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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
5章
65/104

5-6.幻獣と真眼

前回あらすじ:ヨガ丸焼け

 ヒョコシルさんが身分を取り戻すため、帝都に向かった。

 帝都には知り合いもいるので、協力してもらえる。

 入街税を惜しんで、途中の街には入らず、野宿をすると言っていた。


「厳しい旅になりますね」

 と言ったら。


「あの地下牢に比べれば、なんでもありません」

 と笑っていた。


 マラガちゃんは、タビさんの自称弟子として俺達についてきている。


 一度、俺の寝床に入り込もうとして、キューさんに説教された。


 ただ、説教時に”順番”と言う理解できない単語が聞こえ、思わず聞き耳を立ててしまった。


[ヨガはダメです]

 と聞こえなくされてしまったが。


 その後、マラガちゃんが潜り込んで来なくなったので、いいんだけど。


 ーーーーー


 次の街に来て、いつものように冒険者ギルドに顔を出したら


「受けてほしい依頼が有るんですが」

 と受付に声をかけられた。


「ここのギルド成績悪くて、ギルド長が困っているんです。

 助けてもらえませんか」

 と1枚、依頼書を見せてくれた。


 常設依頼だが、ここ30年ほどは達成されていない。

 内容は『雪豹(イオラス)の真眼』の収集。


「この『真眼』と言うのはなんです?」

 聞いてみた。


「北にある山脈の高い所に、雪豹(イオラス)がいます。

 額に目のようなものがあり、その瞳が『真眼』と呼ばれる宝石なんです」


雪豹(イオラス)って、魔獣なの。

 人が襲われているから、討伐対象になっているのか。

 でも、その割に30年も放置されてるし。

 どうなってるの」


「『真眼』幸運の宝珠とも呼ばれ、人気があり、求める人が多いのです。


 雪豹(イオラス)は人がいない場所にいますんで、逆に姿を見るのも難しい生き物です。

 とらえられた記録どころか、倒した記録さえありません。

 今までに見つかった『真眼』は、たまたま見つけた死骸から回収されたものだけですから」


 人に無害なら、やめたいな。


「「ヨガにまかせる」」

 聞こうとする前に、言われてしまった。


「ここ、未達成な常設依頼が多くて、問題になってるんです。

 このギルドが無くなくなったら、行くところなくなってしまうんです。

 お願いします」


 困っていたのは、将来が不安な受付でしたか。


 ギルドの依頼ボードを見れば、採集と害獣駆除の常設依頼が多い。

 魔物や魔獣が少なくて平和な地域なんだな、元々ギルドに需要がない。


「ヨガ受けてみませんか。

 大陸横断を1つ国で行うようにしたので、予定していた、他国文化の経験が出来なくなってしまいました。

 色々な経験をしてもらう約束を、この国では積極的に依頼を受けて、はたして欲しいですね」


 ビチュレイリワから提案されてしまった。

 立場上、断りづらい。


「やってみます。

 みんな、寄り道するよ」


 ーーーーー


 12日後、俺達は雪山にいる。

 8日かけて雪豹(イオラス)の棲息地に来て、後は山の中をうろつきまわっている。


 マラガちゃんはタビさんと一緒に、街に居る。

 雪山には連れては来れない。


 マラガちゃんの

「リーシェちゃんはいいの」

 の不満に、リーシェさんサラマンダーを呼び出して、胸を張った。


 可愛いけど、大人げない。

 見た目の年齢は同じくらいだが、そこで競う必要はないと思う。


 1回も、雪豹(イオラス)を見てはいない。

 ビチュレイリワの支援で、雪豹(イオラス)がどこに居るか判っているのに、近づけない。

 すぐに距離を取られてしまう。


 視界に捉えられないが、俺の認識能力では何度か捉えている。

 そしてすぐにいなくなる。


 どう考えても、雪豹(イオラス)には『ロハイラの耳』以上の何かがある。

 しかも俺の認識能力と同等かそれ以上。


 さいわいビチュレイリワの探査能力よりは低いようで、居場所は見失ってはいない。


 俺達の載っている軍馬は、ビチュレイリワ制の特別なもので、雪上でも早く移動できる。

 それでも追いつけない。


 夜、ビチュレイリワが見つけていた、山の中の洞窟。

 今後どうするか、相談中だ。


「ただ追いかけるのは止めよう。

 あいつは確実に、俺達の動きを掴んでいる」


 近づこうとすると、あっという間に離れていく。

 どうすればいいんだ。


雪豹(イオラス)はヨガの視線を感じて逃げているようでした」

 とピノ。


「視線って言うけど。

 見えるところまでも近づけていない」


「ヨガの認識能力の範囲に入ると、その外へ逃げ出しているように思えます。

 明日の探索は、ヨガの認識能力を切って、行ってみませんか」


「でも、どうしてビチュレイリワの『視線』は大丈夫なの」

 とキューさん。


「魔法が使えないのと、関係があるのかな」


「残念ですが、わかりません」


 視線が、人のものか、そうでないかの違いかも。


「でも、それがうまく行っても、見えるところまで近づけるだけよ。

 そこから先はどうやって近づくの。

 強引に行くつもり」


 俺とケイトさんなら、マナをまとって早く移動が可能だ。


「うまく行くか判りませんが、提案があります。

 ヨガに、一度死んでもらうというものです」


 ピノが突然、とんでもない提案を言い出す。


「心配しないでください、本当に死んでもらうのではありませんよ」


「判ってるって。

 ヨガが生きている活動を全部止めるのね」


 リーシェさんの言葉で、キューさん、ケイトさんが『そうか』って。

 なにが『そうか』なんだよ。


「じゃ私が、ヨガの所に追い込んだほうが良いかな」

 ケイトさん、何が『じゃ』なの。


「ヨガが、死んだふりして待つ。

 そこへケイトさんが、雪豹(イオラス)を追い込む。

 ケイトさんなら、雪の中でも早く動けるので」


「私とキューさんは、少し遠くで見張って、雪豹(イオラス)の行動範囲を狭くすればいいのね」


「そうですね。

 私はヨガと一緒に、待っていましょう」


 なんか作戦が、決まったようだ。


「ヨ〜ガ、判ってないでしょ」とリーシェさん。

 詳しく説明してくれた。


 翌日、雪の上に転がってる俺、心臓も動いてない。

 隣のピノも同じ、人が見たらこれ死体だろう。


 寒くはない、それどころか感覚が全てない。

 音の無い真っ暗な中で、意識だけははっきりしている。


 思考するには、よい状況だ。

 考えたくないことも、考えてしまう。

 俺は、どうすれば良いのか。


 人としては、魔王はいなくなって欲しい。

 だが、自分のせいで人が死ぬのは、絶対に嫌だ。

 リーシェさん達を巻き込みたくない。


 ぐるぐると考えが回る。


[ヨガ、来たよ]


 全ての感覚が一気に戻る。

 寒い。


 雪豹(イオラス)が走り込んでくる。

 いきなり起き上がった俺に驚いて止まった。

 目が合う。


 綺麗なトパーズ色の目だ。

 確かに額に目のようなものがあり、3つ目に見える。


 マナをまとって、次の動きの準備に入る。

 お互いに視線をずらさない、見つめ合ったままだ。


 右腕が噛み切られた。


[解析不可能]


 ビチュレイリワの冷静だけど、驚いている声が響く。

 俺にも判らない。


 見合っていたはずだ。

 予備動作もしていない、いきなり腕に噛み付いていた。


 俺も加速している、見落とすなんてありえない。

 ましてビチュレイリワが、判らないなんて。


 肘から先が無い、剣を持つ腕ごと持っていかれた。

 前にもあったな、こんな状態。

 まったく進歩がない。


 雪豹(イオラス)は、引きちぎった腕を投げだすと、消えた。

 走り去ったわけではない、消えたのだ。


[信じられません。

 雪豹(イオラス)は一瞬で移動しています]


 もう隣の山に移動してる。

 と思ったら、また消えた。

 やはり、俺の『視線』が判るんだ。


 腕を拾って、みんなと合流。


[絶対に雪豹(イオラス)を捕まえてください]

 と中断を、選べない雰囲気だ。


「その話が本当なら、近づくのは無理ですね」

 リーシェさんの言う通り、目の前にいても、瞬時に距離をとられてしまう。


「無理やりしか方法がないですね。

 私とヨガとで追跡しましょう」


 雪豹(イオラス)は生きている、俺達2人ほど無理は効かない。

 夜昼かまわず追いかけて疲れるのを待つしかない。


 ケイトさんリーシェさんと、キューさんは山のふもとに戻る。

 疲れ知らずの、俺とピノが追跡を行う。


 追跡が始まった。

 目標は今俺の腕を引きちぎったあいつだ。


 近づけば離れる、また近づいて離れるの繰り返し。

 その中でビチュレイリワから、有利な情報があった。


 雪豹(イオラス)は連続して遠くへは飛べない。

 遠くへ飛ぶと疲れるのか、遠くへ飛ぶとその後の移動が遅くなる。

 ここで近づくと、前の半分くらいしか、飛べない。


 それともう一つ。

 雪豹(イオラス)には目的地があるようだ。

 最初は、行き先を判らなくするように、バラバラに飛んでいたが、途中からまっすぐ移動するようになった。

 俺達を振り切れないと思って、行動を切り替えたようだ。


 目的地がわかれば、待ち伏せができる。

 どこに向かっているのだろう。


[獣の行動理由は、餌と繁殖の2つが主なものです。


 追っている雪豹(イオラス)は食事をほとんどしてません。

 小動物の死骸を見つけて、1回食べていましたので、絶食中では無いですね。

 行き先に豊富な食料もみあたりません


 繁殖が目的なら、特定の場所に集まり繁殖用の集団を作ると思うのですが。

 他の個体に、大きく移動をしているものはいません]


 目的がわからないと、目的地の推測が出来ない。


(向かっている先で、考えられない)


[難しいですね。

 徐々に標高が高くなって行きます。

 生きづらい場所に向かっているんで]


 そんな危険を犯すのは、普通に考えれば、繁殖だけどそれは考えられないと。

 なんだろう。


 考え方を変えよう。

 雪豹(イオラス)は目的の時期と場所をどうやって知るんだ。


[リーシェさんから、一番高い山が目的地かもしれないと、提案されました]


(リーシェさんから?)


[状況を説明して、相談していました。

 雪豹(イオラス)は地図なんて持っていません。

 目的地に単純な目印が有るだろうと予想しました]


「それが、一番高い山か」


[ここです]

 その山はここらでも見える。


「向かおう。

『視線』で追い立てるのやめる」



 頂上付近はすごい風だ、雪が横に流れている。

 リーシェさんの予想は、当たっていて、雪豹(イオラス)はここに向かっているらしい。


(でも来れるのか?)


[無理だと思いますね。

 移動速度が遅くなっています]


「死んでしまうじゃないか」

「死んでしまいますね」


 仕方なく向かう。


 手が届く所まで、近づいても逃げない。

 逃げる力が残っていないのだ。


 今の一歩が最後の一歩かも知れない。

 それでも弱い唸り声を上げ、前を見ている。


「これ、俺達のせいかな。

 無理に追ったから、必要な体力が残っていないんだ」


「そうかもしれませんね」


 倒れる寸前、手を出してしまった。

 ちきしょうが。


 軍馬に乗せて、頂上に向かう。

 抵抗の意思を見せるが、雪豹(イオラス)に逆らう体力は残っていない。


 頂上に着いて、下ろすと、よろよろと立ち上がる。

 強い風に向かい立つと、一声吠えた。

 それが、最後だった。


(もしかするとここって)


[多分そうでしょう]


 認識の能力が戻る、それも普段より鮮明だ。

 この山には、雪豹(イオラス)の死骸が数多く眠っている。

 頂上にたどりつけたもの、途中で力尽きたものまで、数が多い。


 特定の動物が自分の死期をさとり、特定の場所に向かうという、噂話は聞いた事はある。

 雪豹(イオラス)の場合は、ここがそうなのか。


「『真眼』どうします。

 取り放題ですけど」

 とピノが聞いてきた。


 聞いてきたと言う事は、ピノも何か感じているのだろう。


(いい経験になったんじゃないか。

 依頼が失敗しても、ビチュレイリワには関係ないだろう)


[そうですね。

 ここの死体を傷つける気にはなりません。

 その程度の感傷は我々も持っています]


 リーシェさん達の所に向かう途中


[少し寄り道してください]

 と遠回りさせられた。


 その谷には、さっきの山より多くの雪豹(イオラス)の死骸があった。

 ただ雪山と違い凍ってはいない、砕けた骨の山だ。


「すごい数だな、さっきの数十倍はある」


 骨で谷の一部が埋められている。

 白い大地だ。


[そうですね、ここが元々彼らの終息地だったのでしょう。

 枯れた川をたどって、山脈を下ります]


「ビチュレイリワは、雪豹(イオラス)を詳しく調べたいだろう」


 手伝わされるかな。


「もう観測準備に入っています。


 完璧な観測態勢で調べますよ。

 幸いここには、高度な文化は存在しません、多少見つかっても問題はでません」


 俺では、完璧な観測は無理だと、同意するけどもう少し包んで欲しい。


 もうすぐリーシェさん達の所に着くという所で


「有った」

 とピノが走り出した。


 地面にしゃがみ込み何か始めた。

 覗き込むと。


「これが『真眼』だと思う」

 と透明な丸い物を見せてくれた。


「水が流れて時に、流されたんだと思う」


 それを探して、谷を進んでいたのか。

 手にした『真眼』は、浄化した魔石に似ていた。

感想や誤字、指摘をいただけると嬉しいです。

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