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『花』魔法✿のぷち勇者と世界樹☘の迷宮  作者: 左手でクレープ
第6章  ✿刀とランカー✿
76/132

第76話 剣士と刀匠と『幻の素材』

早朝―――。

 何時ものように剣を研ぎ、手入れをしているフリージアを見て、アリアが笑いながら声を掛ける。


「フリージアちゃん、おっはよー。あらぁ? 今日は、丁寧に研いでいるわねっ!」

「うざっ! 御師様、昨日の話聞いたな!」


「えぇえ~? 何のことかぁなぁ~?」

「えぇい! 本当に……うざい。」


 フリージアが跪坐きざの姿勢から、素振り用の木刀でアリアに切りかかる。


―――最低限の見切り。

 数センチ……いや、数ミリで木刀を躱し、アリアはフリージアの手首を掴む。


― ☘

「んー。手入れも大事だけれど、自分の剣を持たないと成長がなさそうね。」

「どんな剣でも、どんな物でも切る。……が理想。」


「あらぁ? 無知なお馬鹿が言うセリフよねぇ。そんなの無理じゃん。」

「御師様でも?」


「当たり前じゃない? 私だって、道場ここなまくらで、『ちびレム』の魔核を真っ二つになんて……。」

「出来ない?」


「10回に1回は剣先を折るかな!(どやぁ~♪)」


「ぐぬぬぬ! でも、……そうなんだ。」

 アリアなら10回に9回は切れる。だけれど、1回は剣先を折ってしまう。


 この師匠でも、あの魔核では剣を折る―――。

 フリージアにとって、その事実が自信となる。


― ☘

「だから、剣は大切よ? あなたの感性で、しっかり馴染む物を選びなさい。」

 フリージアの手首を掴んでいた手を、彼女の頭に乗せてアリアが言う。



 ✿ ❀ ✿ ❀ ✿


 フリージアは、メイヤーの店にある武器達を手に持ちながら、今朝言われたアリアの言葉を思い出していた―――。


(……私の感性で手に馴染む剣か。)


 順々に店にある剣をフリージアは手に持つ。

 黒い短刀、赤い曲剣、白く輝く直剣……。


(違う! どれも手に合わない。

 これなら……まだ、道場の剣の方が好きだ。)


(こんな剣なら……いらない。

 私の命を剣に託せないし、託そうと思えない。)


「ん? これは……。」


― ☘

 目に入った片刃の剣……異国のものだろうか。

 フリージアは、恐る恐る……それを手に持つ。


「え? 何これ……。」


― ☘

 手に走る衝撃―――、脳に映る情景―――。

 武器に残された思念? いや、刀匠の思いが伝わってくる。


「……そっか。」

 ポツリとフリージアは呟き、その片刃の剣を持ち奥の工房に消えていく。


 ✿


「よう! 武器は決まったかい?」


 お店より二回り程大きな工房に入ると、メイヤーが試し切り用の案山子を用意して待っていた。


「これにした。片刃の剣。」

 フリージアが持つその剣を見て、メイヤーがごくりと唾を飲む。


「聞いていいか? 何故その剣にしたんだ? 使い慣れていないだろうに。」


― ☘

「手にはどれも馴染まなかった。でも、これは手に持った瞬間に、剣を作った人の気持ちを感じたから。」


 真っ直ぐにメイヤーの顔を見つめるフリージア。


「……打ち手の?」


― ☘

「そう、あなたの!!!」


 !?


「これを俺が打ったって分かったのか?」

「何だろう? あなたの憧れみたいな?」

 その言葉を聞き、メイヤーはフッと鼻を鳴らす。


「ハハハ! いいねぇ。それは『刀』と言ってな。海の向こうの国の剣で、俺の憧れの剣なんだ。まぁそれを模造したものだけどな。」


「その気持ちと想い、そして毎日の鍛錬が凄く伝わってきた。私も毎日道場の剣を研いでいるから、感動すら覚えた。まぁ、手には馴染まないから『要らない』けど。」


「ぶはぁ! 嬉しいことを言ってくれるね。最後の一言は『余計』だけど!」


 口と口だけでなく、眼と眼でも会話をしているような、ふたりの強い眼差し。



「……ふふふふふ。」

「……ぐふふふふ。」


 そして、急にふたりは笑い出す。

 フリージアが無言で手を出し、メイヤーを手を取りまじまじと観察する。


「なぁ? やっぱり『握り』か?」

「それもある。あと重心。やっぱり片刃は慣れない。」


「重心か、確かにお前には長すぎるし、この湾曲が余計に……か。」

「使ってみたいと思わせるものはある。だけど、私の背が伸びないと無理。」


「ブツブツブツ……」

「ブツブツブツ……」


 ◇


「ほぇ~?」

 急に笑い出し、真剣にお互いディスカッションを始めたフリージアとメイヤーを見て、エヴァが「何が始まったの?」とリンデンとマーガレットを見る。


― ☘

「恐らくですけれど、交渉が成立したのですわね。」

「その様ですね。認め合った感じでしょうか?」


「ふぇ、そうなんだね!? 急にふたりの世界に入ったからびっくりしちゃった。」

「あはは……そうですよね。でもこれ、僕の経験上ですが長くなりますよ?」


「あー、ふたりとも ”目が逝っちゃってる” もんねー。私の装備選んでくれた時のお姐さん達と同じ目してるもん!」


「まぁ!? その装備はルイゼさん達からなのですか?」

「えっ!? どうりで。」

「そうだよー。剣とタリスマンは全員からの贈り物! 鎧はフローラ姐さんから借りていて……靴は……」


 武器屋の工房の中だからなのか、フリージアとメイヤーが「ブツブツ」「フフフ」と言っている間、残されたエヴァ達もお互いの装備についての会話が尽きない。



 ✿


「ふふふふふ……。」

「ぐふふふふ……。」


「そう。それが理想。」

「かぁー! 我儘な女だねぇ!」


「出来ないとは言わせない。」

「高くつくよー!」


「お金じゃ……ない。それも含めあなたに託すだけ。」

「おう! んで、『他の素材』は持っていないのかい?」


 メイヤーからのその質問に「ん~」とフリージアは考え、エヴァ達に聞く。


「ねぇ、残してある素材って何かあったっけ?」


― ☘

 残してある素材……ん~? と、考えるエヴァ達であったが、「あ!」と思い出したようにエヴァが『もも』からひとつの輝く素材を取り出す。


「はぁああああ? 何でそんなもん持ってやがるんだぁ?」

 メイヤーが目を丸くして興奮しながら言う。


「ふぇ? モンスターから落ちたからだよ?」

 エヴァが悪気なく答えるのだが……メイヤーのテンションは下がらない。


― ☘

「ば…ばばば……馬鹿野郎! それは『超希少種』モンスター「クイーンラミア」のレアアイテム、《《幻》》の『黄金ラミアの鱗』だぞおおおおお!!!」



――――ふぇええええええええええ!?


 そのメイヤーの叫び声に驚いた3人娘は呆けた大きな声を発し、リンデンは「ハァ……やっぱり普通じゃない。この人達」と、深く重い溜息を付くのであった。


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