからだ。

 ただ手が掛からず、食べる事のできるこのネロで、キギの街は生きながらえてきた。


「ヨガさん達が、川に水を戻せば、畑が耕せる。

 出来るだけ、広げるんだ」


 オードさんが雑草をむしりながら、作業を行っている人を鼓舞する。


「だが、育つのは1年以上先になる。

 それまで、俺たちが生きていられるか」


「それがどうした、わしは嬉しいぞ。

 わしは、育った物を口にする事は出来ぬかもしれんが。

 それを口にする者がいると、思えるのだ。

 全員が死でもおかしくない今までとは、比べ物にならん」


「そうだな、ここまで一緒に来てくれたんだ。

 あいつには、腹いっぱい食ってもらいてぇ」


「俺も、上の子にもう我慢させたくはないな」


「そう思うんなら、手を動かせ」




「もう少し右だ。

 そこだ、しっかり打ち込めよ、潮で流されないようにな」


「タビさん、女たちから出来上がった網を預かってきた。


 有りもので作ってあるから、あまり丈夫じゃ無いぞ。

 地引で引きずれば、10回ももないと思う。

 俺達は手間の割に、実入りが少ないんで、辞めたんでな」


「潮の流れに、耐えれればいい。

 今、作っているのは、魚用の罠だ。


 おびき寄せるための餌もいらん。

 潮の満ち引きを利用したものだ、手入れをちゃんと行えば、長く使えるしな」


「そうなんですか」


「この辺では、使わないのか。

 もっと南の方では、よく知られたものなんだがな」


「知らないですね。

 俺は帝国出身なんで」


「南が出身のものはいないのか、

 向こうは、漁業が盛んだと思ったが」


「今、南方の諸国と神聖国は微妙でして。

 入って来る人はいないですね」


「例の聖騎士を辞めた話か」


「そうだと思います」




「水を流して漏れている箇所は、水漏れの樹液を塗って塞いで下さい。

 丁寧に探して下さい、1ヶ所での漏れが少なくとも、多くあれば街まで水は届かないので」


 ピノが水路にあるひび割れを見つけ、埋めるよう指示していた。


「ピノさん、よくあの木から、水漏れに使える物が作れるって知ってましたね。

 錬金術士でもないのに」


「使えなくても、知識として蓄える事は可能です。

 何が必要か知ってれば、必要となった時、何を集めれば良いか判断できます」


「なるほどね。

 そんな考えは無かった」


「私には、この街に錬金術士がいるのは、朗報でした」


「なんで。

 水が来れば俺たちはいらなくなるだろう」


「まさか。

 まだまだ、してもらう事はいっぱいあります。

 期待してますよシガさん」


 ーーーーー


「おい、まだかよ」


 街を出て3日間、スペンストンさんは文句を言い続けている。


「もうすぐですよ」


「そればっかじゃねえか」


 スペンストンさんが付いて来ると言わなければ、もっと早く着いていた。


「いいかげん...」

「付きました。

 ここです」


「え!


 おい、どこに水が有るんだよ」


 ホント、口が閉じない。


 難しい事は説明できなので、別の水瓶から川に水を流すと言っていた。

 着いた場所に、大きな湖でもあると思っていたのだろう。

 ここには、そんな物はない。

 高い崖が有るだけだ。


(ここで、合っているよね)


[この奥に地下水脈があります。

 標高差を考えると、ここから取り出すのが最良です]


「リーシェさんこの奥、かなり距離が有るから気をつけて」


「大丈夫よ。

 ちゃんと水の気配は有るから」


 自分の精霊に語り始めた。

 リーシェさんは、土と水の上位精霊も呼び出せるようになった。

 今回彼らに手だってもらい、地中に水の道を作る。


「おい、ガキ。

 何始めたんだ」


「そこ危ないですよ。

 こっちに移動して下さい」


 俺が注意するが。


「俺は大丈夫だ」


 何が起こるか判っていないのに、その自信はどこから来るんだろう。


「スペンストンさんに、無事に戻ってもらわないと、俺らが困るんです」


「大丈夫だって言ってるだろ」


 低い大きな音が地下から鳴りだした。

 それに伴い、地面が揺れ始める。


「お、おい」


 慌てて、俺の方へ来た。


 今のはわざとだろう、ここまで水が来るには早すぎる。

 リーシェさん、スペンストンさんには実力行使をする事に決めたようだ。


 しばらくすると


「あのガキ何やってるんだ」


 と始まった、懲りていない。


 また音がし始めた。


「またか。

 今度はなんだ」


 大きな音と共に崖の一部が吹き飛ぶ。

 そこから一斉に大量の水が吹き出した。

 さっきスペンストンさんがいたところは、濁流に飲み込まれている。


「次からは、私達の言ったことはすぐに守って下さい」


「おう」

 スペンストンさんの顔は青い。

今回、ヨガ視線縛りで書けなかった。


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