4-3.鬼人Vs2人娘
前回あらすじ:頑固な鬼人さん、困ってしまいます。角を切ちゃいました。
リーシェさんが呼ばれた、まだ続ける気か、止めようとしたら。
「大丈夫」
とリーシェさんに、先に言われてしまった。
でも、危なくなったら止めるからね。
前に出たリーシェさん、早速サラマンダーを呼び出している。
あれはおとりだな。
大抵精霊使いは火を使う、それを印象づけているみたいだけど乗ってくれるかな。
相手はシルさん、こちらもお面を付けて表情はわからない。
こっちも『マナまとい』を始める前からしている。
いや、ちょっと違うか、あれ耐火防御をしてるみたいだ。
サラマンダー見せた効果はあったんだ。
開始の合図で、シルさんが突っ込んできた。
リーシェさん自分の周りに水の壁を呼び出す。
早く流れているので、飛び込んだシルさんが弾き飛ばされた。
そのシルさんに向かって、地面から土が鋭い牙となってせり上がり襲いかかる。
ギリギリで避ける鬼人に対して、牙が次々と襲いかかる。
回避するだけで、リーシェさんに近づく事もできない。
火炎攻撃を予想していただろうから、その分対応が遅れた。
当たってはいないが、このままではいずれ捕まえられる。
シルさんもそう思ったのだろう、逆転を狙って大きく飛び上がる。
リーシェさんの上を取ろうと考えたのだろうが、甘い。
高く飛び上がった瞬間に、突風で地面に叩き付けられた。
それに合わせてサラマンダーが火を吐き、シルフが竜巻でシルさんを包む。
炎の竜巻の中に、シルさんが閉じ込められた形だ。
シルさん一度立ち上がったが、すぐに崩れ落ち、リーシェさんの勝ち。
また、勝ち名乗りがされない。
向こうの人が慌ててシルさんに駆け寄ってるから、勝ちはかわらないだろうけど。
「なぜだ」
族長が叫んでいる、結果を受け入れられないのか。
「シルはサラマンダーの火炎程度では倒れぬはずだ」
そっちかい
リーシェさん人が良いから、答えちゃった。
「洞窟の中で、焚き火をするなと、言われていませんか」
狭い場所で焚き火をすると、空気が悪くなる。
旅をする者ならだれでも知っていることだ、族長も知ってるだろう。
「風の壁で、シルさんと火で悪くなった空気を閉じ込めていた。」
サラマンダーは熱を生み出すためじゃなく、悪い空気を生み出すために使った。
火や熱への耐性を上げても意味がない。
「シルは毒にも耐性があった。
毒の空気ぐらいで倒れるものか、何をした」
あれ、毒に耐えれたの?
<ヨガも考え違いをしてますね。
火は悪い空気を生み出すのではありません。
人が生きるのに必要な空気と、火が燃えるのに必要な空気が同じものなのです。
火が燃えた後では、人が必要とする空気が足りなくなるんです。
前にリーシェさんに教えたことがあります、それを攻撃に使ったのでしょう>
火を使っての、熱でも毒でもない攻撃か、知らないと防げないな。
「こうたーい」
キューさんが広場に出ていって、リーシェさんとハイタッチ。
軽く言ってるけど大丈夫か?
キューさんって個別攻撃した事もなかったよね、範囲魔法は得意だけど。
向こうはどうするんだ、ヌグさんもシルさんも戦える状態じゃないはずだと思うけど。
そう思ってると誰か出てきた、面をしてるけど角がある、ヌグさんじゃない。
今連れて行かれたシルさんでもない。
2人で相手をすると言ったよな、2人を倒せば終わりじゃないのか。
何でもありかよ、『約束は守る一族』という第一印象はもうなくなったよ。
文句を言ってやろうとすると、服のすそを引っ張ってまたリーシェさんが。
「キューさんなら大丈夫。
今まで彼女の加護の壁が破られたことあった?」
無かった。
デッカイ巨人でも抑えたな、あの鬼人がそれより力があるってことはないか。
また開始の合図と同時に鬼人が飛び込んでくる。
この合図と共に攻撃をするのは、伝統なのか?
でも想像通り見えない壁に防がれてキューさんに近づけない。
この壁硬くはないから怪我をすることはないが、前に進めなくなる。
キューさんの周りをぐるぐる、スキを探してるがあるわけないでしょう。
「私の勝ちでいい?」
キューさん族長に聞いてみるが
「ダメだ。
勝負は終わっていない」
「私に近づく事も出来ないで、それ言う」
「お前が、その力を維持できなくなるのを彼は待っているのだ」
それは気が長い、キューさん半日くらい平気だけど、このまま半日待つ気なの。
でもさすがにヌグさんだとは言わなかったね。
「仕方がないな、じゃあ私も攻撃する。
死なないでね」
言い終わった瞬間に、雷が落ちる。
残念ながら、鬼人には当たらない。
続けて、数発の雷が落ちるが、全部はずれ。
鬼人が素早く動いて、狙いが定まらない。
「私、ちまちました事苦手!
大きいのだすから、避けて」
最後、俺達に言ったよな。
<ヨガ、ケイトさんを伏せさせて>
ピノ、リーシェさんにも言ったらしく、彼女が地面にしゃがみこんだ。
「ケイトさん伏せて」
ケイトさん俺の指示でリーシェさんの真似をする。
<剣を高く突き出して>
ピノに言われた通り、剣を上に上げると、雷が落ちた。
キューさん、雷を雨のように落としている。
一部は地面に落ちても、力が余ってたらしく、地表を横に走っている。
周りのものをなぎ倒している。
俺にもいくつかの雷が落ちた。
「直撃したじゃないか!」
「ごめん、許して、ね」
俺が声を上げたのはピノに対してだ。
キューさんは悪くない。
<雷は先が尖った物に落ちる性質があります。
ヨガが周りに落ちる雷を引き寄せたので、リーシェさんケイトさんに落ちずに済みました>
先に言え、驚くだろ。
試合を見ていた村人も巻き込まれて大惨事だ、あちらこちらで叫び声が上がっている。
「これ以上は無理だよね」
試しに聞いてみたが。
「まだだ。
まだ、決着はついてない」
と叫ぶ族長。
近くの他の者に抑えられて「もう止めましょう」と言われているが聞く気がない。目が血走っている。
「「こうた〜い」」
と言いながら、ケイトさんキューさんとハイタッチして試合場に上がってしまった。
まだやる気だよ、容赦ないな。
でもケイトさん、キューさんと違い戦闘の仕方が個別攻撃だ、手加減は出来るか。
なんか鬼人族は思ってたより弱い。1対1なら剣聖は無論、赤の双剣・フェンメットさんたちにも勝てそうもない。
何でだ。
「鬼人族って、剣聖より強いと思ってた」
思わず口から漏れちゃった。
そしたら、リーシェさんとキューさんが何言ってるのって顔してる。
「ヨガが聞いてた話は、多分ジの物語だよね。
ジは確かに強かったと思うよ、もしかしたら今の剣聖よりも。
でもそれって、勇者の話を聞いて冒険者たち全員が強いと思っているのと一緒よ」
そうか、話として伝わるのは吟遊詩人が歌う物語り、特別だから歌われるんだもんな。
子供の頃にワクワクして聞いてた話だし、盛ってあっても仕方がないか。
「それに、鬼人族そんなに弱くはない」
とキューさん、周りを指差す。
確かにキューさんの攻撃で死者は出ていない、丈夫なんだ。
まあ、子供いたからキューさんが可能な限り手加減したんだろうけど。
おかげで見物人はかなり減ってる。
ケイトさんに対戦者が出てきたが、前の3人に比べ一段弱いように見える。
慌てて出て来たようだ、まさか自分が出ることは思ってなかっただろうな。
今度は試合開始の声が掛っても両者動かない。
前までの試合で学習したのか、単に怯えているのか、ケイトさんの様子を伺っている。
そのケイトさん、いきなり地面に向けての正拳突き。
川とかに石を投げ込むと、反対側に水柱上がりますよね。
それが試合会場の向こう半分で起きた。
地面がめくれ、それが波となって族長たちがいた辺りを襲う。
土煙が上がって、もう何も見えない。
助けを求める叫び声と、悲鳴だけが聞こえる。
見ている村人は、ただ立ち尽くしている。
俺もだ、ケイトさんの実力見誤っていた。
(あれ、俺が食らったらどうなる?)
<痛いと思いますよ>
リーシェさん族長のとこへ近づいている。
族長たち、土の中から這い出てきたり、掘り起こされたりして泥だらけ。
でも族長まだ元気だ、言葉にならない叫び声を上げ続けている。
その族長の前まで行くとリーシェさん
「まだ続けますか?
試合は終わりましたよね、これ以上は不要ですよね。
もし続けるなら、次からは本気で相手しますよ」
それを聞いた族長やその近くにいた者の視線は、リーシェさん頭上に向けられている。
そこにいたのは炎の巨人、火の上位精霊・イフリートだ
そう言えば最近、呼べるようになったって言ってたね。
リーシェさんニヤリと笑う。
それ悪役っぽい、可愛くないから止めて。
「皆さんの実力は十分わかりました。私たちでどうにか出来る方々ではありません。
私たちの依頼人に連絡します、返事が来るまで待っていただけませんか」
ラヌさんが半身を起こし答えた。
そして俺たちは、村の大きな家に案内され
「ここでしばらくお待ちいただけませんか。
何か御用がありましたならば、このシシに言いつけてください」
ラヌさんが低姿勢で頼んで出ていった。
シシと言われた鬼人は年配の女性で、入り口に立っている。
用があれば言ってくれとのことだが、外には出ないでくれというのだろう。
しばらく待っていると、4人の鬼人が入ってきた。
1人はラヌさん、他の2人はさっき族長の近くにいた者、あと1人は初めて見る子供だ。
「私はラン、本日新しい族長になった」
子供が名乗る。
こんな子供が族長になるということは、世襲制か。
さっきまで元気だったけど、前の族長には引退してもらったのか。
村のためにはそれがいいよな。
「先程ラヌが言った事は、私が守る。
依頼人につなぎを送った」
[彼の言っている事は本当です。
手紙の内容を知ることは無理でしたが、連絡用に鳥を離したのは確認しました。
行き先は追尾中]
「返事が来るまでここで待てと?」
「いえ、皆さんにはすぐに出発していただきたい」
「え、どこへ?
返事はまだなんだろう」
「返事は別の場所に届くようにしている。
そこに、向かって欲しい」
「私たちには、村にいて欲しくないと言うのですね。
まだ、揉めているんですか」
揉めている?
何をなのだろう、リーシェさんは気づいたようだけど。
「皆さんをどうするかで、まだ意見が割れている。
大半が村から出ていって欲しいと言う者たちが。
『失敗の責任』を取らせろと言う者たちが、彼らを巻き込んで何かするかもしれない。
また、姉が族長より先に結論を口にしてしまった事を、問題にして反対している者までいる」
ラヌさんが族長の娘で、ラン君が弟という事か。
弟が族長になったということは、男子が優先される決まりなんだな。
お姉さんの方が適任だと思うんだけどな。
「で、どこへ行けばいいんだ」
「案内は、ラヌとシシがする」
「なるほど、面倒な私たちはさっさと村から追い出して。
問題が有れば、ラヌさんが責任を取らされるわけか。
仮にも族長でしょ、あんたそれでいいの」
キューさんに言われ、弟君は目をそらす。
罪悪感はあるんだ、族長って言うのも大変だな。
逆にラヌさんは誇らしい顔をしてる。
言われてるやってるのと、自覚を持って判断している、の差か。
俺たちも面倒事はゴメンだ、すぐに村を立った。
誤字・脱字のご指摘や、感想をいただけると嬉しいです




