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【源頼光】生きる嵐

*人物紹介、用語説明は後書きを参照

*サブタイトルの【 】内の人物視点で書かれています

 腰の裏側に交差するように差してた2本の片手斧――ひとつは緋緋色金ヒヒイロカネでできた緋色に輝く物、もうひとつは青生生魂アポイタカラでできた青く輝く物。それを両方の手にそれぞれ持って振り回す金熊童子の姿は、さながら生きる嵐と呼ぶにふさわしいものだった。


 私だってこれまで道満さまに虎熊、青竜、丘引とかいう化け蚯蚓と命がけの闘いをやってきた自信がある。その経験が狭い部屋に閉じ込められて、親父まんじゅうのことを倒すことだけを考えてたころよりも、私を強くしてくれた自覚もある。


 だけど――――


「格が……違う……ッ!!」


 ギリギリのところで躱したところで、巻き起こる風が体を刻んで血が辺りを紅く染めてく。おまけに体もぐるぐる翻弄されて、どっちが地面でどっちが空なのかすら分からない!


「この――――まずは1度立て直さないと……!!」


『どこへ行く? 逃げるのなら盗んだものを置いて行ってもらわんことにはなあ?』


「だから何言ってんのか分かんないわよ!! 日ノ本の言葉で話せ!」


『やれやれ、穏便に済む話をしてやってるのに悲しいなあ。それなら足ごと置いて行け』


 なりふり構ってなんていられない。とにかく距離を取ろうにも、動いた次の瞬間には囁き声が届く距離には迫ってる金熊童子。


 そう、今まで闘ってきた相手はその全員に言えることだけど、私よりも遅かった。虎熊みたいに手の捌きでは負ける相手はいたものの、どんな相手でも逃げの一手を打てば仕切り直しは出来た。


 それなのにこの片足しかないドラゴンは、私よりも速い……!!


 別に反撃を狙ってギリギリ避けてる訳でなく、全力で避けてようやくギリギリ避けられる、そんな状態。そのせいでなんとか致命傷は防げてるけど、先を考えればいずれ直撃を受けるのは火を見るよりも明らか……なら!!


「こんのおお!!」


『ほ』


 風に翻弄される体を無理に立て直そうとしないで、その流れに合わせて足裏を爆発させる!!


 速さを上乗せた蹴りが、嵐を押し退けて雷光のように鋭く金熊童子に向かい、グワーン!! と鈍い音が響いた。手応えは十分、反撃を予測してなかったのか、足裏の緋緋色金が金熊童子の顔面を捉えた衝撃が、足裏から頭まで駆け抜ける。


 そう、手応えは十分だった――十分過ぎるほどに。


 いつもならその衝撃で相手の頭が弾かれるところを、まるで大地に根差した大樹の様に微動だにしない金熊童子から伝わる衝撃はいつも以上。


 それなのに足の向こうに見える金熊童子の顔、その口角が嬉しそうに上がるのが見えた。


「危っぶな!!」


 頭が感じた危険な雰囲気、それが伝わるより先に体が反射的に翻ると、腕を掴もうと伸びてきた腕が空を切る。


 ほんのひとつ、斧を手から離す動作が無かったら掴まれてただろう、避けられたことに金熊童子は口惜しそうに舌を打った。


『盗人が、こうも粘られるとさすがにオレもイラついてくるぞ? いいから返せよ。ソイツはオレの物だと言っているだろう』


「あの親父ですら揺らぎはするってのに……!!」


 文句なしの会心の一撃で、今の私が混戦の中で繰り出せるものとしちゃ最強と言っていい感触だった。それを腕を差し込むでもなく、まともに食らってピンピンされたら打つ手がないんですけど!!?


 速さは私より上! 硬さは親父より上!! 手数の多さは虎熊より上!!!


 何もかもが私の知ってる最高よりも上回ってるってなに!? そりゃ虎熊も絶対に闘うなって言うわ!!


 傷だらけの全身から流れる血と同じくらい、大量に噴き出してる汗にいい加減限界が近いわ……。十分な時間も稼いだだろうし、かっこつけた手前まったく歯が立たなかったのは情けないけど、そろそろ本気で、隙を見て逃げることを考えないとダメかもしれないわね。


「ま、隙なんて、どこにあるって、話だけど、ね!!!!」


 再び大江山にだけ吹き荒れる冬の嵐に、時に抗い、時に身を委ねて、生命を少しずつ削られながら必死に耐える。


 せめて逃げる方向だけはしっかり把握しとかないと……京方面は追いつかれた時に他のみんなに危険が――――……。


「何で……?」


 思わず外に出た言葉。そりゃ誰だってそうなるでしょ。


 それなりに離れてるからって、まさか全力で走るみんなの姿が見えるなんて思わなかったし。


「もう、1時間くらいは、闘ってたつもりなんだけどなあ!!」


 疲れの具合を考えたらそのはずなのに、まだ数分しか経ってないことに心が折れそうになるわ―――


『シャアアアアアアア!!』


 !!


 当然その隙を見逃してくれるほど甘い相手じゃないわよね! これは避けられない……!!


 とにかく受け止めないことには……とっさに足裏を突き出すと、金熊童子の顔が驚愕のものに替わる。


『クソが!!』


 何か吐き捨ててピタリと動きを止めた金熊童子、これは好機!!


 受け止めようと向けた足を、そのまま伸ばして胸を蹴ると、その反動で冬でも葉を絶やさない低木の中に逃げ込むことが出来た。

【人物紹介】(*は今作内でのオリジナル人物)

【源頼光】――芦屋道満直属、摂津源氏の長。幼い頃の約束のため陸奥守を目指している。

【金熊童子】――大江山の客人。強欲のドラゴン。


【用語説明】(*は今作内での造語又は現実とは違うもの)

*【緋緋色金】――西洋のオリハルコンと似た性質を持つ緋色の希少金属。硬い・軽い・熱に強いと武器や防具に最高の素材だが、それ故に加工が難しい。

*【青生生魂アポイタカラ】――緋緋色金の色違い。綺麗な青色をしている。



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