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第70話 フリージアの『焦燥』

―――剣先を折ってしまった。


 朝、早起きをして毎日手入れしている数本の剣である。

 剣の状態は、自分の考える最善であったはずで、低層程度なら二束三文の剣と言われていても、自分の誠心誠意のケアと剣の腕で何とでもなると信じていただけに、悔しさが拭い去れないフリージア。

― ☘

 だから、その悔しさが尾を引いていたのであろうか。


 ✿ ✿ ✿


 第9階層最大の「ラミアの巣」。

 低層最大の巣である場所の前に立ち、立入る前の準備をするエヴァ達。


 エヴァは、『花』ルーンのお守り(タリスマン)を握りしめ、『花』魔法 ガジュマルの花を唱える。


 隠頭花序の隠れ花の如く、示す者の活力を内より活性せよッ―――

―― ✿『花』魔法 ガジュマルの花


 タリスマンを握るエヴァの左手から、螺旋状に回る「緑」と「オレンジ」の光が放出され、一度地面に消え、彼女達の足元からその光が現れ、全身を回るように包み込む。

 

「最大と言われていますから、準備だけはしっかりとですわね。」

「魔法おっけー! 回復薬おっけー、毒消しおっけー、剣おっけー!」

「オールOKだよ。」


―――行くよ!

 と、エヴァの号令で「ラミアの巣」に突撃するエヴァ達。

 ラミアからしてみれば、突然目の前に現れた猪突猛進な人間達である。



”しゃああああ――”

 突撃と同時に仲間の数匹が泡と化し、驚き戸惑うラミア達であるが、直ぐに統率されたように突如突っ込んできた敵に向けて攻撃態勢を取る。


「うわぁ……ひい、ふう、みー、いっぱい!」

「あ、うん……そだね。」

「でも、この数は多いですわね。…………50は居ますわよ?」


「でも、ラミアだし、慣れた敵。 『もも』サポートお願い。」

「だね、油断はしない。でも、これくらい。」



「では、前は任せましたわよ―――『クインテットアロー』!」

 マーガレット放つ先手の矢、美しい放物線が描かれ着矢に合わせ5つに分かれる。


 それに合わせて走り出すエヴァとマーガレット。


『影縫い!』

 出し惜しみはせずに、『影縫い』でラミアの後ろを取り切り付けるエヴァ。


『―――乱れ逆さ袈裟切り』

 小さな体を生かし、下段の構えから乱れるように切り上げていくフリージア。


 最初の突撃から合わせて10は数を減らしただろうか。


 そこからは、乱戦の体となるが、『花』魔法ガジュマルの花で活性化している彼女達は疲れを知らない。毒を受けても自然回復してしまうその魔法は、ラミアにしてみれば、本当にはた迷惑な魔法である。


― ☘

 だが、そんな万能魔法も無限ではなく、流石に50の数を相手にする時間までは、効果が残らない。


 ◇


 残りは15匹程となったであろうか。


 なかなか、辿り着けないのが現状ではあるが、残りのラミアの後ろに隠れている小柄のラミアがいることを3人は感づいている。

― ☘

 小さいといえど、漂わす気配は他のラミアとは違い鋭く、恐らくは突撃時から感じている他の巣では感じられなかった「統率」はこれのせいであろう。


「あれが、マザーラミアかな?」

「見たいですわね。第9階層の巣に居る確率の高いラミアの亜種。」

「聞き込みの成果。」


「じゃ、ガジュマルするからフリージアお願い。」

 エヴァが、魔法を唱えようとすると


「いらない。これくらいなら、いい鍛錬。」

 と、フリージアが15匹に突っ込んでいく―――。


「ちょ、まってフリージ……もう!」

 エヴァは、お守り(タリスマン)を仕舞い、ランドブルの片手剣を握りなおす。


― ☘

 しかしながら、マザーラミアの狡猾さがここで出る。

 マザーラミアを守るように、矢印の様に5匹、4匹、3匹、2匹、1匹と陣を組んでフリージアを迎え撃つ。


「なっ、しゃらくさい!」


 1匹目のラミアの喉元に剣を突き、抜き去ると同時に後ろの2匹に剣を回して切りかかる。

 

 流石の剣技―――。

 確実に最初の3匹を倒している。


―――が!!!


”しゃああああ――”


― ☘

 守られている存在。

 そんなマザーラミアが、ラミアの盾の合間を縫っての挟撃を仕掛ける!!!


 普段なら、勘の良いフリージアである。

 そうでなくても、そちらへの警戒を怠らないはずであった。


「ぐはぁッッ!」

 マザーラミアの牙が、フリージアの彼女の左肩に突き刺さる。


「フリージアさん!!」

 マーガレットが、腰に忍ばせる杖『黄色水晶シトリンの杖』を咄嗟に抜き、詠唱を始める。


「らしくないよっ! 影縫い!」

 エヴァがマザーラミアの影を辿り、後ろから切り付け仕留める。


 泡と化すマザーラミアの傍らに、膝を付くフリージアは、毒の影響を受け顔の色が青くなっているが、残ったラミアの1匹を突き倒し苦い顔をして構えなおす。



『癒しの聖月光―――。』

 マーガレットの杖から放たれる聖魔法の光で、傷が回復するフリージア。


 傷が回復し、彼女は毒消しをグビッと飲み毒を抜く。

 そして、残りの統率が取れなくなったラミアに刃を向け切り掛かる―――。



 ✿ ✿ ✿

― ☘

―――ごめん。

 全てのラミアを倒し、その恵みを拾う中、フリージアがポツリと言う。


「剣の刃を折ったことを引きずりましたわね。」


「うーん。私のメモによると、何時ものフリージアなら、あそこは拳か剣の柄で殴ってたかな? でも、それだけ『剣を大切にしている』から気負ったんだよね。」


 エヴァが、小さな身体をより小さくして座り、ラミアの鱗を拾うフリージアの頭を撫でて顔を覗き込む。


「エヴァ……。」

 その、エヴァの大きな瞳に映る自分の瞳に、更に映るエヴァの瞳……。

 その瞳の光に気持ちが癒されて溶けていく感覚……。そして、ゆっくりと魅了されていくフリージア。

 

 ”パンッ!” 背中を叩き「ね!」と、白い歯を見せニカッとするエヴァに魅了を解かれ、我に戻ったフリージアは、自分の頬っぺたを両手で叩く。


「もう大丈夫。明日、武器を買いに行く。ふたりとも着いてきて!」


「うん!」

「うふふ、いいですわよ。でもぉ~? それならリンデンも一緒の方がぁ~。」

 マーガレットのちょっとだけ悪意のある提案。


― ☘

「そうだね! チーム『大空グラン・シエル』全員の初任務にしよ!」

「お金も出来ましたしね。」


「みんな……ありがとう!」

 ニシシーと笑い3人の娘は、手をぐーにして拳を合わせる。


― ☘

 その横で輝く『黄金ラミアの鱗』。

 マザーラミアに不覚を取ったフリージアの、一生忘れられない戒めとなるマザーラミアのレアドロップ。


 そしてそれは、近く生まれる『フリージアの新しい剣』への世界樹からの恵み。



 ✿ ✿ ✿

 

― ☘

 一方、その頃。

 勝手に明日の買い物に付き合うことが決まったリンデンは、ザコイチと共に『階層主』と呼ばれるボスモンスターと対峙して、その大きさに腰を抜かしていた。

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