第65話 『キャッチ・フライ』の観察
―――第6階層。
あの『花』魔法の少女達が向かった階層。
昨日の動きが分からなかったので、ひょっとしたら上の階層まで行っているとしたら厄介でしたっすけど、どうやら第6階層からまずは第10階層を目指すといったところっすかね。
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第6階層に先回りをして、張り込んでいたっすけど、どうやら僕のところに飛んできて安心したっす。相方に連絡っと―――。
しかし、なんすかね?
この娘達。第6階層に着いたら観光に来た田舎者のように、上を見て右を見て左を見ながら燥いでるっす。
ここのセーフティーゾーンは、広いっす。
だから、沢山の迷宮探索家がいるっすけれど、あのエヴァって『花』魔法の子が、近くにいる迷宮探索家に見境なく色々聞きまわってるっすね。
これはチャンス?
少し近寄ってみるっすか。
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案の定、『花』魔法の子が近寄って来たっすね?
気が付かない振り、気が付かない振り……。
「ねぇ!」
(ほらきたっす! 狙い通り。)
「何か用? 私達と話したそうだけれど。」
(え? え?)
「え……と、かっこいい装備だなと思って?」
苦し紛れっすけど、本心でもあるっすから……誤魔化されろっす!
「え? この装備? えへへえへへ! かっこいい?」
あ、ご機嫌になったっすね。ここを押そう。
「その服……なんか赤が基調で何の皮っすか?」
「これ? これはね~お姐さんから借りてるんだけれど、レッドリザードの皮なの♪いいでしょ!」
「ふぇ? レッドリザード? あんた、そんな高価な装備をこんな低層で口にするもんじゃないっすよ! 悪い人に盗まれちゃうっすよ?」
「え!? そうなの? ありがとうー! 私はエヴァ! あなたは?」
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「あ、あぁ……僕は『キャッチ・フライ』D級迷宮探索家っすよ。」
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「『キャッチ・フライ』? 変わった名前ね。でも、よろしく!」
「よろしくっす。ところでエヴァ、今日はどんなクエストを受けるんすか?
ここで会ったのも縁っす。アドバイスくらいはするっすよ?」
「えっとね。ラミアの鱗1000本ノック?」
―――ブヘッッ!!!
あんなの受ける奴がいるんすか? 馬鹿っすか?
「そ……それは奇特な。ラ……ラミアは毒が面倒っすから、巣に入るならその前に一度野良で彷徨っているのと戦うことをおススメするっす。」
「ふぇえええ。サーシャさんも毒が厄介って言ってたからなぁー。」
「そっすそっす!」
「んー。でも必要なさそう? けど覚えておくね! ありがとうキャッちゃん!」
「キャ……キャッちゃん?」
「変な名前だったし、呼びにくいので「キャッちゃん」!」
「変な名前って……さいですか。」
「じゃあね! キャッちゃん。」
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『花』魔法の少女は、自由奔放に振る舞った後、仲間の元に戻っていったっす。
接点が持てればと思った程度でしっすが、思った以上にべらべら喋って行ったっすね。ラッキーといえばラッキーっすけど……。
……受けているクエストが、ラミアの鱗1000本ノックですと?!
面倒臭いことになって来たっすねぇ。
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『ポッピー』が着いたら一度相談してみるっすかね。
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僕は、第6階層の「ラミアの巣」から少し離れた場所の岩陰で彼女達の様子を伺っているっす。
残念ながら、相方の『ポッピー』が合流する前に、彼女達が出発してしまったので、僕だけで見ているっすけれど、彼女達……異常っすよお!
まず、僕のアドバイスの野良ラミアとは戦ったんすけど、あの小柄な剣士の子が出合い頭の一刀両断で一瞬で終わったっす。
むしろ、ラミアの鱗を手にして、3人で大騒ぎしていて周りの迷宮探索家の注目の的でしたから、僕の偵察には丁度良かったんすけれど、何か見ていて力が抜ける子達っす。自由すぎ。
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地図情報はしっかりと持っているようで、そのまま「ラミアの巣」に直行した彼女達だったっすけど、20~30居るラミアを相手に『毒』を食らうことなく切って切って、弓で撃ってとバッサバッサと倒していくんっすけど、あのスタミナおかしくないっすか?
『花』魔法のエヴァが5匹程度を倒したときに、真珠色の鱗が落ちたっぽいんすけど、そこから大騒ぎで「パールの鱗」を回しながらキャッキャ言ってるんすよ。
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周りにまだ半数以上のラミアが残っている中でっすよ?
そこで、エヴァがラミアの『毒』を食らうんすけど、それを無視して戦い続けていて、一向に毒の影響が見受けられないんすよ……。
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戦いも30分くらいで終わって、鱗を拾っているんすけれど、「パールの鱗」が2つも出ているし、『死に落ちの恵み』も2体出ている?
なんすか? このラッキーは。
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ビギナーズラッキーにも程があるっすよ……「パールの鱗」が1%程度、『死に落ちの恵み』なんて0.1%程度が相場っすよ?
第6階層の「ラミアの巣」はここだけのはずっすから、第7階層に移動っすかね?
ここの巣が復活するのに半日程度時間がかかるっすから、あの切れ者サーシャが担当なら移動するようアドバイスしてるっすよね?
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僕は、気が付かれないようにそっとスキルを解除して、そそくさと相方の待つ第7階層への『マザーの子』へ向かうことにしたっす。
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彼女達の次の目的は第7階層の「ラミアの巣」で間違いはないっすね。
動向と目的ははっきりしたっすから、余裕は出来たっす。
なので、彼女達を尾行しなくても、第7階層のセーフティーゾーンで相方と少し話す時間を設けたほうが賢明っすね。
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それくらい、ついこの間まで『新人』だったとは思えなかった先程のラミアとの闘いだったっす。あのスタミナと毒への対処は、『花』魔法によるものなんすかね?
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焦らずに、「★」観察を続けさせて貰うっすよ―――。




