第67話 何でいるんすか!?『ザコイチ』ぱいせん!
サーシャに誘われたカフェは、世界樹から少し離れた川沿いのオープンテラス。
風が気持ちの良いテラス席で、ラミアの巣での戦いを振り返りながら、自分達との親和性が高いクエストであったことを、改めてサーシャに報告をするエヴァ達。
楽しそうに話す彼女達の声を、アイスコーヒーの氷をストローで回し、カランという音も楽しみながら、嬉しそうに聞くサーシャ。
会話は終わることなく有意義な時間となり、辺りはオレンジ色の様子を呈する。
「はぁ~楽しかった! 付き合ってくれてありがとうね。陽もだいぶ落ちてきた来たことだし、そろそろ解体屋さんにだよね?」
何時までも話していそうで、解体品を受け取る時間も忘れていそうな彼女達を見て、もう少し話をしたいのだけれど……やるべきことを促すサーシャ。
「また明日―――」と、エヴァ達はサーシャに手を振り、今日の成果を確認しに『迷宮』ギルドの解体屋に足を向ける。
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「おう! 嬢ちゃん達、良いタイミングで来たな!」
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解体品を精算する机に、ラミア2体分から産出された解体品が置かれている。
それらを説明をするノディム。
「なかなか良い解体になったぞ? まずはお待ちかねの鱗だけどな、合計で『63枚』になった。」
『おー! おー!』
「えーと、今持っているのが33枚だから……えーと?」
「96枚ね。」
「そっかー えへへへ。」
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「それから、喜べ。『ラミアの真珠』持ちがいた。これだ!」
ノディムは、パール色に輝く5cm程度の真珠を取り出して、あご髭を擦りながら片目を瞑りニヤリとする。
「この大きさなら、5万エリスは下らねぇぜ? あとは……魔核2個だろ、蛇肉も新鮮なままで2つ、そして、爪が10個だ。爪は毒付与の武器や独耐性防具にと需要が多いぜ!」
黒い爪をちょいちょいと指を刺す。
「ん? その紫のは?」
「あぁ、これは毒袋だ。断っても構わないが、薬の精製や錬金でギルドが優先的に買い取っている物でな、髪の毛などの他の二束三文の部材と合わせて『解体費用と相殺』……って思っているんだが、どうだろう?」
「え!? 解体費用相殺でいいなら嬉しすぎるよね?」
「じゃ、それでいいな? 千本ノックだもんな……明日からの『死に落ち』もそれでいいか?」
「おっさん、完璧!」
「おっさんってなぁ……まぁいいわ。それじゃ明日からもよろしくな!」
今日の稼ぎは、かなりとなったしと今日は解散する「グラン・シエル」。
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「ラミアの蛇肉」はフリージアの兄弟へのお土産だ。
実は、『アリアウルフ』の好物でもあるようで、その嬉しそうなフリージアの顔が、今日の何よりのお宝だな、と思うエヴァであった。
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翌日からの彼女達は、順調良く階層を進んでいく。
兎にも角にも、初日の臨時と言える収入が10万エリスを超えたのが大きい。
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特に『ラミアの真珠』は宝石であり、買手市場であることが良い方向に動き、最低5万と言われた5cmの真珠が『7万』もの高値で買い取ってくれた人がいたのだ。
その真珠を買い取った男。名前を「イミテーション・アロー」という。
買取の経緯も含めて、彼が何者であるか、それはまた別のお話である。
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―――3日後
エヴァ達は、第9階層の『マザーの子』で、何時もの聞き込みをしていた。
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初めての階層に来たら、最低限の危険知識を仕入れてから進もう。奇しくもそれは、エヴァが、キャッチ・フライに助言を貰った時に思いついたルーティン。
それを取り入れてから、彼女たちは各階層でその危険知識を活かした体験を一度して、その階層の「ラミアの巣」を殲滅させ次の階層を目指す。
「ラミアの巣」では、何かに導かれているかのように、『強運』がラミアの『死に落ち』を引き当てる。そして、日課のように解体屋に向かう日々。
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毎日が同じ流れでとんとんとんと、1日1階層を踏破していったのである。
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一方、そのキャッチ・フライはというと……。
初日に彼女達を見失って以降、「まだ第7階層に居るんじゃないか?」とか「実は第9階層まで進んだのではないか?」とか。
出会えない苛立ちから疑心暗鬼になっており、深読みをしては空振りに終わる、そんな3日間でヘロヘロになっているのであるのだが……。それは、エヴァ達が知る由もないことで、関係のないこと。
今日も会えないなら、いっそのこと第10階層の『マザーの子』でずっと待って居ようそんな気持ちで第9階層のセーフティーゾーンに飛ぶ。
「はぁ……今日も空振りっすかねぇ……。行動パターンがもう全く読めないっすよ。」
ぶつぶつと呟きながら、『マザーの子』から少し離れた場所で重い腰を、ゆっくりと下ろすキャッチフライ。
(これは、朝一の待ち伏せは失敗っすかねぇ……。各階の『マザーの子』での張り込みもずっと失敗してるっすから、今朝第9階層に来る確率は低そうっすものね。)
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そんな、疑心暗鬼真っ只中の彼であったのだが、ふと見渡すと遠くのほうで、迷宮探索家数名に囲まれて、ワイワイガヤガヤとしている赤色がとっても眩しい女の子が見える。
「ありゃ~いよいよっすかね? エヴァちゃんの幻影が見えるっすよ……ははは。」
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いや、違う! あれは本物だ! 小さな剣士の女の子も、上品なあのキラキラ眩しい見立てのお嬢様もいる。キャッチ・フライは涙の溜まった眼を擦る。
「あぁーうー。やっと見つけたっすよ……。取り合えず、僕もあの輪に……。」
安堵による脱力感でふらふらっと立ち上がるキャッチ・フライ。
そして、千鳥足で近づきエヴァに声を掛けようとしたその瞬間―――。
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「あれ!? 『エヴァ』じゃねぇか!」
聞き覚えがある野太い声―――。
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(ふぇ? 嘘っすよね。何でいるんすか!? あんたは、流石にまずいっすよ。僕らのこと知ってますもんね!? ―――『ザコイチ』さん!!!!)
声を掛けようとした手を、頭の後ろに急いで移動させ、吹けない口笛を吹きながら、元の座っていた位置に戻るキャッチ・フライ。
相方の『ポッピー』に連絡を入れ、
「ツイているんだか、ツイていないんだか……。」
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遠目から、親しそうにエヴァの肩をパンパン叩くザコイチと、小さい剣士の子にお説教をされている『恰幅のいい』ザコイチの連れを眺めながら、キャッチ・フライは泣きそうな声でそう呟いた。
作者は、どの物語でも必ずやられ役のテンプレさんが好きなので、このお話のテンプレだった雑魚①ぱいせん押しで書いています(しろめ




