第58話 新人卒業 結成チーム『グラン・シエル』
サーシャは担当者として、彼女達の頑張りを彼女達が求めない限り、極力アドバイスは最低限に努めていた。
彼女達が、楽しそうに自分達のやるべきことを考えて、失敗しながら、試行錯誤した姿が眩しかった。もう少し頑張る少女達を見ていたいのだけれど。
ちょっとしたことに、疑問をしっかりと持ち、真剣に言い合える仲になった彼女達を祝福しようと思う。
―――ここからは、過酷なランキング戦。
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ここからは、ランキングを蹴落とす、どんな輩が現れるのかわからない。
彼女達は、ここからチームを結成するのだから、言い合えるくらいにならないと、きっと何処かで挫折しそうだった。だから、今なのだろう。
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「おめでとう、あなた達! 『特S級』新人 "卒業" です。」
サーシャは、担当官として当たり前の言葉なのだけれど、思いの全てを載せて、彼女達に言う。
「ふぇ?」
その言葉を理解できない3人。
(それはそうだろうなぁ……何も伝えてないのだもの。)
と、苦笑いをしながらサーシャは、今日の合格についてゆっくりと説明をする。
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「卒業試験、すっごいの想像していたから……ねぇ?」
「ですわねぇ。ちょっとびっくりはしていますわ。」
「うん。消化不良。」
3人は口を尖らせながら、ぶーぶー言っている。
普通ならば、合格な時点で両手を挙げて喜ぶものなのだけど、本当に貪欲な子達だなぁと思うサーシャであったが、そこはお見通しである。
「取り合えず、喜んでおきなさい! これで、世界樹の理の中で自由に、そして自己責任でこれからは冒険ができるのよ? それに……」
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『……組むのでしょ? 迷宮探索家チーム!』
ほら、目の色が変わった! うわぁ~~って顔になった。
分かりやすいのよね。かわいい♪
サーシャは、用紙を1枚彼女達に渡す。
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「はい、これ。あなた達には内緒にしていたけれど、リンデン君は一昨日卒業しててね。彼からチーム加入のサインの入った申請書を預かっているわ。」
「げ……。あいつの方が先に卒業してたのショック過ぎ。」
フリージアが眉間にしわを寄せて嫌そうな顔をする。
「うふふ。彼、頑張ったのよ? 積極的に自分の長所をアピールして、弱いことをしっかりと説明して。」
「へぇ……。」
「でもね、ちゃんと局面を見ては戦闘に参加もしてて、一緒に卒業した新人の子達から、熱烈にチームに誘われていたのよ? それを断ってのこのサインだもの、喜んであげて!」
「うん! 嬉しいよー! リンデンも頑張ったんだね!」
「勿論、大歓迎ですわ!」
「ふ……ふたりが言うなら、しょうがない。」
言葉とは違って、嬉しそうな顔のフリージア。
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「それでね、リンデン君からなのだけれど、チームの結成は任せるって。」
「ふぇ? 私達に?」
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「えっと、エヴァちゃん達とは、スタートが違うから「ザコイチさん」と昨日から迷宮に籠ってるの。だから、後3日は帰ってこないので、それまでに卒業出来たら任せるって託を聞いているわ。」
「ぐぬぬぬ……。先を越されているようで生意気。」
サーシャから聞かされたリンデンの積極的な行動にフリージアが唸る。
「ふぇえ。リンデン凄いね! Eランクになって直ぐに迷宮に籠るって。」
「しかし、お相手がザコイチ先輩ですから心配ですわ~。」
「そうでもないのよ? ザコイチさん。今はあんなのだけれど、EランクからDランクまでの昇格は早かったし、Dランクもランカーまで入った人だから。あんな残念な結果にならなければ……きっとCランクにはなっていた人なのよ?」
「ふぇええ。まったくそうは見えないのにね?」
「あはは、エヴァちゃん……はっきり言いすぎ!」
エヴァのお世辞も言わない素直な感想にサーシャは笑う。
◇
「取り合えず、リンデンのことは分かったよ! 『チーム』……作ろう!」
エヴァは、マーガレットとサーシャを強い意志を持った顔で見る。
そして、頷く彼女達を確認してサーシャから渡された紙にペンを走らせる。
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(任せると言ってくれたのなら……リンデンには《《少し悪いけど》》いいよね?)
この1週間のディスカッションで、3人娘はチームの名前を決めていた。
Eランクになったら、リンデンに同意を得て、それにすると決めていたチーム名をエヴァは書く。
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「チーム名はこれでいいのね?」
頷く3人。
彼女達らしい名前にしたな。でもその半面、これを考えると、彼はその土台ということなのかしら? とサーシャは思う。
「では、あなた達のEランク昇格と併せて、チームの結成の処理をするね。迷宮探索家カードを。」
サーシャは、彼女達のカードを受け取りキーボードを叩く。
そして、光り出すエメラルドグリーンのカードが、濃い緑色に変わっていく。
光が増すカードに、エヴァのカードにはピンクの、マーガレットのカードには黄色の、フリージアのカードには白色のと、それぞれの妖精の光が一瞬輝く。
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「あなた達は、これで正式に迷宮探索家として、Eランクが与えられました。行ける階層も『第10階層』となります。そして、ここからは自己判断自己責任の世界となります。」
「「「はい!」」」
「今までのように、『迷宮』ギルドがあなた達の能力に合わせたクエストを用意することもありません。」
「「「はい!」」」
「当然、特S級出身なので、あなた達が望むなら、私が「専属担当者」になることも出来るので、相談にも乗るしアドバイスもするけどね! でも、それを含めて決めるのはあなた達です。」
「私達はサーシャさんに当然、専属をお願いしたい。」
「よろしくお願いしますわ!」
「うひひ! サーシャさん頼まれて!」
3人は、サーシャが、そのまま専属で担当になることが嬉しかった。
そして、サーシャには、裏表なくストレートな気持ちとしてそれが伝わって、彼女は嬉しくて……薄っすらと目に涙が宿る。
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「ありがとう……あなた達。
……それでは、チーム専属の担当者として登録させて貰うわね。」
サーシャは、カードをそのままに処理を進める。
◇
「え……と、これ。本当にいいの?」
「うん。」
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恐らくは、リーダーのことであろう。
それは3人一致で決めていて、文句は《《言わせない》》。
その確認の後、サーシャは最後の盤面を叩き、『迷宮』ギルドの職員の顔をして3人に言う。
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『改めて、これからもよろしくね!
迷宮探索家チーム『大空』の皆さん!』




