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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
5章
68/104

5-9.帝都・ヒョコシルさんの店で

前回あらすじ:リスルールさんも痛い人


(お話には痛い人が必要なんです by 作者の言い訳)

 護衛として、リスルールさんと旅をして気づいた事。

 彼女は本当に歌が好きだ。


 マラガちゃんがヘトヘトになるまで、演奏を頼んでいた。

 それとタビさんだけではなく、みんなに頼み込んで声を合わせ歌っていた。

 一人の時でも鼻歌が出ている。


 ただし俺には近づいてこない。

 歌は苦手なので、俺からは近づかない。


 それとフルス鳥だが、やはり彼女の大好物だった。

 この旅にも燻製にしてまで持ってきている、それも結構な量だ。


「フルス鳥って、結構値がしたと思うんだけど。


 頑張れば手が届くから、現実的な平民の憧れ。

 ハバルで1回だけ食べた事があったな。


 キューさんは食べ慣れているかも知れないけど」


「うちみたいな貧乏男爵家じゃ無理よ。

 もっとも金がある貴族は、逆に食べないと思うけど」


「そうなの」


 リーシェさんは知らないか。


「フルス鳥は、高級食材だけど、宮廷料理では出ないよ」


「どうして」


「小さな骨の多い魚や小鳥は、宮廷料理の食材には使わない。

 喉に刺さったら、大変な事になるから」


「魔法でどうにかなると思うけど。

 そうか、招いた偉い人に刺さったら大事か」


「もっと大変、料理を用意した側が毒をもった事になってしまう」


「え!」


「毒針を食事に隠し兄を殺した王子、と言う古い話があってね。

 本当の話で今ではどの国でも、貴族の食卓に小さい骨は避けられている」


「リスルールさんが好きだから、この前は有ったのか」


 俺も1つ。


「タビさんが手づかみで食べたあれも、故事を踏まえての行動だけどね」


 リスルールさんは気づかなかったけど。


「昔、戦に勝った国の王が降伏に来た使者との食事に、小鳥の丸焼きを出した、侮辱するつもりだったのだろう。

 ところがその使者は、丸焼きを手で掴んで食べ始めた。

 無礼と怒った王に使者は、『自分は無知なので、手本を見せ下さい』と。


 見せれるはずがない、本来は出ないものだから、正しい食べ方など有りはしない」


 この使者の話は、他にもあるが、今は別の話を。


「帰りに料理人が出てきて、タビさんに深く頭さげてたでしょう。

 料理人達は作りたくなかった、でも強引に作らされた。


 タビさんが手で食べて、これは宮廷料理ではないと返したんで、料理人達は気分が良かったんだと思う」


 リスルールさんは、虚栄心でいっぱいだけど、根っこのところで上手く出来ていないと思う。

 一歩引いた目で見直すと、彼女は可愛い人だ。


 俺を含め男たちにはきつく当たるが。

 他の女性メンバーには、普通に接している。


 思い出したように威圧的態度になるが、長続きしない。

 それを見て、タビさんとケイトさんは、面白がっていた。


 ーーーーー


 帝都ジルミアンユル、この街は国の名前と同じだ。


 そしてこの街の冒険者ギルドは小さかった、1部屋あるだけだ。

 依頼完了の報告のために1人で来たが、最初まちがいだと思った。


「ここ冒険者ギルドで間違いないわよ、入っておいで」


 中には元冒険者風の年配の女性が、お茶を飲んでいた。


「いらしゃい、5日ぶりの客人。

 一応私がここのギルド長」


 室内を見回してしまった。

 カウンターもなく、テーブルには1人。

 依頼や情報の掲示板さえない。


「驚いたかい。

 ここには魔獣さえ出ない、討伐依頼なんて来ないしね。

 首都に冒険者ギルドが無いと、格好がつかないからやってるだけ」


「運営はどうしてるんです」


 紹介料なんて入らないだろう。


「他の街のギルドの支援で、どうにかなってるのさ」


「平和なんですね、良いことなのでしょうけど」


「そうだね、冒険者ギルドが暇なのは、平和ってことだね。

 それなら、さっさとラーディもこうなって欲しいね」


 あのゴチャゴチャしたラーディのギルドが、ここみたいにテーブル1つにか、ありえない。

 でも、良いことなんだよな、始めて平和な風景を想像できた。


「依頼達成だね、報酬だがギルドで預かっておくよ。

 ここには金がないんだ、他のギルドで下ろしてくれ」


 はっきり言うな、笑ってしまう。


「ヒョコシルさんと面識が有るんだ、金には困って無いだろう。

 あんたが来たら寄るようにって伝言頼まれてた。

 依頼がなくなったのに、手数料をそのまま寄付してくれたんだ。

 私の顔を立てて、顔を出してくれよ」


「判ってますよ」


 帝都まで来て、無視する訳けにもいかない。

 そもそも他のメンバーは、ヒョコシルさんの店の近くで食事をしている。


「ヨガ様、ようこそおいでくださいました」


 店で名前を名乗ると、すぐにヒョコシルさんが飛び出てきた。


「どうぞ、どうぞ。

 中に入って下さい」


 ヒョコシルさんの店は、食材を扱っていた。

 ただし、店はこれだけではなく、衣類や各種道具まで幅広く扱っているそうだ。


「今お茶を用意させます。

 タビ様はもう初めておられましたか、そちらのほうも準備させていますのでお待ち下さい」


 人に合うというのに、飲んでいたタビさん。


「ほらヒョコシル殿は出来る男だ。

 こうなるに決まっている」


 残念だったけど、宴席は夕刻からだった。

 出来る男は常識も有った。




「これは私の」


 奪われそうだったパイ包みを救って、叫んでいるのはキューさん。

 足でマラガちゃんを抑え込んでいる。

 キューさん、彼女と一緒にいると言動が幼くなってないか。


 リーシェさんまで、マラガちゃんにグリグリ抱きついてるし。

 あれは愛でてるのか。

 俺がアトロフの時、あれをやりたかったんじゃないよね。


 ケイトさんも勢いよく食べている。


「よい食べっぷりですな、見ていて気持ちがいい」


 ヒョコシルさん笑って言うが、俺は顔が熱い。

 みんな、ちゃんと食べてるよね。


 料理を運んで来る人はいたが、俺たちへの給仕は、地下牢から助けた4人がしてくれていた。


 俺の両脇には、フロールさんとラビダさんの美人2人。

 彼女達、牢がら出た時も美しかったが、今は血色も良くなって数倍綺麗になっている。

 緊張して食べ物に手が出せない、飲んで誤魔化している。


 タビさんとピノも、飲み組だ。


 散々詰め込んで


「もう入らない」


 マラガちゃんのお腹がパンパンだ。


 そして


「眠い」


 本能のままに生きてる。


「お風呂に入りませんか。

 ここのお風呂、広くて気持ちいいですよ」


 フロールさんが誘う。

 ここ、お風呂が有るんだ。


「お風呂ってなに」とマラガちゃん。


「温かいお湯で、水浴びするのよ」


「え〜、水浴び。

 やだな、冷たいの」


「だから温かいお湯なんだって、気持ちいいよ」


「よし、一緒に入ろう」


 キューさんがマラガちゃんを抱えて立ち上がると、

 フロールさんが


「ご案内します」

 と続いた。


 リーシェさんはどうしようか、悩んでる。


「一緒に、お入りになられては、広さには余裕がございます」


 ヒョコシルさんの後押しで、部屋を出ていってしまった。


「ケイトはどうする」


 飲み組のタビさんが、残った食べ組追い出そうとしている。

 ゆっくり飲むつもりだな。


「後でヨガと一緒に入れさせてもらう」


「一応男女で分かれているのですが。

 ご希望でしたなら・・」

「希望してないので、分けといて下さい」


 訂正させてもらいました。


「じゃ」とキューさん達の後を追って出て行った。


 ヒョコシルさんは少しニヤけている、わざとですね。

 これ以上、こんな話を続けさせるわけにはいかない。


「そういえば、すぐに店を取り戻せたんですよね。

 さすが、ヒョコシルさん出来る男ですね」


 あれ、タビさん変な顔をした。


「私の罪など、急いで捏造したものばかりです。

 少し調べれば、すぐに嘘だと判るものばかりでした。

 店の者も協力してくれましたし、楽に出来ましたよ」


 やはり人望有るんだな。


「ヒメネスに弱みを握られて、いいように金を取られていたので、店の者も心良く思っていなかったのです」


 弱み?


「私がいなくなった後、妻と弟が夫婦になっておりました。

 そういう事だったのでしょう。


 妻は商会当主様の姪です、私はあれと地位のため結婚したのです。

 ぞんざいに扱っていたつもりはありません、欲しがる物は与えておりました。

 私には妻と言うよりは仕事の良き相棒でした、それでは彼女は満足出来なかったのでしょう。

 そして弟は美しい義姉に恋をし、彼女を悲しませる兄を憎んでいた」


 それじゃ、ヒョコシルさんを貶めたのは、その2人。


「2人をどうしたんですか」


 ヒョコシルさんは、自分を貶めた者を憎んでいたはずだ。


「どうもしません。

 街に戻り、2人が夫婦になっていると知って、全てを理解しました。

 そして、どうでもいい事と思ったのです」


 視線を下に向け、深い息を吐いた。


「私は、地位を父から引き継いだ後は、ペカジャル商会で働く事が全てでした。

 その時の私なら、弟に妻、しかも当主の姪を寝取られるなど、自尊心や欲で許せるものではなかったはずです。


 ですが2人を見て『早く言ってくれればよかったのに』と思ってしまいました。

 愛し合っている者同士が、一緒になればいいと。


 この国の店は弟に任せます」


 と笑った。


「私を売ったのは、父です」


 ヒョコシルさんに続いてラビダさんが、身の上話を始めた。


「飲むと、どうしようもない人ですが、愛してもらった記憶もあります。

 会いたいとは思いませんが、憎む気にもなれません。

 彼は私に、黒の『奴隷紋』が刻まれるとは、思ってはいなかったでしょうし」


「落ちるところまで落ちると、今まで大事にしてたものが、どうでも良くなる」


 今度はグメムゼガさんが語り始めた、変な流れになってないか。


「俺にとっては、帝国の正義がそれだ。


 9年前帝国では、御兄弟で次期皇帝の座を争っていた。

 各陣営は派閥を作り、お互いを牽制し合っていた。

 俺は、どこにも組みしないで中立でいたつもりだった。


 そんな俺に、四女ミフォラレェーズ様が近づいてきた。

『宰相が怪しいから裏を調べろと』」


 現ミフォラレェーズ皇帝は四女だったのか、伯爵家での俺の順位より低い。

 当時、彼女が皇帝になれるなど、誰も考えていなかっただろうな。


「どうして貴方に」


「俺はミフォラレェーズ様の剣の師匠だった、面識が有る。


 そして調べて見れば、実際宰相は黒だったしな。

 まずい事に、有力な皇帝候補の関与していた証言も出てきた。


 相手が相手だったので、証拠集めを慎重に行っていた時、皇帝暗殺未遂が起きた」


 皇帝暗殺!

 その事件、知らない。


「国外には漏れないよう、細心の注意をされていましたから。

 ヨガ様が知らなくても無理はございません」


「商人にはバレていたのか」


「はい」


 平気な顔で返事をしてるけど、ヒョコシルさん怖いよ。


「ミフォラレェーズ様がギリギリで間に合い、幸い皇帝の命は助かったが。

 毒の剣で傷を負われ、立ち上がる力を失われてしまった。

 その事で皇帝は、退位するご決断をされた」


 噂になっている、女帝が前皇帝を追い落としたわけでは無かったのか。


「事件は、俺の調査で身の危険を感じ、焦った宰相達が起こした。

 宰相は魔法を使え無いはずなのに、炎を吐き抵抗した。

 生け捕りに出来なかった。


 宰相から証言は取れなかったが、俺が調べた物は全て証拠として受け入れられた。

 近衛隊長だった事が効いた。

 そのせいで、有力な皇帝候補がいなくなってしまったがね」


「全てはミフォラレェーズ様の、計画だったかも知れませんね」


「そうかも知れない。

 だが、宰相がどこかの国のスパイで、帝国の中枢部を乗っ取る計画だったのは本当だ。

 次期皇帝は、その国の傀儡になっていただろう。

 見逃せるはずがない」


「そして、グメムゼガ殿は晴れて、ミフォラレェーズ様派になってしまったのですね」


「俺になったつもりは無かったが、そう見られただろうな」


 そして政争に巻き込まれた。


「ところでヨガ殿、貴方が以前言われていた、やりたい事とは何か聞かせてもらえないだろうか」


 いつのまにかグメムゼガさん達、姿勢を正している。


「ヨガ判っているな。

 グメムゼガ殿達は、自分の恥や知られたくない事をどうして話したのか。

 その思いに、真面目に応えよ」


 判ってるよタビさん。


(俺の酔い醒ましてもらえないか)


 意識がはっきりしてくる。

 隣でピノも酔を抜いている。

「この程度で酔わぬ」とはタビさんだ。


 最初から酔ってたふりしてたのは、真面目な話を避けるためか。

 ごめんなさい、気づいてませんでした。


「ヨガ殿は不思議なかただ。

 少なくとも普通の生き方をされる人ではない。


 ならば、その思いも普通の事では無いでしょう、お手伝いさせてもらえないか。

 ヨガ殿ならば、国を乗っ取ると言われても驚きません」


「それは面白いな。

 どこかの、ご落胤でも見つけ、国盗りでもするか、ヨガ」


 タビさん、それ俺達だと洒落にならないの、知ってるでしょう。


「魔王を倒す。

 それが俺のしたい事です」


「妾は長寿種だ、他よりは長く生きている。

 それを口にした者を数人知っておる、ただし倒す方法を持ち口にしたのはヨガが始めてだ」

最近アップする時間がバラバラなのは、興味を持ってくれる人が増えないかないう、下心のためです。


感想や誤字、指摘をいただけると嬉しいです。


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