No.8 クリスマス
お腹いっぱいになって、ご満悦で車に乗り込む。
「クリスマスは?休みなのか?」
「へ?」
いきなりの問いに変な返事をしてしまった。
「俺、休みなんだけど」
わ、わ〜(泣)
「そ、その日はケーキと商品券がもらえるそうで全員出勤なんです」
日勤夜勤の違いはありますけどね。
「……なら、お前んちでクリスマスするか」
新垣さんは苦笑いする。
「なら何か作りますね」
「タコ!!なんもしなくていい。俺が休みだから俺に任せとけ」
「は、はい」
「そうなると、やっぱ迎えに行くか?」
「いやいや!!そんな日に来たら殺されます!!」
「あははは。こえーな」
車がアパートにつくと、新垣さんが顔を近づけてきた。
わ、わ〜(泣)
久々のキスは、甘くて濃厚でした。
「……んな顔すんなよ。帰したくなくなる」
て、そんなこと言われたら私こそ帰りたくなくなる。
「ちょ、ちょっと待っててください」
私は慌てて部屋に入ると机の引き出しからスペアキーを取り出した。
それを持って車に戻る。
「うちの鍵です。ク、クリスマスは、これで部屋に入っててください」
「お、おう…」
真っ赤になって手渡すと、なぜか新垣さんも赤くなる。
「ローストチキンとオードブル手作りしてやるよ」
「た、楽しみにしてます…」
一年生の春、新垣さんに恋してから こんな日がくるなんて夢のよう。
嬉しくて嬉しくて、小さな胸のシコリに気づかないふりをした。
「メリークリスマス!!」
工場長が笑顔でケーキと商品券を手渡してくれた。
「あ、ありがとうございます」
それを持ってロッカールームに行くと、気合いの入ったメイクの神谷さんがいた。
「お、お疲れ様です。デートですか?」
「合コン」
あ、はい。
「なに?クリスマスまでコンパなの?寂しいヤツどね」
妊婦の佳世さんがきた。
「智恵子のためよ。今夜こそ誰がイイ人見つけてやらんとね」
「そのわりにアンタの化粧が濃いのはなんでよ」
「それはそれ、これはこれよ」
二人のやり取りを傍観しながら少しホッとした。
並木さんも新しい出会いに前向きなんだな。
新垣さんと関係ないと思いつつも どこか不安だったから。
「お先、失礼します」
そう言って、ロッカールームを出た。
そして、いつものロータリーで青いスポーツカーを見つけて乗り込む。
「準備万端だぞ」
「わ〜い」
今夜は素直に楽しもう。
そう思って、新垣さんの肩に頭を乗せた。
部屋に入ると、クロスがひかれ、ナイフとフォークが並んだクリスマス使用のテーブルが目に飛び込んでくる。
「壁も飾ろうかと思ったが、なんか冷静になっちまって無理だった」
で、ですよね?(笑)
いい年した男が一人でクリスマスの飾りつけって……
「と、とりあえず食うぞ!!」
私の心の声に気づいたのか、苦笑いして椅子にエスコートしてくれた。
チーン
「お?ローストチキン出来たな」
オーブンから出されたチキンを真ん中に置いて、クリームシチュー、温野菜のサラダが並べられた。
「こんなもんだろ?」
「スゴいです」
「それ言いすぎ」
顔を見合わせて笑うと、シャンメリーで乾杯した。
「ケーキが選べまして、ガトーショコラにしました」
「お?それなら食えそうだわ」
「後で食べましょうね」
パリパリ皮のチキンを頬張りながら笑うと新垣さんが小さな箱をテーブルに置いた。
「クリスマスプレゼントだ」
あ……
「わ、私もあります」
「いいから、まずは開けろ」
おずおずと手に取り、包装紙を丁寧にはがして箱を開けると指輪が入っていた。
「婚約指輪だと思ってもらっていいぞ」
瞬間、胸いっぱいに暖かさが広がって涙が溢れた……




