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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
5章
69/104

5-10.Vs 華の一撃

前回あらすじ:ヒョコシルは出来る男

「お風呂ってすごい」


 マラガちゃんが、濡れたまま駆け込んできて、話は終わった。


「ちゃんと拭かないと、風邪ひくよ」


 と後からきたリーシェさんが、マラガちゃんの髪を拭き始めながら

「ヨガ、話しちゃったでしょ」


「これ以上、巻き込まぬようにしたかったのだがな。

 お前達も忘れて良いぞ」


 グメムゼガさん達は、一礼しただけだ。


 マラガちゃんをお風呂に連れて行った、フロールさんがラビダさんと目配せしてる。

 子供に聞かせないほうがいい話だから、連れ出してくれていたのか。


「キューさんは、ヨガにまかすと言って、まだ泳いでたわ」


 後から入った男風呂も、かなりな広さだった。


 ーーーーー


 翌日は、予定どおり街の観光をする事になった。

 リーシェさんとケイトさんは用事ができたと一緒に来ていない。


 帝都ジルミアンユルは芸術の街だ。

 街中に、石像が立っている。


 ジュア・ニフス国のジェイルズでも多く見た。

 ただし、像のモデルが違う。


 ジェイルズは自由に、何でも作られていた、魔物まで像になっていて統一感がない。

 だがジルミアンユルの像は、伝説の人々、そして帝国の関係者ばかりだ。


 帝国の人の中でも、その半数以上が女帝ミフォラレェーズ様のものだ。


「マラガちゃん、ミフォラレェーズ様と一緒に彫られているの何か知ってる」


 ミフォラレェーズ様の像には、必ず獣も一緒にいる、半分同化しているのさえある。

 狼とトカゲ、蛇を合わせたような体、毛で覆われていて大きな角がある。

 こんな獣は知らない。


「あれは、守護竜(ガーディアンドラゴン)白毛四足竜(タンヤアナ)だよ。

 皇帝は白毛四足竜(タンヤアナ)の生まれ変わりだから。

 知らなかったの」


「知らない」


「多分どこかで寝ている間に、かたられたと思うぞ」

 とマラガに聞こえないよう、タビさんは言うが、無いことでも無いでしょ。

 ケイトさんに後で聞こう。


 屋台の肉の串焼きを食べながら、街を見て回った。

 キューさんとマラガちゃんは、3人前を口に詰め込んでいた。


 途中タビさんの足が1つの像間で止る。

 英雄ロンダリダ、かなり男前の像になっている。


「似てる?」


 英雄の像が、美化されてるのは仕方がないよ。


「似ていないな。

 夫はもっと良い男だった」


 千年以上たっても、のろけるか。


[嫌な者が来た。

 今、街にヒメネスが入ってきた]


 生きてたのか。

 領主から追い払われたのを確認して、忘れていた。

 ビチュレイリワも追っていなかったはずだ。


[途中の街にお金が隠して有ったのでしょうね。

 身なりを整えてますよ。

 そして右手の中指に指輪が有る]


 そんな馬鹿な。

『奴隷印』の指輪は1人1つのはず、複数持っているなどありえない。


 奴隷制度のある国でも、黒の『奴隷印』を刻める指輪は、慎重に扱われている。

 奴隷商だからといって、全員が持っているわけではない、役人しか使えない国もあるくらいだ。


 製造している魔法ギルドは4つ。

 ビチュレイリワでさえ調べられないほど、製造方法は厳重に秘匿されている。

 そのギルドが公式に、調整が難しく使える者も限られ、1人1つしか作れないとしているのに。


[ヒョコシルさんの店に向かっています]


「ヒョコシルさんが危ない。

 戻るよ。

 キューさんは、マラガちゃんと後から来て」


 ピノはすでに走り出していた、俺も急ぐ。


 店の前には、人だかりが出来ていた。


 ヒョコシルさん達4人が出てきていて、その前にヒメネス。

 その周りを30人ほどの男が取り囲んでいる。


「どうやって、逃げ出しやがった」


「何のことだ」


 怒鳴っているヒメネスに対して、グメムゼガさんは平然としている。


「俺達が、どうして捕まっていなければならない

 罪でも犯したと言うのか、捕縛や裁判の記録が有るというのか」


 ヒョコシルさんが俺に気づいた。


「ヨガ様おかえりなさいませ」


「お前は」


 俺を見つけて、ヒメネスがまた騒ぎ出した。


「お前が、こいつらを連れ出したのか。

 屋敷の金を盗んだのもお前だろう」


「そんな事はしておりません。

 何か証拠でも。

 そういえば近くでお金を拾いましたので、ご領主様にお届けしましたが」


 領主が、何故自分を追い出したか、今判ったようだ。

 気づかないほど、頭が悪くはない。

 人相が一層悪くなる。


「お前らやっちまえ」


 そう叫ぶと後ろに下がった、小物感いっぱいだな。


 武器を持ち、前に出てきた男たちの首には、黒い模様が見える。

 自分に刃向かえない者を集めたのだろうが、俺相手には悪手だったね。


「ほらよ」


 俺は、指輪をはめた左手を上げた。


「『奴隷印』は消えたぞ、いつまでそいつの言いなりになってるんだ」


 男たちは何を言われたのか判っていない、そのまま俺との距離を縮めてきた。


「ヨガは黒の『奴隷印』を消せるの。

 みんな自分の首を確かめて」


 ラビダさんの声には反応した。


「お、おい、お前の『奴隷印』なくなってるぞ、俺のはどうなってる」

「ねえよ、いつもあったあの忌々しい模様は消えてる」


 男たちはお互いの首を確かめ合って、歓喜の叫びを上げている。


「どうなっている」


 ヒメネスは状況が判らない。

 男たちが、ヒメネスの声に、彼がいる事を思い出した。


「ヒメネスさんよ。

 俺たちゃ自由だぜ」


「ヒッ」


 開放された男たちが、ヒメネスに詰め寄り始めた。


「お前達、止まれ」


 ヒメネスは、奴隷以外の人を1人連れてきていた。

 羽織っている外套に、帝国のマークが縫い付けられている。

 まずい、役人だ。


「「やめろ」」


 俺と役人達の制止を無視して、男たちが襲いかかったその時。


「何を街中で騒いでいる」


 男たちの間に槍が突き刺さり、騒ぎが止まった。


 声の方向に女性達がいた、彼女達がやったようだ。

 身に付けている防具は、冒険者がよく着ているものに似ているが。

 色が派手だ、目立ちすぎる。


「これは『華の一撃』の皆様、私は衛兵のホザと申します。

 ヒメネス殿の告発により、犯罪者を捕らえにきていたのですが。

 思わぬ増援があり、危ないところだったのです」


 増援のところで、俺を指差した。

 そこに、ヒメネスが割り込んで。


「それに、こいつは大罪人です。

 私は帝国の奴隷協会の会長をしております。

 小さな組織ですので、会員の顔を全て覚えております。

 彼は会員ではない、それなのに『奴隷印』の指輪を使ったのです」


 帝国は指輪の管理を、ヒメネスにやらせているのか。

 汚れ仕事をさせておき、上前を跳ねるか。


「それだけではございません。

 こいつは、黒の『奴隷印』を消し自由にしました。

 黒の『奴隷印』が有る者に手助けするなど、法を犯しています」


「俺は小銭を盗んだだけだ、裁判でも3年の炭鉱送りのはずだ。

 黒の『奴隷印』を刻まれる理由はねえ」

「俺もそうだ、赤で済んでいたはずだ」


 他の男たちも声を上げ、また収拾がつかなくなった。


「黒の『奴隷印』を消しただと」


 犯罪者を助けたと言うより、黒の『奴隷印』を消したと言う方が、重要な事だ。

 それに気づいた声の主は、リスルールさんだった。

『華の一撃』のメンバーなのだから、いてもおかしくは無い。


 そして、彼女の後ろの男が持っている旗は、帝国の国旗だ。

 運びやすく小さく縦型になっているこの旗の意味は、権力代理。

 彼女たちが、皇帝の代理としてここにいる事を示している。


「皇帝ミフォラレェーズ様からの命を伝える。

 冒険者パーティ『閃光3』にいる女子は、『華の一撃』に移籍せよ。

 以上だ。

 一緒にこい」


 言われた内容を理解するまで、時間がかかった。

 その場にいた全員そうだったと思う。


 最初に理解できたタビさんが

「何を言っているのだ」


 冒険者に、皇帝が命令だと。


「妾は冒険者、何で皇帝なんぞの命令を聞かねばならん」


「ここは帝国だ」


「ならば出ていけばよい話。

 冒険者を縛る法はない」


「冒険者でも、法を犯せばその国で裁かれる」


「何の罪を犯した」


「皇帝に逆らった罪だ」


 話にならない。


「そんな罪で冒険者を裁けば、国際法に違反しますよ。

 帝国も人界、冒険者の自由な移動を認めているはずです」


 リーシェさんがみんなの思いを口にしてくれた。


「ミフォラレェーズ様は白毛四足竜(タンヤアナ)の生まれ変わり。

 人界の者なら、従うべきでしょう」


守護竜(ガーディアンドラゴン)と言えども、人に命令はできないと思うぞ。


 いままでそんな話は聞いたことがない。

 人と守護竜(ガーディアンドラゴン)は協力し合う対等な立場だ」


 ここはケイトさんの言うことが、一番正しい。


「それで良いのですかあなた方は、『華の一撃』は8つ星なのですよ。

 4つや5つのあなた達が、逆らっていいわけないでしょう」


「星の数は、力や上下に関係はない。

 冒険者になった時に、言われなかったか」


 もう黙ってられなくなった。

 彼女自身も冒険者なら、これは知っていなければならない話だ。


「そんな男に言いくるめられて、まだ判りませんか。

 ミフォラレェーズ様は、あなた方にふさわしい幸せを、与えようとしてくれているのですよ。


 いいでしょう、どちらが上か勝負です。

 冒険者なら戦って、優劣を決めましょう。

 ヨガ、明日昼の街の闘技場でまっています」


 格好を付けて、立ち去ろうとしたのに、役人が


「あの・・・」


 と止めてしまった。


「この旗に、何か言いたい事が、お有りなのですか」


 言える訳がない。


 ヒメネスは、男たちに囲まれてて、どこかに連れていかれた。

 衛兵1人では、どうする事も出来ない。


 ーーーーー


 2度目の闘技場だ、前回との違いは、見に来ている人の数。

 10倍はいるだろうか、そして全員が『華の一撃』の味方をしている。

 中には横断幕を垂らし応援している者さえいる。

 試合という血なまぐさい感じがしない、彼女達は劇場で歌うと言っていたから、そちらの雰囲気に近いか。


 何をしても、彼女達を応援する歓声でかき消えてしまう。

 戦う理由も各自の紹介もされたが、何も聞こえなかった。


 審判が離れ、右手を上げた。

 口で始めと読み取れたので、試合は始まったのだろう。

 この試合、一応殺す事は禁じられている。


 でも1対8ってどうなんだ。

 そもそも8人のパーティって聞かない。


 試合が始まると『華の一撃』は全員が歌い出した。

 上手い、そして全部が呪歌の歌声だ。


 俺も1人じゃないから、数に文句は言いにくい。


(彼女たちの、歌声を聞こえないようにしてくれ)


 呪歌の効果は、自分達の能力の底上げと、相手への妨害。


 最大の効果を生み出すのは、歌詞を理解できる者に対してだ。

 そして発動までに時間がかかり、歌を切らしてしまうと最初からになってしまう。

 魔物を相手にする、冒険者に使い手が少ない理由だ。


 呪歌は、人同士の戦いで有効。

 だから軍の力とみなされ、使い手の数は公開の義務がある。


 冒険者の彼女たちは、その数に加える必要はない。

 セコいし、こんなに派手でばれていない訳は無いだろうに。


 彼女たちの戦法は、一撃離脱の連携、上手い。

 攻撃してくる者の歌は止まるが、後ろに控えている者が歌を続け。

 1つの攻撃をかわすと、すぐに次の攻撃が死角から行われる。


 そして、この攻撃が続けて行われている。

 暇がない。


 ただ、攻撃が綺麗に整理されすぎている。

 次の攻撃が、死角から来ると判っていれば、対応するのは難しくない。


 しかも、攻撃に参加する前には、歌を止め力を貯めている。

 それで次の人が判るので、攻撃方法も先に判明し、対応しやすい。

「華の一撃」の人が多く、多様な攻撃方法がある、その優位性が意味をなしていない。


 それに、これほど精密な連携攻撃だ、この場で生まれてはいない、パターンが有る。


 攻撃して逃げる道を塞いて行くと、数回目で攻撃が止まった。

 歌も止まる。


「止めないか」


 提案してみるが、歌が再開された。

 俺も速度を上げる。


 歌うために止まった者を狙い、後ろに回る。

 女性を殴るのは気持ちが良くないが、この試合で殺すわけにも行かない。

 一撃で意識を刈り取っていく。

 ・

 ・

 ・

「リスルールさん、最後の1人だよ。

 負けを認めてくれないかな」


 闘技場には、ものすごい罵声が響いている。

 知ったことじゃない、こちらもメンバーが懸かっているんだから。


最初、パーティは男女混合の「最後の一撃」でした。

帝都と歌に引っ張られ...走れ〜


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