4-5.種族長の村
前回あらすじ:温泉回
道の横に若者が2人座っていた。
その内の1人が立ち上がって、俺たちに『制止しろ』と合図してきた。
馬車を止め、シシさんが下りて、その若者に近づいていった。
手紙を渡して、何か話している。
戻って来ると
「話は通っていました。
彼について行って村に入ります」
「彼らは村の警護ですか」
「そうですが、何か?」
「あまり強そうに見えなかったので。
この先の村に、鬼人族の長がいるんで、彼ら警備としているんですよね」
「彼らは、各氏族から派遣されている若者です。
ランも来ていました。
それにヨガさんから見れば、全員弱いと思いますよ」
「村長修行ですか」
「そんなところです」
種族長の元にいて、顔を覚えてもらうのか仕事か。
村は簡単な柵で覆われていて、入り口にはしっかりと強そうな警護の鬼人が立っていた。
その警護に若者が何か告げると、中に1人走ってゆく。
護衛の男が近づいてきて
「長をお呼びしている、しばらく待ってくれ」
長が来るんなら、馬上からは失礼だ、軍馬に乗っていた3人は慌てて降りる。
馬車に乗っていた3人も下りた。
キューさんは俺に近づいて来たが、鬼人族の2人は村の入り口に並んで長を待っている。
俺たちも並ぼうとしたら、少し待っててくれと止められた。
すぐに大きな鬼人族の男性がきた、この人が長だろう、持っている雰囲気が全く違う。
他に2人の男女が付いて来た、護衛だろう強そうだ。
「よおラヌ、大変だったな」
「お手数をおかけし申し訳ありません。
ラヌ、この身を長に預けに参りました」
俺たちを近づけなかったのは、これを聞かれたくなかったのか、
「あぁ、そうだったな。
相変わらず硬えな、お前んとこ」
「申し訳ありません」
「もうそんな事はいいんだよ。
ラヌ、お前に罪はない」
「え」
「だから、お前の正しさは俺が、種族長の名のもとに証明した。
これでこの話は終わりだ」
終わったの?
ラヌさん、すごく拍子抜けした顔している。
「実はケミナルス殿からの返事が届いていてな。それには、お前の行動に問題がないと書かれた。
それよりもだ、ケミナルス殿が3日後にここに来る。
こっちの方が大変だ、今村は出迎えの準備で大忙しだ」
「ケミナルス様が!
何故」
「話を聞きたいんだとさ」
「私達が参るつもりで、許可を願ったのですが」
「らしいな。
でもそこの冒険者達に早く会いたいんだと。
竜人族が山を下りて来るなんて何百年ぶりだ。
周りの村の長にも知らせてるとこだ、俺だけ会えば後で何言われるかわかったもんじゃない」
竜人族?
初めて聞く種族だ。
「と言うわけで、お前達冒険者達には3日ほどこの村で待ってほしい」
と俺達を長が見る。
「俺たちはかまいませんが」
「よし、決まった。
この冒険者は俺の客だ、粗相が有ったら許さねえからな。
それとラヌ、もう村に戻れねえんだろ、この村に住むことを許す」
ラヌが驚き続けている。
これ、良いこと何だよね?
「今晩は俺が招待する、それまで休んでくれ」
言うことだけ言うと、長は戻って行った。
一緒にいた男の護衛は
「すまん、今ほんとに忙しいんだ。
話は飯のときにな」
と行って長の元に戻っていった。
「え〜と、これは、どうすれば、いいの」
長がいなくなり、ラヌさんがやっと口を開いた。
「家を一軒、用意している。
そこで休んでてほしい。
狭いが我慢してくれ」
村の警護をしていた鬼人が案内してくれた。
案内された家は6人で住むなら狭いが、数日寝るだけなら十分な広さだ。
「相手ができないから外には出ないでほしいって」
ラヌさんが、さっきの警護の鬼人に言われていた。
前の村での事が、頭をよぎった。
「軟禁?」
「見張りがいないから、違うと思う。
本当に人手が足りなくて、相手ができないみたいだ。
何か手伝えることがないか聞いたけど、邪魔だと言われてしまいました」
乱暴な言い方だが、ラヌさんも客と考えての事だろう。
「そうだラヌさん、教えていただきたいのですが。
竜人族って聞いたことないんですけど、どんな方々です」
「そうですね、外の人はあまり知らないかもしれませんね。
そもそも、山を下りることさえ珍しいですから。
外見はリザードマンに似ていますが、竜人の名の通りドラゴンの特徴を持った種族です」
「その竜人族って、鬼人族の種族長より偉いんですか?」
長の言い方、そんな感じがしたので」
「そうですね、皆さんの感覚で言えば貴族に近いでしょうか。
正式には上下はないのですが。
竜人族は、種族長の集まりに参加されません。
その数が少ないため、国の運営に関わることはありません。
ですがこの国に住む者は、全員竜人族に対し敬意を持っています。
何故なら、彼らの種族は女王から与えられた使命を持っているからです」
「使命ですか、それはなんです」
「わかりません」
「わからないって!
それでも敬われる存在なのですか?」
「ここは、『女王の国』ですよ。
何をしているのかを知らなくとも、女王に使命を与えられたということが重要なんです」
今回の事も、その使命に関係していそうだ。
竜人族だもの、ドラゴンの卵を守る事に、なんか意味がありそうだな。
招待された夕食は豪華だった。
ものすごい料理が並んでいる。
俺たちへの、もてなしにしてはすごすぎる。
そして、種族長の機嫌が良くない。
歓迎の言葉を言って、宴会を始めたが、その後はただ酒を飲むばかりだ。
俺たち、何かしたか?
「長の事は気にするな」
さっきの長と一緒にいた護衛の男が、酒を注ぎながら教えてくれた。
「あの後ケミナルス様から追加の連絡が来てな、『もてなしは不要』だと言われたのさ。
長が必死に何かお望みの物はないか、何を用意すればよいか、何回も聞いたのがまずかったみたいだ。
あまり目立ちたくないと釘を刺されてしまったのさ。
お前たちに会ったらすぐ帰るつもりらしい、せっかくの準備が台無しさ」
「もしかしてこの料理も」
「そうだ、本当はケミナルス様に準備したものだ」
まだ3日前だぞ、この料理の量が準備されたというのか。
どこまで盛大にやろうとしたんだよ。
「そう言えば、お前って強いんだよな」
護衛の男は、俺に話を振ってきた。
これはまずい流れだ。
「それほどでもないです」
「おいおい、倒されたヌグのためにも、そこは強いですと言ってくれや。
強者はその強さに責任があるんだぞ」
ないよ、そんな責任。
「なあ、俺と腕試ししない?」
来たー。
「遠慮します」
と断る俺の声の数倍で
「ミラスト、お前ヨガ殿と試合をするのか。
それはいいな、何もなくなってしまった。
これでは村のみんなも収まりが付かない。
明日試合でもやって、祭りにしちまえ。
ヨガ殿お願いします」
その場にいた鬼人族の目が一斉に俺に向く。
これ、お願いと言う、強制だよね。
断れない。
「はい、やらせていただきます」
まわり男たちは、太い歓声を上げて喜んでいる。
血の気が多い。
「彼の名前、2文字じゃないんだ」とキューさん。
あ、ホントだ。
ーーーーー
翌日、鬼人族の村は本当に祭りみたいになっている。
出店まであるもの。
他の種族も来てる。
ケミナルス様が来た時に、呼ぶはずだった長も何人か来てるらしい。
お会いできなくなったことを、この催しに招待して侘びている。
長は、これを考えて、試合を祭りにしたのか。
前座の試合も数試合組まれ、盛り上がっている。
他の種族も、もてなされる事で鬼人族を許す形にしているようだ。
飛び入りで試合に参加してる種族もいるので、本当に楽しんでるのかもしれないが。
流石に鬼人族が強い、他の種族の参加者も弱くないが勝者は全員鬼人族だ。
最後に、俺とミラストさんの試合が始まった。
ミラストさんは『マナまとい』での全身強化と高速化。
無論、武器を使わない格闘家。
一撃が早いし、重い。
威力はケイトさんほどじゃないが、速さは上だ。捌き切れていない。
ただケイトさんの時と違って、俺は剣を持っている。
かわせない攻撃は、剣で反撃する。
ミラストさん、その剣を攻撃を正面から受けている。
ソニックブレードは使っていないけど、生身で平然としている。
俺の攻撃は、何発か良いのか首や腹に入っているが、全く効いていない。
それに同じくらい、俺にも入っている。
ミラストさんは、一発じゃ沈まない。
でも有効な攻撃は連続で入らない。
向こうも同じ、お互いに決定打がない。
作戦を変えようと、速さを上げた。
あ!
向こうも同じことを考えていた、同時にお互いの速度が倍になった。
俺はついでに、狙いを当てやすい手足に戦法を替えた。
剣の長さの分、向こうの攻撃がこっち届きづらいのも狙っている。
数十発、足に当てて、やっとぐらついてくれた。
そのスキに腹への突き。
やっと膝が落ちてくれた。
「そこまで」
反撃の拳が俺のアゴの下で止まっている。
ギリギリだ。
「勝者、ヨガ」
オーと言う声が上がる。
「ミラストどうだ」
種族長がミラストさんに感想を聞くと
「本気でやってもヨガ殿が上かな」
いや、それはない。
「買い被りすぎですって」
「奥の手を見せて無いのはお互いに同じ、でも俺とは余裕が違ったな。
まだまだ奥があるんだろう」
ミラストさん強かったですって。
すいません、鬼人族の強さ見誤っていました。噂通りでした。
「私もやる」
試合で興奮したのか、鬼人族の女性が1人試合場に上がった。
「誰かやろうぜー」
よく見れば、昨日ミラストさんと一緒に長の護衛をしていた人だ。
その呼びかけに
「私がやる」
と、ケイトさんが名乗りをあげた。
やると思ったよ。
俺たちの試合が、最後の予定だったけど。
「いい余興だ、好きにやれ」
と長が許可したので、試合が始まった。
鬼人さんの高速攻撃はミラストさんと同じ戦法。
スピードは少し遅いかな。
それにケイトさんが合わせている。
本当に拳に拳、蹴りに蹴りを合わせて止めている。
それ力の差を見せつけすぎ、相手の事をもう少し考えようよ、こんな大勢の前でやることじゃない。
ケイトさんその辺の微妙な事はわからないんだ。
生まれたばかりだから、仕方がないのかも。
この試合では速度が早まる事はなく、鬼人族の女性に疲れが見えた所でケイトさんの一撃。
女性はそのまま崩れ落ちた。
吹き飛んではいないので、手加減はしてくれてたようだ。
「ちきしょ〜」
そりゃそうだ、あんなことされたら。
「お前、何で女なんだ!」
「ははは。
ミナケラ残念だったな、また嫁に行き遅れたか」
?
ミラストさん俺の横に来ていて
「あいつはミナケラって言って俺の妹なんだが。
自分より強い男の妻になるんだ」
「じゃ、何であんなに強くなるんだよ。
相手いないだろう」
ケイトさんに負けたとは言え、彼女は十分に強い。
「はは。
そうだな、この村であいつより強いのは、兄の俺と、親父の長だけだからな」
この2人、種族長の子供だったのか。
「鬼人族は強くなるのを、途中でやめることなどできない。
俺たちは強さに憧れてしまうからな」
ーーーーー
その夜、ケイトさんが当然の報告
「結婚を申し込まれた」
「だれに」
すぐに食いついたキューさん。
リーシェさん何俺を睨んでるんです。
「昼間試合の見ていた4人」
「4人。
もしかして、それって全員、鬼人族の人?」
「そうだった」
「え、ケイトさん鬼人族の人との婚姻可能なの」とリーシェさん。
そうだよね、人と子を作れるのはエルフとドワーフだけだと思ったけど。
ケイトさんなら大丈夫なのか?
「子供を諦めて、結婚することはよくあります」
とラヌさん。
「この国ではいろんな種族がいるので、好きになった相手が同種族で無い事も有ります。
子を生むには同族である必要がありますが、他種族の異性に魅力を感じないわけでもないので」
「全部断ったよ。
私には使命があるから」
魔王討伐か、
「ケイトさんには、宿敵がいるから結婚は難しいと思う」
「結婚した母上は例外、それも6年で別れた」
結婚したの、勇者と?
「それに、次の世代の子供を作ることも私の使命。
子種をもらうだけだけど、厳選しないとね。
有望株を見つけてるけど」
リーシェさん、だから俺を睨むんですか。
可愛いけど。
✗✗の村ってタイトル多いな、反省。
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