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第68話 尾行と再会と『お説教』

「へぇ~! そうなんだね! 第9階層は小さいゴーレムの『ちびレム』が……ふむふむ。」


 少女の光る笑顔に集まる迷宮探索家フローター達の笑顔の輪。


 老若男女問わず集まり笑いながら、その少女にあーだーこーだ第9階層のことを教えている。中には、迷宮探索家フローターとは何たるかを切々と語る奴までも現れる。


 「えへへ……」と流石に困り顔になっている少女エヴァに、後ろから野太い声で声が掛かる。


「あれ!? 『エヴァ』じゃねぇか!」


 野太い声の持ち主は、第1階層で俗にいう「テンプレ」と呼ばれる新人イジメをしていた男、その名もザコイチ。


― ☘

 謀らずとも、その元テンプレのそのひと言が、唯一無二と言われる(スター)スキル持ちであるエヴァと、それを観察する者キャッチ・フライとのセカンドコンタクトを再びすれ違わすことになる。


 ◇


「あ! ザコイチ先輩? ってことは?」

「おう。リンデンもいるぜ? おい。」


 ザコイチの後ろに、申し訳なさそうに立つリンデンがエヴァに小さく挨拶をする。


「ご無沙汰しています。あ……あの、他の皆さんは?」


「むぅ。 久々なのに、なんか他人行儀だなぁ。」


 そう言いムクれるエヴァの横から、小柄なフリージアが「とう! お前の目ん玉は相変わらず節穴か。」と、ピョンとジャンプをして彼の頭部にチョップする。


「フ……フリージアさん! ぁの、その……痛ぃですよぉ。ぇへへ。」

「何その喋り方……気持ち悪い。」


 何処となく嬉しそうなリンデンに、ほぇ~? とした顔をしているエヴァ。

 あらあら? とジト目になりながら、リンデンの肩をポンと叩き無言で挨拶を済ますマーガレット。


― ☘

 彼等ふたりも加わって、その輪はより賑やかになっていく。


 ✿


「はぁ? お前等そんなクエスト受けてるのかよ!? と、いうかその1000本ノックを本気で受けてる奴初めて見たかも。」


「えー。カイト姐さん達も受けたってサーシャさん言ってたもん!」

「うぇ? カ……カイトの奴等も受けたことが……そうか。」


「うん。そう言ってた。」

「リンデンはお前達のチームのメンバーなんだろ? 俺は今こいつの修行を手伝ってるんだが。その何だ……手伝ってやろうか?」

 

 ”目指せ。カイトとの情事!” であるザコイチは、そのときの彼女との会話のために関わりたいのだが……。そこはエヴァ。空気を読まずに「え? いらないよ。」と即答する。


 そ……そうか、と項垂れるザコイチにエヴァは言う。


「何かね。集めるのが楽しくなっちゃって! もうね、コレクション!」


― ☘

 成功率が低くて今ではネタとも言われるクエストである。

 それなのに、その殺人級とも言えるラミアの鱗1000枚の収集を『コレクション』と言い放つ彼女に、ザコイチは「らしいな」と思う。


「でも、大変だろ? 幾つ集まったんだ?」

 興味本位で聞いたザコイチだったのだが、エヴァの顔が、ぱぁ~と明るくなったのを見て「しまった!」と思う。


「んとね。んとね! いひひ~。400枚超えたんだ! それでねそれでね……」


 嬉しそうに、ここ数日の冒険譚とその成果を話すエヴァのスイッチはONになっていて、周りの迷宮探索家フローターも参戦して話が盛り上がる。


 ザコイチは、これは当分終わらねぇな……と頭を掻き横を見ると、小柄のフリージアが大きな壁に見えるほどの圧を掛けて、リンデンに謎の『お説教』の真っ只中。


(お前も……大変だな。)

 と、リンデンの顔を見るザコイチであったが、リンデンの顔は嬉しそうで、自分も含めて「男って奴は御し難いな」と苦笑いをする。



 ✿ ✿ ✿


『あ~、そうなんすよ。あのテンプレ先輩が、何故か一緒にいるんすよ。そうそう……あの。え? 任せるって、ちょ……。』


 あ……切れたっす。


― ☘

 相方の『ポッピー』に連絡を入れ「任せた」と切られてしまったキャッチ・フライは、やっぱっり”ハズレ”じゃないっすか―――と、うな垂れる。


 この後、エヴァ達はザコイチ達と別れて行動する可能性もあれば、一緒に行動する可能性もある。

 この場合、別れて行動することを想定すれば、ツーマンセルで別行動のダブル尾行が定石でしょうに……と思いながらも、『ポッピー』がザコイチを苦手としているのも分かるから強くは言えない。


― ☘

「でもっすよ? これ職務怠慢じゃないっすかねぇー『情報屋』として。」


 キャッチ・フライは、ブツブツと愚痴をいいながらも、少なくとも折角見つけたエヴァ達を観察しない選択肢はなく、ザコイチに気が付かれないよう、わちゃわちゃ楽しそうなエヴァを中心とした輪を眺める。


 ◇


「そろそろ、僕達は行きますね。それで……あの、これ。」

 リンデンは、耳を赤くしてフリージアにメモを渡す。


「あらぁ? やりますわねリーダー! 逢引のお誘いですの? 恋文ですの?」

 マーガレットはずっとニヤニヤが止まらずにリンデンを見ていたが、流石にメモを渡したその姿を見て『お節介』を焼く。


「ち……違いますよ! 今日の内に第10階層まで着くのですよね? なので、僕達の泊っている宿のメモですよ~。それに……リーダーって。」


「あら、やっぱり逢引のお誘いじゃないので?」


― ☘

「皆さん、『迷宮』街始めてでしょ! だから、明日ご案内します。じゃないと、何しでかすか分かりませんから! そういうことですよぉ。」


「ふ~ん。ですの。」


「もう……好きに言っていてください。」


 そう言って肩を落とすリンデンに、ザコイチが苦笑いしながら肩を抱き、そのまま彼等は彼等のクエストの完遂をするために、セーフティーゾーンを出ていく。


 ◇


「それじゃ、私達も行こうか。まずは、『ちびレム』と戦ってみよう~!」

『おー!』


― ☘

 輪にいた迷宮探索家フローター達から教えてもらった『ちびレム』の出現区域に向かう3人娘。


 動き出したな……と、

 気の乗らない趣で遠くから追いかける『情報屋』キャッチ・フライ。


 ザコイチの連れが渡していたメモが気がかりで、エヴァ達が彼等と再び落ち合う危険性を考慮するキャッチ・フライではあったが、『ポッピー』が逃げた今それを考えても仕方がない。


 折角見つけた彼女達である。今回ばかりは見失う訳にはいかない。


― ☘

 彼は、得意とするスキル『並列憑依』を早々に使い、近くにいた「草原ディア」の意思を奪い目を借りると、自分は一定の距離を保ちながら、慎重に注意深くエヴァ達の尾行を始めるのであった。


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