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『花』魔法✿のぷち勇者と世界樹☘の迷宮  作者: 左手でクレープ
第4章 ✿新人たちの卒業式
55/132

第55話 知識と解体、その『強さ』

 思ったよりも早い段階で『おいシイ茸』を手に入れれたご褒美のこの時間。

 エヴァの思い付きでの始まった摘まみ食いであったが、時間も丁度よかったため、ランチタイムと変わる。


 美味しいお肉に、美味しいきのこ。

 ちょっと固いパンと、マーガレットの柔らかいパン。

 緑香る清涼感ある高貴なお茶。


 お腹が一杯になった彼女達は、

 次のターゲットを探すためにBBQ会場を後にする。


 実は、食事を終えるまでに、『おいシイ茸』の匂いに誘われたゴブリンは10体は下らなかったのだけれど、気分を良くしたマーガレットが次々と矢で打ち抜き、最後にはゴブリンは寄り付きもしなかった、そんなランチタイムの閑話。



 ✿ ❀ ✿


 第3階層から第4階層へ向かう大樹『マザーの子』には、地図があることと、リンデンの適切な案内から、あっさりと着くことができた。


― ☘

 昨日の地図がない状態から、マッピングを楽しみながらも「苦労して辿り着いた経験」と、今日の地図があることにより無駄はないが、「階層のことが頭に残っていない状況」に、改めてマッピングの大切さを感じるエヴァ。


 それは、彼女の冒険ノートを見ると明らかで、第2階層が見開きいっぱいの情報が書かれているのに対して、第3階層は殆どスカスカであった。



 4人は、『マザーの子』に手を置き、第4階層へと移動する。


 ここでの標的は、『おやぼん』のお肉である。

 『おやぼん』は、この階層で比較的簡単に見つけることが出来るモンスター。

 お肉自体も、倒せば手に入る恵み。


― ☘

 『おいシイ茸』に比べれば安易なオーダーなのだが、サーシャの狙いは実は『解体』である。エヴァ達だけでは、恐らくはモンスター討伐の後に死体が残るレアケースの対応が出来ない、というか仕方を知らない。


 リンデンを彼女達に付けた理由は、そこであった。


 ✿


「思ったよりも、ただただ広い場所だね。」

「起伏のない階層ですわね。」

「ええ。なので、こちらからもモンスターからも、丸見えな階層です。」


「本当だ、あれとあれ。『うりぼん』のお父さんみたいなのがいる。」

「そうですそうです。あれが『おやぼん』です。」


「ん。結構突っ込んできそうなモンスター?」

「ですね。なので、あれはこの地形に適したモンスターです。」


「ひとり1体倒せばいいだけだよね? じゃ、戦いながらそれを体験していこー。」

「「おー!」」


 相変わらずの軽い感じで、わいわいと草原を進んでいく3人娘。

 数の多い『おやぼん』には、直ぐに遭遇することができ、その都度「わたしの番!」と狩りを楽しむ3人娘。


 実は、猪突猛進で正面から突っ込んでくる『おやぼん』に、少しだけ彼女達は苦戦をする。


『おやぼん』の殆どは、決死の形相で突っ込み、挑んでくる。

 その「覚悟」に一瞬、剣先が鈍った事によるものであったが、彼女達は持ち前の対応力でそれを躱しながら、命のやり取りを感じながら倒していく。


 ◇

― ☘

 そして、彼女達は、自分達のノルマ3体を終えリンデン分の『おやぼん』を倒したそのとき、死体が泡とならず、その場に残る―――。


 「おー! レアだぁ!」と彼女達は喜ぶも、それをどうすれいいのか分からない。

 「ん~?」と考える彼女達であったが、「諦めた!」と言わんばかりに目線をリンデンに集める。


「り・ん・で・ん♪」

「出番ですわよ!」

「今日はミスるな!」


 辛辣なフリージアの言葉に苦笑いを浮かべるリンデンであったが、ナイフを手に取り『おやぼん』の亡骸に向かう。


― ☘

 彼にとっては、置かれた状況が違うにせよ、あの事件を引き起こした以来の『解体』作業である。


 少しだけ手が震えている……。

 頭では割り切っていたが、気になっていた亡くなった子の顔が浮かぶ彼の額には、大粒の汗が溜まっていく。


― ☘

「とぉ~! うじうじ禁止!」

 フリージアが、リンデンの頭にチョップを入れる。


「フリージアさん痛いですよー! 」

 とっても痛かった彼女の手刀だが、本当に痛かったのは『弱い自分の心』であって、その心の刺激にリンデンは落ち着きを取り戻し、解体を始める。


 フリージは解体の邪魔にならない距離をとり、ちょこんと屈み解体作業を見守る。


 ❀


 足首と首元にナイフを切り入れて血抜きをするリンデンの手際、皮を剥ぎ毛を抜き、内臓を取り出し、見事にも肉を部位ごとに切り分けていく。


 切り分けた胴体に、胸肉の中心ナイフを充て一気に開くと、そこには『魔核』と呼ばれるモンスターの心臓が現れる。


― ☘

 傷つけないように、正確に、優しく『魔核』を取り出すリンデンに、それを見守っていたフリージアは、「上手に出来たみたいだね。頑張った」と背中を軽く叩く。


 安堵と自信を取り戻したリンデン。

 3人は、その顔を見て頷きながら、妖精達に解体の終わった恵みの収納を手伝う。


― ☘

 収納時もワイワイとお茶らけていた彼女達であったが、命あるものを余すことなく活用出来るように切り分ける『解体』の大切さ。

 そして、冒険を『上層』へ進めるうえでの、その技術の有益性は『命』に繋がり、それが意味する『強さ』。


 リンデンが行ったその作業過程を見て、彼女達はそれらを改めて感じ取っていた。



 ✿ ✿ ✿


 フリージアから、「弟達と御師様に肉のお土産を持って帰りたい」とお願いがあり、追加で『おやぼん』を1体狩って、今日は、帰還の途に着くことにした彼女達。


 今回も楽しいピクニックであった。


― ☘

 だが、リンデンの『知識』と『解体の技術』に救われた一日だったなと、自分達がそれなりに強いことを自覚している彼女達ではあったが、まだまだ足りないもがあることを、思い知らされた感がある。


 奇しくもそれは、結果的にサーシャの狙いの通りであって。


 『迷宮』ギルドに戻り、納品をするときにそのことをサーシャに伝えると、「そっちも頑張らなくっちゃね!」と、彼女は嬉しそうに白い歯を見せたのであった。

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