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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
5章
67/104

5-8.歌姫

前回あらすじ:稚魚は卵が地面に落ちる前に生まれます。


 リスルールさん、たしか北の歌姫と讃えられる、歌い手だ。

 しかも8つ星パーティーの冒険者でも、有ったはずだ。


 彼女の護衛は、本人からの依頼だった。


「6日後に、帝都に向かいます。

 その時の護衛を、あなた方に依頼したいのです」


 8つ星なら護衛なんて、いらないだろう。


「よろしく頼みますね。

 こうしてお会いしたのも縁、夕食へご招待したいのですが、おいでくださいますか。

 後で迎えをうかがわせますので、では」


 それだけ言うと用事は済んだと、さっさと馬車に乗り込んで行ってしまう。

 依頼を受けるとは言っていないのだが。


「彼女は妾をパーティ・リーダーと思ったようじゃな。

 やはりこの隠しきれぬ気品のせいか」

 タビさんは機嫌が良い。


 リスルールさん、タビさんに向かって話していた。

 一応先頭にいたんだけど、俺など目に入らなかったようだ。


「彼女、タビさんにしか興味が無かったんです」


 ケイトさんが詳しい事情を、知っているようだ。


「実は元々の私達への指名依頼は、帝都までの荷の護送で、依頼人はヒョコシルさんだったんです」


「ヒョコシルさんが、俺達を指名。

 なんで」


「わかれる時、帝都におこしください、と言われていたけど。

 私達は帝都によらず、東に行こうとしてますよね」


「しかたないじゃないか。

 帝都行ったら、遠回りになってしまう」


 帝都はもっと北、大陸の端だ。


「そうなるのをヒョコシルさんは予想して、指名依頼したみたいです。

 良い報酬を、提示してくれていました。


 店を取り戻したのではないでしょうか」


「出来る商人だね」とキューさん。


 ヒョコシルさんが出来る商人なのはいいけど。


「でも今の依頼主は、リスルールさんなんですよね。

 依頼内容まで変わっている」


 リーシェさんの言う通りだ、なんでそうなったんだ。


「リスルールさん達『華の一撃』のメンバーは、国内を定期的に回って、歌を歌っているそうで。

 この街に来たのも、それが理由」


 変わった冒険者だな。


「ヒョコシルさんが出した指名依頼で、『緑指の弾き手』と『奇跡の声持つ狐耳』がこの街にいると噂になってしまったんです。

「耳より、このフサフサの尻尾を言って欲しいのじゃがな」


 タビさんそう言いながら、自慢だと言う尻尾をなでた。


「もう緑でなくなっているのに」


 マラガちゃんは両手を広げて俺に見せてきた。

 かなり緑色は落ちている。


「リスルールさんも冒険者です、ギルドでその噂を耳にしたようです。

 2人を、帝都に連れて行きたいと考えたみたいですね。


 彼女、立場を利用して依頼に割り込んだみたいなんですが。

 ヒョコシルさんとしては、私達が帝都に行けばいいんで、自分の依頼は取り下げたみたいです」


「詳しいな、あの女は自分の事をペラペラ言いふらす感じはしなかったが」


「支配人が教えてくれた」


「「支配人?」」


「彼女の所属しているパーティ『華の一撃』は、全員が歌い手で。

 帝都には、彼女たち専用の劇場が有るそうです。

 支配人はそこの責任者。

 予定を管理する仕事もしてるみたい。


 ヨガ達と入れ違いに、帝都に戻ったのですが、色々と教えてくれましたよ」


「わがままお嬢様を、押し付けられたな。

 でケイトよ、他にも何か有っただろう。

 お前は、何かを隠しているよな」


 え!


「お前は隠し事が下手だ、ヨガといい勝負だぞ」


「そんなにひどいの」


 ケイトさんそのがっかり感はどうして。

 そして、後ろで笑ってるのはリーシェさんとキューだよね。


「支配人も元冒険者で、駆け出しのころハバルで母さんに有った事が有るんだって。

 私が娘だと知って驚いていたわ。

 母さんの話が聞けて、嬉しかったのよ」


 ケイトさんは、直接母さんを知らないからな。

 話だけでも嬉しいかも。


「それで、帝都までのリスルールさんの護衛。

 受ける、受けない、どっち」とキューさん。


「私は受けてもいいと思う」


 リーシェさんが、珍しくヨガに従うじゃない。

 俺、何かしたか。


「急いでアコール神聖国に行っても、教会の協力が得られる保証はまるでない。

 そもそも、教会の上の人に会えるとも思えないし。


 どうするのが一番良いのか、考える時間が欲しいと思っていたから。

 遠回りもいいかなと」


「リーシェに賛成じゃ」

「それがいいと思う」

「観光したい、レル牛のパイ包〜」


 みんなリーシェさんの意見に賛成なようだ、回り道が決定した。


 ーーーーー


 夕食に招待された場所は、超高級料理を出すところ。

 普段なら、お金をもらっても来たくない。

 美味しいと思えなかった、食卓を思い出す。


 彼女の簡単な挨拶の後、食事が始まった。

 メニューは軽めのものになっていた、会話を目的とした食事だということだ。


 そして、このような食事はマナーが面倒くさい。


 俺やキューさんは、一応は貴族の出だ。

 幼い時に、マナーは叩き込まれている。


 タビさんは長年の経験、ケイトさんには蓄積された知識がある。

 ピノも問題がない。


(リーシェさんが戸惑っていないのは、ビチュレイリワが教えてるから)


[私がサポートしています。

 しかし、冒険者をこんな場所に招待するなんて、彼女よい趣味ではないですね]


 全員が正しいマナーで食事しているので、リスルールさん驚いている。

 そして、悔しがっているようにも見えるのは、気のせいか。


「お口に会いますか。

 緑の指の小さな子も連れてきてよかったのに」


 いきなり増えたら、料理人が困ると思う。

 それに小さい子が、マナーに精通してないのを判っていて言っている。

 たかが冒険者相手に、どうして優越感が欲しいんだろう。


「『緑指の弾き手』はタビ殿の歌と組んで演奏をしているとか、一度聞いてみたいですね」


「興が乗った時に、適当に歌っているだけだ。

 聞かせるようなものじゃない」


「ご謙遜を、お二人の噂は帝都にも聞こえています。

『華の一撃』にも劣らないと」


 彼女が気になっていたのは、それか!


(帝都で噂になってるの?)


[噂になっていると言うよりも。

 噂を広げられているんですよ、ヒョコシルさんによって]


(なんでだ)


[彼なりの、礼でしょうか。

 良かれと思って、話を広げています。

 私も知っています、ヨガのサーガーを歌いましょうか]


(止めてくれ)


「どうです、いっそ『華の一撃』に入りませんか。

 歓迎しますよ。

 帝都の劇場で一緒に歌うたいましょう」


 堂々と勧誘かよ。


「ははは・・・

 面白いなお前、パーティ・リーダーの前でそれを言うか」


「このような男は、そうそうに見限ったほうがよいですよ」


「ヨガが何かしましたか」


 リーシェさん俺を睨む。

 してないはず、記憶にない。


「こんな美女をはべらせた男に、ろくな奴はいない」


 リーシェさんの厳しい顔が緩んだが、今度はケイトさんとキューさんが笑い出した。


「ヨガは、リスルールさんの思っているような男では無いですよ。

 そうだったら子作りが、どんなに楽か。

『閃光3』もハーレムパーティでも有りませんしね」


「未亡人のタビさん以外、全員ユニコーンに乗れますよ」


「じゃどうして彼と一緒にいるんですか」

 リスルールさん、どうしてそんな驚いた顔をしているんです。


「なんとなくそうなったんですよ」


 なんとなく流れで、こうなっているだけだ。


「私は、ヨガに助けられた。

 仲間になってくれることで、助けてくれたんです。

 それ以来、一緒にいるのが普通です」


 ハバルから出るために、パーティ組んだったよね。


「私は、小さかった頃からの夢をひきずっていて。

 無理だと判っているのに、心地よくてずーっと夢見てた。


 ヨガは、そこから抜け出すキッカケになってくれた。

 家を出たのは、変な親父の妻になるのが嫌だったからだけど」


 キューさん貴族としては適齢期を過ぎている、あのまま残っていれば多くの縁談が持ち込まれたか。

 でもキッカケってなんだ。


「自分の使命のために、ヨガに協力して欲しいことがある」


 子作り以外なら、喜んで協力するんだけど。


「私はヨガのために存在してますから」

 ピノ言葉を選べ、お前わざとやってるだろう。


「妾も悲願を叶えるためだ。

 それぞれ理由は違うが、全員がこいつといる事を自分で選んでいる。

 結局は、一緒にいたいから、一緒にいるんだがな」


 なんだこれ、すごく恥ずかしい。


「これだから、ハーレムパーティーは!


 愛の告白か、私は何を見せられている。

 お前達は真実が見えなくなっている。

 いくら熱くとも、その思いはいずれ消えてしまう。

 それまでの長い時を無駄にしてしまうぞ」


「ずいぶんな言いようだな。

 何があった?」


 こう無遠慮に聞けるのが、タビさんだ。


 リスルールさん思わぬ反撃に、口撃が止まった、と思ったら。


「女帝ミフォラレェーズ様に救って頂く前、私は『最後の一撃』と言うパーティーにいた。

 男2に女性4のパーティーだった。

 当時の私は、愚かにもその1人に恋をしていたのだ。


 目が覚めたのは、男2人がパーティーを抜けなければならなくなった時だ。

 彼は、他のメンバーにプロポーズして、一緒に冒険者を辞めてしまったのさ。


 彼女は友人だと思っていたのに」


 もしかしたらリスルールさん、その男の人とそれなりの関係が有ったのかな。


「男が二股をかけておったか。

 2人の仲をお前が知らずにいて、それを言えなかったとか。

 どちらにしても、よく聞く話だな」


「お前に何が判る」


「何もわからん。

 それはお前も同じだろう、世間を何も知らぬ。

 世の中を決めつけて見ている、愚かなことだ。


 お前に見えている妾達の姿も、事実とは別のものじゃ」


 俺達は普通じゃないから、出来るはずがないと思うけど。


 話を聞くと、男性は女帝の命でパーティーを抜けさせられたようだ。

 女帝も男性嫌いか。

 政略結婚が嫌で、帝位を簒奪したと噂だものな。


「抜けた男性に爵位が与えられていたら、リスルールさんはどうしてた」

 とキューさん。


 でも、パーティーの対価としては爵位はありえないと思う。

 話が飛躍すぎだと思う。


「どうしたとは?」


「爵位があると、2人目の妻が許される。

 位が上がれば、その数も増えて、公爵や王なら4人と言うのが普通かな。


 カリギュナーなら冒険者が貴族になれる道も有る。

 ラーディでは、そんな3人がクランに入っている、気づいて誰も何も言わないけど」


 そうなのか。


「ヨガ、今知ったって顔しない。

 遠征帰りの中にも、2人目の妻になった人がいたよ」


 今、知ったよ。

 複数の妻が許されるのは、政略結婚のためだと思っていたよ。


「バカな女を、はべらして喜んでいる男はどこにでもいる。

 私に、その中に入れば良かったとでも、言うのか。

 さすがハーレムパーティーにいる女の言うことだな」


 論外にキューさんを、バカな女と言っている、不愉快だな。


「愛人や恋人とは違うぞ、妻という対等な立場だ。

 当人同士では順列はあるだろうが、対外的には同じく愛し愛されていると言っている」


「ばかばかしい。

 タビ殿、貴方も同じ考えなのか」


「妾の夫はもう十分じゃ。


 そもそもヨガを男としてなど見てはおらぬ、面白いと思っているがな。

 行く先を見てみたいから、一緒にもいる」


 リスルールさんは終始、機嫌が悪かった。

 俺達とは相性が悪い。


 その後機嫌がよくなったのは、メインに出てきたフルス鳥の姿焼きを、タビさんが手づかみで貪った時だ、勝ち誇った笑みが出た。

 これは、タビさんが悪い。


 最後に

「今日は、ありがとうございました。

 明日、街の中央広場で私が歌います。

 見に来てください」

 と言って席を立った。


 食後の談笑はしなくていいようだ、俺達もすぐに席を立つ。


 見送りには料理人が並んでいた。

 やはり俺達を招いた、リスルールさんはすでに帰っていた。


「この招待は、なんだったのでしょうね」


「妾の品定めじゃろうな。

『華の一撃』への勧誘も、まんざら嘘ではあるまい」


 結果はどうだったんだろう。


 ーーーーー


 翌日の中央広場近くは、人で溢れかえっていた。


 もともと街の広場というのは、街が襲われた時に守備兵を集めておく場所になる。

 そのためにもかなりの広さがあるが、今はその広場に入れない、それどころか近づけもしない。


「すごい人だな、ここまで彼女の声が届くとは思えない」


「広場も見えないよ」


 俺の肩に載って、頭2つ高いマラガちゃんでも見えないのか。


「はぐれそうね」

「人を見に来ただけだね。

 私も戻ればよかったな」


 この人の数を見て、タビさん、ケイトさん、ピノが戻ってしまっている。

 俺の認識能力でも人が多すぎる、処理しきれないので今は使っていない。


 一斉に大きな歓声が上がった。


[彼女が出てきました]


 ビチュレイリワがそう言った瞬間に、広場の様子が見えた。

 近くの木の上からの視界だ。

 リーシェさん、キューさんにも伝えてる。


 リスルールさんが両手を広げると、静かになる。

 その静寂が自分の所まで来た時、歌い始まった。


 よく通る声だ。

 ここまでしっかりと聞こえてきた。


 歌は徐々に熱を帯びてくる、それに応じて観客も熱を帯びる。

 一線を越えた時、全員が歌い出した。


 彼女は数曲を観客と一緒に歌う。


 1曲が終わった後には

「帝国万歳」や「皇帝ミフォラレェーズ様に忠誠を」の声が上がる。

 彼女の歌っている歌は、帝国や女帝を称えるものばかりだ。


 女帝が『華の一撃』に、何をさせているのかが判った。

『華の一撃』が8つ星なのかも。

 帝国が彼女たちの力を使っている。


 それは、リスルールさんの歌が呪歌な理由だ。

感想や誤字、指摘をいただけると嬉しいです。


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