第64話 『話題への投資』✿ラミア鱗1000本ノック
✿ クエストの説明回となります。細かい設定が苦手な人は「― ☘」の部分を読めば、分かるようにまとめてありますので、そこをお読み頂ければと思います。
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(ふふふ……目を輝かせているわね! 絶対に『1000本ノック』の響きにワクワクしているのよね。これ! 乗せて乗せて~ 依頼受けさせるんだから!)
「どう? なかなか『難解』なクエストなのだけれど、貴方達ならクリア出来る依頼と私は信じているんだけどなぁ~。」
びくんっ!
(『難解』……の言葉にフリージアさんが反応したわね!)
「でも、なかなかクエストクリア率の低い依頼なのよね~。そう言えば……それでも『双舞子』のおふたりはクリアしてたわねぇ~余裕で。」
チラッ―。
(エヴァちゃんの耳がぴくぴくしてきたわね!)
「このクエストって、凄い数のラミアを狩るから第2階層の実績と合わせると、貴方達絶対『ランカー』なのよねぇ。」
モゾモゾッ……。
(マーガレットさん、もっと上目指したい子だものね! よしダメ押しよ!)
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「このクエスト……貴方達だけの必勝法があるのよねぇ~!」
「な……なんですの? それ。」
「エヴァちゃんには、特殊なスキルがあったわよね? 『花』魔法と~?」
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「「強運ね!!!」」
「ふぇ?」
「「わかった! 『死に落ちの恵み』!」」
「ふぇ?」
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「大正解~♪ それに疲れたら『花』魔法ガジュマルだったっけ? 疲労回復。」
「「ああああ!! 受ける! 受けます~~!」」
「ふぇえええええ! まって~報酬も内容も聞いていないよおお!」
エヴァだけは、自分が頼みのような言われ方で少しだけ慎重になっているのだが、結局のところ、カイト姐さん達がクリアした難解クエストに興味津々。
「大丈夫。 ちゃんと説明しますとも。」
サーシャは、鼻息を”ふんー!”と吐き出しドヤ顔をしてエヴァを見る。
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サーシャはまず、クエストの内容と条件を説明する。
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クエスト内容はこうだ。
・納品クエスト:ラミアの鱗の納品 納品数1000枚
・特別ボーナス:レアアイテム「パールの鱗」の納品1枚
・通常報酬:30万エリス、特別ボーナス:2万エリス
条件はこうだ。
・Eランク以上の迷宮探索家であること
・期限は1週間
・ペナルティ有
そう、最低でも30万エリス一人10万エリスである。
これに「パールの鱗」がドロップすれば、追加で2万エリス。
このランクの報酬としては、まさしく『破格』である。
◇
だからこそ、エヴァは疑問に思う。
「ねね? 何でそんなに鱗がいる人がいるの? 報酬も破格だし。」
この鱗が何なのかはわからないのだが、余りにも数が膨大である。
「そうね。 実はこの鱗なんだけれど、お化粧品の原料となるの。貴方達もこれくらいは使っているでしょ?」
サーシャはポーチから1本の小瓶を出す。
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「あー! 『ドールス』のファンデーション!?」
「そうなの! 世の中半分は女性でしょ? だから需要が多いって訳。なのだけれど、このラミアって魔物が曲者で……状態異常『毒』を使ってくるのよね。」
「あっ! なるほど……。向かうのは低層ですし、クエストクリア報酬での鱗1枚単価は300エリス。恐らく単品納品だと200エリス以下の代物というところでしょうか? 『毒消し』のお値段を考慮すると、割に……合わないのですわね?」
「そうなの。それで単価を上げてまとめて納品して貰うクエストがあるのだけれど、それでも割に合わないと考える人が多いし運次第。」
「ですわよね?」
「それに、この数のラミアを狩るって、「ラミアの巣」と呼ばれる場所で狩らないと辛いし……それもあって難易度が高いのよ。」
「ふーん。でもそれじゃファンデーション足りなくならないの?」
「それは、第10階層まで登ったり拠点にしていたりすると、群れていないラミアにも遭遇するから、それで何とかなっている感じかな?」
「でも、それだと数が安定……しない?」
「そ! お店としては、数を確保したいのと……後は単純に『話題への投資』ね。」
「ん? どゆこと?」
「女性の迷宮探索家って多いじゃない? そんな中で難易度の高いクエストを『ドールス』さんが出して話題になれば、「あのファンデーションって価値があるもの」と錯覚させる感じ。」
「なるほどですわ。このクエストを受けていない女性の迷宮探索家がラミアの鱗を買い取りが安くても、勿体なくて持ち帰ってくれる? でしょうか。」
「その通り! 『ドールズ』さんにとっては、成功と失敗は関係なくて、『難解な依頼』が大事なのよねー。」
「あ。それわかるかも!?」
「私も今の話半分くらいしか分からなかったけれど、ラミアの鱗がドロップしたらラッキーって思っちゃうもん! 200エリスなのにね!」
「なので、普通の迷宮探索家は、このクエストは受けないの。でも、あなたたちはエヴァさんを通じて親和性がある《《美味しい》》依頼じゃない? 折角なので稼いじゃいなさいよ。」
「それで、冒頭のガジュマルと『強運』による……『死に落ちの恵み』なのですわね? それに『パールの鱗』のボーナス。」
「そそ。 後は、数をこなすのでランカーへの近道になる♪」
◇
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ここまでの会話を改めてまとめるとこうである。
(1)ラミアの鱗は化粧品の材料となり需要がある
(2)ラミアは、強くはないが毒等があり厄介なモンスター
(3)化粧品のお店が、わざと難易度の高いクエストを用意をして
「宣伝効果」と「まとまった鱗の数を確保」に活用している
(4)チーム『グラン・シエル』には、エヴァのスキルにより親和性がある
『花』魔法ガジュマル:数の暴力に対する疲労回復、毒緩和
『強運』:『死に落ちの恵み』があれば解体で大量の鱗をゲット+α
『レア素材パールの鱗』でボーナスゲット
(5)1000体の討伐でランカーに近づける
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それに、第6階層から第10階層まで共通して「ラミアの巣」が存在しており、階層を上げながら進むことができるメリットもある。
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まさに、今のエヴァ達『グラン・シエル』のためにあるようなクエスト。
リンデンを驚かし、彼に近づく最高の一手。
エヴァ達はふたつ返事でこのクエストを受諾し、サーシャはご機嫌で手続きを進める。
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手続きをしながらサーシャは、『死に落ちの恵み』があった場合は、解体をギルドでしてもらうことで、少しでも『鱗の枚数を稼げる』ことと、他の素材も売れることをアドバイスする。
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「よおおおし! お金とランカーどっちも頑張るぞお!」
「「おー!」」
手続きを済ませたエヴァ達は、人がなかなか受けないクエストを攻略する楽しみも相まって? 何時ものように楽しそうに『迷宮』ギルドを後にする。
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そして……それを追うように外に出る2人組の迷宮探索家。
名前は『ポッピー』と『キャッチ・フライ』―――。
これからの冒険で、幾度となくエヴァ達と顔を合わせる2人組。




