第53話 『おいシイ茸』とBBQと毒キノコ
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「ね。ところで、この『花』魔法ってどんななの?」
「聞きたいですわ!」
『シイ茸』を炎に当て焼きながら、フリージアとマーガレットがエヴァに聞く。
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「えーと。『花』魔法 リアトリスは、火が地面からボオオオと出るの。一回で出せる炎は5柱かな? 場所も火力も調整出来るから、火の壁~~! みたいにも出来るよー!」
「おー! 便利!」
「まぁ! キャンプにぴったりですわね。」
「でしょでしょ! この倒木キャンプっぽくてさぁ! あ、そうだ。昨日の『うりぼん』も焼く?」
「まぁ! わたくし! 「びーびーきゅー」してみたかったのです!」
「じゅるり、後で『おやぼん』も食べよう!」
(あははは……。なんて自由な人達なんだ。採取しに来て……まだ『おいシイ茸』を見つけていないのに……BBQが始まってしまいましたよ。)
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エヴァが無邪気な顔で、リンデンにもキノコ付き木の矢を渡す。
もう何でもいいや……と彼もキノコを焼きだすと、
立ち込める『極上』―――の香り?
あれ? この香りは……?
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リンデンがそう思ったとき、背後の草むらが "ざわざわ" と音を立てる。
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" ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃー "
草むらから現れるゴブリンとゴブリンスカウト数体。
この香りに誘われてしまったのであろうか。
「ひぃいいい。」
その異形に気持ち悪い笑い顔を見てリンデンは小さな悲鳴を漏らす。
「ん……。」
『シイ茸』をもぐもぐと食べながら、エヴァ達はゴブリン達を見て立ち上がる。
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ゴブリンスカウトが、リンデンの手に持つ木の矢を見て「ぎゃぎゃぎゃ」と言って指を指すと、一団の目がリンデンに向き "ニタァ~" と笑う。
「ひ……ひぃいい。」
後退るリンデンの前に、フリージアがため息を吐きながら気怠そうに立ち、間に入る。
リンデンが少し涙を溜めながら、フリージアを縋るような目で見たとき、前方で断末魔が聞こえる。
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彼がその方を見ると、ゴブリン達が『燃えて』いた―――。
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「さっ、つづき♪つづき~♪」
何事もなかったかのように、きのこを焼くエヴァとマーガレット。
無言でその輪に加わるフリージア。
「えっと。何故ゴブリンは燃えているのでしょうか……。」
リンデンは一瞬のことで、何が起こったのかがわからない。
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「あー。ゴブリンがリンデンの『シイ茸』を狙っていたから、『花』魔法 リアトリスの火で『ついで』に焼いておいたよぉ!」
「ふぇ?」
またも、呆けた声を出すリンデンであったが、「ゴブリンを焼いていた火」が地に消えて、『シイ茸』を焼いている「倒木の火に戻る」不思議な光景を見て、これも『花』魔法の奇跡なのかなと思い納得をする。
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「しかし分かりませんわ? ゴブリン達は何故リンデンさんの『シイ茸』を一斉に見たのでしょうか?」
マーガレットが、リンデンが持つ矢に刺さった『シイ茸』を見る。
「あ! そうでした。エヴァさんこの『シイ茸』なのですが……何処で?」
リンデンは自分の手にある『シイ茸』を採取した場所を聞くと、
「ん? ここ?」 と、エヴァは燃えている倒木を指さす。
「えっと……、そこにあった『シイ茸』は、エヴァさんが採取したのです?」
「うん! 私と『もも』とで取ったの~!」
『とったー』
万歳をする『もも』に併せて、エヴァも万歳をしいる。
「え……とですね。多分これ……。」
「ふぇ?」
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「……『おいシイ茸』ですよ?」
ん? と、お互いの顔を見る娘達と妖精達。
次に「えええええええええ!!!」『ふぅぇー』と、叫ぶ娘達と妖精達。
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この後リンデンは、3人の採取袋の中を改める。
(フリージアさんは……見事に『シイ茸』だけですね。)
(マーガレットさんは……あぁ…毒キノコもいっぱいだ。)
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(そして……エヴァさん……半分は『おいシイ茸』なのですけれども!?)
はぁ……。恐らくは、エヴァさんにお任せした倒木の幾つかは『当たり』だったのでしょうね。ですが、あの楽しそうなエヴァさんの雰囲気は、『シイ茸』採り楽しい! が勝ってしまったというところでしょうか? とリンデンは考える。
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(しかし、ここまでエヴァさんに偏った結果……
きっとこれが、昨夜ルイゼさんが教えてくれた『強運』なのでしょうか―――。)
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これを、どう伝えようかとリンデンは迷ったが、彼女達の袋ときのこを手に取り、フリージアとエヴァ《《には》》結果を言うことにした。
「フリージアさんのはすべて『シイ茸』でした。そして、エヴァさんのは半分くらい『おいシイ茸』でした……。エヴァさん、匂いは確認しなかったのですか?!」
「えー!? 全部同じ良い匂いだったよ? 最初に採ったのと比べて《《薄い匂い》》のはあったけど。 ね!『もも』ー。」
『おいしーにおいーいぱい! ね!えばー。』
「ねー!!!」
エヴァと『もも』は、再び楽しそうに万歳をしてきゃっきゃしている。
(何となくわかりました。《《最初に手にした》》のが『おいシイ茸』だったのですね。だから逆に、普通の『シイ茸』の香りが「香りの薄いもの」と思い込んだということですか。)
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出来れば、僕が渡した『シイ茸』と、最初の『おいシイ茸』を嗅ぎ分けて欲しかったとリンデンは思うが、これが『強運』によるものかは分からいのだけれど、エヴァが結果的に目的の品を見つけていることから、それを言っても仕方ないかな? と言うのを止める。
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「と……取り合えず、これで『おいシイ茸』は集まりましたね。折角なのでBBQを楽しみましょう。」
わーい! と言いながら、彼女達は『シイ茸』と『おいシイ茸』をリンデンに聞いて、食べ比べを始める。
すると、『おいシイ茸』の味にきゃーきゃーと言っている最中、マーガレットが「ところで、わたくしの採取したきのこは如何でしたの?」と、自分にはリンデンが何も言わなかったことを気にしてか聞いてくる。
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その言葉に、リンデンは一瞬言葉を詰まらせるが、「は……半分以上毒キノコでした……すみません」と申し訳なさそうに、汗をかきながら正直に答えたのであった。




