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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
5章
66/104

5-7.光の川

前回あらすじ:吹雪に立つ雪豹に敬意を

 谷で見つけた『真眼』は、ビチュレイリワが欲しがったため、渡した。

 調べるらしい。


 ギルドには

「残念ですが、雪豹(イオラス)には近づく事もできませんでした」

 と報告した。


 墓場のことを、話す気はない。


「ロハイラの耳を、持っていてもダメだったか」


「どこにいるかまでは、わかるんですが。

 近づけないんですよ」


 これで、ロハイラの耳を持っていない普通の冒険者は、この依頼に挑戦する気はなくなるだろう。

 雪豹(イオラス)はかつて狩り追い立てられ、自分たちの最後の行動を変えざるを得なかったものたちだ。

 雪山の中で静かに暮らしていて欲しい。



「この辺で、なにか面白い依頼ないかな」


 最近はビチュレイリワとの約束『色々な経験』のため、ギルドで聞くようにしている。


「この時期にちょうどいいのが有るぞ」


 3つ移動した先の街で、依頼の窓口にいたギルド長が教えてくれた。

 内容より、なぜそこにギルド長がいるのが、気になってしまった。


 本来担当のおばさんが、熱で休んだためらしい。

 職員が全部で6人だと言うのだから、小さい。

 ジルミアンユル帝国で、帝都についで大きなこの街でだ。

 ここは平和だな。


 依頼の内容は


「もう少し北の高地に、この季節『光の川』が現れる。

 その正体を調べるのさ。

 最初に報告されたのは60年ほど前だが、その前から有ったらしい。


 その後、何度か報告されているが、毎回場所が違う。

 目撃報告は、毎年有るわけではないが、『光の川』は毎年現れてると考えられている。

 見つからなかった年も、どこかで流れてるということだ」


[見つけました。

 2年前の記録画像に残っていますね」


 山の側面に、細い光の筋がある映像が、頭に浮かぶ。

 ゆっくり流れているように見える。


[高高度からの映像なので、何が光っているかは解析はできないですね]


「帝立協会から調査の依頼が出てるんです。

 彼らは、国内に自分たちの知らない事が、有るのが許せないんでしょうね。

 いい金を提示してますよ」


 金は別として

「おもしろそうだな」


「だろう、しかも失敗してもペナルティがない」


 高額報酬で、ペナルティがない。


「それなら、この辺の冒険者が全部行くだろう」


 そんな美味い話なら冒険者が集まってくるはずだ。

 多くの人で調べられたら、正体なんてすぐに判ってしまうんじゃないか。


 しかし、ギルドに人が集まっている雰囲気はない。


「残念ながら、その辺は浮魚(イネオダ)の棲息地でな。


 肉食で面倒な相手だ。

 危険が大きすぎて腕の有る冒険者以外、足を踏み入れないのさ」


 依頼書を見れば、4つ星以上だ。


 それに、失敗時ペナルティが無いというのは、失敗する可能性も高いためだ。

 この内容だと準備に金がかかる、そして失敗した時は1テルも入ってこない。

 場所が場所だけに、何かのついでという訳にも行かない。


 やろうとする冒険者は少ないか。


 正体か。

 念のため、タビさんを見てみる。


「妾は知らんぞ」


 長く生きているタビさんなら、知ってるかと思ったが、知らないか。

 次にケイトさん。


「私も聞いてないよ」


 先代銀鱗翼竜(ケフロイヤ)から知識を受け継いでいる、期待したけどダメでしたか。


 みんなは、いつものように

「「ヨガにまかせる」」

 と言うので、やってみる事にした。


 出発の前に

「今回は妾も行くぞ」

 と言う、タビさんの一言で少し揉めた。


 今回も厳しい場所なので、マラガちゃんは連れていけない。

 誰が残ると言う話だ。


「私は1人でも大丈夫です」

 とマラガちゃんは言うが、これは大人の責任だ。


 4人で話し合いが行われた。

 タビさんは、話に参加する気もない。


「私はヨガをサポートしなければなりません」とピノ。

 一緒にいる必要有ったっけ?

 ビチュレイリワは、すごい遠くにいるはずだけど。


「私の高速移動は、今回の探査には必要でしょ」

 と言うのはケイト。

 最後の手として、ビチュレイリワに探してもらい、現地にケイトさん先行してもらという方法を考えていた。


「離れるのは、もう嫌よ」

 と言うリーシェさんにうなずきそうになり、タビさんに首を締められ、俺はその場から引き離された。


 話し合いは、立場的に不利になったキューさんの


「タビさんなら、ケイトさんの出来る事は全部出来るよね」

 が決めてになって、ケイトの居残りが決まった。


「早く、龍体に成れるように、ならないと」

 とボソりと言っていた。


 銀鱗翼竜(ケフロイヤ)になら、その背に全員が乗れる。


 ーーーー


 ギルド長の言っていた『浮魚(イネオダ)が面倒だ』は、本当だった。


 大きさは片手の長さくらい、1匹1匹は強くない。

 空中を泳いでいるが、高くても剣の届く範囲にいるので、戦いで不利はない。


 面倒なのは、その数としつこさだ。

 しつこいと言っても、常時攻撃されるのではない。

 距離を取りこっちをうががっていて、少しでもスキが有ると一斉に襲いかかってくる。


 地面に落ちた、浮魚(イネオダ)の死骸は、すぐに溶けだし骨も残らない。

 浮魚(イネオダ)は、危険が高いが、得るものがなにもない。

 人の居る場所でもないので、討伐依頼にはなっていない、倒し損だ。

 冒険者としては、関わりたくない、誰もやろうとしないはずだ。


『光の川』が過去に目撃された場所から、発生しそうな範囲を洗い出した。

 その範囲中にどこにでも行ける場所を、拠点にしている。


 今は、拠点の周りに、多くの浮魚(イネオダ)が集まっている状況だ。

 ここは浮魚(イネオダ)の棲息地、ど真ん中だったんじゃないか?。


 普段こいつらは、虫や小動物を餌にしているはずだ。

 すでに近くには、餌になるような生き物はいなくなっている。

 飢えて気が高ぶっているのか、無駄な突撃が多くなってきた。


 ここでの本番は夜だ、昼間は何もすることが無い。

 夜は全員起きているが、見張りはビチュレイリワが行っている。

 実際にやっているのは、テントの防衛だけだ。


 テントは、リーシェさんとキューさんが交代で休んでいる。

 ピノは睡眠が必要ない、タビさんは数十日寝なくても問題ないらしい。


「ケイトを置いてきて正解じゃったな。

 やつらは、よく寝るぞ、数年は普通に寝る」


 それは、守護竜(ガーディアンドラゴン)の習性だと思う。


 俺は昼寝てるらしい。

 起きた時、寝ていた間の事を『記憶』しているので、自分でも判りにくい。

 ただ、詳しく思い出してみると、寝ている間は自分の感情の記憶がないので、どうにか区別はつく。


 拠点を構えて、7日過ぎた夜。

 浮魚(イネオダ)の動きが、今までと違う。


 浮魚(イネオダ)同士の追いかけっこが始まった。

 早いし、激しい。

 噛み付いているのもいる。


「なんだあれは。

 腹が空きすぎて、おかしくなったのか」


 違う、俺達の近くに来るのもいるが、襲ってこない。

 仲間どうしで追いかけまわしているだけだ。


 いくつもの群れに分かれて、無秩序に泳ぎ回っている。

 先頭になると、噛みつかれ群れの中に引きずり戻される、その繰り返しだ。


 長い間泳ぎ続けているので、付いて行けないものが出始めた。

 他の群れにまじろうとするが、またすぐに遅れてしまう。


「これは、選別ですね」


「ピノさん判るの?」


「多分ですが、これは浮魚(イネオダ)の繁殖行動ではないでしょうか。

 浮魚(イネオダ)には、2つの行動が見られます。


 1つは、競争を行うもの。

 そして、もう1つはそれに加わらないものたちです。

 それぞれには外観に差があり、オスメスの違いではないかと考えられます。


 目の前の競争は、オスが自分達の優劣を競っていると推測できます」


 競い合っているものたちの間に、差が見え始めた。

 先頭に出てきた浮魚(イネオダ)に、後続が噛みつけなくなってきている。

 体力の差が出てきたのだ。


 ここぞとばかりに先頭の個体が早くなる。

 後ろと差が広がった途端、垂直に駆け上がる、高い。

 今まで競争に加わっていなかった浮魚(イネオダ)が、一斉に追いかけ空に登る。


 上空で追いつき食いついた、今までと違い食いちぎっている。

 数匹が最初に飛び上がった浮魚(イネオダ)を、貪り食っている。

 そして全てを食べ尽くしてしまった、何も残っていない。


「もしかしてあれが、奴らの色ごとか。

 ヨガ、どう思う」


「何も思わないよ、タビさん」


「良かった。

 自分もかじって欲しいとか言われたら、どうしようかと思ったよ。

 ねえ、リーシェさん」


「それは、やだな」


「言わない!」


 人を何だと思っているんだ。


 俺達がバカな事を言っている間も、次々と高く飛び上がっては、食べられている。

 一度オスを食べた、メスはもう高く飛び上がりには参加しないみたいだ。

 ゆっくりと低い場所を泳いでいる。


 徐々に飛び上がる高さが、低くなっている。

 体力の高いものが、先に飛び上がる仕組みか。

 飛び上がるオスに、メスが続かないものまで出てきた。


「メスはあの高さには、魅力を感じないのでしょうね」とピノ。


 高く上がったオスは、食べられないと反動で地面に叩きつけられる。

 そして二度と浮きはしない、溶け始める。

 同じオスとして、つい感情移入してしまう、見ていて悲しくなってきた。


 そしてついに、飛び上がるオスがいなくなった、競い合っていた群れもなくなっている。

 残っている浮魚(イネオダ)は、ゆっくりと泳いでいる。


「周りにいる浮魚(イネオダ)は、全てオスを食べたメスですね。

 繁殖行動に参加出来なかったものは、ここから離れていっています。

 若い個体だったのでしょう」


(ビチュレイリワ、『光の川』は出てないよね)


[出てません]


(で、これってさ)


[動植物は決まった季節に繁殖を行います。

 浮魚(イネオダ)も毎年この時期に繁殖していると考えられます。

『光の川』の発生場所が彼らの生息地で、同じ時期に行われる繁殖が無関係とは思えません]


(そうだよな)


 俺達の推測は、すぐに証明された。

 メスたちが、胸の高さに黄色じみた煙を、生み出している。


 近づいて見ると、それは小さな粒だ。

 浮魚(イネオダ)は光る小さな卵を、生んでいる。


 卵を生んだメスは、地上に落ち溶け始めた。

 これでは、この光が生まれた場所にはなにも残らない。

 卵も触れると、光が消え地面に落ち、溶けだす。

 これでは、何も残らない。

 長い間、謎のままな理由が判った。


 光る卵は、胸の高さで漂っている。

 そして地面の凹凸に応じて、低い所へ流れ始めた。

『光の川』が生まれた瞬間だ。


 その美しい光景を、全員が黙って見守った。

 ・

 ・

 ・

 違った、1人酒を飲んでいる。


「よい。

 ひさしぶりの、よい景色じゃ」


 ご満悦だな。

 横に腰を下ろし

「俺にも一杯くれ」


「皆の分も有るぞ」

 と4つの杯を出した。


 ケイトさんには黙っていようと、全員で約束した。




 街のギルドに、報告に行くと。


「残念だったね、3日前に正体が判ったんだよ」


 無駄足だったか。

 だが、よく聞いてみると。


「今年は、すごく大きな『光の川』ができてね、目撃された数もいままで一番多い。

 大きかったおかげで、かなり下まで流れていったのさ。

 消える直前に間に合ったパーティーがいて、そいつらから報告が有った。


 あれは光の小さな粒さ、川の水面ギリギリに浮かんでいた。

 何かに触れると光らなくなる」


「その、光る粒、なんだか知ってるぞ」

 俺の言葉で、ギルド内が騒々しくなった。


 今回で何度目か忘れたが、あの嘘を判断する魔法道具を、また使われた。

 俺達の証言は、光る粒が正体だとする、最初の報告したパーティーを補強した形にもなった。

 両方のパーティーの報告は正しいものと判断され、依頼達成と認められた。


 報酬をどうするかだ。


 ギルドは、4分に分け、その内3を俺達によこそうとする。

 いらない恨みを買いたくない、2つのパーティーで半分だ。


 今回の活躍を聞いて、一番喜んだのはマラガちゃんだ。


「これで、ヨガ達のサーガーに新しい章が追加できる」

 と言う理由。

 恥ずかしいから、止めて。


 そして、ケイトさんの横には女性がいる。


「ヨガ指名で依頼が来てる。

 彼女の護衛」


 指名依頼が護衛?


 そもそも、この女性はだれなんだ。


「私は、リスルール。

 帝立劇団に所属している、歌手です。

 この街には、単独講演できています」


 全く知らない人だ。


「何故、俺達への指名なんだ」


 ますます判らない。

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