4-10.西の海岸にて 後編
前回あらすじ:このパーティで一番怖いのはリーシェさんでした。
剣は首元で止めることができた。
「切られなかったと言う事は、弁明の機会があると思ってもいいですか」
「ピノ」
怒りでそれ以外の言葉が出ない。
そこに立っていたのはピノだ。
俺の記憶の中にある姿でそこにいる。
ありえない、彼女は死んでいる。
このピノは俺達の中にいたピノだ、死者を冒涜している。
「言い訳はあとで、どうするかはヨガに任せます。
まずは彼と話をさせて下さい、もうすぐ死んでしまいます」
と、転がっている1体を指さした。
俺の返事を待たずピノは、それに近づいて話を始めたようだ。
「ヨガ、ごめん」
何故かリーシェさんが、あやまって来た。
「ピノとは、前から合ってたの」
今度はキューさん、どういう事だ。
「ピノに頼まれて、魔法を教えていた」
ピノに魔法を教えていた?
ピノ達は、マナを蓄えられないので、魔法は使えなかったはずだ。
なにか方法が見つかったのか、何故俺には教えてくれなかった。
「ピノもヨガが見ると怒ると思っていて、見つからないようにしていたのに。
なんで出て来たんだろう」
隠れて何をしているんだ、今回はリーシェさんにも怒ってる。
ーーーーー
ケイトさんに隣村まで行ってもらい、事情を説明した。
虎族の村には住めなくなってしまったので、全員その村に行くことに。
俺達も一緒だ、武器は没収されていないが、村殲滅の罪に問われていると言われている。
兎の四つ耳族の村だった。
1つの村が無くなった事、村が魔王軍に寝返っていた事で、大騒ぎ。
村では対応に困り、種族長に連絡をした。
結果、種族長が裁く事になる。
この国では、正式な捌きは種族長が行う。
今回は事が大きいので、3人で判断する事になった。
近くにいた者が選ばれた。
1人はあの兎耳の種族長、そして狼の獣人、もうひとりは種族長ではないがドワーフ。
ドワーフは数が少ないので種族長会議には参加できないが、名誉種族として権限が与えられているそうだ。
俺たちは、仲間と離され1人ごとに話しを聞かれた。
ビチュレイリワ達の事を除いて、全て本当の事を話した。
4日後に
「お前たちの言っていた事は、全部本当の事だった」
と、全員で1つの部屋にまとめられた
ただし
「もう少しまて」
とも。
あの騒動の後、みんなとはまともに話していない。
俺はピノを見た。
「私が話したほうがよいでしょう。
ヨガが一番聞きたいのは、何故私がこの姿なのかという事でしょう」
ゆっくりとうなずく。
「ビチュレイリワと私が魔法が使えない事、そして魔法に興味を持っていた事は、ヨガも知っていましたよね。
ビチュレイリワは、皆さん以外のところでも、魔法の習得、実験を行っています。
残念ながら、成功はしていません。
私達が魔法を使えない最大の理由は、マナを蓄えられない事です」
ピノはリーシェさんに視線を向けると
「私はリーシェさんとは、以前から個人的な事も話していました。
リーシェさんにとっては私は、サラマンダーや他の精霊と変り有りません。
話しをしているうちに、他の精霊と同じように、私のマナが蓄えられ始めたのです」
リーシェさんが、ピノ用のマナも蓄えたのか!
「そのマナで魔法を使ってみようとしましが、上手く行きません。
理由がわかりませんでした」
俺に多くの魔法を教えたのはピノだ、そのピノが使えないとは。
「1つ仮説を立ててみました。
リーシェさんの中にいるので使えないのだと。
他の精霊と同じように別の個体が必要だと、体を用意する事にしました。
ところがリーシェさんにとって、ピノはこの姿なのです」
リーシェさんに目がいく。
「私、ピノさんの姿みてるのよ。
今までに話す時も、あの姿を思い浮かべていたの」
姉が持っていた『姿映し』か、話が見えてきた。
「この姿になると、私にも魔法が使えるようになったのです。
黙ってていただくようお願いしていました、2人には怒りを向けないで下さい」
「わかった」
納得したわけではないが、ピノが何故こんな事をしたのはわかった。
「だが、何でその姿で俺の前に出てきた」
「完全に私達の理由です」
説明になってない。
「ビチュレイリワが、自分が何だと、言っていたか覚えていますか?」
なんだっけ?
そうだ、船の船長だったか、そんなとこだ。
「戦艦の艦長代理です。
戦艦と言えば戦う船で。無論戦う相手がいる事になります」
ビチュレイリワの敵になりえるなら、強力な力をもっている。
「魔王軍がその敵なのか」
それらな、大事だ。
「そうでは有りません。
現在、私達アレス連邦に明確な敵は存在しません。
ですが、私達に対抗しようとするもの、または敵になる可能性のあるものは存在します。
魔王軍は彼らでは無いですが、彼らから技術提供を受けている可能性があります」
「どうして彼らでは無いと言える」
「未だに、この世界が存在しているからです。
魔王軍は遠慮なく力を行使しています、なのにこの世界は征服されていないですし、破壊されつくされてもいません。
使用している技術が、幼稚すぎるためです。
想定できる保有技術から考えれば、ありえないのです」
本来持っているはずの技術が、魔王軍には渡っていないと、言っているのか。
何故だ。
「魔王軍への技術提供と言うのは、ビチュレイリワが俺にしているような事」
「そうだと思います。
私達は、ヨガに調査を依頼して、それに必要な能力を提供しています。
魔王軍はどうやって提供を受けているのか、想定もできません」
だから死ぬ前に、村長から話を聞きに来た。
「直接話しを聞くために、人の義体が必要でした。
近くに有ったのが、私というわけです」
しかも俺達には、聞かれたくないということか。
「会話が可能な個体が必要と考えていました。
前に竜人族の話しを聞いた時にも、詳しく聞きたい事が有ったのです」
「俺らそこまで信用出来ないのか?」
「信用は最大限しています。
あくまで、私達の都合です。
知られる事により、皆さんの文化に影響が出る事を禁じられているのです」
「そりゃどうも。
でもその割には、喋ってるね」
「仮想敵が、魔王軍と接触している、可能性が確認されたからです。
今までは調査行動のみで、武力を使うことが禁止されていましたが、今後は軍事行動も可能となります」
「軍事行動?
世界を滅ぼすつもりか」
「私が勝手に力を行使する事は出来ません」
滅ぼす事は可能なんだ。
「私の行動の理由を理解していただけましたか。
どうしますか」
.
.
.
「もう一度、ピノを殺すなんて出来るわけないじゃないか」
「よかった。
私もピノさんと隠れて会うのは、後ろめたかったから。
今後は堂々と会っても良いよね」
あまり良くないんだが
「お手柔らかにお願いします」
「じゃ、ピノも一緒のパーティに入らない。
冒険者なんだよね」
「反則ですけどね」
なにかやってるのか、何でも有りなんだろうな。
「ヨガどうする」
キューさんが俺に同意を求めているが、もう嫌だと言える状況じゃない。
「この国を出る前に、登録しますよ。
それでいいんでしょ」
もうヤケだ。
「ヨガありがとう」
「その顔で言うな。
声が違うのが救いだよ」
声は内側から聞いていたものだ。
「1つ、ヨガ達の不満を解消します。
情報を公開します」
「いいのか」
「魔王軍の後ろに、敵の可能性が確認されたので、現地協力者への情報公開範囲が広がったのです。
ヨガ達が知りたい事は全部教える事が可能だと思います。
逆に多くの情報で混乱しないか心配する程です」
怖いなそれ。
「段階的に情報公開します。
まずは基本な事から・・・」
うー!
いきなり、始めやがった。
星や地上の地図と国の配置、ビチュレイリワが軌道衛星上にいること。
今まで知らない事を、一気に理解してしまった。
「リーシェさん」
手をついて苦しそうだ。
キューさんも俺も同じ。
「何が有ったの」
ケイトさん、キョトンとしている。
仰向けになって、深呼吸を1つ。
「ダメだよ、こんなの」
色んな事が判った、これなら。
「ビチュレイリワ、そこから暗黒大陸を攻撃できないか」
「ですから、勝手には出来ないと言っているじゃないですか。
この星の代表者に依頼されたなら別ですけど、私が攻撃する事はありません」
「代表者ね」
思い当たる人がいない。
「この星は統一国家ではないので、各国のトップから委任してもらう必要があります。
王国なら王様から委任してもらえば、その国の国民の意思と判断します。
人の総数の51%以上に委任されれば、協力する事が可能ですね」
無理そうだな。
「それで、ホントに暗黒大陸の魔王を滅ぼせるの」
キューさんが声を上げて、ピノに確かめた。
「どうしたのキューさん」
「だって、あの魔王を滅ぼせるんですよ」
「そうですね、やりましょう」
ケイトさんまで
「ヨガ頭死んでるよ。
かつての英雄達も退けるしか出来なかった、あの魔王を滅ぼせるのよ」
あーそうか。
面倒くさそうなので考えるのやめてしまったが、やる価値はあるな。
いや、やるべきか。
「委任か〜」
でも、どうやって。
「教会は国をまたいで、活動しています。
そしてその目的は、魔王討伐。
教会に動いてもらいないかな」
「キューさんの考えいいかも」
とリーシェさんが賛成したので、次の目的地が決まった。
「各国から委任を受ける」まで持っていきたかったので、頑張って書きました。
もうしません。
次回から更新頻度戻ります。




