No.7 疑惑
「ちょっと!!また間違ってんだけど」
怒鳴られて、ハッとした。
ここは工場で、今は仕事中だった。
「何ボケッとしてんのよ。ちゃんとやってくれないと後ろが困るって分かってるでしょ?」
夏世さんが冷たい一瞥を投げる。
「す、すいません」
ペコリと頭を下げて、ホッペをパンパンと叩く。
しっかりしろ!!
並木さんの彼が【新垣】だからって【新垣さん】とは限らないよ!!
むしろ聞き間違いで【新垣】でもないかもしれない。
そう何度も浮かんでくる気持ちを打ち消した。
「飛山さん、なんかあった?」
さすがに失敗が多すぎたのか班長の神谷さんが聞いてきた。
「…あ、あの」
「ん?」
心配そうに聞き返してくれる。
並木さんの彼の名前を教えてほしいと言えば、きっと答えてくれるだろう。
でも、なんで そんな事を知りたいのかと逆に聞かれそうだ。
「き、昨日の疲れが出たのかも、です。午後からは、ちゃんとします」
「……わかった。頑張ってね」
物言いたげではあったけど、神谷さんは私の言い訳を納得してくれた。
なんとか無事に仕事を終えて電車に乗ると、新垣さんからメールがきていた。
《駅前のロータリーで待ってる。メシでも食いに行こう》
20分前の受信記録。
「はぁぁ」
顔を合わせたくないと思っていたのに……。
でも、別人かもしれない。
そう気持ちを切り替えて〈もうすぐ着きます〉と返信した。
駅につくと、見慣れた青いスポーツカーが停まっていた。
私は小走りに駆け寄り助手席のドアを開けた。
「こんばんは〜」
「おかえり」
ちょこっとぶりに見る新垣さんは、やっぱり格好よくてドキドキした。
「何食う?」
「あ、ガッツリがいいです」
お腹すいてるんで(泣)
「おけ」
そして、静かに動き出した。
ピザやパスタのオーダーバイキングの店に入る。
一皿ずつオーダーして烏龍茶で乾杯した。
「今度の休み、会社まで迎えに行ってやろうか?」
「いやいや!!だ、大丈夫っす!!」
「…んだよ」
あ、拗ねた。
「あ、あのですね。お、女ばかりなので!!か、彼氏いない人ばかりなので!!」
て、なんのこっちゃ(泣)
「俺は心変わりなんかしね〜ぞ?って説得力ねぇな」
ぎゃー!!
落ち込んでいらっしゃる(泣)
「わ、私がヤキモチで死にそうになるから嫌なんです!!」
て、何言わす!?
「なら、ヤキモチ焼かないくらい愛してやらんとな」
ぎゃー!!
ピザくる前に お腹いっぱいな感じです(泣)
「ところで何の会社なんだ?」
「ん?言ってませんでした?食品の……」
て、いやいや。
「総菜屋さんです。デパートの!!」
「へ〜。そうなんだ」
つ、つい嘘をついてしまいました〜(泣)
「働きだしたら残り物とかもらえそうだな」
「で、ですね〜」
社割で買えるって言われましたよ〜
。
「デパートなのに寮があるんだな」
ぎゃー!!
「そ、そうですね。め、珍しいですよね」
ヤバイ!!疑われてる?
そう思ってチラリと盗み見たが、何事もなくピザを頬張っていた。
ほっ。
「さっき、合鍵を返してもらった」
「え?」
「なかなか返してくれなかったけど、やっぱケジメは大事だからな」
「は、はい」
どうやっても並木さんの顔が浮かんでしまって烏龍茶を飲み干す。
「これを期にさ、引っ越そうと思ってるんだ」
「え?そうなんですか?」
て、一度も行ったことないですけどね。
「引っ越したら泊りに来いよ」
「あ、はい…」
ドキンと胸が高鳴る。
「ほんとは一緒に住みたいけどな」
ひゃ〜!!
「いつか、ちゃんとしたら一緒に住もう」
「はい」




