第66話 『待てど』暮らせど、来ない主人公
「ふぇええ~いっぱい倒したね! 『もも』よろしく~。」
エヴァは倒したラミアからのドロップ品を、導きの妖精『もも』に手渡し、収納をお願いする。
「『死に落ちの恵み』が2体はラッキー! 『スノウ』お願い。」
「それに「パールの鱗」も2枚ですわね♪ エヴァさん「さまさま」ですわね。」
「『死に落ちの恵み』が何枚の鱗になるかだよね!」
「うししー! お金♪ お金♪」
― ☘
この「ラミアの巣」でのドロップ品は次のとおり
・ラミアの鱗×28枚
・パールの鱗×2枚
・ラミアの死に落ち×2体
それに、道中で出会ったラミアとの戦闘で鱗を1枚手に入れている。
死に落ちを含めると、どの程度の鱗が手に入るのだろうか?
「じゃ、第7階層を目指そっか。」
「「賛成~~!!!」」
― ☘
討伐した戦利品を片付けたエヴァ達は、『キャッチ・フライ』が出発して20分くらい後に、雑談をしながら楽しそうに第7階層に繋がる『マザーの子』に向けて歩き出す。
✿ ✿ ✿
「ラミアの巣」から、第7階層に繋がる『マザーの子』までの道中、野良ラミアを4体、『おやぼん』2体、ゴブリンの一団を退治している。
多少はラミア以外を倒しておかないと、『ラミアの鱗1000枚』を手にするまでは、まとまった報酬がでないため、それらのドロップだけでも彼女達にはありがたい。
第7階層への『マザーの子』に到着して早々、『マザーの子』に手を当てて、エヴァ達は第7階層へ移動する。
✿
― ☘
一方その頃―――。
エヴァ達が到着した第7階層のセーフティーゾーンとは別のセーフティーゾーンで落ち合っていた『キャッチ・フライ』と『ポッピー』。
キャッチ・フライが第6階層で観察したエヴァ達の様子を共有し、幾つかある第7階層の「ラミアの巣」に手分けして先回りすることにする。
― ☘
今回の上からの指令は、飽くまでも『彼女達を見る』こと。
と、いうよりも、彼等は何故彼女達を観察するかさえ、聞かされていない。
― ☘
『花』魔法という ★ スキルを持った少女を見張れ、そしてその特徴や特性を報告しろ―――それだけであった。
◇
コイントスの結果、遠い場所の「ラミアの巣」に向かうことになったキャッチ・フライは、「やっぱりそうなるわなぁ……」と溜息をつきながら道中を走る。
― ☘
彼の相方の女性『ポッピー』。
彼女は、コイントスのような一種のギャンブル要素のあるものには滅法強い。
逆にキャッチ・フライは、そのコイントスでイカサマをするのが得意であっても、相方相手にそれをする訳にもいかず、「コイントスで決めよう―――」と言った彼女の提案こそが、「僕が絶対不利な『イカサマ』なのじゃないか?」と嘆いている―――そんなところであろうか。
だから、今『向かっている場所』も、これが賭けだと考えると、無駄足になるのだろうなと思っている。
それだけ、彼女の賭けでの勝率は高いものなのだから。
― ☘
きっと『普通』なら、そうなったのであろう―――。
配置に付く彼らは、軽く狩りをしながら、対象となる3人の少女達がたどり着くのをゆっくりと待つ。
✿ ✿ ✿
― ☘
第7階層のセーフティーゾーンで、黒パンと干し肉で軽い昼食を済ませる3人の顔は何処となく曇っている。
どうやら、珍しく次の階層に一目散で冒険に行きたい……という雰囲気ではない。
「次はどう致します? 第7階層まで来ましたけれど……やはり……。」
「気になるよねー! あれを解体したら~?」
「何枚の鱗になるのか!」
「「「ねっ!」」」
えへへと顔を見合わす3人は、第7階層の『マザーの子』に手を置く。
― ☘
『マザーの子』の光に包まれ消え去る3人の行く先は―――。
無情にも第1階層の『マザーツリー』。
ラミアの鱗を1000枚という目標がある中で、期待が膨らむラミアからの『死に落ちの恵み』。その誘惑に彼女達が勝てるはずもない。
― ☘
次の階層よりも、他の「ラミアの巣」に急ぐよりも、何よりも興味のある初体験を求めて、彼女達は、解体屋がある『迷宮』ギルドに一目散で帰っていくのであった。
✿
「「「た~のも~う!!!」」」
『迷宮』ギルドのホールから右奥の扉を ”ババーン” と開けて、エヴァ達が『解体屋』に入ってくる。
「おう! 嬢ちゃん達か。何だ? また『死に落ち』か?」
「こんにちは! ノディムさん。ラミア2体なんだけどいい?」
― ☘
「はぁ? ラミアだって? 『死に落ち』率……0.1%だぞ? しかも2体?」
「へぇ? そうなんだ。でも出たし。スノウよろ!」
フリージアに頼まれてスノウが『死に落ち』したラミアを2体カウンターに出す。
「たまげたね~! 本当に2体もいやがる。」
「すみませんが、今私たち『ラミアの鱗1000本ノック』というクエストを受けていまして他のクエストでの報酬がありませんの……。お代は解体後払いでお願いできます?」
「ああ、そいつは構わないが……お前達の『死に落ち』の確率異常じゃないか? って、間違いなくステータスの『運』が関わる話だよな。聞くだけ野暮だな。それに……また、頭の悪いクエストを受けてやがるなぁ!?」
「えへへ。」
エヴァが嬉しそうに笑うものだから、ノディムは何となく分かってしまうのだけれど、そこは『迷宮』ギルドを支える解体屋のひとり。見て見ぬふりをして解体依頼の事務手続きを進める。
― ☘
「俺もプロだ。全てを丁寧に扱うが、今回は『鱗』がメインってことでいいよな? 多少下半身の蛇肉が傷むかも知れねぇが、それでいかしてもらうぞ?」
「お願いしますわ! それと……。」
「あぁわかっている。解体が終わったら、それぞれのアイテムの説明と相場だろ?」
「さっすがおっさん! 話が早くていい。」
― ☘
「おっさんってなぁ……フリージアの嬢ちゃん。まぁいいか、今日の『夕方まで』には終わらせる。すまないが定刻までには取りに来てくれ。」
「了解!」とノディムに手を振りサーシャの元に行く彼女達。
◇
特別ボーナスであるレアアイテム「パールの鱗」2枚を見て、サーシャに溜め息を付かれるエヴァ達であったが、これで4万エリスをゲットである。
― ☘
報酬を受け取り、第7階層に向かおうとするエヴァ達をサーシャが呼び止める。
折角の待ち時間なのだから、私もお仕事終わるのだからと行ってみたいカフェに誘うサーシャ。
「女子会♪ 女子会♪」とカフェに向かうエヴァ達。
その結果……。
✿
「ねぇ……そっち来たっすか? え? そうっすか。こっちも来ないっす。」
待てど暮らせど、来ない3人娘―――。
― ☘
「何で来ないんすかぁ!? ここ以外で何処に行くっていうんすか~!」
「ラミアの巣」の近くで、かれこれ3~4時間。ラミアやスケルトンと戦いながら叫ぶキャッチフライの叫び声が、第7階層に響き渡る日の入り前の出来事。




