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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
4章
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4-4.急ぐ旅ではありませんので

前回あらすじ:ヨガの心配は不要でした、女性陣もとんでも無かった。

「この方向、2000歩、腕が4つのでっかい熊。

 討伐部位は右の下の手」


 右前方を指差して、声を出す。

 ケイトさんが軍馬を向け走っていた。

 冒険者見習い卒業条件の、魔獣討伐のためだ。


 鬼人族のラヌさんとシシさんに案内され、何処かに行く途中だ。

 何処へ行くのかは教えてくれない、50日ほどかかるそうだ。


 まっすぐ進んでないのには、気づいたが黙っていた。

 村々を回って経路を複雑にしている、案内なしに行けないようにしているのだろう。

 残念ながら、今いる正確な場所はビチュレイリワが知っている、中央に向かっているらしい。



 ケイトさんはすぐに戻ってきた。


「取ったよ〜」


 熊の手をかかげて、見せてくれる。


「ロハイラの耳とは便利なものですね」


 ラヌさんが、俺の認識能力を羨ましそうにしている。

 本当は違うが、『ロハイラの耳』としてもかなり優秀な能力だ。


「だから絶対に奇襲は受けない」


 鬼人と同じ馬車に乗せてもらっているキューさんが、御者をしているラヌさんに警告のつもりで言うが


「みなさんを襲うだなんて考えていませんよ」

 とラヌさんが返す。


 でもラヌさん知らないと思うけど、鬼人の村を出た後に、俺達を追う一団がいた。


 俺たちの前を走る魔獣が全部逃げてしまって、追いかけてくることができなくなっていた。

 まあ、俺が逃したんだけど。


 馬と言えば、何故キューさんが馬車に乗っているかと言うと、まだ次の馬に乗る気にはならないそうだ。

 少し待ってと、俺とビチュレイリワに謝っている。

 ビチュレイリワは、安全のため軍馬に乗って欲しいと。

 俺は急いでいるわけでもないので、いいよと返事をしている。


「それにしても彼女は相変わらずですね。

 トーシューも一撃ですか」


 ラヌさんケイトさんが持ってきた熊の腕を見て、つぶやいている。


 トーシューとは、ケイトさんが倒した熊の名前で、大きさは2本足で立てば俺の倍以上あったはずだ。

 それを一撃で粉砕して、腕だけ拾って帰ってきたから、戻って来たのが早かったのだ。


 一撃で獲物を吹き飛ばすのが、最近のケイトさんのやり方だ。

 お金はあるから素材は拾う必要がないと言ったらこうなった。


 他の冒険者に見られた事があり、その派手なやり方は噂になっているようだ。

 立ち寄った村にギルドの出張所があれば、討伐部位を持ち込んでいるのだが。

 そこで『一撃の……』と言われていた、そのうち『一撃のケイト』と言う2つ名が付くかもしれない。

 そっちのほうが『狂鬼』より絶対格好いい。


 だけどケイトさんは、殴るだけじゃない。


 村にいない時は野宿だ。

 野営の準備が終わったあとに、俺とケイトさんが組手の試合をするのが日課になっている。


「当たんない」

 ケイトさんは拳や蹴りでの連続攻撃、それをかわす俺。


「これじゃ鍛錬にならない、避けるなヨガ」


 いや、初日に練習だと思って手を抜いてたら、思いっきり殴ってきたじゃないか。

 痛かったんだから、あれ。

 ピノにも二度と当たらないようにと言われているし。


 強い力を込めると、どうしても予備動作が出る、俺はそれを感じて避けている。

 予備動作がない攻撃では、俺には効かない。


 俺もケイトさんに有効な攻撃を与えていないけど、ケイトさん俺以上に硬い。

 銀鱗翼竜(ケフロイヤ)の膨大なマナを使っているのだから、当たり前なんだが。


 しまった!

 ケイトさん殴るふりして俺の手を掴んできた。

 最近は投げ技なども使ってくる、地面に叩きつけられた。


 あ!


「「ヨガ」」

 リーシェさんとキューさんが慌てて駆け寄ってくる。


<2人とも慌てないでください。

 ヨガは大丈夫です、すぐに治ります>


「でも、ヨガの腕」


 俺の左手は、ありえない方向に曲がっている。

 でも痛くはない。


<痛みは、折れる直前で遮断しました。

 ヨガは痛みを感じていません、2人とも落ち着いてください>


 見てると腕が本来の姿に戻っていく。


「私の存在って・・・」

 治癒の祈りを始めていたキューさんがガッカリしている。

 キューさん本来、治癒が本業だものな。


 俺やリーシェさんキューさんは、ピノのおかげで怪我をしにくいし、怪我をしてもすぐに治る。

 ケイトさんは怪我をするとは思えない。

 キューさんの治癒能力を伸ばす機会は今後も無いな。


「ごめん。

 当たんないから、つい本気になっちゃった」

 ケイトさん同じパーティのメンバーの腕、折っといて何でそんなに軽いんだよ。

 ごめんじゃない。


「本当に皆さん、化け物ですね」


「ヨガがです」

「化け物はヨガだけ」

「俺は普通です」

「私は人です」

 シシさんのつぶやきに、全員が返す。


「シシ、皆さんは村での『試し』を乗り越えた方々ですよ。

 それくらいでないと、逆に困ります」


「そうですね、お嬢様」


「お嬢様はやめてシシ、もう族長の娘でも無い。

 族長はランが継いだのだから。

 それに私は村に帰れないのだし」


「追い出されたんですか?」


 リーシェが確認すると


「私の身は部族長に預けられたのです」


「お嬢様」


「シシ、隠していても無駄だと思いますよ。

 ヨガさんは私たちが何処に向かっているのか気づいています。

 星読みもできるのですね」


 星読みとは、星の位置で自分のいる場所を知る方法だが、無論俺は出来ない。

 ビチュレイリワのおかげだ、説明が面倒なので否定はしない。


「いや〜」

 と頭をかいて誤魔化してしまう。


「ですが、回り道はこのまま続けさせてもらいます。

 決まりなので。

 私達の村が、鬼人族唯一の村という訳ではないのは、ご理解いただけるかと思います。

 鬼人族は氏族ごとに村を作ります。


 今向かっているのは、鬼人族の長がお住いの村です」


「国境で聞いた、種族長のことかな」とリーシェさん。


「そうです、近くには各種族の長もおりますのでこの国では重要な場所です。

 そこへ、他国の人を連れて行く場合には、厳重な取り決めがあるのです」


「なるほど、理解しました。

 俺達には問題が無いので、このままその取り決めを続けてください。


 でもラヌさん、その長の預かりになるのですか」


「私は、いくつかの掟を破っています。

 それが、正しい事だったのか、判断してもらうためです」


「それは、ラヌさんが掟を破ったが、そうしなかった場合を考えると、間違っていると言えない行動だった。

 でも自分たちでは判断出来なかったので鬼人族の長に丸投げした。と言う事かな」

 キューさんそんな言い方、もう少し誤魔化して聞こうよ。


「そうですね」

 ラヌさんも苦笑い

「ありがとう、そう言われると、自分のした事に苦しんでるのがおかしくなります。

 私は自分が間違っていたとは思っていません、長も理解していただけると思っております」

「はい、シシもそう思っております」


 そう言う2人の顔には、覚悟と自信が見える。


「もしかして、その村でも試合することになるの」


「いいえ。

 皆さんの『試し』は終わっています。

 でも、試合は申し込まれると思いますよ」


「?」


「鬼人族は、強さを求め、強い者へ敬意を抱きます。

 皆さんの強さを知れば、その強さを見たくなると思いますので。


 大丈夫ですよ、今度は本当に腕試しの試合ですので」


 ケイトさんは腕を鳴らしてる。

 なにやる気になってるの、俺はやだよ。


 ーーーーー

「次の村までは2日なのですが少し寄りたい所があって、もう1日かかるのですが寄って良いですか」


 出発前にラヌさんが聞いて来たが、もともと日程を知らないのだから、言わなければ俺たちはわからなかった。

「何処寄りたいんですか」


「話にだけ聞いていたのですが、ここから半日の所にお湯が湧く場所があります。

 湯に入れる場所があるので行ってみたいのですが」


「温泉」

「私も入りたい」

「ヨガ、一緒に入ろう」


 1人とんでもないことを言っているが、女性陣全員が賛成した。

 これでは俺が反対しても意味がない。


 着いた場所には、小さな滝と湯気が出ている滝壺があった。

 今日はここに泊まる事になり、昼間から野営の準備。


 終わったら、俺が先に湯に入れられた。

 女性陣は後でゆっくり入るそうだ。

 最初は鬼人族の2人。


「鬼人族の女性は肌を家族と夫以外に見せることはありません」


 何故かラヌさん、風呂に入る前、俺に語り始めた。


「見られた場合、その男を殺すか、妻になることになります」


 俺を睨みつけながら言うが、何故それを俺に言う。


「私ではヨガさんを殺す事はできません。

 何を言いたいかといいますと、絶対に覗かないでください」


 なるほど

「もちろんです」


「大丈夫よ、私達が見張ってるわ」


「それが信用出来ないんですが」

 と言い残し、湯に入りに行った。


<彼女、強引な旗の立て方してましたね。

 振りでしょうか?>


 何だその旗を立てるって?


「ピノの言ってる事はなんとなくわかるけど、違うから。

 彼女は本当にダメだと言っているよ」


 ピノはリーシェさんにも聞いてたのか。


「旗を立てるって何?

 ピノは何を言ってるんだ?」


「ラヌさんがヨガに覗いて欲しくて、わざと覗かないでと言ったと考えたのよ。

 そうなれば、ヨガのお嫁さんになるしかなくなるでしょう」


<そうです。

 この地には、そんな文化がありませんか?>


((ない))


「ヨガ、覗かないでね」

 ケイトさんが笑いながら言ってくる。


「私もダメよ」

 キューさんまで。


 思わずリーシェさんに目がいくが


「この流れで、私が言っちゃーダメでしょう。

 振りじゃないからね」


「はい、わかりました」

 と笑顔で答えてみる。


 リーシェさんはため息を1つ、2人は笑い続けている。



 鬼人二人が戻り、代わりに3人が向かう。


 キューさん行きながら、聞こえるように

「振りかな、違うのかな。

 どっちかなー」

 楽しそうだね。


 もちろん俺はラヌさんを覗いてはいない。

 ピノも俺の認識能力を遮断して、2人を見えなくしていたし。


 その後、晩飯の準備をしていると、滝の方から大きな声が聞こえてきた。


<ヨガ、3人が大きな蜘蛛に襲われています。

 ケイトさんの拳とは相性が悪いです>


 サラマンダーはと思ったが、剣を手に取りすぐに駆け出した。


「このやろう」

 ケイトさんが近づこうとするが、粘性のある糸が邪魔をして、本体に近づけないでいる。

 糸が軟すぎて拳では切れないようだ。


「こっちは大丈夫」

 キューさんも壁を作って防いでいる。


 あれ、リーシェさんが怖がってる?

 キューさんの陰に隠れてるように見える。


 ソニックブレードを使えば、蜘蛛の糸は簡単に切れた。

 糸を切られたと知って逃げ出したが遅い、あっさりと本体も切断。


「みんな、大丈夫?」


 振り向くと


「なに堂々と覗いてんの」

「見事な振りになってしまいましたね」

 キューさん、ケイトさんは立ったまま。


 リーシェさんはお湯の中に隠れている。

 ?


「もしかして、リーシェさん蜘蛛ダメでした?」


 長い耳が一気に赤くなる、急に湯当たりしたわけじゃないよな。


 リーシェさん、湯に入ったままこっちを向き

「悪い?」

 とふくれたリーシェさん可愛い。


「なんでそんなに近づくのよ。

 それに2人も、何で堂々と見せてるの。

 やっぱり自信があって見せたかった」


「リーシェさん何が何だかわからないこと言ってるの。

 ねえヨガ」


 そうだね

「3人の首から下は、ぼやけて輪郭もわかりませんよ。

 前にピノに頼んでいたじゃないですか」


「私達にヨガはイヤラシイ事、できないの知ってたでしょ。

 無論裸を見るのも禁止したよね、宿ではヨガの前で体洗ってたじゃない。

 忘れてた?」


 キューさんの指摘で、リーシェさんピクっと動いた。

 忘れてた、みたい。


「そうだった」

 リーシェさんも立ち上がり

「ヨガ、どうこの素晴らしい体つき」

 と手を広げて見せてきた。


 リーシェさんらしくない。

 諸々の行動が恥ずかしくて、照れ隠しのつもりだったかもしれないけど、大胆だよ。


「リーシェさん、忘れたの。

 ピノとの約束には、私達が許可しない場合という条件が有ったよね。

 そうやって見せたら、多分見えちゃうよ」


 キューさんの言葉でリーシェさんと目が合った瞬間、激痛が走った。

 その場にうずくまり、立っていられない男のみが判る痛さ。


(ピノ、何で痛みを遮断しなかったんだよ)


<その痛みは、遮断すべきではありません。

 ヨガは十分に感じるべきです>



海に行ったら水着回を1回と思ってましたが、設定上(水着を知ってる人がいない)難しと気づいて入れた温泉回です。

お約束ごとは入れたつもりです。


誤字・脱字のご指摘や、感想をいただけると嬉しいです




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