第68話 尾行と再会と『お説教』
「へぇ~! そうなんだね! 第9階層は小さいゴーレムの『ちびレム』が……ふむふむ。」
少女の光る笑顔に集まる迷宮探索家達の笑顔の輪。
老若男女問わず集まり笑いながら、その少女にあーだーこーだ第9階層のことを教えている。中には、迷宮探索家とは何たるかを切々と語る奴までも現れる。
「えへへ……」と流石に困り顔になっている少女エヴァに、後ろから野太い声で声が掛かる。
「あれ!? 『エヴァ』じゃねぇか!」
野太い声の持ち主は、第1階層で俗にいう「テンプレ」と呼ばれる新人イジメをしていた男、その名もザコイチ。
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謀らずとも、その元テンプレのそのひと言が、唯一無二と言われる★スキル持ちであるエヴァと、それを観察する者キャッチ・フライとのセカンドコンタクトを再びすれ違わすことになる。
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「あ! ザコイチ先輩? ってことは?」
「おう。リンデンもいるぜ? おい。」
ザコイチの後ろに、申し訳なさそうに立つリンデンがエヴァに小さく挨拶をする。
「ご無沙汰しています。あ……あの、他の皆さんは?」
「むぅ。 久々なのに、なんか他人行儀だなぁ。」
そう言いムクれるエヴァの横から、小柄なフリージアが「とう! お前の目ん玉は相変わらず節穴か。」と、ピョンとジャンプをして彼の頭部にチョップする。
「フ……フリージアさん! ぁの、その……痛ぃですよぉ。ぇへへ。」
「何その喋り方……気持ち悪い。」
何処となく嬉しそうなリンデンに、ほぇ~? とした顔をしているエヴァ。
あらあら? とジト目になりながら、リンデンの肩をポンと叩き無言で挨拶を済ますマーガレット。
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彼等ふたりも加わって、その輪はより賑やかになっていく。
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「はぁ? お前等そんなクエスト受けてるのかよ!? と、いうかその1000本ノックを本気で受けてる奴初めて見たかも。」
「えー。カイト姐さん達も受けたってサーシャさん言ってたもん!」
「うぇ? カ……カイトの奴等も受けたことが……そうか。」
「うん。そう言ってた。」
「リンデンはお前達のチームのメンバーなんだろ? 俺は今こいつの修行を手伝ってるんだが。その何だ……手伝ってやろうか?」
”目指せ。カイトとの情事!” であるザコイチは、そのときの彼女との会話のために関わりたいのだが……。そこはエヴァ。空気を読まずに「え? いらないよ。」と即答する。
そ……そうか、と項垂れるザコイチにエヴァは言う。
「何かね。集めるのが楽しくなっちゃって! もうね、コレクション!」
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成功率が低くて今ではネタとも言われるクエストである。
それなのに、その殺人級とも言えるラミアの鱗1000枚の収集を『コレクション』と言い放つ彼女に、ザコイチは「らしいな」と思う。
「でも、大変だろ? 幾つ集まったんだ?」
興味本位で聞いたザコイチだったのだが、エヴァの顔が、ぱぁ~と明るくなったのを見て「しまった!」と思う。
「んとね。んとね! いひひ~。400枚超えたんだ! それでねそれでね……」
嬉しそうに、ここ数日の冒険譚とその成果を話すエヴァのスイッチはONになっていて、周りの迷宮探索家も参戦して話が盛り上がる。
ザコイチは、これは当分終わらねぇな……と頭を掻き横を見ると、小柄のフリージアが大きな壁に見えるほどの圧を掛けて、リンデンに謎の『お説教』の真っ只中。
(お前も……大変だな。)
と、リンデンの顔を見るザコイチであったが、リンデンの顔は嬉しそうで、自分も含めて「男って奴は御し難いな」と苦笑いをする。
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『あ~、そうなんすよ。あのテンプレ先輩が、何故か一緒にいるんすよ。そうそう……あの。え? 任せるって、ちょ……。』
あ……切れたっす。
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相方の『ポッピー』に連絡を入れ「任せた」と切られてしまったキャッチ・フライは、やっぱっり”ハズレ”じゃないっすか―――と、うな垂れる。
この後、エヴァ達はザコイチ達と別れて行動する可能性もあれば、一緒に行動する可能性もある。
この場合、別れて行動することを想定すれば、ツーマンセルで別行動のダブル尾行が定石でしょうに……と思いながらも、『ポッピー』がザコイチを苦手としているのも分かるから強くは言えない。
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「でもっすよ? これ職務怠慢じゃないっすかねぇー『情報屋』として。」
キャッチ・フライは、ブツブツと愚痴をいいながらも、少なくとも折角見つけたエヴァ達を観察しない選択肢はなく、ザコイチに気が付かれないよう、わちゃわちゃ楽しそうなエヴァを中心とした輪を眺める。
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「そろそろ、僕達は行きますね。それで……あの、これ。」
リンデンは、耳を赤くしてフリージアにメモを渡す。
「あらぁ? やりますわねリーダー! 逢引のお誘いですの? 恋文ですの?」
マーガレットはずっとニヤニヤが止まらずにリンデンを見ていたが、流石にメモを渡したその姿を見て『お節介』を焼く。
「ち……違いますよ! 今日の内に第10階層まで着くのですよね? なので、僕達の泊っている宿のメモですよ~。それに……リーダーって。」
「あら、やっぱり逢引のお誘いじゃないので?」
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「皆さん、『迷宮』街始めてでしょ! だから、明日ご案内します。じゃないと、何しでかすか分かりませんから! そういうことですよぉ。」
「ふ~ん。ですの。」
「もう……好きに言っていてください。」
そう言って肩を落とすリンデンに、ザコイチが苦笑いしながら肩を抱き、そのまま彼等は彼等のクエストの完遂をするために、セーフティーゾーンを出ていく。
◇
「それじゃ、私達も行こうか。まずは、『ちびレム』と戦ってみよう~!」
『おー!』
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輪にいた迷宮探索家達から教えてもらった『ちびレム』の出現区域に向かう3人娘。
動き出したな……と、
気の乗らない趣で遠くから追いかける『情報屋』キャッチ・フライ。
ザコイチの連れが渡していたメモが気がかりで、エヴァ達が彼等と再び落ち合う危険性を考慮するキャッチ・フライではあったが、『ポッピー』が逃げた今それを考えても仕方がない。
折角見つけた彼女達である。今回ばかりは見失う訳にはいかない。
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彼は、得意とするスキル『並列憑依』を早々に使い、近くにいた「草原ディア」の意思を奪い目を借りると、自分は一定の距離を保ちながら、慎重に注意深くエヴァ達の尾行を始めるのであった。




