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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
8章
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8-12.断絶の音

前回あらずじ:兵ひきいちゃいました。



「セィヤー」

 掛け声と共に剣を振るう。


 刃は入るが、切断出来ない。

 硬い、ソニックブレードを使っているのに剣が止まる。

 相手は犬ほどの大きさの蜘蛛みたいな人形。

 顔の代わりに光子砲(レーザー)の発射口がある。


「連射が出来なくてよかったですね。

 砲塔が胴体と一体化して細かく射角も変えられないので、ヨガの速度だと回避できましたね」


 追いついてきたピノが、倒れている蜘蛛を調べて言った。

 リーシェさん達はもっと後方にいる。


 『シールド』が使えるピノと、高速移動が可能な俺が先行して掃除中だ。

 抜け道は入り口は狭くドラゴンが入れなかったが、道の壁が鉄製になった所で広くなった。


 ピノが

「アルスガ合金に近いものですね。

 この惑星でも作れ、加工が楽なわりに丈夫ですね。


 製造のコスト面で使っているんでしょうね、透視出来ないので必要以上に警戒してしまいました」


 と何か言っていたが、意味は判らない。

 ただビチュレイリワが、中を見れなかった言い訳だと言うのはわかる。


 警戒してたがしばらくは何も無かった。

 それが、いきなり光子砲(レーザー)を撃たれ、慌てて走った。

 ピノが言ったように、壁や天井を蹴って突っ込んだら、当たったのが2発ですんだ。

 痛いが動けなくなるほどではない。


 14体の蜘蛛モドキが守っていたのは、大きなドア。

 無論だが開かない。


 そして鍵穴も見当たらない。

 ピノを見て助けを乞う。


「解析してますが難しいですね。

 クモ型自走砲台にもヒントはありませんでしたから」


 さっき壊れた人形を調べているのは、そのためか。


「壊した方が速いですね」


「わかった」


 ドアの前で振りかぶった時に


「ヨガ。

 その剣では無理です」


 このタイミングでそれ言うのワザとだよな、移動する時に注意出来たはずだ。


「私がやって見ます」


「この大きなドアを」


 ピノの光子砲(レーザー)は小さな穴を開けれるだけだ。

 このドアを開けるなんて、どうするんだ。


 そう思っているとピノは


「ガギを焼き切ればいいです」


 とドアの横の壁に数個の穴を開けた。


「右側のドア引いて下さい。

 開くはずです」


 言われてたとおり引いてみると、開いた。

 すっごい重かったけど。


 1人ほど通れる幅まで開けて、中を覗いてみると真っ暗だ。

 思っていたより広い空間がある。

 認識能力も使うが、中には誰もいない。


 ゆっくりと入る。

 目では何も見えていないが部屋だ。

 いろいろな物がごちゃごちゃとあり、部屋の隅にはテーブルと椅子もある。

 上級の者が使う部屋じゃないな、作業場や倉庫という感じだ。

 奥に上に行く階段がある。


 ピノに合図して向かおうとした瞬間、室内が光で爆発した。

 眩しい光で目が潰された。


[回避!]の声で飛び退いた。


 すねに痛みが走る。

 床を一回転した後に触ると、浅い切り傷がありヌメっとした。


[今のヨガの体に傷を付けれるのですか、驚きです。

 室内に何かいます、転写します]


 真っ暗に戻った室内に、梟のような大きな鳥がいる。

 大きさは俺の倍あり、人のような足がある。

 それが音も無く飛んでいるのだ。


 翼の先が鋭い。

 すれ違いざまに俺を切りつけたのか。

 速いがそんなに高速ではない、居場所がわかっていれば問題はない。


「もう1体」


 とピノが言った瞬間、体が崩れ落ちる。

 気持ちが悪い。


 そこに梟モドキが飛び込んでくる。

 転がって避けるが、変だ立ち上がれない。


 もう1体はコウモリのような姿をしたやつが、2つの顔を持っている。

 その口から何か出ているようだ。


 ピノがレーザーを放つが、避けられた。

 彼女にも影響が出ているのだろう。


 ただこいつが回避行動をした時に、変な攻撃は止まるようだ。

 ピノが連続に撃ち、蝙蝠モドキが攻撃出来ないようにしてくれた。


 そのスキを見て天井に飛び上がり、梟モドキとすれ違いざまに切り合う。

 剣が弾かれた、見た目以上に硬い。

 さっきの蜘蛛以上だ。


 天井を蹴り、今度は蝙蝠モドキに向かう。

 距離がある。

 剣を伸ばし、蝙蝠の翼を切り裂いた。

 こいつは柔くて助かった。


 翼を切られて動きが止まった蝙蝠に、ピノの数十のレーザーが当たる。


「次!」

 蝙蝠モドキを倒したので、室内を飛ぶ梟モドキに目標を変えた。


 ピノの攻撃は当たっている。

 が、当たれば光るが、効いているように見えない。


 梟モドキが目の前で、止まったと思ったら、何か飛ばしてきた。

 痛みが走る。

 羽だ、あの硬い羽が体に数本突き刺さっている。


「これはまずいですね」


 羽を突き刺したままのピノが言う。


 有効な決め手がない。

 このままでは、梟の攻撃に削られてしまう。


 カーン

 近づく梟モドキの攻撃は剣でかわせる。

 守れるようにピノに近づくと、羽で2人同時に攻撃される。


(ソニックブレード一度止めてくれ)


 剣に集中し気合を入れて、飛び込んでくる梟に斬りかかる。

 羽先が切れた。


[何したんです]


(剣聖の真似。

 マナで剣の刃を補強した)


 飛び去る梟に追いつき、その羽根の根本を切断する。

 勢いがあまり、一緒に壁に叩きつけられた。

 先に梟が次の行動を取ろうとしたが、ピノのレーザーの追撃が当たる。

 狙いは切り口から徐々に全身に広がってゆく。

 小さな爆発と共に、梟モドキの動きが止まる。


 風が使えるリーシェさんがいたほうが楽だったかな。

 いや、この攻撃はリーシェさんにはきつい、大怪我だったな。

 連れてこないのが正しかった。


 部屋に明かりがついた。

 まだ視界は戻っていないが、目を開けて階段を見た。


 そこには、手を叩くサビツオーニ伯爵がいた。


「素晴らしい。

 奴らを倒してしまうとは。

 我らを救いに来てくれたのだろう」


 父上、その拍手は芝居じみている。

 感動がまるでない。


「上に王や大臣の方々がお待ちです。

 一緒においで下さい」


 と言って、初めて目的の人がいないのに気づいた。


「リーシェ殿下は」


「後からきます」


 ここからしばらくは、彼女が主役だ。

 十分に打ち合わせはしてある、まずは王の所に行かなくては。


「おまたせ」


 少し遅れてタビさんが、続いてリーシェさん達が来て、しんがりはケイトさん。


「ピノさん大丈夫?」


 ピノは目と耳から血が出ている。

 キューさんが心配した。


「大丈夫だけど、しばらくは目を保護しないと」


 と何かを出した。

 何もないツルンとした仮面だ。

 それをかぶる。


「見えるのか、それ」


 目の部分も開いていない。


「私専用の仮面。

 今まで以上に見えてるから大丈夫、心配しないで」


 彼女達の技術で作られたもののようだ。



「サビツオーニ伯爵、ご無事でしたか」


 セバム子爵は、父を見つけると駆け寄った。


「王は、王はどうなっています」


「慌てるなセバム、見苦しい。

 お前はフルーフの貴族なのだぞ、みっともない」


 彼にとっては、王を心配する忠臣より、品位ある行動のほうが大事なようだ。


「申し訳ありません。

 それで王は」


「王はご無事だ。

 下賤な奴らに、どうにか出来ようか。

 囚われてはいるが、奴らも王には何も手出し出来ぬ」


 閉じ込められているだけで、十分なような気がするが、そこは言わないでおこう。


 しかし、父はこんなにも小さい男だったか。

 俺が子供の頃は、敬意と恐ろしさで近づきたく無かった人だ。

 今見ると矮小な男に見える。

 人の本質とか気質と言うものが今まで見ていた者たちに比べ、見劣りする。


「リーシェ王女こちらへ、会っていただきたい者がおります」


 と伯爵はチラリと俺を見た。


「案内を頼む」


 リーシェさん何を考えてるのかわからないよう、感情を殺して声で伯爵に案内をたのんだ。


「はっ」


 伯爵はリーシェさんをエスコートし階段を上がる。

 まるで他に人はいないようだ。


 案内されたのは、謁見の間。

 いきなり王に会えるのは好都合だ。


 よほどの自信が有るのか、バカなのか。

 黒幕の自己評価が高すぎるのは知っている、後者だろう。

 だが一応の警戒はする。


(王は本物)


[本物ですね。

 前調べた時と同じで、寄生されてません。

 そして前に並ぶ8人の大臣は、寄生されているのも変わっていません]


 玉座に王が座り、前に8人の大臣が並ぶ。

 そして謁見の間には、鎧で完全装備の兵が並ぶ。

 その中身は寄生された死体たちだ。


 驚いたのは父が俺達の前、宰相の場所に立っていた事だ。

 本来その場所には、侯爵が立つはずだ。

 当の侯爵はもう何も思ってはいないようだが。


「王の前である」と伯爵。


 頭を下げろと言うのか。

 本来こんな事をしている場合ではないのだが。


 しかし戦いに来たわけではない、素直に膝をおり頭を下げた。

 こんな事で時間を取りたくはない。


 玉座から

「リーシェ殿、気楽にして下さい」


 やはり、リーシェさんだけに頭を上げるのを許す。


「王宮より、奴らを排除してた。

 我らは開放された、礼を言う」


 棒読みだな、台本が有るのが判ってしまう。


「今後は各国にも同じような事が起きるかも知れぬ。

 恥ではあるが、経験者としてこのフルーフ王、人々の役にたちたいと思う。


 また国々が今まで以上に関係を密につべきだ。

 フルーフとしては、まずアルテミラル王国との関係を深くすべきと考えている。

 リーシェ王女には、会っていただきたい者がおります」


 始まったか。


「奴らに囚われた我らを励まし、不当な要求を退けた、絶えず我らを守ってくれていた。

 今こうして我らが有るのは彼のおかげだ。

 この騒ぎが収まったならば、彼に第一級の報奨を与えるつもりだ」


 散々、持ち上げた所で


「彼は我が国の貴族、王女との身分差もない。

 両国にとって何が大事か、お考え下さい」


 俺との婚約は公開されている、それを無視して話を勧めているのだ。

 一介の冒険者など、どうにでもなると思っている。


 伯爵の後ろから、1人の男がリーシェさんに近づく。

 その前に立つと


「久しぶりだね、リーシェ」

 アトロフが手を伸ばす。

 そう俺だ。


「驚いて、声も出ないのは仕方のないことです。

 リーシェ王女を助けて、我が息子アトロフは死んだと思われた。


 実際わが家に運ばれた時には、死んだと変わらぬ状態でした。

 ですが秘術により蘇生し、死を逃れたのです」


 本当に父は芝居が下手だ。

 全てが嘘に思えてしまう。


 実際に全て嘘なのだが。

 俺の死体にビッシュ・クラエテルを寄生させ、魔王軍の力を使い肉体を生きているように動かしているに過ぎない。

 心臓も動いてはいないが、死体には見えないのだ。


 ミツルは表には出ず、影からこの国を操っている。

 もし今回の計画が失敗しても、次の機会を残しているつもりだろう。


「どうしたんだい、リーシェ。

 まさか僕を忘れた訳ではないよね」


 とリーシェさんの手を取ろうとした。


「その声で私を呼ぶな」


 とリーシェさんが限界を超えてしまった。

 強風でアトロフを壁に打ち付けた。


 壁にめり込むほどだ。

 自分では無いのだが、痛そ〜。


 それに予定ではここは、我慢のはずだ。

 王に近づけるのを待って、反撃するはずだったのに。

 リーシェさんの表情は見えない。


「我が息子は、王女をすくため死の淵を覗いたのですぞ。

 その所業は何故なのですか。


 返答によっては、王女と言えど許しませんぞ」


 父は次期王女に他国の伯爵が許さないと言った所で、どうにもならない事を理解していない。


 リーシェさんの為犠牲になったと、情に訴え俺からアトロフへ載せ替えるのが奴の計画だ。

 ミツルらしく他者の気持ちを理解出来ていない、独りよがりな計画。

 これで完璧だと、自画自賛している姿が目に浮かぶ。


「リーシ..」

 壁に叩きつけられたアトロフが、もう一度リーシェさんを呼ぶのは許されなかった。

 業火に包まれた。

 炎が収まった後には炭も残らず、壁が赤々と燃えている。


「その声で私を呼ぶなと言ったはずだ。

 アトロフは死んだ」


「息子は生きていたのだ。

 それを、何故否定する」


 こうなった時の事は計画してなかったな。


「死者を使役出来るを、自分達だけだと思っていたか」

ピノが立ち上がり仮面をとった。

 いきなり立った冒険者に理解出来ていなかったが、その顔を見て古い記憶が呼び起こされたようだ。


「ピノ、何故お前がここにいる。

 死んだはずだ」


 使っていた者が故郷に帰り死んだなど、伯爵が知る必要もない事だ。

 覚えていると言うことは、それなりの理由がある。

 父はピノが死んだのではなく、殺されたと言う事実を知っているのだ。

 何かが切れた音がした気がする。

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