第57話 オレンジの花✿アルストロメリアの祝福
『特S級』の新人は、『迷宮』ギルドの担当者と相談しながら、本格的なランク持ちとなるEランクになってから、その後を鑑みた、その新人に合った体験が、初期段階で提供される。
想像力を養うことと、弱点を知ること、強みを強化すること。
それらを体験し、生かすことが出来ると判断されたものが『特S級』の新人に選ばれており、彼らは往々として「新人」を卒業しそれを生かしていく。
エヴァ達も当然、その資質を評価されての『特S級』新人であるのであって、漏れることなく、その経験で感じ取っていて、自ら考えることを厳かにしていない。
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サーシャは敢えて、3日目のクエストとして、リンデンがいない中での『採取』クエストを用意して、彼女達に経験を積ます。
結果は散々であって、さっぱり対象が分からない中で我武者羅に採取したものの中に、辛うじてお目当ての品があった――という『運』に助けられていた。
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その結果、彼女達が見出した結論は、サーシャの用意するクエスト+αで、『採取』を追加して貰うこと。
涙目の3人が、悔しさにぐぐっと涙を堪えてそれを提案する。
朝一番で、依頼を聞く。
午前中は『迷宮』ギルドの図書室で調べ物。
ランチを取りながらのディスカッション。
そして、昼から迷宮にどっぷり籠る。
『特S級』といっても、新人であることに変わりはない。
ひとり一回500エリスが必要な「図書室の活用」は厳しいのだけれど……。その分「自由」が認められている特権を生かして、午後からの時間いっぱいを、迷宮でより多くの狩りをすることで、それを補っていく。
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そんな、悔しさを糧に続けた1週間の切磋琢磨――。
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「サーシャさん~ランチ行こう♪」
何時ものお勉強会から帰ってきた3人娘が、にやにやしながら自分達の担当者であるサーシャをランチに誘う。
「もう、あなた達。わざわざランチに私を誘わなくても、普通にカウンターに来てくれれば、相談に乗るよ?」
業務時間に来ればいいのに、それが私の『特S級』新人に対しての仕事なのにとサーシャは彼女達に言うのだけれど、彼女達は、どうせランチ行くなら一緒の方が楽しいだとか、時間が勿体ないだとか、そんなことを言って、最近は毎日のようにお昼を待って彼女を呼びに来る。
そして、ランチに行けば決まって今日調べた「採取」対象の情報を、自慢げに、貪欲により詳しい情報を、楽しそうに3人がわいわいとサーシャの話してくる。
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彼女達がこのスタイルを取るようになって、変わったことがひとつある。
それは、言い合い……『喧嘩』をすること。
調べれば調べただけ、3人居れば解釈が違うことが出てくる。
それを一通り言い合った後でサーシャを誘っているのであろう。
サーシャが「それはこうね。」と説明すると、誰かが「ほら~私が言ったとおりじゃん!」と自慢げに胸を張る。
そんな彼女達が可愛すぎて、また、喧嘩するほど仲が良いのを体現して、サーシャはそれを見ているだけで、胸が熱くなる。
(キャ~3人とも健気でかわいい~。この魅力はエヴァちゃんだけのものじゃないわね。っと、そろそろ《《自分達》》で探索させても良さそうね。)
サーシャは自分が単純に彼女達のファンに成り下がっていることを自覚しつつも、そうさせている理由である彼女達の試行錯誤を評価していい頃かなと、新人時代の『卒業』を考える。
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「あなた達、今日は第5階層の『マザーの子』に触れていらっしゃい。」
報酬は出ないけれど、ランチの場ではあるけれど、彼女は『追加』でクエストを与える。
新人の内は、第6階層には行けないのだけれど、第5階層の『マザーの子』に触れれば、Eランクになった途端に『マザーツリー』から第6階層に飛ぶことが出来る。
それが、普通の新人達の最後のミッションであることを彼女達には伝えない。
当然、第6階層への切符を先行して手に入れることも伝えない。
どうせ帰ってきたら、第5階層までしか行けない新人が「第6階層に行けるようになったこと」が不思議でしょうがなくて聞いてくるはずだ。
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よし、それを聞いて来たら合格にしよう。
私の中での新人課程のこっそり卒業試験ね。うふふ。
こっそりと、彼女達の成長を楽しんでいるサーシャは、
こっそりと卒業試験を与える。
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幸いにも今日の『採取』は、オレンジが基調なダンジョンアルストロメリア。
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オレンジのアルストロメリア……花言葉は、「幸い」「友情」。
卒業として、彼女達のはなむけとして、偶然にも丁度いい。
サーシャは、卒業の言葉が彼女達から出ることを期待しつつ、『合格』と伝えた時の彼女達の驚く顔? 喜ぶ顔? どんな顔をするのかが楽しみで仕方がなかった。
そして夕刻―――。
「ねぇーサーシャさん聞いてよ!! フリージアが!」
「エヴァの仮説は無理がある。愚説。」
「でも、フリージアさんの説こそ、矛盾しかありませんことよ?」
彼女達が喧嘩しながら帰ってくる。
そして、3人は口を揃えてサーシャに言う。
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「「「何で、新人なのに第6階層に行ける表示が出るの?」」」
その言葉を聞いて、彼女達の担当官サーシャは、嬉しそうに彼女達を見る。




