第79話 助言と覚醒と✿『Hi-5』
「おっはよー! 合宿どうだった?」
エヴァが、何時ものひまわりのような笑顔で武器屋に入ってくる。
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3人は朝の挨拶 ”Hi-5” で掌と掌をパシンと合わせ、フリージアは弟達への伝言のお礼と、刀への手応えを伝える。
「で、そっちはどう?」
フリージアは、ひとり武器屋に残ったことを気にして昨日の成果を聞く。
「んとねー、えへへ……。」
マーガレットと顔を見合わせて笑うエヴァ。
「実は死に落ちが3体も出ましたの! 多分、今日か明日で終わりますわよ!」
「おおー美味しい!! グッジョブ!!!」
そんな感じで、何時もの「きゃっきゃ」をしている3人の奥で、メイヤーが腫れ物を見るかのような目をする。
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「よお! メイヤー。フリージアの嬢ちゃんの剣を作ってるんだってな!」
エヴァ達が扉の方を見ると、緊張気味のリンデンと、テカテカニコニコのザコイチが、手を挙げて店に入ってくるところであった。
「フン。そういうお前は頭に『お花』を咲かせてるねぇ?」
「あははは。分かる? 分かっちゃう?」
温度差のあるメイヤーとザコイチの挨拶を見ながらエヴァが空気を読まずに言う。
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「おはよーザコイチさん。あー、カイト姐さんのお客さんの顔してる。ダメだよ!? ちゃんと切り替えないとー。もうカイト姐さん、《《みんな》》腑抜けにしちゃうんだからー。」
そのエヴァの言葉に爆笑するメイヤー。
「ははは~言うねぇエヴァ! おい腑抜け! ちゃんと素材を集めてこいよ~~!」
「う……うるせぇ! 分かってるよぉ。それよりも、リンデン。」
「あ、はい。」
リンデンが、昨日の成果品をメイヤーに渡す。
「へぇ、結構集めたね。鉄鉱石の必要数としてはもうちょいってとこだな。」
「骨シリーズの『骨』も欲しいんだろ?」
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「ああ。骨は『刀』の実践テストも踏まえて彼女に任せてやってくれ。お前等はその間に鉄鉱石を掘って貰う感じだ。」
「OK、なら早速行くか。フリージアの嬢ちゃん行けるか?」
「余裕。エヴァとマーガレット、今日も別でごめん。行ってくる。」
「大丈夫だよ! 私達も行こう、マーガレット。」
「はいですわ。」
一行は、早速各々の狩場に向かう。
道中、フリージアはリンデンのパーティーに入り、『マザーの子』に着いて早々、第7階層に飛んで行き、それを見送ったエヴァ達も、第9階層への移動を『マザーの子』に願う。
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第7階層の鉄鉱石採取ポイント―――。
需要の高い鉄鉱石が多く採れるこの場所は、多くの迷宮探索家が集まる人気スポットのひとつである。
だが、その周りにはスケルトン系のモンスターが多く生息するため、採取をする者と、護衛をする者とを役割分けをすることが多い。
「ふたりはスケルトン達を頼む。鉄鉱石の俺が。必要数は多分そこまでじゃねぇ。」
リンデンが提案をする。
「ん? ひとりでいい。」
「まぁ、そう言うな。意外とこいつも成長してるんだぜ?」
そう言うとザコイチはリンデンの肩を叩き、そっと耳打ちをする。
(気が付いたことを、遠慮なく教えてやんな。)
(え?)
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(お前はあの子の前だと、緊張しすぎるのが良くねぇ。何時ものお前を見せれば、ちっとは『認められる』はずだぜ?)
ボソボソ言ってる男ふたり。そして、最後にザコイチがリンデンにウインクをしたのを見ると、背中に冷たいものが走るフリージア。
「来たぜ? 任せたからな。」
そんな冷やかなフリージアの目線を無視して鉄鉱石を掘り出すザコイチ。
振り向くと、少し離れた草むらにスケルトンジェネラルとスケルトンナイトがこちらを伺っている。
「あれと戦ってくる。その間に他のが来たら任せた。」
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漆黒の鞘からメイヤーの刀を抜き、歩き出すフリージアの足取りを見て、リンデンは彼女の変化―――成長の兆しを感じ取る。
(浮かれている場合ではありませんね。頑張っているチームの仲間の動き、しっかりと見させていただきます。)
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今回は「慣らし」である。
それを分かっているフリージアは、大剣を振り回すスケルトンジェネラルと片手剣と盾で戦うスケルトンナイトを正面で受け応戦する型を取っている。
大剣を刀で受け、いなしてみる。
―――問題なく受けれている。
反対からのナイトの剣をそのまま受け止めてみる。
―――逆刃で受けそうになる自分がいてその分の動作ロスが煩わしい。
そこから、敢えて盾への反撃だ。
―――こちらも逆手をねじって攻撃をするため、頭と動作がちぐはぐだ。
「ん……。」
思ったよりも立ち回って見ると扱いにくく「苦戦」している感が否めない。
「ふむ。」
その時、リンデンが何かを察したようにぼそりと言う。
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「フリージアさん。その『刀』のイメージを『片刃のダガー』に置き換えてみてください。それも『両手』で装備している感じで。」
「はぁ? 何、生意気なことを言ってる。」
イラっとするフリージアに、何時もなら怖気づくリンデンであったが、やるべきことを見つけているリンデンはブレない。
「どうも、その『刀』という武器の攻撃面のイメージに固執している気がします。」
「うっ……。」
「その武器『刀』は、両手武器に近いのではないでしょうか?」
「そう……これは両手が主の武器で合っている。」
「ご存じでしたか。だとしたら、尚更です。片手剣のイメージと『刀』のイメージが混在されていますよね? 両手でしっかり持ち、刃を前に向け戦う。片手で扱うのはその後でも良いのではないでしょうか。」
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不思議とそのリンデンの言葉が、フリージアには腑に落ちる。
「……わかった。」
両手でしっかりと持ち『刀』の正面性を心がけ、実践をしてみる。
動作のロスが小さくなり、頭と動作が繋がっていく。
―――クソッ、恰幅の癖に生意気。でも……。
受け続けている骨の剣は、時間を経つに連れて増えて行く。
2匹が3匹……4匹……と増えるスケルトンの剣を受ける。受ける。受ける!
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段々と、『刀』が自分の手足に近い感覚に覚醒していく。
そして―――。
一度バックステップを踏み、下段に『刀』を降ろし、刃を返して構えるフリージア。吸う息はひとつ。
―――乱れ逆袈裟切り・旋風
刹那―――最後は6匹まで増えたスケルトン達が一瞬で泡と化す。
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フリージアは振り向くと、スケルトンアーチャーをダガーでしっかりと倒して自分を援護してくれていたリンデン。
その立ち振る舞いにフリージアは、背中を預けれると思う。
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そして、自然と浮かんだその笑みは、エヴァ達に向けるそれと同じとなり、ニカッと白い歯を見せながら、リンデンと ”Hi-5” を交わすのであった。




