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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
4章
55/104

4-8.西の海岸にて 前編

前回あらすじ:魔王って、舶来ものでした


久しぶりに本編です

読んでいただける方に、面白いと思っていただけるよう頑張ります


「動くな!」


 いきなり大きな声で、制止された。

 丘を登り始めたところだ、この少し先に海がある。


 声をかけてきたのは、虎の獣人。

 数名が武器をもって、俺たちを取り囲んでいる。

 この近くに彼らの村があるのだ。


「無色が、こんな所に何しに来た」


 男が1人近づいてくる。

 周りの男達は、弓で俺たちを威嚇し続けている。


 手は武器から離し、敵意がない事を示している

 不要なトラブルは避けたい。


「海を見に来たんです」


「なに?」


 返事も間の抜けたものだった。

 獣人は全身毛皮で覆われていて、顔も虎そのものだ。

 表情はわかりにくいが、多分すこし変な顔をしていたと思う。


「俺たち内陸生まれで、海を今まで見たことが無かったので、来たんですが」


 これがここに来た最大の理由、嘘は言っていない。


「普通海見るなら、東へ行くだろう。

 なんでこっちに」


「この国に用が有ったんで、そのついでです」


「この当たりは立ち入り禁止だ。

 残念だが、戻れ」


 ん?

 立ち入り禁止は初耳だ。


「そうなんですか。

 海見に行くと言っても、種族長から注意されませんでしたが」


 後ろにいたリーシェさん達を見たが、全員うなずいている。

 みんなも知らなかったようだ。


「お前達が、何で種族長を知っている」


「それは俺たち用事で、鬼人の種族長の村に行く必要があったもので。


 そうだ、虎族の長にも会いましたよ」


 そう言って、小さな金属の首飾りを出した。

『虎族の長の友人』と書かれているやつだ。


 最初から、虎族にこれを見せて、村に入れてもらおうと考えていた。

 考えていた状況ではないが、ここで出してみる。


 首飾りに書かれている文字が見える所まで、男が近づいてきた。

 確認して、静かに唸ってしまった。


 少し考えて

「すこし待て」


 他の虎族の所まで戻った。


 すぐに2人が駆け出した。

 村へ行って、上の者に判断をあおぐのだろう。


 ここへ来る前に聞いた通り、この村は排他的だな。

 その時の話では、よそ者を受け入れないと言っていた。

 さて『虎族の長の友人』は効果あるかな?


 ーーー


 竜人族のケミナルス殿は、話しが終わるとすぐに戻っていき、俺達もすぐ後に村を出た。

 それで前の依頼は完了した事になった。


 竜人族の話した内容には驚いたが、ケイト(ケフロイヤ)さんが居たから聞けたと思っている。

 当の『守護竜(ガーディアンドラゴン)』は、知った所でどうにもならないとの事。

 魔王の弱点に繋がるはなしならもっと耳を傾けるべきだが、別の世界から召喚されたというだけだ。


 ただ考えても仕方がない事はわかっているが、ついみんな考えるようになってしまっていた。

 魔王がいない世界や、自分が出来ることを。


 鬼人族の村からここまで、急げば3日でこれたが、10日以上かけてのんびりきた。

 そのおかげで、気分がやっと晴れてきていた。


 ーーー


 村に入れてもらえる事になった。

 武器を持った男達に囲まれてだが、村に向かう。


 村長の家に案内され、一人の獣人の前に座らされた。

 彼が村長だろう、歳は俺達より上だろうが、老人と言うほどではない。

 ガッチリした、いかにも獣人の戦士風の男だった。


「お前らか、種族長の村に行って、そのついでに海を見ようとここに来たと言うのは」


「はい、そうです」


「次どこ行くんだ」


「特に決めて無いです。

 ここへも、依頼を受けたから来ただけで。

 しいて言えば、世界を見て回ろうと思ってますが」


「そんなべっぴんさんを連れての、当てのない放浪か。

 羨ましいな」


 リーシェさん達を見て、美人と言った。

 可愛いのは確かだが、獣人から見てもなのか。


「俺たち獣人にも、無色の美醜はわかるんだよ。

 逆にお前ら、虎族の基準はからないだろう」


 これは失礼しました。


「残念ながら。

 毛並みが綺麗とか、そんなとこしか」


「まあ、毛並みは一番重要何だがな。

 そうすると俺はどう見える」


「30過ぎの現役、渋い兄さん、ってとこでしょうか」


「なんだ、判ってんじゃないか」


 良かった、合ってたみたいだ。

 でも、これなにを試してたんだ?


「確かに、この先に行けば海がある。

 それ見たら帰るのか」


 そうなんだけど、もう1つ目的が有って。

「基本、海見ればここまで来た目的は果たせるんですが。

 大きな船を見たと言う話を聞いたので、乗ってみたいなと思いまして、知りませんか」


 その場にいた、獣人全員の表情が変わった、と思う。


「この村に有る船は、漁業用の小さな物だけだ。

 海岸が見えなくなるまで、沖に出ることは禁止される。


 海路での禁じられてる、ありえないな。

 その話誰に聞いた」


「ここに来るまでに会った、犬耳の4つ耳の老人です。

 なんでも4年ほど前に、見慣れない大きな船がこの辺に来たのを見たと」


 実際に何人かの、旅商人に会っている。


「それは何か勘違いをしてるな。


 この海の向こうに、何があるか知ってるよな。

 その為、外洋に出れる大きな船を持つ事は禁止されてる」


「そうなんですか。


 もしかしたら暗黒大陸に行く、航路とか有るのかと思ってました。

 有れば行ってみたいなと」


「有るわけ無いだろう!」


 かぶせぎみに否定された。


(やっぱり、無いって)


[いいえ、船は確実に、この沿岸に来ています。

 私が見間違うなどありえません]


(ビチュレイリワも、この辺調べたんだよな?

 でも船は見つかられなかった)


[小動物に見せた、探査ユニットを一度ここまで移動させてます。

 ですが船を見つける事は出来ませんでした


 私は人に聞く事ができないので、ヨガに頼んだのです。


 暗黒大陸へは、探査ユニットを上陸させるどころか、近づくことも出来ていません。

 船には攻撃されずここへ来ていました、攻撃を受けない何か理由が有るはずです。

 それを知りたい]


 それを今聞いてみたら、否定されたんだ。

 これ以上調べるなんてできそう無いけど。


「行けば判るか。

 誰かに案内させよう。

 おい、手の空いてる奴で、この客人を海に案内して上げろ」


 村長の宣言で、話は打ち切られた。


 若い女性1人に連れられて、海に行く事になった。


 海岸線はすべて崖になっていて、崖の上から海が見える。


 話は聞いてたが、本当にでっかい水、水、水。

 ずーと水ばかり、大きな湖と言う例えも聞いていたが、全然違う。

 本当にただただ、水が有る。


「思ってたのと違うわね」

「すっごく広い」


 リーシェさん達も初めての海を見て驚いてる。


 でもケイトさんの驚きは、それほどでもない。


「お母さんから聞いていたのも、こんな感じだった」


 ケイトさんは世界中の事を母親から教えられていた。

 海を初めてみても、知っていた内容と変わらないから、そんなに驚かない

 なら今後も、初見での驚きは少ないのかも、それはあんまり羨ましくないな。


 一帯は崖だらけだが、その一角に下に降りれる所がある。

 案内されて降りていくと、手漕ぎの小さな船が3隻、砂浜に引き上げられている。


「この船は、この砂浜で行う地引網と、少し沖に網を仕掛ける時、使っている。

 さっき村長も言ってたように、これで向こうの大陸へ行くのは無理」


 案内してくれた女性が教えてくれる、こんな船で遠くに行くことは出来ないだろうな。


 海岸は大きな岩の塊が連なって出来ていて、かなり入り組んでいる。

 その入り江に砂が集まり出来たのか、この小さな砂浜。

 砂浜へ降りていく道も、崖に挟まれて狭い。


[ヨガ]


 はい、気づいてますよ。


 南側の壁の向こうに何か広い空間がありますね、でも中の様子がわからない。


(中どうなってるの?)


[私の能力を使っても、解析不能です]


 ビチュレイリワの能力を使っても、わからないとはどういう事だ?


「満足されましたか」と案内の女性。


「ちょっとまって」

 そう言ってキューさん波打ちぎわまで駆け出して、水に手を入れる。


「冷たーい」


 お約束で指をなめる。


「しょっぱい!」


 みんな知ってる。

 そんなにベタな事をしたかった?


「わかってても、やってみたいの」

 そう言って、リーシェさんとケイトさんも駆け出してしまった。

 キューさんと同じ事をしてる。

 リーシェさん、しょっぱくてしわくちゃな顔をしている、可愛い。


「どうされます?」


 虎族の女性はニヤニヤして、俺がどうするか見ている。


 はい、走り出してしまいました。

 思う存分、海を満喫、びしょびしょになってしまいました。


 再度村に案内され、今夜は泊まって行けとのこと。

 夕食は、俺達を饗してくれるための宴会。


 だた、今までの宴会とは料理が違う。

 海が近いため、魚が山盛り。

 それはいいが、切っていないそのままの姿、無論全部生。


 肉まで、生の塊で皿に乗っている。

 ちなみに野菜はない。


 獣人達は、魚を頭から咥え、肉は塊を噛みちぎっている。

 虎族のするどい牙で引き裂いて食べている、とても真似できない。


 早々に退席させてもらい、借りた部屋で携帯用の食料を腹に入れた。


「あれはないな〜」

 とキューさんから宴会で出された食事の文句がでた。


「わざとでしょ、私達に早く出ていって欲しいんだと思う」とリーシェさん。

 俺もそう思う。


「鬼人族の所で饗されてた虎族の種族長、普通に調理した食事してたよね」


「ケイトさん、気が付かなかった?

 この家にも調理場は有りますよ。

 夕方には各家から煙も出てたので、料理は普通にしてると思いますよ」


 宴会に参加していた人も、生肉は本当に好きそうに食べてたが、生の魚には手を出して居なかった虎族もいた。

 あれが普段の食事だとは思えない。


「やっぱり、何か隠してるよね。

 ヨガ、何か判る?」


 これは俺に聞いてる振りして、ビチュレイリワに聞いてるんだろうな。

 残念ながら判ってない。

 首を振る。


「無理に調べると、この村と衝突しそうだな。

 やめたほうが、いいよな」


 鬼人よりは劣るが、獣人たちは戦闘種族、基本強い、穏便にすませたい。


 だけど

「私は、はっきりさせときたいな」

 ここにきてケイトさん、今までにないほどの自己主張。


「最初、暗黒大陸からの船の話を聞いた時、思った事がある。

 それをそのままにしたくない」


 何を思ったかは、想像できる。

 暗黒大陸に行って無事戻れたとしたら、何かしら魔王と繋がっている可能性を否定できない。

 それは人界への裏切りだ。

 守護竜(ガーディアンドラゴン)としては、見逃す事はできない。


「わかったから、怖い顔しない」


 多分、あの見えない空間が、秘密の正体と思っている。

 今夜抜け出して調べるか。


 あんまり良い結果にはなりそうもないが。



誤字を指摘していただきありがとうございます。

作者ポンコツなため、IDからメッセージを送る方法を調べられませんでした、この場で御礼を申し上げます。

続けて読んでくださっていたら嬉しいです


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