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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
5章
62/104

5-3.放棄された果樹園

前回あらすじ:ヨガ君また八つ当たりしてしまいました

 ギルド長に依頼された2日後、俺達は果樹園の前にいた。


 ギルドからの応援が2人いる。

「次はもっと手を増やせると思う。

 今日は、我慢してくれ」

 との事だ。


 果樹園は下草は生えているが、思っていたほど荒れていない。

 そして、ここにも甘い匂いが漂っている。


「作戦は?」


 ギルドから派遣されたフィーゴさんが、俺に聞いてきた、

 一応、俺がリーダーをしている。


 大まかな事は決めてある。


 俺は認識能力で果樹園の中を覗いて見ると、虫がいっぱいいる、総数300匹以上。

 説明された3種類以外に、でかいのもいる。


「担当分の果樹園、囲えそう?」

 とキューさんに確認。


「大丈夫よ。

 頑張れば、全部の果樹園入れられるかな」


 放棄された果樹園は広く、カンパニー毎に担当範囲を決めて駆除を行っていた。

 キューさんに確認したのは、俺達の担当分を加護の壁で覆えるかだ。

 外に逃がさないように出来ないかと思っての事だ。


「ピノ、ここからキンカラー撃ち落とせるよね」

 ピノは大量の矢を持ち込んでいる。

 彼女の認識能力と弓の腕なら、飛んでる虫を撃ち落とす事も簡単だろう。


 ピノは返事の代わりに矢を放った。

 当たって地面に落ちる、問題ない。


「ついでに、軍隊蜂の巣も掘り起こせないかな。

 キューさんが逃げないようにしてるなら、一気にやったほうが手間すくないよね。

 リーシェさん出来る?」


 予定してなかったが、思いついた事を言ってみた。


「土の精霊頼めばいいわ。

 巣を地表に出し終わったら、予定通りサラマンダーを呼べばいいのね」


 ここから炎で虫を追っている計画だ。


「じゃキューさん、リーシェさん、ピノはこちらからお願いします。

 サラマンダーの火があるからって、油断しないでください」


 ギルドから来た2人は、3人の保護をお願いできますか。

『閃光』の残り前衛3人は、向こう側からこっちに向かって駆除をすすめる」


「俺らが護衛で良いのか?」


「リーシェさん達は近接戦闘が苦手なので、護衛は必要なんです。

 中がどうなるかもわからないので、まずは様子を見ようかと思いまして」


 正直に言えば、俺達の戦いかたを見られたくない。


 タビさんの得物は槍。

 見ない形をしていて、槍の刃が長く幅がある、切る事も考えられた刃だ。


 キューさんが祈り始めた。


「ヨガ、いいよ」

 の合図で、3人が果樹園の中に駆け込んだ。


 タビとケイトさんは、持っているマナを使い、高速移動し始めた。

 ほぼ飛んでいる、あれは見せられない。


 彼女達には劣るが、俺も高速で移動している。


 剣は鞭のように伸び、遠くの奴も関係なく切り刻む。

 見えていない木の影の奥へも伸びていくので、相手は何も気づかずに引き裂かれているだろう。


 巣を掘りおこされた蜂が、いきり立ち飛び回っている。

 見境なく、周りで動くものを攻撃している。

 危険を感じ逃げ出そうとするものもいるが、周りは囲われている。

 逃げ出す事が出来ず、果樹園の中は大混乱している。


 その中で、3人が数を減らしていく。

 朝から始め、昼前には終わった。

 もう担当果樹園内に、生き物はいない。


 戻ると、焦げ臭い。


「俺達の出番は無かったぞ。

 周りには炎の壁が出来て、中に立っていただけだ」


 応援の2人に活躍する機会はなかった。

 でも炎の壁は、聞いてない。


「近づけたくなかったの」


 リーシェさんが防御を固めていた、蜂が苦手のようだ。


「しかし、全部やっちまったのか」

 フィーゴさん達が、苦笑いしている。


 あれ、やって良かったんだよね。


 ーーーーー


 街に戻り、ギルドに報告に行くフィーゴさん達と分かれ、飯屋に向かった。

 依頼完了の確認が取れたら、連絡をくれるそうだ。

 ・

 ・

 ・

 と、言う話だったのに、宿の前にギルド長が待っていた。


「他の所もやってくれ!」

 すごい剣幕だ。


「今年中に駆逐して、来年の収穫を考えてたんだが。

 お前らに頼めば、今実っているのも収穫できる」


 追加報酬も出すと、すごい勢いだ。

 でも他の2つのカンパニーの仕事を、取ってしまう事になる。

 そんな事はやりたくない。


 翌日、カンパニーのリーダー2人に


「正直、期日に間に合わなくなりそうだと思い始めてたんだ。

 昨日までの日割り分と、多少の手間賃がもらえるなら、そっちのほうがいいな」


 と言われてしまって、断る理由が無くなってしまった。

 そして5日後に『捨てられた果樹園』の掃除が終わった。


 まだ実がなっていた。

 一気に収穫するため、本当に冒険者に依頼がきた。

 星が低い冒険者には、いい仕事になったと聞いた。


 領主様の晩餐会へ招待されたが、丁重にお断りした。

 絶対に行きたくない。


 ーーーーー


 報酬をもらって今は酒場で、のんびり飲んでいる。

 メンバーは、タビさんとピノと俺の3人。


 タビさんが俺達を誘った。


「さていつになったら、ご主人様のとこに連れて行ってくれるのじゃ」


 飲み始めてすぐピノに聞いてきた。

 これを聞きたかったんだろう。

 ビチュレイリワのいる船に、タビさんを連れて行く約束がある。


「数年待ってください」


「数年?」


 俺が声を出してしまった。

 タビさんは平然としている、数年は待つうちにはいらないか。


「詳しく説明させていただきます」

 と、言い訳を始めた。

 ピノも待たせ過ぎていると、思っているみたいだ。


「ヨガ、私やビチュレイリワが魔法に興味を持っている事を知っていますよね」


「ああ、知ってる」


 彼女達は魔法以上の事が出来ているのに、何故か魔法に興味をもっていた。


「魔法のない私達からすれば、魔法は新しい技術になります。

 魔法と同じ効果を、私達の技術で出来ていたとしても、発動の仕組には興味があります。


 魔法の中でも特に注目しているものが、2つあります。

 1つ目が『念話』」


「『念話』って出来てるじゃないか。

 俺とビチュレイリワは、お互いどこにいるか関係なく話してるよな。

 あれは、違うのか?」


「残念ながら違います。

 ヨガとビチュレイリワの会話は、届くまでに少し時間がかかっています。

 距離が短いので、気づけないほどの遅れですが。


『念話』は、距離による遅れが発生していません」


 遅れ?

 気になった事ないな。


「この星の近くであれば、それほど気にする必要のない遅れですが。

 星々の間の連絡を行おうとすると、私達の技術ではとてつもない時間がかかってしまいます。


 この技術で本国に連絡を取ろうとすると、数百万年もかかってしまうのです。

 実際に遠い星への連絡は、連絡艇を使います。


 3年前に本国へ向け連絡艇が出発しましたが、やっとネットワークに入ったところでしょう。

 まだ本国へは着いていません」


 それで、数年後まで待つ必要があるのか。


「私達の使っている、連絡の方法では、星々の距離を克服できていません。

『念話』が使えるようになれば、私の世界は大きく変わります」


「妾は本国から許可がないと、そらたの船には乗せてもらえぬのか?

 もしや、乗せてもらえぬ事もあるのか」


「安心してください、すでに許可は出ています。

 艦長代理であるビチュレイリワの判断で、乗船は可能です。

 ですが、船に行く方法が無いのです」


「方法とは、どういう事じゃ」


「星々の間を航行する船ですので、地上に下りる事が出来ないのです」


 下りれない?


「船が大き過ぎて、遠浅の入り江に入れないようなものです。

 このような場合、この世界ではどうされています」


 普通どうするんだ?

 船には乗った事がない。


「小舟に荷を移して港に持ってくるのが普通か」

 タビさんが答えた。


「そうです。

 私達は今までに2回、小舟で荷を地上に下ろしています。

 観測開始時と、ヨガのための物資を下ろした時です。


 小舟と言っても200歩以上の大きさで、地上に下りた後も活動しています。

 ヨガは一度、行った事がありますよね」


 この体を改造する時の事だな、あの時は運ばれただけだ。

 周りも見えないようにされていたし。


「2回とも、船からの荷下ろしだけか」


「そうです。

 こっちから、船に物を持ち込んだ事はありません」


「それは、どうしてなんだ?」

 理由がわからない。


「下ろすのは簡単じゃが、上げるのは大変ということか」


「そうです、比較にならないほど大変なのです。

 船にも物を積むための小舟は有るのですが、積める荷の量も少なく、小舟自体の数が少ないので使用を制限されています」


「おぬし達の世界では、荷や人は乗り降りせんのか。

 そんなに不便では、どうしようもあるまいて」


「私達の世界では、星の3割には、長い桟橋が有ります」


「桟橋?」


「非常に大きく高い塔です。

 その塔が船の所まで伸びていて、中を上り下りします。

 そして塔のない星には、地上から荷や人を放り投げる施設が有るんです」


 どれだけ、高いんだよ。


「何故、全ての星に高い塔がないのじゃ?」


「建設にお金がかかるからです。

 地上の施設でさえ、建設費は高額です。

 もしこの世界で作ろうと思ったら、大陸全土の国力が必要でしょう」


 そんなに。


「それでは、妾はお主の船には乗れないのではないか」


「この星の発見は、価値があります。

 連絡を受けた本国からは、1個艦隊が来ると思います。

 艦隊ならば十分な物資がありますので、タビさんを船に上げる事も可能になります」


「なるほどな、それで数年後か」


「そうなのです」


「じゃが、その前に船に行ける可能性もあるな」

 とタビさん


「『転送』

 高い所にある船との間で使えれば、その長い桟橋が不要になる。

 さっき言っていた、2つの魔法は『転送』じゃな」


「正解です。

『転送』と『念話』、この2つの技術は私達の世界に大きな変革をもたらします。

 ぜひとも取得したい技術なのです。

 という事ですのでヨガ、今後も協力お願いします」


 たしか

「ピノ、魔法使えるようになったんだよな。

 2つの魔法使えなかったのか」


 そのためにその姿しているはずだ。


「実験したところ、地上での転送は行えました。

 転送ナイフを使用し、転送先魔法陣を描く事で、物の移送ができます」


 実験済か。


「ただし、リーシェさんが近くにいる事が条件になっています。

 私は、リーシェさんのマナを借りているにすぎません」


「『精霊』としてマナを分けてもらっている、か」


 リーシェさんを、中から観察してわかった事だった。

 そう言えば、キューさんもマナを観測すると、覗いてたよな。


「キューさんのマナはどうなってたの。

 神官が、人よりマナを多く使える理由を、調べたよね」


「キューさん自身が持っているマナ量は、他の人と変わり有りませんでした。

 ですが、奇跡を行う時に使用するマナは、キューさんが持っている量を超えています。

 どこから供給されているのか、未だ不明です」


「神官のマナは、信仰上にある」とタビさん。


「マナは人の思いで、その形態を変える。

 信徒の『人のため』という思いが信仰に蓄積され、行使する者が『人のため』と信仰に蓄えられた力を使う」


「何故それをタビさんが知っているのです?」

 

 タビさん、一瞬、子供のような笑顔になった。


「聞くか。


 妾が初代の教祖に教えたからだ。

 もっとも、『マナは思いにより、その性質を変える』という話は『創造主』の受け売りだがな」


 危なく酒を、吹くとこだった。

 これを狙ってたな。


「初代教祖」


 酒が気管に入ってて、変な声が出た。


「今の教皇と聖女は、教祖の役割を分けてたものだ」


「いや、教祖の説明はいいです。

 どうしてタビさんが、初代教祖に教えられたんですか」


「初代教祖は、我が夫の妹だからな」


「夫と言うと、創造主の」とピノ。


 俺は忘れてたよ。


「創造主は2番めの夫じゃ。


 初代教祖の兄は、3番目の夫。

 第二次魔王大戦の勇者ロンダリダに決まっておろう」


 そんな事が、決まっていてたまるか。


「信仰にマナが蓄積されているのですか。

 私達の追跡で、マナの供給元を突き止めれないはずだ」


「この世界に、認識出来る姿としてあるものではないからな。

 ここに蓄えられている、マナは膨大じゃぞ」


 タビさんは杯を干して、次の酒をそそぐ。


「第二次魔王大戦時、魔王軍を追い払えたが、倒すまでは出来なかった。

 二度も復活したのじゃ、三度目もある事はわかっていた。


 大戦時に守護竜(ガーディアンドラゴン)は数を減らした。

 次に魔王が目覚めた時に、力が足りない。

 そう思いつめていたビルヒニアへ、妾は創造主との約束を破り、マナの本質を教えた。


 愛する男を巡って争った仲じゃが、彼女は信じるに値する者。

 妾の助言を元に、神を想像し信仰を広めた。

 それを一代でなした彼女の苦労は、大変なものぞ」


 タビさん、遠いなにかを見ている、本当に懐かしそうだ。


「今の教会と妾には何の関係もない。

 期待していると悪いが、その承認の力にはなれん」


 期待したの、顔にでてました。


「お聞きしたいのですが」

 ピノは冷静だな、風情がない。


「何をだ?」


「勇者についてです。

 伝承に残っている、勇者も多くのマナを使っています。

 勇者は、神官だと推測していたのですが、違うのですか?」


「違う。

 ロンダリダ、そしてミハイロファンにも会ったことがあるが、2人とも神官ではない。

 そもそも教会は、第二次魔王大戦後に出来た。

 ロンダリダが神官なわけがなかろう」


「では、タビさんや銀鱗翼竜(ケフロイヤ)からマナを分け与えられていたのですか。

 竜騎士のように」


「それも違う。

 2人は、自分のマナを持っていた。


『勇者』は人々の期待や希望を背負っている。

 逆かな、背負う覚悟をしたものが『勇者』になる」


「それなら、国王や剣聖にもマナが生まれているのですか」


「剣聖は敬意や畏敬をいだかれても、人々から希望は託されない。

 王に希望し期待する者はいる、しかし王の仕事にマナは不要じゃ、マナによる力を得ても、国を治める力にはならん。


 この国の女帝みたいな理由でも無ければ、王はマナを必要としていない。

 国王個人がいくら強くても、人々の暮らしには関係がない。

 それを知っている人々からマナは預けられぬ。

 多少の力は集まるじゃろうがな」


 賢王と名高い、アルテミラル王国なら持っていそうだな。

 勇者のマナは、人々の思いに応える覚悟か、重いな。

 その重さが、力か。


 タビさんが俺を見ている。


「ヨガ、お主『勇者』にならぬか」


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