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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
8章
103/104

8-15.決戦場

前回あらすじ:最終話近くのオールスター回でした。

 兵が城壁に届いたとの報告を受け、俺は飛び出した。

 リーシェさん、キューさんピノが続く。


 リーシェさんを戦いの場に出さないため、俺も司令部に押し止められていた。

 俺達は『連合軍の切り札だから、まだ出るな』と言う、理解出来ない理由によってだ。


 もう良いだろう、これ以上人が死んでいく報告をただ聞いているのは耐えられない。

 俺は冒険者だ。


 ビチュレイリワ制の軍馬で、激闘の中に飛び込む。


「戦況を教えて下さい」


 西軍を指揮していたのは、フルーフの元王。

 フルーフ兵の奮闘により、西から城にとどいた。


「例の光を放つのが2匹。

 残りの魔王軍の兵2匹は、ただでかいだけだ。

 他に魔物も多数いるが、こっちは兵どもが押している」


 前衛には、大きな盾を持った兵たちが後ろに隠れた兵を守る陣形がいくつか構成されている。

 仲間が撃たれたら、そのスキに他の陣形が距離を詰める。


 攻撃は他の敵兵からも有る。

 だが、盾を持つ兵の影から出ることは出来ない。


 耐えて、耐えて、自分たちの剣が届くところまで近寄ったら、一斉に攻撃に移る。

 被害が大きいはずだ。


「光るやつは俺達がやります」


 前線で盾に隠れている兵に駆け寄る。


「俺達があいつらを倒したら、盾から出て攻撃に打って出て下さい。

 ピノ手数で抑えてくれ。

 俺が突っ込む」


 返事の代わりに、ピノは敵兵に対してレーザーを放っている。


「リーシェさん、城門を破壊して」


 俺の声を待たずに、堀の水が高く渦を巻いていた。


「キューさんは、癒やしの祈りをこの戦場全体にお願い」


 これで死の淵にいる者を、いくらかこちら側に引き戻せるはずだ。

 それで、救援と本格的な治癒が出来る時間が生まれる。


 1体がレーザーを放ったのを合図に飛び出した。

 自分が出せる最速でだ。

 それでも魔王軍、残る1体がレーザーを当ててくる。


[左腿、被弾。

 皮膚の炭化、痛感遮断で対応。

 焼ききれた筋は代用機能で補完可能。

 頭部直撃は避けて下さい]


 俺も当たりたくて当たってるんじゃない。


 魔王兵の前で一度止まり、気合を入れ直す。

 口元から生えた6本の鋭い爪が、襲いかかる。

 突き刺さてくる爪を無視し、一気に距離を詰め真っ二つ。

 俺がいた場所に、虚しく6本の爪が突き刺さっている。


「もう1つ」


 声を出して、集中を維持する。

 マナの刃は鋭いままだ。


 トゲトゲの甲羅に覆われたミミズ。

 口からレーザーを出すが、甲羅の棘も打ち出してくる、狙撃兵だ。


 棘は硬化すれば刺さらないが、こんどは向こうの手数が多い。

 俺の足が止まる。


 グググゥゥ。

 地鳴りし、あたりの地面が波打つ、俺とミミズを放り投げた。

 リーシェさんやるなら一声かけてくれ。


 剣をロープにし伸ばしなんとか、ミミズに巻きつける事が出来た。

 引っ張れば、軽い俺がやつに飛び込む事になる。


 4つに切断したが、地面に落ちたそいつはまだ動いていた。

 本物のミミズもそうだった、半分になっても生きている。

 レーザーを吐く口を細かくして使えなくした。

 あたりでは、フルーフ兵がモゴモゴと動いている残りのミミズをなぐっている。

 彼らの武器では切り裂けないのだ。


 見ると他の魔王軍の兵にも、同じようにフルーフ兵が取り付いている。

 西での攻防はもうすぐ終わる。


(他の状況は?)


[南が一番苦戦していますね。

 守護竜(ガーディアンドラゴン)を相手にしたので、敵兵力の半分はここに集結しています]


 銀鱗翼竜(ケフロイヤ)達には悪いが、その分他が手薄になった。


[戦上手なブンヘズ王が指揮している北は、敵兵を分断して各個撃破を繰り返しています。

 東は、剣聖が自ら出て、一体毎倒していますね。

 時間がかかっていますが、被害が少なく確実に進んでいます


 全体的に押していますね、今日中に全方向の攻略は終わるのでは]


 ここが突出しているわけじゃなさそうだ。

 なら城内に侵入するのもありだ。


 西の城門はすでにリーシェさんに壊されていた。

 ただし、その前の堀を渡る手段がない。


「リーシェさんお願いできる」


「任せて」


 と両手を地面に付け、話しかけた。

 堀から土柱が数本伸び、仮の橋を作る。


「飛び石だね。

 完全装備の兵には厳しいんじゃない」


 キューさんの言う通り、飛びこえて向こうに渡る事になる。


「渡す板を用意しろ」


 フルーフ元王、そつがない。


 周りに集まったリーシェさん達を見ると、うなずいて俺の考えに同意した。

 先行しよう、中の敵を減らしておきたい。


 だが、


(敵見えるか?)


 ビチュレイリワは俺より目がきく。


[いませんね]


 そうなると


[あの地下室で待っているんでしょうね]


 城の地下に、ビチュレイリワの見えない空間がある。

 フルーフ城と一緒だ。

 確実に罠がある。


 俺達が簡易の橋を走り始めた瞬間、堀の水が光った。

 まずい何かある。


「飛べ!」


 俺達が城内に飛び込むと、土の橋が崩れた。

 凄まじい唸り声が聞こえてきた。


「何かいるのか」


 耳を抑えながら叫ぶ。


[衝撃波弾のたぐいですね。

 人体にすぐに影響は有りませんが、脆い物は崩壊します]


 うるさくて人の行動には影響でるだろう。


[堀全体に仕掛けられてますね]


(閉じ込められたって事か)


[そこまでではありません。

 高度を上げれば上空からの出入りは可能です]


 翼を持つ者がいる北と南は、もう少し時間がかかる。

 この音のせいでもっと遅れる。


 それにこれは、俺達だけを招待したのだ、行かなければ失礼になるな。

 地下室に向かって侵入を始めた。


 途中、障害が全くない。

 敵兵どこか、罠さえなかった。


 下り階段の途中で

「ビチュレイリワとの通信、切れました。

 通信障害が起きています。

 ここの壁はフルーフの時とは違いますね」


 どうする、引き返すか。


「戻っても城の外には出れない。

 行って、あのうるさいの止めましょう」


 とリーシェさん。

 冷静に指摘する。


 最下層に豪華なドアがあり、その両端に衛兵が立っている。

 よく見た光景を思い出す。

 呼び出され、中で王を待つ場所はこんな感じだ。


 ドアを守る2人の衛兵は人だ。

 魔王軍の手は入っていないように見える。


 その衛兵が


「冒険者ヨガ。

 王がお待ちだ、中に入れ」


 言い放ち、ドアを開ける。


「冒険者、ヨガ。

 同じく、リーシェ、キュー、ピノ」


 これは呼び出しだ。

 宮廷ごっこでも始める気か。

 もっとも王が冒険者を待ってるなど、ありえないが。


 部屋の周りを円状に、お偉方が立っている。

 おどろいた事に彼らは全員普通の人だ。


 そして正面上段に玉座がある。


 ここは廟堂か?

 王や大臣が国の政策を話し会う場所で、どの国にも有るはずの部屋。

 見たことは無いが、聞いたものに似通っている。


「王の御膳である。

 控えよ」


 前方に男が俺達に指図する。


「これは何だ。

 本物の王はどこにいる」


「無礼者!」


 男が叫んだ。

 本当に王宮ごっこだ。


「良い」


 玉座の少年が、叫んだ男を制した。


「はっ」


 激高した男が、一礼して下がる。


「私がこの国の王だ」


「ウサオアの王は50才を越えているはずだが」


「私が50ではおかしいか」


「人じゃないお前なら、おかしいことでは無いのかもな」


「一目で判るのか。

 やはり冒険者と言うのは、面倒な相手だな。

 お前もマナが見えるか」


 そうだ玉座に座る少年には、マナがない。

 義体。

 ピノと同じだ。


「だが私は、この国の真の王だ。

 人で無くともな」


 自分が人でないと見抜かれても、この少年は慌てない。

 何故だ。


「この国は私以外の者を、王にした事は1度も無い。

 私が建国したのだからな」


 覇王軍が建国した国だと。

 人で無いのであれば、それも可能か。


「何故だ。

 お前たちは今の話を聞いて何も感じないのか。


 お前達は恥ずかしくないのか。

 人で有りながら、人を裏切り魔王に寝返るなど」


 壁に立っている者たちは平然と聞いている。

 それが許せない。


「私達は、寝返ってなどおりませんが」


 末席の老人が、俺の言葉に意外という顔をする。

 例の、リーシェさんにちょっかい出していた伯爵だ。

 ただの好々爺にしか見えない、エロじいや策略をめぐらしていたなどとは全く感じない。


「私達は元々魔王軍の一員です。

 人の仲間になった事などありません」


 なに?


「幼児からの洗脳か」


 ピノが気づいた。


「ご名答」


 少年が乾いた拍手を打つ。


 洗脳は知っている。

 人の記憶や思いを歪める禁忌の技。

 だだ自己生命に関わるほどの制約はできない、強制力はそこまで無いはずだ。

 赤ちゃんの真っ白な心になら、抵抗なく何でも植え付け可能ということか。

 なんて事しやがる。


「最近やっと品質が一定になってきた。

 生産が安定し、量産が可能になったのだよ。

 だから、上級貴族が全部人のまま魔王軍で有るのは、おかしい事ではない」


「何の為に」


 彼らは弱い、戦力にはならないはずだ。


「任務を遂行するためだ。

 人を知る必要を、理解したからな。


 効果はあった、君たちも知っていよう」


「第3次魔王大戦の前と後で、魔王軍の行動が違う。

 以前は、戦力強化を行っていた。

 今は人や国家に対して策を張り巡らしている。


 リーシェさんが答えた。


「そうだ。

 前は火力の数、質を基本に考えていた。

 だがこの星には、魔法という数値化出来ない要素がある。

 簡単にヒックリ返されてしまう。


 なので、まずは敵を知ろうとな。

 こうして配下に人が増え、やっと人がどう考えるかが判ってきた」


 少年の言うことは腑に落ちた。


「新しい任務は、私の専門外だった。

 私のデーターベースに収まっているのは、恒星系占領や恒星間戦術。

 地上の特定種の殲滅には役にたたなかった。


 新たにディクショナリーを構築するのに、時間がかかってしまった」


「お前は誰だ」


 俺に思い当たるのが1っこある。


「今、お前が思った者さ」


「俺の考えが覗けるのか!」


「そんな訳ないでしょう。

 誰が考えてもそうなります。

 ヨガは顔に出やすいだけです」


 とピノに言われるしまつ。

 少し混乱中なんだから、許せよ。


「でもあんたが魔王と言うには無理があるじゃない」とキューさん。


「正確には、魔王の端末だ。

 そこのピノと同じではないのかな」


「私が何なのかご存知で?」とピノ。


「ビチュレイリワの端末。

 地上用センサーというところか。

 ビチュレイリワはこんな重力の底ではなく、大気の外にいるのだろう」


 大気の上にいるのを、何故知っている。


「それこそ、考えればすぐに判ることだ。

 礼を言う」


「礼?」


 ピノが首をひねる。


「外から攻撃すれば簡単だと気づいた。

 なにも、この地のやり方に合せる必要などなかったとな。

 100年もあれば飛べる」


 魔王軍が星の外に出ると言うのか。


「それは無理でしょう。

 ご自身の維持さえ出来ていないのに」


「ピノそれはどういうこと」


 キューさんは知らなかった、無論俺もだ


「魔王、貴方はほとんどの時間を寝ている。

 スループ状態なのでしょう。


 使う兵器の連射性が低い。

 魔王大戦の期間が空きすぎている。

 証拠は他にもあります。

 貴方はこの星で十分な活動エネルギーを確保できていない。


 それを補うため、その少年をつくったのでは」


「そうだ」


「あっさり認めるな。

 何を考えてやがる」


「1つ教えてやろう。

 切り札とは最後まで隠すものだ。

 お前達の切り札は、ビチュレイリワ。

 火力をもっているから、戦闘用の恒星間武力艦と言うところか。


 正体が判ってしまえば、対応も可能」


「手が届かぬ相手をどうにか出来ると」


「今は無理でも、いずれはな」


「そんな時間はお前にはない」


 ビチュレイリワに吹き飛ばされるからな。

 ウサオアがいなくとも、半分の国の同意は取れている。

 連合に参加しなかった国でも、魔王討伐への同意はそのままだ。


 魔王は横にいた男に合図した。

 彼が宰相という立場か。


「我がウサオアは、ビチュレイリワの魔王討伐に明確に反対する」


 声明を読み始めた。

 それは知っている、正式な手順を踏むつもりなのか。


「また、ゴブリン族、オーク族の盟主として彼らの意思を代弁する。

 彼らもまたビチュレイリワの魔王討伐に反対の意思を持つ」


 ゴブリン、オーク?


「お前たちは、ビチュレイリワの参戦の許可を星のものに託した。

 その許可を求めた者は。

 "意思疎通可能な高い知性をもつ"あるいは"文化を形成している"ではないかな。


 ならば、ゴブリン、オークにもその資格は十分にある。

 彼らは反対だ」


「ゴブリン、オークを優先し数を増やしたのはこの為か。

 グゥデゥ・ギュルシュ」


 ピノは絶望的な声を出している。

 彼女たちは自由に力を振るえない。

 こんな封じ手が有るだなんて、魔王は彼女達の価値観を理解している。


「グゥデゥ・ギュルシュか、何故その名を知っている。

 お前達の情報収集能力を、甘く考えていたようだ。

 残念だが帰すわけには行かなくなった」


「元々帰す気などなかっただろうが」


 俺は剣に手を置き、構える。

 だが室内に俺達の脅威になる相手などいない。


 まさか。

「リーシェさんドア破壊して」


 火炎がドアを包むが無傷だ。

 閉じ込められた。


「この部屋は熱崩壊を起こす。

 いずれ大爆発を起こすだろう。

 外にいる者たちもただでは済むまい」


「ウサオアを目立させ、兵を集めたのはこのためですか。

 勝ちが見えた所で、その中心を失わせ心を折る」


 リーシェさんが魔王の考えを見抜く。


「今回は勝ちは出来ぬが。

 次は絶対に勝てる。

 それまでの時間が稼げればよい」


「貴方の思い道理にはさせません。

 グゥデゥ・ギュルシュ・ラール・ドメデグ 」


 ピノが最後に言ったのは呪文?


「私の正確な名をどうして。

 そうか、お前たちは、そうか。


 だが遅い、ここから脱出は絶対に出来ない」


 部屋が赤く染まる。

 熱が一気に上がりだした。


 魔王側に逃げようとする者はいない。

 ここで死ぬのは、彼らには決定した事実だ。


 部屋が燃えだし、赤く染まる。


「名を肯定したね」


 ピノ振り向きざまに何かを俺達に投げた。

 そこで意識が切れた。



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